偽典・女神転生―テメンニグル編― 作:tomoko86355
かなり支離滅裂な内容な上に、結構あっちこっちからネタをパクってます。
それでもかまわないという心の広い人はご一読して下さい。
その日、ライドウは豪華客船『ビー・シンフル号』のラウンジで少し遅めの朝食を取っていた。
仲魔強化&自身の鍛錬の為に深夜帯まで矢来銀座の地下下水道の最下層まで潜っていたせいである。ある程度、マグネタイトと素材悪魔を集めた所で地上に戻ってみると日付はとっくに変わっており、太陽が真上に登っていた。
「酷い顔ですね?」
妙齢な女性の声にトーストを口に咥えたまま顔を上げる。
そこにはキッチリと上品な縞のスーツを着た女性がライドウに微笑んでいた。
この人物の名前は、マダム銀子。
ライドウと同じ『組織・クズノハ』の一人であり、上級召喚術士の元締め的立場にある。
本名は不明、当然出身地も不明、年齢も性別すらも謎の人物である。
「コイツが欲しくて無理し過ぎた。」
そう言って、テーブルの上に1本の刀を無造作に置く。
柄の所に七つの星が刻まれたその刀は、今朝方この船の指折りシェフである”第三十三代目・村正”が打ったばかりの刀剣であった。
「ほう、威霊”アリラト”の宿った魔剣ですか。随分と思い切った事をしましたね。」
一目見ただけで、どんな悪魔が素材にされたのかあっさりと見抜く眼力は流石である。銀子は抜いた刀剣の怪しい刃の光を暫く眺めていると鞘に刀を戻し、テーブルの上に置いた。
「貴方にはソレがあるでしょう?今更、合体剣など必要ないのでは?」
銀子の視線がライドウの足元に立てかけられている赤身の鞘に止まる。
歴代・ライドウが受け継いできた最強の神器。一度抜けば、空間を裂き、あらゆる魔を滅する恐るべき刀剣。
「生憎、俺の身体にはコイツが合わなくてな、一度解放したらえらい目にあった。もうあんな目に合うのはごめんだぜ。」
トーストを咀嚼し、苦いコーヒーで流し込む。
昔、魔王クラスの悪魔と殺り合った時、神器の封印を解いた事がある。
幸い仲魔達の命は無事だったのだが、ライドウだけ一週間以上も寝込む羽目になってしまった。
「そんな事より、俺に何か頼み事があるんじゃないのか?とびきり面倒臭いヤツの。」
真向かいに座る麗人を隻眼が鋭く見つめる。
長い黒髪を三つ編みで一つに纏め、夏場だと言うのに長袖を着込んだライドウの姿は、大分この場にそぐわない恰好であった。
しかし、ラウンジ内にいる客達は別段気にも留める様子も無く、思い思いに談笑をしながら食事や飲み物を口に運んでいた。
「ふふ、全てお見通しという事なのですね。」
銀子はアタッシェケースから、英国の新聞紙を取り出すとライドウの目の前に置いた。
半分に折りたたまれた新聞には、『郊外の公園で7人の少女達の惨殺死体が発見された』という内容の記事が載っている。
「それとこれも・・・。」
同じくケースから取り出した茶封筒の中に入っていた写真を新聞の上に置く。
そこには、ミイラ化した女性と思われる無残な遺体が映し出されていた。
「酷いな・・マグネタイトが根こそぎ抜き取られてる。」
恐らく警察内部に頼んで、モルグに収容されている少女達の亡骸を撮影したものらしい。皮膚が茶色く変色し、干からびたその死骸はとても十代半ばの少女のモノとは思えなかった。
「マスコミ各社には変質者による猟奇殺人事件として表向きは報道されています。」
一般市民の不安を抑える為の措置らしい。
最も悪魔がこの世に実在すると知れば、どんな二次被害が出るか分からない。
それこそ中世に行われた魔女狩りが再び復活する恐れすらある。
それを防ぐ為の防御策であり、その超常的事件を闇に葬るのがライドウ達、悪魔召喚術士(デビルサマナー)の仕事といえた。
「何で俺達『クズノハ』がやらなきゃいけないんだ?此処はヴァチカンの管轄地域だろ。」
日本国内で起こった事件なら『クズノハ』が処理するのが筋だが、この一件はどう見てもヴァチカン―異端審問官(13機関)の仕事である。
「ええ、確かにそうです。しかし、今現在、コンクラーヴェの真っ最中である事は貴方もご存知ですよね?」
「ああ、そういや先日法王猊下がご逝去されたんだっけ。」
一週間前に現教皇が癌で亡くなった事はテレビの報道で知っている。
まだ60代半ばの若さであった。
「13機関はコンクラーヴェの警護で忙しく、とても人手を割く事が出来ません。なので・・・。」
「俺達下請けが依頼されたってわけかい。」
皮肉を大分含んだライドウの言葉に銀子が一瞬、咎める様な鋭い視線を向ける。
ヴァチカンとクズノハはその宗教的思想の違いにより、長い間対立関係にあった。
しかし、第二次世界大戦で日本が大敗北した事を契機に『クズノハ』と『ヴァチカン』は長い闘争に終止符をうったのである。
「そんな怖い顔するなよ?銀子さん。仕事はちゃんと受けるし奴等の顔もちゃんと立てる。」
「ライドウ・・・。」
力関係はあくまで同等。
しかし実際問題、ライドウ達『クズノハ』が『ヴァチカン』より下に見られているのは事実である。
「それに、あの糞野郎に借りを作るのも面白いしな。」
ライドウの脳裏に13機関司令・ジョン・マクスウェル枢機卿の顔が浮かんだ。
マクスウェルが推している時期教皇候補はかなりな野心家であり、マクスウェルの義理の兄にあたる。おまけに相当な資産家らしく、妹の夫であるマクスウェルを気に入っており、枢機卿の椅子を与えたのもその義理の兄であった。
「早速、現地に飛んで情報を収集する。悪いけど事件の概要と死んだ少女達の関係を調べてくれ。」
鍛え上げられたばかりの魔剣『七星村正』を背中に背負い、隣の椅子に引っ掛けてあるバックパックを肩に掛ける。
徹夜続きであるにも拘わらず、眠気は既に吹き飛んでいた。
「気を付けて下さい、ライドウ。今回の事件は嫌な予感がします。」
「いつもの事だろ?それに面倒事には慣れっこさ。」
秀麗な眉根を寄せる麗人に片手をあげてラウンジを後にするライドウ。
そう、彼の請け負う仕事は厄介事ばかり。
しかし、どんな過酷な任務でも鼻歌混じりにこなしてしまう。
それが組織『クズノハ』最強の悪魔召喚術士(デビルサマナー)17代目・葛葉ライドウという人物であった。
ミッション1『テメンニグル大門前』
か弱き人の子に負けたのが余程悔しかったのか、三つ首の怪物は口惜しい唸り声を上げると眩い光の結晶へと姿を変えた。
光の結晶は吸い込まれる様に、深紅のコートを纏った銀髪の青年の手に吸い込まれていく。
2メートルを軽く超える身長に、鍛え上げられた体躯を持つ青年の手には、アイスブルーに光る三又のヌンチャクが握られていた。
「ヒュー、結構イカス玩具になったな。」
青年―ダンテは、軽くヌンチャクを振り回す。
するとヌンチャクから魔力の籠った氷の結晶が飛び散り、壁や床を瞬く間に氷つかせた。
時は数時間前に遡る。
馴染みの情報屋であるエンツォに頼んで、手頃な物件を手に入れたダンテは、早速そこに自分の個人事務所を構える事にした。
個人事務所と言えば聞こえが良いが、要は汚れた仕事を何でも請け負う『便利屋』稼業である。
漸く手に入れた自分の城。
こ煩いエンツォの仲介を必要としないで、自分の好きな時に仕事を請け負い、その上、仲介料をピンハネされる心配もない。
硬い樫の木で出来たデスクに両足を投げ出し、さて事務所の名前でも考えようかと思っていた矢先にある事件が起きた。
双子の兄、バージルの使いと称した黒ずくめの男の来訪、事務所内に突然現れた無数の悪魔・・・そして、その後は腹が立つので思い出したくもない。
「当然、俺をもてなしてくれるんだろうな?お兄ちゃん。」
皮肉に口元を歪めたダンテが、塔内に入ろうとしたその刹那。
一台の大型バイクが頭上を掠めてダンテの目の前に降り立った。
野獣の如きエンジン音を轟かせる大型バイク。
その巨躯に跨るのは、ダンテよりも一回り以上華奢な体躯をした人物であった。
「例の殺人事件を追ってたら妙な事に巻き込まれたな。」
パーカーのフードを目深に被っている為、どんな容姿をしているのか分からない。
だが、声の高さから言って、10代半ばぐらいの少年と思われた。
「おいおい、此処は子供が来る所じゃないぜ?」
予想外の闖入者に、ダンテが溜息を零す。
「子供?もしかして俺の事か?」
そこで初めてダンテの存在に気が付いたのか、パーカーの人物が頓狂な声を上げる。
「やれやれ、この姿になっちまってから、子供に間違われるのは結構あるけどさぁ。」
大袈裟に溜息を吐いて、少年―ライドウが、改めてダンテの方に視線を向けた。
素肌に深紅の皮のロングコート、銀の髪に身の丈程の大剣を背負っている。
恐らく、この大男がテメンニグルの門番を退けたに違いない。
「俺の仕事の手間を省いてくれたのは感謝している。ついでに大人しくお家に帰ってくれたら尚有難いんだけどなぁ。」
「なんだと?」
ライドウの軽口にダンテの表情が険しくなる。
何処の糞餓鬼かは知らないが、腹の虫の居所が悪い自分に喧嘩を売るとは良い度胸だ。
「此処は子供が来る所じゃないぜ?坊や。」
態とらしくダンテの口真似をして煽ってみせる。
「どうやらお仕置きが必要らしいな。」
ふつふつと湧き上がる怒りを腹の底に押しとどめ、ダンテは愛用のハンドガン、”エボニー&アイボリー”を抜き放つ。
本気でぶっ放すつもりなど更々ない、只、ちょっとした威嚇ぐらいになればそれでいい。
「どうするの?ライドウ。アイツ只の人間じゃないよ?」
腰に吊るしたポーチから、仲魔の妖精(ピクシー)がひょいと顔を覗かせた。
この大門の番人を倒したのだ。当然、普通の人間ではあるまい。
「混じり者か・・・相当な力を持つ上級悪魔との混血児らしいが大した魔力は感じない。」
ライドウは、ピクシーをポーチの中に押し込むと、右手を銀髪の青年の前に翳した。
「一言言っとく・・・先に喧嘩を吹っ掛けたのはお前だ。」
刹那、ライドウの掌を中心に魔法陣が生成。
巨大な火球が音速の勢いでダンテに襲い掛かる。
「な!!!!!?」
不意を突かれ、ダンテの身体が一瞬硬直する。
それもそうだろう、小生意気な糞餓鬼程度にしか思っていない相手が、実は魔法使いだったなんて誰が想像出来ようか。
真横に飛んで炎の顎から逃れようとしたダンテであったが、その灼熱の刃は眼前で軌道を修正、天井の梁にぶち当たり壁に大きな穴をあける。
凄まじい瓦解音と爆発、天井の石畳が崩れ、濛々と砂と土煙が辺りに充満する。
それを突き破り、一台の深紅の車体をした大型バイクがダンテの目の前に躍り出た。
呆然とするダンテを他所に深紅の巨躯は、鋼の腹を見せ、天井に開いた大穴へと吸い込まれていく。
一人その場に取り残されるダンテ。
漸く自分がからかわれた事に気が付くと、やり場のない怒りを石畳の床にぶつけていた。
場所は変わり、月光を望みし天空の回廊。
満天の星空を背に二つの影が浮かび上がる。
「・・・17代目、葛葉ライドウ?」
見事な銀髪を後ろに撫でつけた長身の青年が、背後に立つ漆黒のキャソックを身に着けた痩躯の男を振り替える。
「そうだ・・日本を拠点に置く組織『クズノハ』に属する悪魔召喚術士(デビルサマナー)だ。」
痩躯の男―アーカムは、蒼いロングコートを纏った青年―バージルに向かって、まるで機械音声の様に淡々と説明を続ける。
「何処で嗅ぎつけたのかは知らん。恐らくヴァチカン辺りが『クズノハ』に依頼して奴を派遣させたのかもな。」
アーカムの持つ聖書型・ハンドヘルドコンピューターに内蔵されているエネミーソナーには、ライドウの現在位置がしっかりと表示されていた。
第一階層で多数の悪魔と交戦中だが、ものの数秒でケリがついてしまうだろう。
「下らん、悪魔召喚術士(デビルサマナー)など取るに足らん小者だ。」
悪魔の力を行使しなければ何も出来ない非力な存在。
幾度か悪魔召喚術士と名乗る連中とやり合った事はある。
だが、どれも下級悪魔を従える程度で、バージルの身体に傷一つ付けられる者など誰一人としていなかった。
「人修羅を甘く見るな。上級召喚術士は魔王すらも従える。噂では奴は最上級悪魔(グレーターデーモン)を3体も所持しているのだ。他の召喚術士共とは強さの桁が違い過ぎる。」
己の剣技に絶大な自信を持つ青年をアーカムが窘めた。
「人修羅?」
「ライドウの通り名だ。裏社会でこの名前を知らない奴はいない。」
組織『クズノハ』最強の召喚術士。
神話や聖書に登場する神や魔王-最上級悪魔(グレーターデーモン)を3体も使役する常識外れの化け物(モンスター)。
「人修羅が我々の存在に気付く前に、何としてもダンテからアミュレットを奪わなければならないな。」
「・・・・。」
聖書型のハンドヘルドコンピューターを閉じる漆黒の召喚術士をバージルは無言で見つめた。
相手が何者であろうと、己の強固な信念を曲げる事は出来ない。
自然とバージルの手が胸元に輝く深紅のアミュレットに触れる。
そう、例えソレがたった一人の家族であろうともだ。
妄想とネタが尽きない限りは次もすぐに上げる予定です。