偽典・女神転生―テメンニグル編―   作:tomoko86355

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バージルの精神世界に侵入し、彼の協力者が元ファントム・ソサエティのダークサマナー、シド・ディビスである事を知ったライドウ。
その後、ダンテの邪魔が入り、バージルとアーカムことシド・ディビスを逃がしてしまう。
二人の追跡を仲魔のクーフーリンとハイ・ピクシーのマベルに任せ、ライドウはダンテと対峙するのであった。


ミッション8『リヴァイアサンの中で』

「ライドウ大丈夫かなぁ?」

もう何度目になるのか分からない問い掛け。

暗黒の頂から、主と別れてもう数十分が経つ。

二人は現在、禁断の地へと辿り着いていた。

途中、低級悪魔の群れを何度か潰したが、アーカムとバージルの気配は微塵も感じる事は無かった。

恐らく二人は、かなり先まで進んでいるのかもしれない。

「ねぇ?志郎ってばぁ、何で黙ってんのよぉ。」

「クー・フーリンだ。」

食糧貯蔵庫へと続く扉に手を掛けながら、白銀の騎士がぼそりと呟く。

主の17代目・葛葉ライドウにも言ったが、好い加減人間名で自分を呼ぶのを止めて欲しい。

二人が室内に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。

出入口が封印され、何処からともなく女性の金切り声の様な奇声が響き渡る。

顔を真っ青にしたマベルが、慌てて白銀の騎士の背後に隠れた。

一人、冷めた表情で室内を見渡す白銀の騎士。

天井から、8本脚を持つ巨大な影が数体降りてくる。

この食糧貯蔵庫を住処にしている下級悪魔、アルケニーだ。

彼女達は、久方ぶりに迷い込んで来た獲物を見つけ、舌なめずりをしていた。

 

大剣の切っ先が石畳を粉砕する。

返す刃が少年を襲うも、いとも容易く躱され、虚しく空を斬るだけであった。

「腰に吊るしているそれは飾りかよ?いい加減抜きやがれ!」

一向に腰に吊るした二振りの刀を抜こうともしないライドウに苛々する。

「いい加減にしろと言われてもなぁ。」

怒涛の如く繰り出される斬撃を紙一重で躱しつつ、ライドウは溜息を零した。

はっきり言ってダンテの剣技は酷過ぎる。

教本通りの立ち回りをする兄と違い、此方はただ本能に任せて大剣を振っているとしか言えなかった。

才能も技術も兄の方が遥かに上、唯一褒められる所は常人以上のタフさと膂力ぐらいだ。

(クーとマベルは、無事だろうか?何時までもコイツに構っている暇はねぇしな。)

アーカムとバージルの後を追わせた仲魔の安否が気掛かりだ。

クー・フーリン一人だけで十分だとは思うが、どうにも嫌な予感がしてならない。

「仕方ねぇ、少しだけ本気出すか。」

不思議とこの男とのじゃれ合いは楽しかったが、何時までも遊んでいる訳にもいかない。

ライドウは、ダンテに向かって右掌を突き出した。

「5秒だ・・・・5秒間だけ本気出してやる。」

「は?」

訝し気な表情をするダンテ。

すると眼前に居た筈のライドウが消失、次の瞬間、胴体に衝撃が走った。

回避&移動速度上昇魔法(スクカジャ)を唱えて懐に入り込んだライドウが、肝臓に拳を撃ち込んだのだ。

重いボディーブローを喰らい蹲る。

その顎に向かって止めの掌底が綺麗に決まった。

「さて、クー達を追い掛けないとな。」

時間にして5秒間も掛からなかっただろうか?ライドウは、白目を向いて大の字に倒れるダンテを尻目に、頂の淵まで歩き出す。

「あそこか・・・。」

スラム街の外れにある一区画に不自然な森が生えている。

恐らく異界化に伴い、そこだけ生態系が異様に変化したのだろう。

間違いなくアーカムとバージル、そして仲魔二人はあの森に居る。

「・・・・!!!?」

突然、異様な殺気を感じたライドウが、背後を振り返る。

轟く銃声、頬に感じる熱と衝撃。

コマ送りの様に塔から落ちていくライドウ。

その視界には、エボニーを握った深紅の悪魔の姿が映っていた。

 

「ライドウ?」

一瞬、主の声が聞こえた様な気がする。

「どうしたんだ?マベル。」

この群れのボスらしい、緑色の体色をした一回りデカイ蜘蛛の化け物の額に”ゲイ・ボルグ”の切っ先を深々と突き刺すクー・フーリン。

室内のそこかしこには、切り刻まれたアルケニー達の無残な亡骸が転がっている。

「ライドウが銃で撃たれて塔から落ちた。」

「何だと?」

感情の籠もらない声でマベルが淡々と告げる。

精神感応力が高い彼女は、例え地球の裏側に居ようと主であるライドウと精神を共有出来るのだ。

それゆえ、しばしば無線機代わりに使われる事も多い。

「17代目は無事なのか?」

「うん・・・・かなり動揺してる。あの紅いコートの男・・・・名前はダンテって言うらしい・・・が、悪魔に変身したみたい。」

「悪魔に・・・・・やはり、あの時念の為に頭を潰しておくべきだったな。」

悪魔の弱点である心臓を破壊した程度で安心したのが甘すぎた。

『そんな顔すんな・・・コッチは心配ないから、早いとこ二人を捕まえろ。』

愛する主の声にクー・フーリンが顔を上げる。

どうやらマベルを通して、仲魔(コチラ)にコンタクトを取ってくれたらしい。

「そんな事言われなくても分かっていますよ。それより何時までそこで遊んでいるつもりなんですか?」

『あー、うん。適当に切り上げるつもりではいるんだが・・・・。』

そこまで言い掛けた妖精の身体が、まるで雷に撃たれたかの様に痙攣する。

落下する小さな身体を慌てて受け止める白銀の騎士。

2、3度瞬きを繰り返し、妖精が正気に戻る。

「空から大男が降って来ちゃった。」

抽象的表現だが、そこで一体何が起こっているのか容易に想像が出来る。

恐らくあの荒事師がしつこく主に絡んでいるのだろう。

「・・・・申め・・・。」

忌々し気にぼそりと呟く。

”ゲイ・ボルグ”の刃に付着した、クィーン・アルケニーの体液を振り払い、クー・フーリンは地底御苑へと続く扉に向かった。

 

無数に降り注ぐ鋼の雨。

スクカジャで幾らか回避速度は上げているとはいえ、少しでも油断すると致命傷を負いかねない。

「年長者を敬え!糞餓鬼!!」

呪われた塔の壁面を疾走しながら、ライドウが背後で矢鱈目たらに引き金を引き続けている銀髪の大男に向かって怒鳴った。

「うるせぇ!まだ喧嘩は終わってねぇぞ!!」

「勝負はとっくについてんだろうが!」

お互い悪態を吐き合いつつ、物凄いスピードで壁面を駆け降りる。

何とかダンテを振り切りたい悪魔使いの視界に、ブラッドゴイルの群れが映った。

獲物の匂いを嗅ぎ付け、此方に飛んで来る。

(アイツ等を使わせて貰うか。)

久しぶりの肉の匂いに吸い寄せられて来る、深紅の蝙蝠達。

ライドウは左目を覆っている眼帯に手を掛ける。

呪式の描かれた眼帯をずらすとそこから、金色に光る邪眼が現れた。

「外道共、我に従え!」

ライドウの精神波に従い、ブラッドゴイルの標的がダンテに変わる。

「何だ?コイツ等は!?」

突然、襲い掛かって来る深紅の嵐。

ライドウの精神波に操られたブラッドゴイルの群れだ。

「うーん、流石にあれは死んだかな?」

ブラッドゴイルの1匹に掴まったライドウが、深紅の蝙蝠の群れに襲われるダンテを眺める。

数えきれない程の大群は、球状の塊となり、銀髪の大男の姿をすっぽりと覆い隠してしまった。

幾ら強靭な肉体を誇る半人半妖でも、あのブラッドゴイルの大群を相手にするのは無理だろう。

今頃は全身の肉を引き裂かれ、無残な姿になっているに違いない。

そう考えていた刹那、深紅の球体が爆発四散する。

片手に巨銃”エボニー”片手に大剣”リベリオン”を握ったダンテが、独楽の如く旋回をしてブラッドゴイルの群れを蹴散らしていた。

「マジかよ?」

これには流石のライドウも驚嘆する。

独楽の如く旋回していたダンテは、ライドウに向かって大剣リベリオンを投げつけた。

空を裂き、リベリオンがライドウの掴まっているブラッドゴイルを刺し貫く。

「しまった!」

元の石像に戻り、粉々に砕け散る深紅の蝙蝠。

再び宙に投げ出されたライドウに向かってダンテが塔の壁面を蹴り付ける。

悪魔使いの少年の顔面を狙った右ストレート。

その拳をライドウが左手で受け止める。

「勝負はまだまだこれからだぜ?少年。」

「るせぇ!勝負はさっきついただろうがよ!」

悪態を吐き合いながら、錐揉み状態で落下していく二人。

その二人を覆い隠すかの如く、巨大な影が現れる。

呪われし塔”テメンニグル”の上空を我が物顔で徘徊していた巨大な悪魔『リヴァイアサン』だ。

奈落の底へと続く咢が二人を呑み込んでしまった。

 




主人公最強大好きwwなのでライドウは作中最強なのです。
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