偽典・女神転生―テメンニグル編―   作:tomoko86355

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リヴァイアサンの体内から脱出する為に一時休戦したダンテとライドウ。
一方、クー・フーリンとマベルは地下鍾乳洞の主、ネヴァンと対峙するのであった。


ミッション10『歌姫』

鍾乳洞内を徘徊している悪魔の群れを血祭りに上げ、地下歌劇場へと辿り着いたクー・フーリンとマベル。

劇場の重い扉を開くと、早速無数の蝙蝠が出迎えてくれた。

白銀の騎士の足元を蛇の様に這いながら、室内の中央に設えてある高座へと蝙蝠の群れが集まって行く。

漆黒の蝙蝠の群れは一つの塊となり、そこから燃える様に赤い髪をした妖艶な女が現れた。

長い髪をかき上げ、怪しい紫の瞳で白銀の騎士と小さな妖精を値踏みするかの様に見つめる。

強烈な魔力の瞳を向けられ、妖精、マベルは慌てて美貌の騎士の背後に隠れた。

「ふふ、いらっしゃい。綺麗な騎士様。」

深紅の口紅を怪しく歪ませ、女―ネヴアンが微笑を浮かべる。

一見して、絶世の美女に変わりはないのだが、ある程度霊力のある者が彼女を見れば、獰猛な肉食獣が舌なめずりをしている様に見えただろう。

「同族とはいえ、こんな所にお客さんが来るなんて珍しいわね?」

モデル張りの見事なプロポーション。

白銀の騎士のすぐ傍らまで歩み寄ると、繊細な指先でクー・フーリンの纏う鎧をゆっくりとなぞる。

「お前が此処を住処にしている悪魔共の親玉か。」

「あら?品の無い言い方。」

侮蔑を多分に含んだクー・フーリンの言葉に、ネヴァンが嫌悪感に美しい顔を歪ませる。

白銀の騎士から離れ、優雅に壇上へと昇る。

「いらっしゃい、”クランの猛犬”さん。いっぱい、いっぱい遊びましょ。」

振り返った魔女の双眸は、殺意と快楽で濡れ光っていた。

バチバチと紫電の光が魔女の身体を包む。

クー・フーリンは溜息を一つ吐くと、深紅の魔槍『ゲイ・ボルグ』を構えた。

 

大剣『リベリオン』の切っ先が、ヘル=エンヴィーの額を穿つ。

襲い掛かる大鎌から、華麗に身を躱し、悪魔の胴体を薙ぎ払った。

「温すぎるぜ。」

最後の一体に止めを刺し、銀髪の大男がそう吐き捨てる。

クー・フーリンとライドウの二人と比べると、化け物鯨の体内に巣くっている悪魔など、児戯に等しい。

否、今まで戦って来た悪魔共が霞んで消えてしまうぐらい、二人の力量は遥かに優れていた。

(喧嘩に負けた事がねぇってのは言い過ぎだが、化け物クラスの強さだぜ。)

二人共、未だに本気の実力を見せてはいない。

特にライドウは、完全に遊んでおり、あのテメンニグル頂上での戦いも本気で相手をしたとは到底言い難かった。

(この俺が何も出来ないままのされちまうとはな・・・。)

双子の兄、バージル相手でも、そこまで醜態を晒す事は無かった。

気が付いたら石畳とキスしていた。

「そっちは終わったか?」

少年の声に俯いていた顔を上げる。

濡れ羽色の長い黒髪を三つ編みで一つに纏めた中性的な美貌を持つ悪魔使いが此方を見下ろしていた。

「一応・・・な。」

憎らしい程、綺麗な容姿をしている。

傍から見れば10代半ばの少年に見えるが、中身はダンテよりも遥かに年上でおまけに魔道の知識も豊富、その上、体術も己など足元にも及ばない。

人並み外れた身体能力を持つダンテではあるが、己の力に過信して己惚れる程馬鹿じゃない。

この悪魔使いは正直ヤバイ相手だ。

「入り口を塞いでいた突起物が消えてる。これで先に進めるな。」

ライドウの言葉に改めて腸洞に繋がる入り口を見ると、確かに封印の如く塞がっていた突起物が綺麗さっぱり消えていた。

「とっとと心臓ぶっ潰して此処から出ようぜ?いい加減、胃液の臭いで頭がおかしくなりそうだ。」

常人の筋力を遥かに超える膂力で、悪魔使いの少年のいる崖の上まで跳躍する。

ダンテの言う通り、胃酸から発する強烈な硫黄の臭いで、鼻がおかしくなりそうだった。

「そう簡単にいけば良いんだけどな。」

 

腸洞内は、胃峡とは違いとても薄暗くて手探りでなければとても前に進めない程であった。

「どうする?こう暗くちゃ前にも進めねぇ。」

下手に進むと胃液の液溜まりに足を取られて、悪戯にダメージを受けてしまう。

その上、低級悪魔のヘル=エンビィーが徘徊しているのだ。

もし不意を突かれたら対処が出来ない。

「大丈夫だ、問題ない。」

ライドウが一歩前に出ると、口内で小さく何事かを呟く。

すると右掌から、小さな球状の光る物体が現れた。

光る球体は、ライドウの手から離れシャボン玉の様にフワフワと浮かぶと、二人の周囲を眩く照らし始めた。

「凄いな・・・アンタ何でも出来るんだな?」

これなら液溜まりに足を取られてダメージを受ける心配は無さそうだ。

「どっかの救世主様みたいに、石ころと水をパンとワインに変える奇跡は起こせないけどな。」

感心するダンテにライドウがそう軽口で返す。

魔法使いは、何でも万能に見られがちだが、実はそうでもない。

5大元素の精霊達の力を借りねば、属性魔法は操れないし、己の内在する魔力を消費せねば、傷を治癒する事も出来ない。

燃費が悪く、すぐに疲労が蓄積され、最悪動く事が出来なくなる。

精霊達の力が借りれず、おまけに魔力がすっからかんになれば、途端にお荷物になってしまうのが魔導士だ。

(今は、志郎の奴がいないからな。流石にコイツから魔力を貰う事は出来ないし・・・。)

ちらりと少し離れた位置で歩くダンテに視線を向ける。

ライドウの様な『魔力の大喰らい』は、バートナーから”魔力供給”をして魔素を得なければならない。

方法は二つあり、中国古来の養生術と同じ様に、性交渉で得たり、血を媒介にして得る事もある。

但し、後者はパートナーに負担が大きく、やり方を間違えれば魔力を大量に失って、最悪死ぬ事もあり得るのだ。

その為、大体の魔導士は、性交渉で失った魔力を補填する。

エーテルと呼ばれる魔力の素でも補填出来るが、コストが異様に掛かるし、何より得られる魔力が少なすぎる。

(志郎と距離が離れすぎて、魔力のパスが届かない。リヴァイアサンから出るまでは魔力を何とか温存しとかないとな。)

常に予測不能の事態を想定して、マジックアイテムは多めに持ち歩いてはいるが、まさか化け物鯨に呑み込まれるとは思っていなかった。

おまけにパスを通した番は、遥か遠くにいる。

精霊魔法は勿論の事、魔力を大量に使う悪魔召喚などは以ての外だ。

となると、体術と剣術、そして銃術が頼みの綱か・・・。

「何故、俺を助けたんだ?」

「?」

あれこれと考えていたライドウの思考をダンテの声が遮った。

「アンタなら俺無しでもどうとでもなっただろ?何故、助ける必要があった。」

ダンテが疑問に思うのは当然であった。

実力、経験、技術、知識、どれをとっても自分より遥かに優れている。

自分が力を貸さなくても、この悪魔使いならば、一人で化け物鯨の腹の中から脱出する事は十分可能な様に思われた。

「さっきも言ったろ?俺は一秒でも早くこんな所からは出たい・・・。」

そう言いかけたライドウの表情がみるみる険しくなった。

視線をダンテの背後、遥か遠くに見据えている。

悪魔使いの異変を察したダンテも背後を振り返った。

すると、暗闇の中に八つの緑色に輝く光点が仄暗く灯っているのが見える。

それは徐々に大きくなり、車のヘッドライトの如く自分達を眩く照らし出していた。

「逃げろ!ギガ・ピードだ!!」

ライドウが銀髪の大男の腕を掴むと凄い勢いで走り出した。

状況が呑み込めないダンテも、悪魔使いの尋常ならざぬ様子に釣られて走り出す。

(糞ったれ!まさか化け物ムカデまで体内に飼っているとはな!)

彷徨える禽獣の間で、倒したムカデの化け物。

本来は、魔界の沼地にしか生息しない巨大生物である。

それをリヴァイアサンは体内で、飼育しているのだ。

四方八方に電撃の雨を降らせながら、ギガ・ピードが此方に凄まじい速さで迫って来る。

普通に走っていては、瞬く間に追いつかれてしまうだろう。

(糞!このままじゃ追いつかれる!)

ライドウは、背後を振り返ると舌打ちした。

こんな狭い所では、とても戦闘など出来ない。

「先に行け!絶対立ち止まるんじゃねぇぞ!」

ダンテの背を叩き、腰に吊るしたウェストポーチに手を伸ばす。

「?アンタはどうするつもりなんだ??」

先に行けと言われて、はいそうですかと素直に従う訳にもいかない。

いくら常識外れに強くても、こんな狭い場所で戦うなど自殺行為と同じだ。

「良いから行け!殴り飛ばすぞ!!」

ライドウの剣幕にダンテは仕方なしに従う。

きっと何か策があるに違いない。

今のダンテの頭の中では、この悪魔使いと敵対関係にあった事等、綺麗さっぱり消え失せていた。

「うう、勿体ないけど背に腹は代えられねぇ!」

悪魔使いの少年は、ポーチから何かを取り出すとそれを迫りくる巨大ムカデに投げつける。

すると、白い冷気と共に極大の氷の壁が現れた。

「何だ?ありゃぁ?」

背後を振り返ったダンテが見たモノは、分厚い氷の壁に阻まれ、前に進めない巨大ムカデの姿であった。

ギガ・ピートは、怒りの咆哮を上げ、何度も何度も氷の壁に体当たりを繰り返す。

「そう長くは持たない!早く此処から出るんだ!」

再び走り出した少年が男を促し、出口に向かってひた走る。

二人が腸洞から出るのと氷の壁が砕け散るのは、ほぼ同時であった。

転がる様にリヴァイアサン邪眼房に辿り着く二人。

二人の荒い息遣いが周囲に木霊する。

「はぁ、はぁ・・・い、生きてるか?」

「な、何とかな・・・。」

何とか呼吸を整え、ライドウが起き上がる。

短い距離とは言え、補助魔法のドーピング無しで走るのは流石にキツイ。

半分悪魔の血を引くダンテと違い、身体構造は普通の人間と然程変わりはないのだ。

「アンタ、さっき何をしたんだ?」

上半身を起こしたダンテが悪魔使いの少年に言った。

「ああ、コイツを投げつけたんだよ。」

そう言って、ライドウはウェストポーチから何かを取り出した。

それは掌に収まるぐらいに小さい、水色の石であった。

ネオンブルーアパタイトを思わせる様なその小さな石は、暗闇の中で青白く輝いている。

「コイツは精霊石って言ってな。普通は何の変哲もない石なんだが、術者の魔力を込める事が出来るんだ。因みにコイツには、氷結魔法が封印されてる。」

精霊石とは、属性の魔法を宿らせる力を持つ特殊な石であり、魔力温存を目的とした術者には大変重宝されるマジックアイテムである。

敵に向かって投げつけると自動的に封印が解け、ダメージを与える事が出来る。

「へぇ?便利なモン持ってるんだな?」

一個くれ、と手を出すダンテを無視し、魔法の石をさっさとポーチへと仕舞う。

「やらねぇよ。精霊石は現世では滅多に獲れない貴重な鉱石なんだ。これ1個でも高級車が10台ぐらい買える値段なんだぜ?」

高級車10台と言うのは言い過ぎだが、モノの大きさによれば億単位の値段が簡単に動くシロモノだ。

本当なら使いたくは無かった。

出来る事なら、温存して最後の最後に使いたかった。

ライドウの脳裏に自分達”クズノハ”所属の召喚術士(サマナー)のお目付け役であるマダム銀子の姿が浮かぶ。

駄目だ・・・絶対、ドケチで有名な銀子が経費で落としてくれる筈がない。

「なんだよ・・ケチだなぁ・・・。」

まるで拗ねた子供の様に唇を尖らせたダンテが立ち上がろうとする。

しかし、脚に力が入らないのか、すぐ地面に尻もちをついてしまった。

「おい、大丈夫か?」

ライドウがダンテの傍に来ると立ち上がるのを手伝おうと手を差し伸べる。

その細い腕を掴むダンテ。

だが、次の瞬間、凄い勢いで自分の方に引き寄せると、身体の下に組み敷いてしまう。

「な!?離せ・・・・????」

そう言いかけたライドウの唇を何かが覆う。

ぬるりと口内に侵入する舌の感触。

ダンテにキスをされている?

「ば、馬鹿っ!やめっ!」

振り解こうにも、如何せん体格差があり過ぎる。

不埒な男の手は、ライドウの引き締まった尻を触り始めた。

「気に入ったぜ?アンタ・・・・顔もタイプだし、何より俺より強いってのが良い。」

耳元で囁かれる甘い睦言。

耳朶を甘噛みされ、舌を差し込まれる。

「い、好い加減にしろ!糞餓鬼ぃ!!」

膝の付け根を当てて、思い切り真後ろに投げ飛ばす。

魔力で筋力を増強しなければ出来ない芸当だ。

投げ飛ばされた銀髪の大男は、宙で華麗に一回転すると軽やかに着地する。

「ムードが無いねぇ・・・。」

「うるせぇ!悪魔だらけのこんな場所で欲情するてめぇの思考回路が異常すぎんだろうがぁ!」

危うく流されそうになってしまった。

真っ赤な顔をして起き上がると、ライドウは袖に仕込んであるクナイをダンテに向かって投げつける。

咄嗟に身構える銀髪の大男。

しかし、クナイの鋭い切先が男の眉間を穿つ事は無かった。

鋼の凶器は、ダンテを無視し、その背後に迫っていたヘル=エンヴィーの頭蓋を叩き割る。

「てめぇを殴り飛ばすのは、コイツ等を始末した後だ。」

「了解。」

顔を真っ赤に染めて、そっぽを向くライドウに思わず口元が綻ぶ。

この悪魔使いは間違いなく男を知っている。

生きた年月は自分より長いかもしれないが、性経験に関しては自分の方が一枚上手の様だ。

 




やっとBLっぽくなりました。
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