偽典・女神転生―テメンニグル編―   作:tomoko86355

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精神感応力で、バージルの精神に入り込み、バージルの協力者であり事件の首謀者を探ろうとしたライドウ達。
その結果、黒幕らしき人物の正体は、かつて平崎市でイナルナ姫を復活させようとしたダークサマナー、シド・ディビスである事が判明する。



ミッション7『魔術師と短剣』

風と炎の門番の間で、アグニ&ルドラを撃破したダンテは、テメンニグルの最上階、闇を司どりし暗黒の頂に辿り着いた。

そしてそこで目にしたのは、余りにも不可思議な光景であった。

力なく跪く双子の兄―バージル。

その兄の額に手を翳して、同じく跪いているパーカーのフードを目深に被った少年。

傍らに寄り添う白銀の騎士。

一目見て何らかの術を掛けられているだろう事は理解出来た。

そして、次に感じたのは腹腔を焼き尽くす激しい怒り。

自分を殺害した白銀の騎士―クー・フーリンを見つけたからではない。

あの冷酷なまでに冷静で強い兄が、訳の分からない連中に好き勝手されている姿を見たのが原因であった。

無意識に腰に吊るしているガンホルダーから、二丁の愛銃”エボニー&アイボリー”を抜き放つ。

狙うは、兄に術を掛けている少年。

その額に向けて正確に引き金を引く。

銃口から飛び出す鋼の牙。

音速を超える弾丸は、確実に少年の額を撃ち抜こうとしていた。

だが―

「ライドウ起きて!敵が来たよ!!」

仲魔のマベルの声に漸く正気に戻るライドウ。

その眼前に光る深紅の刃。

クー・フーリンの持つ”魔槍=ゲイ・ボルグ”が、ライドウに向かって放たれた鋼の凶器を防いでいたのだ。

「う・・・な、なんで?」

ぐらりと揺れる視界。

激しい頭痛と嘔吐に口元を抑える。

「マベル、精神(マインド)ダイブ中は、無理に引き戻しては危険だとあれ程言われているだろう。」

平衡感覚を失い倒れる主を腕に抱き、白銀の騎士が傍らの妖精を睨み付ける。

「わ、分かっているわよ!でもアイツが急に現れて・・・。」

被検体の精神に干渉している最中に強引に現実(リアル)に戻すと術者が精神障害を受ける。

それ故、精神感応力に優れた仲魔は、慎重に主を現実(リアル)に導く必要があるのだ。

「あ、アイツは・・・?何で生きてんだよ?」

涙で歪む視界に映る深紅のロングコートを纏った銀髪の大男。

生ける彫像の間で、クー・フーリンが殺した筈の便利屋が双子の銃、”エボニー&アイボリー”を構えて立っている。

「分かりません、確実に心臓を破壊した筈なのに・・・。」

いつも冷静な白銀の騎士も、予想外な闖入者に戸惑っていた。

「貴様ぁ!!」

凄まじい怒号。

ライドウの呪縛から解き放たれたバージルが正気に戻ったのだ。

音速の速さで抜き放たれる閻魔刀。

その切っ先から、主を抱えた白銀の騎士が逸早く逃れる。

「殺す!貴様だけはどんな手を使ってでも確実に殺してやる!」

甚大なる殺気を放ち、鬼の形相でライドウ達を睨み付ける。

只でさえ、プライドの高いバージルが、良いように扱われた挙句、心の中を土足で踏みにじられたのだ。

その怒りたるや筆舌し難き程に凄まじいのだろう。

「落ち着け、バージル。」

緊張高まるその場を冷静な声が遮った。

いつの間にかバージルの背後に、漆黒のキャソックと聖書型のハンドヘルドコンピューターを持った神父が立っている。

元ファントムソサエティのサマナー、シド・ディビスだ。

「今の君では、到底人修羅には敵わない。一旦引くんだ。」

有無を言わせぬその言葉に、追撃を加えようとしていたバージルの動きが止まる。

殺気を漲らせた双眸を背後の神父に向けると、その視界に深紅のアミュレットが映った。

「!!アレは俺のアミュレットじゃねぇか!?」

その時になって初めていつも自分の胸元にあった筈のアミュレットが無い事に気が付いた。

ダンテの蒼い双眸が怒りと驚愕で見開かれる。

「早く次の場所に移動するぞ?バージル。」

「・・・・・分かった。」

シド・・・アーカムの言葉に渋々閻魔刀を鞘へと戻す。

確かにアーカムの言う通り、今の自分では人修羅の足元にも及ばない。

しかし、父・スパーダの力を手に入れたら?

魔界を牛耳る四天王(カウントフォー)に匹敵すると言われる魔剣士の魔力を手に入れたら?

その時は、確実に殺してやる。

「クー、マベル、俺に構わずあの二人を追うんだ。」

暗黒の頂から飛び降りる蒼いロングコートの青年と漆黒のキャソックを纏った痩躯の男を追う様、ライドウが仲魔の二人に指示を出す。

「駄目だよ!ライドウを置いてなんて行けない!」

未だ精神的ダメージが回復しない主を置いていく事に、当然の如く妖精が抗議の声を上げる。

「貴方はどうするつもりなんですか?」

「俺か?俺はアッチの坊やとちょっと遊んで来るわ。」

あくまでも冷静な姿勢を崩さない白銀の騎士が主に問い掛ける。

そんな仲魔に対し、ライドウは悪戯っぽく笑ってみせた。

「あの男の目的は、私だと思いますが?」

銃口を此方に向け、母親の形見のアミュレットを奪った神父と兄を追うか、それとも自分に屈辱を与えた白銀の騎士に再戦を挑むか決めかねているダンテを鋭い視線で見据える。

「行け、何度も同じ事を言わせるな。」

「イエス、マスター。」

有無を言わせぬライドウの言葉に白銀の騎士が素直に従う。

暫く逡巡していた妖精も仕方なくクー・フーリンの後を追い掛けた。

「おい、邪魔だどけ。」

バージルとアーカムの後を追うべく、身を翻して頂から飛び降りた白銀の騎士を追い掛けようとしたダンテ。

しかし、その目の前にパーカーのフードを目深に被った少年が立ちはだかる。

「寂しい事言うなよ?坊主。俺と遊んでいかないか?」

「悪いが俺に幼児愛好(そっち)の趣味はねぇ。」

その人を喰った様な態度が気に入らない。

忌々し気に舌打ちし、数メートル離れて対峙する少年を睨み付ける。

相手は明らかに自分よりも一回り以上体格が小さく、声色も変声期を迎えたか怪しい程に高い。

それなのに、態度や物腰は、ダンテよりも遥かに年上の様にも感じる。

「俺を倒せなきゃ、クーには一生敵わないぞ?」

「なんだと?」

「簡単に説明してやるとな、俺はクーより数百倍強いって事だ。」

「へー、そりゃ面白れぇ。」

双子の銃”エボニー&アイボリー”を腰のガンホルダーに納め、背負った大剣『リベリオン』を抜き放つ。

切っ先を目の前の生意気な少年に向ける。

「泣いて謝るなら今のうちだぜ?少年。」

「葛葉ライドウだ。」

「は?」

「お前を倒す者の名前だ。よおっく胸に刻んでおけ。」

刹那、ライドウと名乗る少年の姿が消えた。

喉元にひやりと感じる刃物の感触。

何時背後に忍んだのか、パーカーの少年が銀色に光るアセイミナイフをダンテの頸動脈にピタリと当てていた。

「まずは一回お前は死んだ。」

「!!?」

気配をまるで感じなかった。

一体どうやってあの位置から己の背後に回り込んだんだ?

冷汗が一筋、頬を伝う。

やはりこの少年、只者ではない。

「へ!こんなちっぽけなナイフで俺を殺せると思っているのか?」

常人以上の生命力を誇るダンテにとって、首筋に当てられているナイフなど、別段脅威でも何でも無かった。

鉛弾を額に受けても死なないのだ。

頸動脈を掻き切られた所で、ダンテに致命傷を与えるとは到底思えない。

「確かに普通のナイフじゃ半人半妖のお前を殺す事は出来ない。だが、コイツは特別製でな、純銀製の上に法儀式が施されている。並みの悪魔なら急所にぶち込まれただけで軽くあの世に逝ける代物だ。」

詳しい魔法の解説をした所で、この男では半分も理解出来ないだろう。

喧嘩の玄人らしいが、魔術の魔の字も知らないド素人だ。

「そりゃ脅しか?糞餓鬼。」

「脅しかどうか刺してやろうか?」

こういう輩は、言葉で言うより実践してやった方が早い。

喉元に当てている刃を軽く引いてやる。

するとたちまち皮膚が壊死して、斬られた箇所がどす黒く変色していった。

まるで焼けた火箸を押し当てられたかの様な激痛に、ダンテの端正な顔が歪んでいく。

苦痛の声を上げなかったのは、流石と褒めてやるべきか?

「大人しく塔を降りる気になったか?」

「ぬかせ!!」

押し当てられているナイフの刃を素手て掴む。

余りにも無謀な行動。

指を落とされたいのか?と、疑問の表情をするライドウだが、ナイフの柄を持つ手に力を込めても微動だにしない。

常人を遥かに超える怪力が、ナイフの動きを封じているのだ。

ナイフの切っ先を首筋から遠ざけ、今度は背後に居る少年に裏拳を叩き込む。

しかし、その行動を逸早く察知したライドウが、あっさりと得物から手を離し、後方に飛び退った。

「全く、この出鱈目野郎が。」

拳圧で、被っていたフードが脱げ落ちる。

そこから現れた素顔に、ダンテは一瞬息を呑んだ。

三つ編みに結った濡れ羽色の長い黒髪。

新雪が如く透き通る様な白い肌。

ビスクドールの様に整い過ぎた容姿に左目を覆う漆黒の眼帯。

皮膚に喰い込む刃の激痛を忘れてしまう程、ライドウの素顔は美しかった。

「こりゃ失敬、糞餓鬼ってのは訂正するぜ?お嬢ちゃん。」

アセイミナイフを石畳に投げ捨てる。

乾いた金属音を奏でて転がる銀色のナイフ。

その刃には、べっとりとダンテの血がどす黒く付着している。

「糞餓鬼の次はお嬢ちゃんか・・・。」

投げ捨てられたナイフに向かって右掌を広げる。

するとアセイミナイフは、まるで見えない糸に操られるが如く、回転しながら主の手の中に納まった。

「目上の者に対する教育がまるでなってない。俺が懇切丁寧に再教育してやる。」

「へ!そりゃ有難いね。」

皮肉気に口元を歪めるダンテ。

組み敷いて痛めつけたら、どんな可愛い悲鳴を上げてくれるのだろうか?

そう考えると快感にも似た痺れが背筋を走った。

 




ライドウのモデルは、塩野干支郎次先生の作品『ユーベルブラッド』のケインツェルです。
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