偽典・女神転生―テメンニグル編―   作:tomoko86355

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レッドグレイブ市に到着し、早速空爆を開始するヴァチカンの悪魔殲滅部隊。
一方、ライドウは仲魔のマベルと合流し、クーフーリンとダンテの死闘を止めるべく、生贄拷問室に向かう。



ミッション17『魔人VS魔人』

漆黒の禍々しき鎧を纏った魔狼が吠える。

暗紫色の刃が唸り、深紅のロングコートを纏った男の頭蓋を叩き割らんと振り下ろされる。

それを暴風の刃―ルドラで受け止めるダンテ。

しかし、剣圧に耐え切れず大きく吹き飛ばされた。

「ぐわぁあああああああ!!」

刀身を受け止めた際に身体中を数億ボルトの電流が流れ落ちる。

銀色の髪が、鍛え上げられた強靭な肉体が脆くも焼かれていく。

「何て身体だ・・・今の一撃で消し炭にならないとはな・・・。」

流石、魔剣士スパーダの血脈といったところか・・・常人ならば、先程の打ち込みで肉体の組織が焼き尽くされ、炭化している筈であった。

「だが、これで終わりだ・・・。」

血赤珊瑚を思わせる双眸が、瓦礫の山に埋もれる銀髪の魔狩人を鋭く見据える。

消し炭になる事は免れたが、四肢のダメージは相当なものであった。

肉体が焼かれ、めくれ上がった皮膚から筋肉の組織が剥き出しになっている。

「串刺し刑だな?」

あれでは最早動く事は叶うまい。

右手に持った双剣”ネヴァン”の刃に魔力を集中させる。

すると紫電の蛇が絡みつき、それは巨大な雷の槍へと変貌していく。

「うう、糞ったれ・・・。」

全身を襲う激痛。

涙で歪む視界に全身を走る赤いラインに禍々しい漆黒の鎧を纏った魔狼の姿が映った。

右手には紫電の槍が握られている。

(死ぬのか?俺は・・・?)

今のダンテに打つ手など何一つ残されてはいなかった。

吹き飛ばされた際に双剣―”アグニ&ルドラ”は遥か遠くに飛ばされてしまっている。

おまけに四肢は焼かれ、激痛で身動き一つすらも出来ない。

(甘かったぜ・・・・ライドウの仲魔だから殺したくないとか・・・・どの口がほざける?)

化け物鯨の腹の中で、共に戦った悪魔使いの少年の姿が脳裏を過る。

美しい濡れ羽色の長い黒髪。

新雪を思わせる透き通る様な白い肌。

ビスクドールの様に整った顔立ち。

(畜生・・・どうせなら、もう一度ぐらいキスしたかったぜ。)

リヴァイアサン邪眼房でのちょっとした嫌がらせ。

恥ずかしがる姿が初々しくて、まるで生娘の様な反応だった。

『何だ・・・もう諦めてしまうのか?』

死を覚悟した瞬間、ダンテの脳内にしわがれた老人の声が響き渡った。

それは生ける彫像の間で聞いた老人の声と酷く酷似している。

刹那、心臓が大きく脈打った。

一方、ダンテの変化に全く気付かない魔狼が、雷電の矛先を銀髪の男の頭部に狙いを定める。

今度こそ確実に頭を潰して息の根を止めてやる。

豪っと音速の速さで伸びる紫電の鉾。

そのまま、男の頭部を斬り飛ばすかと思われたその時、ダンテの身体が消失。

紫電の槍は、虚しく生贄拷問室の壁に大きな穴を空けていた。

「・・・・!!馬鹿な!!」

今の今まで四肢を焼かれ身動きなど不可能な状態だった筈だ。

壁を破砕され、濛々と砂煙が周囲を覆い隠す。

「ちぃ!!何処に隠れた!!」

煙が立ち込めて視界が悪すぎる。

舌打ちした魔狼が双剣の一振りで軽く一閃。

剣風が土煙を薙ぎ払うが、銀髪の大男の姿は影も形も見つける事は叶わなかった。

「こっちだ!色男!!」

背後からダンテの声が聞こえる。

戦士として長年培って来た超人的反射神経が、声がするよりも数秒早く対応していた。

金属同士の耳障りな音と橙色の火花。

二振りの双剣と銀色の大剣の刃が深々と喰い込む。

「それが貴様の真の姿という訳か・・・。」

改めて刃を交えている紅き魔人を見据える。

ヘルメットの様な銀の兜に爬虫類を思わせる深紅の肌。

その身体には黒のラインが走り、背には二枚の蝙蝠の羽根が付いている。

「第二ラウンドといこうぜぇ?ワンちゃんよぉ。」

「ぬかせ!!次で確実に息の根を止めてくれる!!」

火花を散らし、お互いの持つ剣が離れる。

必殺の一撃を加えるに十分な間合いを保ちながら、対峙する二人の魔人。

血赤珊瑚の双眸とアンバーを連想させる黄金の双眸が激しくぶつかり合う。

暫しの静寂。

「うぉおおおおおおおお!!」

重なり合う魔人達の雄叫び。

地面を陥没させる程の蹴りを放ち、二人の魔剣士がお互いの命を刈り取らんと弾丸の速さで疾走する。

しかし―

突如二人の眼前に現れた巨大な魔法陣がまるで壁の如く立ち塞がり、弾き飛ばす。

躰全体に走る衝撃に元の人間の姿に戻るダンテとクー・フーリン。

大きく飛ばされた二人は石畳を削りながら停止する。

「一体、何が起こりやがった・・・?」

頭を打ち付けたのか、軽い脳震盪を起こしていて呂律が回らない。

ダンテとクー・フーリンを弾き飛ばした壁の正体は、物理反射魔法防壁(テトラカーン)だ。

しかし、魔導の知識がないダンテは当然そんな事知る由も無かった。

「な・・・ナナシ?どうして貴方が此処に・・・・?」

漆黒の禍々しい鎧から、元の白銀の鎧に戻った魔槍士。

歪む視界の中、敬愛する主の姿を認め、驚愕の表情になる。

小さな妖精を従えた悪魔使いの少年は、無言のまま仲魔のクー・フーリンの元まで歩み寄る。

そして、よろよろと立ち上がった美丈夫の頬を無遠慮に平手で殴り飛ばした。

「!?」

「俺の命令を二度も背きやがって・・・・この大馬鹿野郎が。」

目を白黒させて固まる番を前に、ライドウが忌々しそうに吐き捨てる。

そして、腰に吊るしてあるガンホルスターから、愛用のGUMPを引き抜くと、液晶パネルを蝶の羽の様に展開させた。

「GUMPに戻れ志郎・・・そこで頭を冷やすんだ。」

「ナナシ・・・?でも、僕は貴方を・・・・。」

「戻れ・・・・お前の言い訳なんて聞きたくもないんだよ。」

有無を言わせぬ冷酷な主の指顧。

明確な怒りをその隻眼に見て取った白銀の騎士は、項垂れ、諦めたかの様に、己の身体をデジタル化してGUMPに内蔵されているストックへと帰っていく。

液晶パネルにクー・フーリンの文字が描かれているのを確認したライドウは、展開していたGUMPを折りたたみ、腰のホルスターに戻した。

と、いきなりライドウが態勢を崩し、地面に片膝をついた。

「お、おい!大丈夫か?ライドウ。」

未だ身体中を苛む激痛を忘れ、ダンテが慌てて悪魔使いの所まで駆け寄る。

荒い吐息を吐くその相貌は、紙の如く白く、細かい汗を浮かべている。

「も、もう限界なんだ・・・。」

ライドウは、自分の顔を覗き込むダンテの鍛え上げられた逞しい二の腕を掴み絞り出す様な声で懇願する。

そして―

「お願いだから俺から盗んだエーテル返して・・・・。」

何とも形容し難い情けない声でそう言った。

 

魔獣の咆哮が最深部、礼典室内に轟く。

撃ち出される剛腕。

成人男性にしては、華奢なバージルの肉体を破砕せんとするその一撃は、彼を捉える事は叶わなかった。

何度も閃く閻魔刀の斬撃。

空中で華麗に一回転した美貌の剣士は、魔獣の背中に無音で着地する。

「ば・・・馬鹿な・・・・・。」

それがベオウフルの最後の言葉であった。

噴水の様に血潮を噴き出し、四方に切り裂かれ落ちる魔獣の頭部。

轟音と共にその巨体が地に沈む。

魔獣の巨躯から地に降りたバージルは、そこで力の波動を感じた。

振り向き、物言わぬ肉の塊と化した魔獣の亡骸から、光る球体が現れる。

それは、ベオウフルに封印されていた魔具であった。

ベオウルフと同じ、光の属性を持つ魔具は、バージルを次の主と認め、彼の身体を包む。

気が付くと、蒼いロングコートの青年の四肢に光る具足と籠手が装着されていた。

「成程・・・これが前に父さんが言っていた魔具か・・・。」

13代目、葛葉キョウジから魔導と体術の英才教育を受けていたバージルは、当然、師である育ての父親から魔具の存在も聞かされていた。

神が造りし神器に対抗する為、魔王達が自らの肉体の一部を切り離して造り出したと言われる戦闘兵器。

それがデウスオブマキーナである。

自然と口元が綻ぶ。

未知の力を手に入れた高揚感が全身を包んでいた。

 

ダンテから渡された茶色い小瓶の中身を一息に飲み干す。

無味無臭の液体は、全身に行き渡り、先程までの倦怠感がまるで嘘の様に消えていた。

流石に高額アイテムだけはあり、魔力回復量はチャクラドロップとは比べ物にならない。

「美味いのか?ソレ。」

安堵の溜息を吐くライドウに腕組みしたダンテが聞いてきた。

「別に・・・・でも多少は楽になったぜ。」

小瓶を壁に向かって投げつける。

意外と脆い材質で出来ているのか、茶色い小瓶は壁に当たるとあっさりと粉々に砕け散った。

「知らなかったぜ、魔法使いってのも案外面倒なんだな。」

「化け物鯨の腹の中でも言ったと思うが、魔導士は万能じゃない。強力な魔法を使えばそれなりの代償が必要になるのさ。」

それは得てして魔導士だけには限らない。

どんな職業でも強大な力を行使すれば、それなりの対価を要求されるのだ。

「!!」

その時、大きな振動が生贄拷問室内を揺らした。

地鳴りは何度も繰り返し続き、天井から細かい漆喰が降り注ぐ。

「ち、どうやら”ドミニオンズ”の空爆が始まったらしいな?」

「ドミニオンズ・・・?」

「ヴァチカンの悪魔殲滅部隊の名前さ・・・・アホみたいにミサイルをぶち込んで悪魔の数を適当に減らそうって考えなのかもしれない。」

「滅茶苦茶だな・・・。」

この地域にはまだ悪魔に襲われず生きている人間がいるかもしれない。

そんな生存者の安否も確認しないまま、平気で焼夷弾の雨を降らすヴァチカンの特殊部隊の所業が全く理解できない。

「言ったろ?彼等はソレが平気で出来る連中なんだ。例えどんな非人道的な行為でも、彼等には全てが神の偉大なる教えになるんだ。」

「ハッ!狂信者ってやつか・・・?」

大袈裟に肩を竦めるダンテ。

教義は絶対であり、何をしても許される。

異教徒の存在を許さず、信じる神の為なら死ぬ事すらも至高の喜びである。

「もう潮時だ・・・・お前一人ならまだ引き返せる。一刻も早く此処から逃げるんだ。」

対悪魔用の強化外骨格を纏うドミニオンズ部隊相手では、流石のタフさを誇るダンテやバージルでもまず無理だろう。

圧倒的武力の前では、幾ら常人を遥かに超える膂力を持つ彼等でも無力に等しい。

「アンタもいい加減しつこいな・・・俺は兄貴を・・・家族を見捨てる真似だけは絶対にしない。」

何故、自分がそこまで兄―バージルに執着するのかは分からない。

七つの時から生き別れ、それ以降全く別の道を歩んできた二人。

内心、死んでいると覚悟はしていた。

その双子の兄が生きているとアーカムの口から聞かされた時、ダンテの心に家族への狂おしい程の想いが蘇ったのは事実だ。

「・・・お前の気持ちは分からんでもない。だが・・・相手が悪すぎる。」

「俺を舐めるなよ?こう見えても人間同士のドンパチには慣れっこなんだ。」

例え軍隊が相手でも生き残る自信はある。

否、逆に蹴散らしてやる。

「そうか・・・なら、人間を殺す事には慣れてるんだろうな?」

「?」

「どうなんだ?殺しの仕事ぐらいしてきたことはあるんだろ?」

「い・・・否、それは・・・。」

半殺しの目に会わせてきた事は星の数程はある。

しかし、長年便利屋として数々の修羅場を経験してきたが、殺しをしたことは一度も無いのがダンテの唯一の自慢であり、ポリシーであった。

「・・・はぁ、奴等は今までお前が相手にしてきたゴロツキ共とは違う。幼い頃から徹底的に戦闘マシーンとしての教育を受け、対悪魔の技術を叩き込まれた・・・いわば祓魔師(エクソシスト)のエキスパートだ。ここら辺にうろついてる悪魔共が可愛く見えるレベルなんだぞ?おまけに彼等は死を恐れない・・・。」

街のチンピラやギャング共を叩きのめすのとは訳が違う。

手を抜いて殺さず倒せる程、甘くはない奴等だ。

「頼むよ・・・俺はお前には人殺しになって欲しくないんだ。」

「ライドウ・・・。」

悪魔使いの真摯な言葉にダンテはそれ以上何も言えなくなってしまった。

「あー!!やっとこさ、バージルの居場所見つけたぁ!!」

突然、頓狂な声高い声が重苦しい沈黙を破った。

見ると悪魔使いの少年の肩に座る妖精が眼を輝かせて主の顔を見上げている。

「このすぐ近くに居るよ!私の転移魔法(トラポート)ならびゅーんって一直線に運べちゃうからね!」

「ま・・・マベル。」

見えない尻尾を振り捲るハイピクシーをライドウは呆れた様子で眺める。

「よし、バージルの所まで運んでくれよ?おチビちゃん。」

「ダンテ!お前、俺が言った意味を分かって・・・。」

「分かってるさ、要はドミ何とかって兵隊共が来る前に兄貴を捕まえりゃ良いんだろ?」

ライドウの言葉を途中で遮るダンテ。

ぶつかり合う黒曜石の瞳とアイスブルーの瞳。

「ちっ、分かったよ・・・好きにしろ。その代わり、もし彼等と戦う事になったら・・・。」

「安心しろ・・・その時は、俺も腹を括るさ。」

 




書き貯めていた分が無くなったので、次の投稿は大分遅れます。
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