偽典・女神転生―テメンニグル編― 作:tomoko86355
失意の中、現世へと戻るダンテを待っていたものは・・・?
「ちっ、今日もスカな依頼ばっかかよ・・・・・。」
この時代、大変珍しいプッシュ式の送話器に受話器を少々乱暴に置くと、店の主―ダンテは、悪態を吐いた。
あのテメンニグル事件から既に一年近くが経過しようとしている。
瞼を閉じれば、昨日の事の様にあの情景が浮かび上がった。
17代目・葛葉ライドウと共に魔界から現世に戻ったダンテ。
悪魔使いの配慮で、魔槍士と白銀の巨獣は、彼が使用しているGUMPに収容されたものの、道中二人共終始無言であった。
一番、考えたくも無かった最悪な結末。
真の黒幕であるダーク・サマナー、シド・デイビスは死亡。
双子の兄、バージルはケルベロスによって斬り捨てられてしまった。
事件の真相は闇のまま、十数年の時を経て巡り合った生き別れの兄は、非業の最期を遂げてしまった。
そして、現世に戻ったダンテ達を待ち構えていたのは、ヴァチカンが派遣した悪魔殲滅部隊『ドミニオンズ』のいかつい強化鎧骨格を纏った兵士達。
ダンテの言い分など全く聞かず、拘束し、無理矢理地面に跪かせる。
「てめぇ!!いきなり何をし・・・・!!!」
そう言いかけた銀髪の青年の目の前に、2メートルは優にあろうかと思われる、禁欲的な軍服を纏った30代半ばぐらいの美女が突然現れる。
いきなり銀髪の青年の顎に向かって、手に持つ殴打用の武器、サップで殴り飛ばす。
一気に暗闇の中へと失墜していく意識。
遠くで悪魔使いの少年が自分を呼ぶ声が聞こえた様な気がした。
気が付くとダンテは州警察の拘置所に収容されていた。
あの後一体何が起こったのか、ライドウがどうなってしまったか等、知る術がまるで無かった。
暫くして、身元引受人として馴染みにしている情報屋のモリソンが現れた。
初老に差し掛かった腕利きの情報屋曰く、いきなり州警察から彼の事務所に連絡が来て、ダンテを引き取って欲しいと言われたらしい。
「例の事件で一週間近くもお前さんと連絡が取れなかったからな。流石に地震でくたばったかと思った矢先に、州警察から俺の事務所に電話が来たんだ。」
何時もの酒場―『ボビーの穴倉』でクズホップを呑みながら、モリソンはそうダンテに説明した。
表向き、テメンニグル事件は、巨大地震発生による自然災害としてマスコミに発表されている。
一体どうやって僅かに生き残った生存者の口を黙らせているのかは知らない。
只、今も尚、震源地であるスラム13番通りは国連軍により、硬く閉鎖されており、ネズミ一匹入れない状態にあるらしい。
一通り説明を終えると、モリソンはダンテに大きなアタッシェケースを渡した。
そして、その上に一枚の封筒を無造作に置く。
「お前さん、HEC社に知り合いでもいるのか?」
「HEC・・・・?」
「Human electronics Company・・・日本って国の大企業様だよ。」
Human electronics Company―ロボティクスを中心にドローン開発や医療、介護、又は一般の生活まで様々な分野で事業を展開している日本を代表とする巨大コングマリット企業の事である。
新聞を余り読まないダンテでも、テレビのニュース番組等で良くその名前が出ているのは知っていた。
「そこのCEOがお前さんに世話になったと言ってな?コイツと礼金を俺に預けて来たんだ。」
州警察から電話が来る前日に、モリソンの事務所にHEC社の使いと言う黒服の男性二人組が現れ、このアタッシェケースと小切手の入った茶封筒を預けて行った。
興味半分に茶封筒の中に入っている小切手を見たモリソンは、そこに書かれている桁外れな金額に目玉が飛び出そうになった。
「俺に大企業のお偉いさんの知り合いなんて居ねぇ・・・・。」
カウンターにアタッシェケースを置き、中身を見たダンテは言葉を止める。
そこに入っていたモノは、魔界に封印されていた父の愛刀―大剣『フォース・エッジ』であった。
「どうした?ダンテ。」
急に黙り込んだ銀髪の青年を初老の情報屋が胡乱気に見つめる。
テメンニグル事件の真相を知らない情報屋は、ダンテの様子が突然変わった事に理解出来なかった。
そんな情報屋を他所に、銀髪の青年は開けていたアタッシェケースの蓋を閉じ、茶封筒をポケットにねじ込むとカウンター席から立ち上がる。
モリソンが何事か自分を呼び止めていた様であったが、今のダンテの耳に入る事は無かった。
「全く・・・一体何がどーなっていやがるんだか・・・。」
無言でボビーの穴倉から出ていく、銀髪の大男の後ろ姿を情報屋が呆れた様子で見送った。
黒檀のディスクに行儀悪く両脚を投げ出した店の主は、ぼんやりと壁に飾られてある大剣『フォース・エッジ』を眺める。
あの日の出来事以来、悪魔絡みの事件は全くと言っていい程起きてはいなかった。
ビスクドールの様に美しい容姿をしたあの悪魔使いの少年は、一体今何をしているのだろうか?
また誰かの為に命を懸けて戦っているのだろうか?
「悪魔退治の仕事をしてりゃ、そのうちアンタに会えるのかな・・・・?」
それはとても叶わない願いの様にも思う。
自分とライドウは住む世界が余りにも違う。
退屈で汚泥に満ちた日常を生きる自分、かたや、組織の人間として使命を遂行する為に生きる悪魔使い。
同じ悪魔を狩る者でもこんなにもかけ離れているではないか。
「いいや・・・俺は絶対アンタに会う・・・会わなきゃならないんだ。」
狂おしい程の渇望。
悪魔を狩り続けていれば、必ずあの悪魔使いの少年と巡り合える。
そして今度こそ・・・今度こそ・・・・俺は・・・・。
TO be Continue・・・・。
うう、漸く終わりましたぁ!
文章的にも滅茶苦茶ですけど、良かったらコメントくらはい。