偽典・女神転生―テメンニグル編― 作:tomoko86355
一方、悪魔召喚術師のライドウは、妖獣ギガ・ピートと激突。
村正がうった合体剣『七星村正』の力を使い撃破する事に成功する。
そして、塔内を徘徊する道化師・ジェスターの情報で、古の塔を復活させたのがスパーダの息子である事を知るのであった。
生まれた時から父親の存在など知らなかった。
唯一家族と呼べるのが、母親のエヴァと双子の兄バージルだけだった。
その母親と兄を失ったのが、彼がまだ7歳の頃。
忘れもしない嵐の夜の出来事である。
いつもの様に一日が過ぎて、またいつもの様に朝を迎える筈だった。
しかし、この日だけは違っていた。
真剣な表情をした母親が、自分とバージルに二つのアミュレットを渡し、納戸に隠れる様に言ったのである。
「良い?二人共。このオリーブの枝が貴方達を守ってくれるわ。絶対に離しては駄目よ。」
二人にそれぞれオリーブの枝を握らせた母親は、納戸の小さな隠し部屋に二人を押し込んだ。
「眼を閉じて耳を塞ぐの・・・そうすれば、また必ず朝が来る。」
扉越しに聞こえる母の声。
そこには我が子を守る強い想いが感じられた。
「ダンテ、バージル・・・愛しているわ。」
それが彼女の声を聴いた最後の瞬間であった。
その後一体何が起こったのかダンテは覚えていない。
人智を超える程の恐怖が、彼に一時的な記憶障害を起こしたのかもしれない。
只、覚えているのは母親の叫び声と猛獣を思わせる唸り声。
けたたましい笑い声に肉を引き裂き、内臓を咀嚼する音。
「成程・・・それが君の業(カルマ)か。」
「!!」
しわがれた老人の声に一気に覚醒するダンテ。
まず最初に視界に入ったのがひび割れた石の天井。
埃っぽい匂い、背中に感じる冷たく硬い石の感触。
四肢を走る激痛に呻きつつ、何とか起き上がる。
「い・・一体何がどうなってやがるんだぁ。」
悪魔どもにやっと手に入れた事務所(自分の城)を壊された。
その後、スラム街に突如として現れた巨大な塔。
門番を守る三つ首の怪物。
順を追って記憶を辿っていく。
フードを目深に被った魔法使いの少年。
そしてそれに従う白銀の騎士。
「野郎!!」
そこまで思い出して、腹腔から激しい怒りのマグマが湧き上がる。
無意識に腰に吊るしたガンホルダーから、2丁のハンドガンを引き抜く。
しかし、彼が復讐すべき相手は影も形も存在してはいなかった。
耳が痛くなる程の静寂が辺りを包む。
「ハッ!ざまぁねぇな?全く。」
自嘲的な笑みが口元に浮かぶ。
便利屋家業を始めて約2年。
今まで色々な連中がダンテに喧嘩を吹っ掛けては悉く叩き伏せられて来た。
勿論、人間ばかりではない。
父・スパーダに恨みを抱く悪魔達ともやり合った。
当然、そいつ等も返り討ちにしてきた。
連戦連勝、負け知らず。
最強の便利屋・・・・最強の悪魔狩人(デビルハンター)、その名を欲しいがままにしてきた・・・だが―。
ダンテは、怒りのまま2丁のハンドガン―”エボニー&アイボリー”を連射する。
鋼の牙に穿たれ、粉々に砕け散る石像と柱。
石の壁は穴だらけとなり、濛々と砂煙が周囲を埋め尽くす。
弾倉が空になっても尚、ダンテは無意識に引き金を引き続けていた。
手も足も出なかった。
音速を超える斬撃は虚しく空を裂き、銀色の騎士を捉える事は一度としてなかった。
完膚なきまで叩きのめされ、ダンテの自尊心は見事なまでに打ち砕かれた。
だらりと力なく垂れる両腕。
「ハッ・・・・クールでスタイリッシュが売りのこの俺が何てザマだ。」
握っていた双子の銃を腰のガンホルスターに納め、地面に突き立った大剣『リベリオン』を引き抜く。
殺す・・・・自分にこんな屈辱を与えたあの騎士を必ず殺す。
生まれて初めて芽生えた猛烈な殺意。
蒼き双眸を怒りで歪ませ、ダンテは大剣『リベリオン』を背に収めた。
短くなってしまいました。