偽典・女神転生―テメンニグル編―   作:tomoko86355

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スパーダの力を得たシド・デイビスを倒す為、無謀な戦いを挑むダンテとバージル。一方、ライドウはGUMPに戻っている番のクー・フーリンと対話する。


ミッション24 『17代目・葛葉ライドウ』

紅き外装を纏った魔人が吹き飛ばされていく。

宙を舞う大剣『リベリオン』。

それは、虚しく半回転すると突っ伏して倒れる主のすぐ傍らに突き刺さった。

「うぉおおおおおおお!!」

雄叫びを上げ、双子の弟ダンテと対なす姿をした蒼き魔人、バージルが霞みの構えのまま目の前に居る魔神に向かって突進していく。

人体の急所の一つ、目を狙った必殺の一撃。

しかし、それは冠の如く巨大な二本の角を持つ魔神にあっさりと受け止められてしまう。

「詰まらん・・・実に詰まらん・・・魔剣士・スパーダの血族ならもう少し楽しませてくれると期待した私が愚かだったな・・・。」

無造作に掴んだ閻魔刀の刀身。

しかし、その手は全く傷付く事が無かった。

逆に、魔人化し、通常よりも筋力が上がっている筈のバージルを圧倒している。

掴まれた刀を取り戻そうとしてもピクリとも動かない。

焦るバージルの鳩尾に魔神化したシド・デイビスの拳が深々と突き刺さる。

「ぐはっ!!」

重いボディーブローに胃液を吐くバージル。

続く二撃目のアッパーカットが綺麗に決まり、衝撃で閻魔刀から手を離したバージルが大きく宙を舞う。

容赦無く地面へと叩き付けられる蒼き魔人。

魔人化が解け、元の人間の姿へと戻る。

「やはり・・・私を満足させてくれるのは葛葉一族、四家だけだな・・・否、十二神明王の長、薬師如来でも構わんか・・・一度、心行くまであの化け物と戯れるのも良いかもしれん。」

こんな雑魚共では己の欲望は満たされない。

先ずは日本に赴いて組織『クズノハ』を壊滅し、人類の盾と名高いヴァチカン『13機関・イスカリオテ』の狂信者共に地獄を見せても面白い。

否、ヨーロッパ諸国を中心に活動している薔薇十字団(ローゼンクロイツ)やセルビアの黒手組(ブラックハンド)等、各国に散らばる秘密結社を潰して回るのも楽しそうだ。

「し・・・シド・デイビス・・・・。」

満身創痍のバージルがよろよろと立ち上がる。

彼のトレードマークとも言えるロングコートは既にボロボロ。

キッチリと撫でつけてある銀色の髪は乱れ捲り、額と口から血を流している。

「やれやれ・・・あれだけやられてまだ立ち上がるのか・・・・その常人離れしたタフさだけは褒めてやらねばならんな?」

呆れた様子で溜息を吐いたシドは、未だ手に持っている閻魔刀を蒼いロングコートの青年の足元に投げて寄越した。

弱者を痛めつけるのは楽しいが、流石にもう飽きてしまった。

それに今は、強大なスパーダの力を手に入れているのだ。

何時までもこんな雑魚と遊んでいても時間の無駄、ならばさっさと頭か心臓を潰して終わりにしてしまおう。

「ば・・・バージル・・・駄目だ・・・。」

尋常ならざるダメージを受けた肉体は、立ち上がるだけの気力を完全に奪い去っていた。

何とか頭だけ持ち上げ、か細い声で双子の兄を制止する。

そんな弟の悲痛な声など届かない兄は、震える手で足元に転がる愛刀―閻魔刀を拾い上げた。

今、体力を全て失っているバージルの心を支えているモノは、魔剣士・スパーダの誇りと育ての親、葛葉・キョウジに対する贖罪の想いだけである。

せめてこの下郎に一太刀だけでも報いてやる。

閻魔刀を正眼に構え、血塗れの唇を引き結ぶ。

と、刹那、天空から巨大な雷の柱がシドとバージルの間に突き刺さった。

衝撃で吹き飛ばされる蒼いロングコートの青年。

当然、その衝撃波は、魔剣士・スパーダと瓜二つな姿をしているシドにも襲い掛かる。

何とかその場に踏み止まる魔剣士。

すると雷の柱を突き破って何者かが強襲した。

鋭い斬撃。

迅速かつ重い一撃は、咄嗟に構えた魔剣士の大剣『フォース・エッジ』をあっさりと跳ね上げてしまう。

隙が出来た胸部を問答無用な回し蹴りが決まる。

今度こそ後方に吹き飛ばされる魔剣士の巨躯。

壁を破砕し、瓦礫の中に埋もれてしまった。

「ぐぅうううう・・・き、貴様は・・・。」

巨躯を突き抜ける激痛に呻きつつ、魔剣士は瓦礫を押しのけ立ち上がる。

その深紅の双眸が捉えたのは、漆黒の禍々しい鎧に身を包む一人の魔狼の姿であった。

両手には、雷の双剣―”ネヴァン”を携えている。

「”クランの猛犬”?・・・17代目・葛葉ライドウの番か?」

シドに一撃を入れたのは、ライドウの番―クー・フーリンであった。

「ど・・・・どうしてアイツが此処に・・・?」

生贄拷問室で死闘を繰り広げたクー・フーリンの魔人化形態。

同じく魔人化したダンテと互角・・・否、それ以上の力を秘めていた。

「全く・・・従者の癖に主人を置き去りにするんじゃねぇーよ。」

次元の裂け目から呑気な声が聞こえた。

動けぬ躰を叱咤して何とかそちらに顔を向けると、カジュアルジャケットにビンテージジーンズ、右足にレッグポーチを付けた黒い眼帯の悪魔使いが現れる。

組織『クズノハ』最強の悪魔召喚術師(デビルサマナー)―17代目・葛葉ライドウだ。

「ひ・・・人修羅?」

力無く、地面に倒れ伏すバージルのアイスブルーの瞳が見開かれる。

紙の様に白かった筈の肌は、すっかり健康的な色へと変わり、心無しか覇気が充満している様にも見える。

番を召喚した事で、魔力供給が潤滑に行われ、力をすっかりと取り戻しているのだ。

「待っていたぞ?人修羅ぁあああああああああ!!」

歓喜と狂気が入り混じったかの様な雄叫び。

漸く思う存分、得た力を振るえる相手を得た魔剣士が、大剣を振りかざし、猛襲する。

魔狼が対応出来ない音速のスピード。

大剣『フォース・エッジ』が少年の頭蓋を割らんと振り下ろされた刹那、その顔面に悪魔使いの拳が深々と減り込んだ。

何かの冗談の様に吹き飛んでいく魔剣士の巨体。

余りの出来事にダンテとバージルの双眸が大きく見開いた。

「ば・・・馬鹿な・・・?一体何が起こったというのだ?」

地面を抉り、柱を次々と壊しながら漸く魔剣士の巨体が停止する。

再び瓦礫の山に埋もれるシド。

驚愕で固まる魔剣士の視線の先で、悪魔使いの少年が大袈裟に肩を竦める。

「自分の力量も測れないのか・・・?オラ、さっさと掛かって来いよ?格の違いってのを教えてやるぜ。」

ライドウがシドに向かって手招きする。

「認めん!認めんぞぉおおおお!!」

腹腔からマグマの如く噴き出る怒りの放流。

自分は、かつて悪魔の軍団を退けた魔界の剣士―スパーダの強大な魔力を手に入れた筈だ。

その自分が非力な人間に素手で殴られて無様に吹き飛ばされた。

認められない・・・否、決して認める事が出来ない現実。

凄まじい咆哮を上げて、再び突進する魔界の剣士。

しかし、憤怒の一撃は、あっさりと躱され、カウンターに重いボディーブロー。

胃液が逆流し、吐き出す瞬間、蟀谷に少年の回し蹴りが綺麗に決まる。

「し・・信じられん・・・・俺達が手も足も出なかった相手をあんな簡単に・・・。」

成す術も無く、素手の相手に良いように翻弄される魔剣士の姿を、バージルは驚嘆の思いで凝視する。

魔人化し、それでも全く歯が立たなかった相手。

それをライドウは、意図も容易く叩きのめしている。

「ぷっ・・・ハハッ・・・アハハハハハハッ!!」

直ぐ傍らで同じ様に倒れている双子の弟が、仰向けに寝転ぶと腹を抱えて笑い出した。

「ハハハッ・・・腹が痛ぇ・・・やっぱ最高過ぎるぜ?ライドウ。マジで惚れ直しちまったよ。」

何故、これ程までに狂おしくライドウを求めるのか再認識した。

天と地ほども違う自分と悪魔使いの実力。

どんなに努力してもこの圧倒的な距離は縮まないだろう。

だが、そこに不思議と絶望を感じる事は無かった。

今迄狭すぎた自分の世界が途轍もなく広く感じたからだ。

だってそうだろう?チンピラ相手に俺最強してた荒事師が、どんなにちっぽけでどんなに無知蒙昧な存在であったのかを知らしめる存在が今、目の前にいるのだから。

「はぁ、はぁ・・・ば、馬鹿な・・・スパーダの力を手に入れた筈の私が何故?」

散々殴り倒され、疲労とダメージで片膝を付く、巨漢の悪魔騎士。

その目の前に左目を覆う眼帯に手を掛ける少年の姿が映った。

「馬鹿はてめぇだ・・・無力な召喚術師でしかないお前は、たかが悪魔の力に簡単に溺れやがった・・・召喚士とは、他者の力を行使する事・・・他者の命を預かる事・・・他者の心と触れ合い理解する事・・・それはお前の力じゃない、スパーダと言う悪魔の力だ。」

「黙れ!!私は神だ!!魔剣士・スパーダの力は私の力だ!!」

筆舌し難き怒りは、容易くシドの理性を奪い取った。

主の枷が外れた最上級悪魔(グレーター・デーモン)―マスター・テリオンは、主人であるシドの体内を喰い破り、スパーダの力を呑み込んでしまう。

巨大に膨れ上がる魔剣士の姿。

例えるなら肉の塊そのモノ・・シド・デイビスという心の闇を体現した醜い怪物へと変貌していく。

「この・・・大馬鹿野郎が・・・。」

左眼の眼帯を外す。

そこから現れたのは、サファイアの如く紫がかった光を放つ蒼い魔眼であった。

魔眼から蒼白い炎が灯る。

「時間がねぇ・・志郎、一気にカタをつけるぞ。」

「承知。」

全身を蒼いラインが入った文様が浮かび上がる。

それと同時に悪魔使いの少年の四方に巨大な法陣が展開。

巨大な魔力のオーラが柱となり、天を突き抜ける。

『召喚(コール)!!』

主人と番の声がほぼ同時に発せられる。

ライドウの身体から現れる巨大な影。

角の如く突き出た肩当、拘束具を思わせる装束、漆黒のマントに銀色に光る冠と仮面。

ライドウが契約する最上級悪魔(グレーター・デーモン)―魔神・ヴィシュヌだ。

「私は神なんだぁあああああああああ!!!」

最早、シドに人間としての尊厳も最低限の理性すらも失われていた。

獣の如き咆哮を上げ、マスター・テリオンが所持する核熱系最上級魔法―フレイダインを放つ。

「メギドアーク!!」

最上級魔法の中でも最強かつ禁忌とされる万能属性魔法―メギドアーク。

万能属性系の中でも最上位に位置するメギドラオンの更に上位魔法である。

幾重にも展開される魔法陣。

かつて地上を焼き払い、生きとし生けるモノ達を分子の値まで分解し、消滅させた神の鉄槌が、フレイダインを薙ぎ払い、醜い肉の塊と化したシド・デイビスだった者を滅殺する。

眩い光が辺りを真っ白に染める。

光の放流に思わず目を閉じる双子の兄弟。

破壊の光は魔界全体に轟き、現世にも影響を及ぼした。

 

「な、何事だ!!」

ソレは余りにも唐突に起こった。

指定された1時間と言う制限時間。

その約10分前に、呪われし塔―テメンニグルの最上階付近で異変は起きた。

現世と魔界を繋ぐヘルズゲート。

その天を貫く地獄の門が激しく光り出したのだ。

まるで真昼の如き光が暗闇に沈む廃墟と化したレッドグレイブ市を明るく照らし出す。

その中で彼等は見た。

天空に描かれし銀の冠を頂く、漆黒の魔神の神々しい姿を。

「あ、あれは・・・確か17代目・葛葉ライドウの・・・・。」

「・・・・魔神・ヴィシュヌ・・・久しぶりだ・・・11年前のあの時を思い出すね。」

巨大空中移動戦艦―アイアンメイデン。

そのメインパネルに映し出されるヒンドゥー教最高位の神、ヴィシュヌ。

世界が悪の脅威に晒された時、幾多ものアヴァターラ(化身)を使い分け、人々を救う神。

幾星霜、語り継がれた神話が今、現実のモノとして再現されている。

悪魔に平穏だった生活を奪われ、震えながら街の片隅に隠れている生存者達は、どんな想いでこの天空の大パノラマに描かれている最高神を眺めているのであろうか。

 

耳が痛くなる程の静寂。

ダンテが閉じていた目を開くとそこには両膝を付いて粗い息を吐く悪魔使いの姿が映った。

「ライドウ・・・・。」

慌てて駆け寄ろうとしたその足が自然と止まる。

想い人の傍らに白銀の騎士が付いていたからだ。

魔人化が解けた魔槍士は、跪き、汗で濡れる主の前髪をかき上げている。

そんな気遣う従者に優しく微笑みかける悪魔使い。

何人たりとも踏み込めない厚い絆を二人の間に垣間見えた気がした。

「・・・・!!」

不意に視界を蒼い影が遮る。

双子の兄、バージルだ。

脱兎の如く駆けるその先には、二つのアミュレットと父の愛刀―大剣『フォース・エッジ』が空中に鎮座していた。

シド・デイビスが死亡したお陰で、その呪縛から解け、憑依していた剣とアミュレットが肉体から分離したのだ。

兄の目的を悟ったダンテは、舌打ちするとその後を追い掛ける。

たった一人の家族にこれ以上の過ちを犯させる訳にはいかなかった。

 




恰好良く決めたかったんですけど表現力が乏しくて辛いです。
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