偽典・女神転生―テメンニグル編―   作:tomoko86355

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合体剣『アリラト』の力を借りて妖獣・ゲリュオンを倒したライドウ。
一方、生贄拷問室では、ダンテとクーフーリンが壮絶な死闘を繰り広げていた。
そんな中、等々ヴァチカンの悪魔殲滅部隊『ドミニオンズ』がテメンニグル上空に姿を現す。


ミッション16『神の軍団』

巨大航空要塞―『アイアンメイデン』

史上最強の戦闘機F‐106”デルタダート”の戦隊に守られたその姿は、まるで空中を泳ぐ怪獣そのものであった。

「大佐、後15分程でレッドグレイヴ市上空に到着します。」

「分かった・・・カタパルトデッキにドミニオンズ部隊を招集、何時でも降下出来る準備をしておけ。」

「イエッサー!」

航空要塞を操縦するブリッジ。

その中央指令室に座るのは、身の丈2メートルは軽く超える妙齢な女性であった。

禁欲的な軍服に身を包み、長い前髪で顔の半分を隠している。

感情の籠もらぬ薄いヴァイオレットの瞳は、メインパネルに映るレッドグレイヴ市の変わり果てた惨状をただ見つめていた。

「いやぁ、心が躍るよねぇ?まさか紀元前21世紀の遺物をこの眼で見られるんだからさぁ。」

軍隊特有の緊張した空気をまるでぶち壊す様な呑気な声が、異端審問官第8席、マウア・デネッガーの隣から聞こえた。

「あぁ~、早くこの眼で生の失われた技術(ロストテクノロジー)を見たいよぉ。ドキドキワクワクが止まらなぁあああああい。」

まるで幼子の様にはしゃぐのは、白い白衣を着た牛乳瓶の底を連想させる眼鏡をかけた30代半ばぐらいの男であった。

頬骨が高く、彫が浅いロシア人の特徴的な顔立ちが眼立つ艦内の中で、アジア系特有の凹凸が少ない顔立ちは一際目立って見えた。

「残念ですが、貴方は艦から降りないで頂きたい。此処は時期に戦場になりますから。」

あからさまに迷惑そうな表情をした鉄の乙女(アイアンメイデン)が、隣にいる優男―ヴァチカン科学技術部総責任者=射場・流を窘める。

「えー!意地悪だなぁ?マウア。君にはロマンってモノが無いのかい?」

「生憎・・・私は生粋の軍人(ひとごろし)ですから・・・貴方の様な情緒など持ち合わせてはおりません。」

いい加減この男を黙らせたい。

13機関総司令、ジョン・マクスゥエル枢機卿の命令が無ければ、この船からたたき出しているところだ。

「君は本当に糞が付くほど真面目だなぁ・・・・もうちょっとリラックスしなよ?」

隣に座る美丈夫を流は恨めし気に見つめる。

「心配なさらずとも、週1回は必ずメンタルケアを行っております。」

子供の様に頬を膨らませる天才科学者を無視し、バイオレットの双眸はメインパネルに映る廃墟と化したレッドグレイブ市の街並みと地面を突き破って現れた呪われし塔、『テメンニグル』に向けられていた。

 

地下闘技場、石で出来た床は大きく抉れ、壁には巨大な穴が穿たれている。

その闘技場の丁度中央付近で、悪魔使いの少年―葛葉ライドウが、息を荒くして片膝をついていた。

全身を襲う倦怠感。

肺が酸素を求め、心臓が早鐘の如く鼓動している。

久しぶりに使う大技に、大分魔力と体力を消費してしまった。

ポーチから、魔石とチャクラドロップを取り出し、口の中に放り込む。

早く、番のクー・フーリンと合流しなければならない。

「ライドォオオオオオオオオオオオ!!」

非常に聞き覚えがあり過ぎる声。

次の瞬間、何かが顔面に張り付いた。

「うわぁあああああん!会いたかった会いたかった会いたかった会いたかったよぉ!!」

顔面に張り付いたのは小さな妖精、ハイピクシーのマベルだった。

涙と涎でぐじょぐじょになった顔をライドウの頬に擦り付ける。

「ま、マベル?てことはクーの奴も近くにいるのか?」

何とか顔面に張り付いている妖精をひっぺがす。

マベルが此処にいるという事は、必ずクー・フーリンも傍にいる筈だ。

それなのに、魔力のパスは相変わらず繋がらない。

何故だ?

「志郎ならいないよぉ。鍵を取りに行くって言って何処かに行っちゃった。」

「何だと?」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔をした妖精は、えぐえぐとしゃくり上げながら今までの経緯を話した。

食糧保存庫でアルケニーの群れと戦った事、鍾乳洞での低級悪魔共を始末し、そのボスである魔女・ネヴァンと戦った事。

それと礼拝堂でのベオウルフとの闘い。

「い、一生懸命、バージルとアーカムを探したけど見つからなかった・・・そしたら志郎が別行動しようって・・・。」

「そうか・・・一人で心細かったろ?御免、俺の判断ミスだ。」

リヴァイアサン体内で時間を喰ったのが今更ながらに悔やまれる。

恐らく中々主と合流出来ない事に焦りを感じたクー・フーリンは、二手に分かれた方が効率が良いと思ったのだろう。

「マベル、志郎と連絡はとれるか?」

彼女の精神感応力(テレパシスト)なら、クーの居場所を探れるだろう。

「志郎なら、ダンテって奴と戦ってるよ?生贄拷問室って所で・・・。」

「・・・!?くそっ!アイツ!!」

一番肝心な事を忘れていた。

クー・フーリンは、未だにダンテの事を敵対視している。

この時になって漸く何故、マベルと別行動を取ろうとしたのか、その真意がはっきりと分かった。

 

時は少し遡り一週間前、サン・ピエトロ大聖堂。

第13機関(イスカリオテ)司令、ジョン・マクスゥエル枢機卿執務室。

「呪われし塔”テメンニグル”・・・?」

「そう、正式な名前は”エ・テメン・ニグル”紀元前21世紀にウル・ナンムにより、ウルの守護神である月神ナンナに捧げる神殿として建築された遺物だよ。」

豪奢な書斎机に座る見事な銀髪の枢機卿に向かって瓶底眼鏡の博士が得意気に解説を続ける。

「その紀元前に造り出された塔と今回のレッドグレイブ市で起きた事件と一体どんな関係があるというのかね?」

この時代、大変珍しい羊皮紙で書かれた書類にフェザーペンでサインをしながら、マクスウェルは、学生時代の親友であり、大事な右腕である射場・流の言葉に至極当然な質問をぶつけた。

「実にいーい質問だ。これは僕の推測なんだが、レッドグレイブ市とウル第5王朝とは密接な繋がりがあったんだ。彼は、魔剣士スパーダを陰で崇拝していた。そして彼の指示に従い、魔界と現世を繋ぐ神殿をとある場所に造ったんだ。」

曰く、ウルク第5王朝の王ウトゥ・へガルの娘婿である、ウル・ナンムは悪魔であるスパーダを神の如く崇めていた。

それは現在発見されている遺跡により証明されており、彼が悪魔崇拝をしていたことはまごうこと無き事実である。

そしてウル・ナンムは、神の啓示が如く、スパーダの命令でとある場所に神殿を建造させた。

「下らん、荒唐無稽なつくり話だな。」

学生時代からの親友の仮説をばっさりと斬って捨てる。

「夢が無いなぁ・・・僕の推測がもし正しければ、数千年から続く人類の歴史を揺るがす大事件なんだぜぇ?」

確かに、流の仮説が正しければ、数万人の市民が普通に暮らしている市の地下に巨大な悪魔の遺物が眠っているという事になる。

もし、仮にその失われた技術(ロストテクノロジー)が稼働すれば、数万人の命を犠牲にする未曽有の大災害となるだろう。

「まだしっかりとした確証がない限り、13機関(じんいん)を動かす事は出来ない。君も知っているだろう?現在は大事なコンクラーベの真っ最中だ。」

義理の兄が法王猊下の椅子を得るか得られないかの大事な選抜選挙だ。

このままの流れでいけば、まず間違いなく義理の兄が無事法王猊下に就任出来るが、いつ何時なにか不祥事が起きるかは分からない。

「それに、例の事件は”クズノハ”に依頼している。何も心配する事は無いだろう。」

「”クズノハ”?てことは、ライドウ君辺りが担当するのかな?」

「当然そうなるだろうな。あの国も”壁”の監視をしなければならん。我々人類と悪魔の最前線がかの国だからな。」

出来上がった書類を纏める。

レッドグレイブ市郊外で起きた少女達の変死事件には必ず悪魔かそれに関係する人物が関わっているのは間違いなかった。

17代目・葛葉ライドウ程の召喚師ならば、何の痕跡も残さず、綺麗に事を処理してくれるだろう。

「今更何だけど、本当に不幸体質だよねぇ?彼って・・・。」

流は、窓辺から覗く豪奢な造りの庭園と噴水を眺める。

そこには各国から観光に訪れた人々がおもいおもいに散策を楽しんでいた。

「クズノハの血筋の人間じゃないってだけで、良いように扱われ、唯一の拠り所だった奥方を病で失い、挙句、番のヨハン君は・・・。」

「止せ、過ぎた事だ。」

十数年前の陰惨な事件を思い出し、マクスゥエルは流の言葉を打ち消す。

あれは防ぎようが無い事故だった。

当時の自分達の判断に間違いなどあろう筈がない。

「17代目は四家の中でも、宗家に対し絶対的な忠誠心を持っている。故に、くだらん私情で流される程愚かな男ではない。」

17代目・葛葉ライドウという男は、与えられた任務を100%完遂させる事で有名だ。

それがどんな依頼元でも必ず遂行する。

「やけに彼の肩を持つじゃないか?ジョン。それってもしかして、”同病相憐れむ”ってやつかい?」

「流・・・・。」

中々辛辣な言葉を吐く親友にマクスゥエルは鋭い視線を向ける。

「冗談だよ、そんなおっかない顔で睨まないでくれ。」

大袈裟に肩を竦める天才科学者に銀髪の麗人はそれ以上何もいう事は無かった。

 

最深部礼典室へと辿り着いたバージル。

そこへ足を踏み入れた刹那、大理石をぶち破って巨大な獣が姿を現した。

礼拝堂でクー・フーリンと死闘を繰り広げた隻眼の魔神―ベオウルフだ。

白銀の騎士から相当な深手を負わされている筈だが、怒りの炎が全身にたぎり、おくびにもそれを出していない。

「見つけたぞぉ、スパーダの血族。」

どす黒い血を思わせる深紅の隻眼が、蒼いロングコートを纏う銀髪の青年を睨み付けた。

 




ヒラコーの漫画最高!!頭がぶっ飛んだ殺人狂ばかりの部隊とか、狂信者とか出て来ると心が躍ります。
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