偽典・女神転生―テメンニグル編―   作:tomoko86355

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公園内で発生した猟奇殺人事件を追って、呪われし塔―テメンニグルに足を踏み入れた悪魔召喚術師、17代目・葛葉ライドウ。
その前に大門で出会った銀髪の大男―『便利屋・ダンテ』が再び立ち塞がる。



ミッション3『道化師』

 

 

青白い雷光が四方八方に降り注ぐ。

天照す天文の間を守護する悪魔、ギガ・ピートが己の住処を荒らす不届き者を始末仕様と縦横無尽に暴れ回っていた。

「ひー!目が回るぅ!」

ウェストポーチから甲高い悲鳴が上がる。

「悪い、もう少しで終わるから我慢しててくれ。」

周囲を埋め尽くす爆音の中でも、妖精の主にはしっかりと聞こえていたらしい。

ギガ・ピートから放たれる雷撃を巧みに躱しつつ、カウンターの斬撃をお見舞いしていた。

硬い甲殻の隙間を狙った的確な一撃。

蒼い体液を周囲に振りまき、ギガ・ピートは激痛に更に暴れ回る。

「悪いな、お前さんも好きでこんな所に来た訳じゃないのにな。」

憐れみを多分に含んだライドウの声。

最後の悪足掻きなのか、突進して来た巨大ムカデを大きく頭上に飛びあがって躱す。

「次で楽にしてやる。」

高位悪魔が宿った魔剣に魔力を注ぐ。

すると刀身が紫色に輝いた。

「-!」

梁を足場にして気合と共に蹴り上げ、ギガ・ピートに弾丸の速さで一直線に向かう。

頭部を持ち上げ、ライドウを迎え撃つ巨大ムカデ。

しかし、ライドウの必殺の一撃の方が速かった。

深々と複眼に埋め込まれる刀身。

そこを中心にギガ・ピートの鎧の如く全身を覆っている甲殻から亀裂が走る。

亀裂から迸る青白い雷光。

蒼い体液を撒き散らし、巨大ムカデは断末魔の叫びの如く爆散した。

「大丈夫か?マベル。」

軽やかに地面に着地したライドウが、ウェストポーチの中にいる妖精に声をかける。

「うぇえええ、気持ち悪いよぉ。」

ポーチの中から、妖精がぴょっこりと顔を出した。

ウェストポーチの中で大分振り回されたのが堪えたのか、真っ青な顔をして吐きそうに舌を出している。

「ブラボー、ブラボー。」

「・・・?」

何処からともなく聞こえてくる拍手の音。

目を回していた妖精も正気に戻り、慌ててウェストポーチの中に隠れる。

「流石、魔界を恐怖のどん底に叩き込んだ人修羅ちゃんだけあるぜぇ。」

暗闇の中から現れたのは、漆黒の道化服を纏った悪魔であった。

左右色違いのオッドアイに右手には金色のステッキを持っている。

「悪いけどサーカス団のスカウトならお断りだ。」

七星村正を鞘に納め、ライドウが肩を竦める。

魔界を放浪していた時の自分の事を知っている。

只の悪魔ではない様だ。

「実は俺ちゃん、人修羅ちゃんに良い情報を持って来たのさぁ。」

「良い情報?」

「アンタ、可愛い娘ちゃん達を殺した犯人を捜してるんだろ?」

「・・・。」

郊外の公園で起きた猟奇殺人事件の事まで知っている。

ライドウの表情がみるみる険しくなる。

「おっと、そんな怖い顔をしないでくれよぉ。俺ちゃん、アンタを敵に回す程お馬鹿ちゃんじゃないんだからさぁ。」

フードの下から覗く、鋭い双眸に態とらしく肩を竦める道化師。

「望みは何だ?魔貨か?宝石か?それとも俺の心臓か?」

親指で自分の心臓がある位置をトントンと叩く。

悪魔の対価はいつの時代も同じだ。

金か又は宝石、若しくは強大な力を持つ術士の心臓。

「今はまだ要らないよ・・・おっと、自己紹介がまだだったね?俺ちゃんの名前はジェスターって言うんだ。」

「そのまんまじゃねぇかよ。」

ラテン語に置き換えただけの名前にライドウが呆れた様子で溜息を吐く。

「実は俺ちゃんものすごぉーっく困ってる。どっかの余所者が生贄を捧げたお陰で魔界の入り口が開きそうなんだ。俺っち下級悪魔には死活問題よ。」

やはり、あの娘達はこの呪われた塔(テメンニグル)を起動させる為の贄に使われたらしい。

まだ完全に異界と現世の扉は開かれてはいないが、もしそうなると神話に登場する怪物達が大挙をなして、此方側の世界に来るだろう。

「・・・・悪いがコッチは時間が無いんだ。さっさと要件だけ話してくれ。」

これ以上、道化師の愚痴を聞かされては堪らない。

奴等が此処に来るよりも早く、事を終わらせてしまいたい。

「娘達を殺してマグネタイトを奪った犯人は、バージルっていう奴だ。魔剣士・スパーダって名前はアンタも知ってるよな?」

「・・・・魔界で名を轟かせた伝説の剣士だな。2000年以上前に仲間を裏切って人間の側についた・・・それ以降の彼の消息は不明になってる。」

「その通り、んでバージルってのがソイツの息子らしい。」

「子供が居たのか・・・初耳だな。」

魔剣士・スパーダの伝承は余りにも少ない。

特に魔界を裏切って、人間側についた彼の名前は禁句とされ、語られる事も憚られている。

それ故、魔界を放浪していた当時のライドウも名前ぐらいしか彼を知る術がなく、又当然の如く彼を語る者達などいなかった。

「バージルは、魔界の入り口を開けたいのさ。何故ならそこにスパーダの遺産があるからな。」

「遺産?」

「スパーダが持っていた強大な力、カウントフォーに匹敵する膨大な魔力さぁ。」

カウントフォー・・・現在魔界を支配している4人の魔王達の事である。

東西南北の位置をそれぞれ領地として所有しており、表向きは協定を結んではいるが、その実、領土拡大の為に血で血を争う闘争を繰り広げている。

「成程な・・・で、お前の望みはそのバージルを始末して欲しいってところか。」

「ビンゴォ!流石、人修羅ちゃん。物分かりが速くて助かるぜぇ。」

力のない悪魔は、弱肉強食を絵に描いた様な世界の魔界から逃れて現世に来る。

恐らくこのジェスターもそれと同じ口なのだろう。

もし上級悪魔が此方側に来たら、真っ先に淘汰されるのが彼等力のない下級悪魔達だ。

「言っとくが、お前が望むシナリオにはならないかもしれないぜ?」

「別にぃ、俺ちゃん達が住み辛い場所にならなきゃノープロブレムよぉ。」

それだけ言うとジェスターの姿が幻の如く掻き消える。

気づくと天井の所で逆さになって立っていた。

「そんじゃ、また会おうなぁ、人修羅ちゃん。」

器用に後ろ歩きで暗闇の中に消えていくジェスター。

後に残されたライドウが盛大な溜息を吐く。

「まーったく、あの兄弟の面倒を俺が見るのかぁ?」

 

生ける彫像の間。

背中から大剣『リベリオン』で貫かれ、うつ伏せに倒れ伏している銀髪の大男。

悪魔の弱点である心臓を破壊され、完全に息絶えているのは誰の目で見ても明らかであった。

「やはり”クランの猛犬”相手では荷が重すぎたか。」

そう呟いたのは漆黒のキャソックを纏う、火傷の男(フライフェイス)。

火傷の男―アーカムは、足でダンテの身体を仰向けに倒す。

逞しい胸元に光る深紅のアミュレット。

金色をモチーフにしているバージルのアミュレットとは違い、此方はその対に相応しい銀色だ。

アーカムは、屈みこむと少々乱暴にアミュレットを奪い取る。

「さて、後は人修羅だけだな。」

ダンテがクー・フーリンに殺害されたのは予想外だ。

否、まさか人修羅がこの件に絡んで来る事自体が想定外だったのだ。

アーカムは、一つ吐息を零すと、生ける彫像の間を後にした。

 




DMC5最高です。Vの操作が面白すぎる。
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