魔法少女リリカルなのは - THE DESIRE OF ACTRESS - 作:今日の朝食
我らは眠っていた。
いや、我らに身体は無いのだから眠っていたという表現は正確ではない。正しくは、データとして漂っていた――呪われし魔道書『闇の書』の中である。
闇の書の中にいる時は何も出来なかった。
稀に外のデータとして流れてきたが、いづれも戦乱か、闇の書が振りまく破壊の痕しかなかった。
だから我らは願っていた。
この鳥篭から出ることを。
そして、今まで見てきた争いに負けない力を持つことを。
その願いはようやく叶いそうだ。
切欠は闇の書の防衛プログラムの消失だ。何が起きたかはよくわからないが、これによって我らを戒める鎖は消滅した。
さぁ、《マテリアルズ》出陣の時だ――
――かくて、物語は始まりを告げる。
ふと、目が覚める。
状況を確認してみよう。どうやらベッドに寝ているようで、視界には天井が映っている。
知らない天井だ。日の光がかなりまぶしく感じる気がする。
ここはどこだ。そもそも何故ここにいる。どうしてベッドに寝ている。
様々なことが浮かぶが、思い出そうとすると頭が痛む。
止まぬ頭痛に悩んでいると、横から声がした。
「気がついたんだね」
身を起こして声がした方向を向くと、十五歳ほどの少女が椅子に座っていた。茶髪の髪をポニーテールに結い上げ、その青い瞳には強い意志が秘められていた。自分のことに精一杯で、すぐ近くに少女がいたことすら気がつかなかったとは……自分が情けなくなってくる。近くに濡れタオルと水桶があることから、どうやら彼女が看病してくれたらしい。
「どうやら貴様に助けられたようだな、感謝する。だが、いつまでも世話になっているわけにもいかんからな。今いる場所がわからなければ、帰り道もわからぬであろうし、ここがどこか教えてもらえないだろうか?」
きっと自分が倒れていた事情も知っているだろうと、礼を言うついでに尋ねてみると返事が返ってきた
「どういたしまして。にゃはは、なんかすごいしゃべり方だね! ここは喫茶『翠屋』の本邸で、私が昨日の夜帰ってきたら、君が家の前に倒れててね。とりあえず私の部屋に運んだの」
『翠屋』という名前には聞き覚えがあるような気がするが、どこか記憶があいまいだ。情報が不足している。しかも、思い出そうとすると例のごとく頭が痛む。正直この頭痛が鬱陶しい。
「翠屋だけではわからん。町の名は?」
「海鳴市だよ。うーん、翠屋ってこの町ではかなり有名なはずなんだけどなぁ……。聞き覚えがないってことは、君は海鳴市の外から来たのかな? っていうかさっきから君って呼んでばっかりだね。私の名前は『高町なのは』。私立聖祥大付属中学校三年生。あなたの名前、教えてもらえないかな?」
『高町なのは』という名前にも聞き覚えがある気がする。思い出そうとするとやはり頭痛がするのでおいて置こう。さて、我の名前を……あれっ?
「た、たしか我の名は……」
「あなたの名前は……?」
興味津々といった表情で、なのはが顔を近づけてくる。
名前も思い出せないのはさすがに不味い、というかこんなことすら思い出せないのはさすがに悔しい。ひどく頭が痛むのを無視して、髪を掻き毟りながら記憶の海を探る……見つけた。
さぁ、高らかに叫ぼう。我が名は――
「――なんとか・ディアーチェ……だったような……」
頭痛に耐え切れず、ここで意識が途絶えた。
倒れる寸前に記憶に残っていたのは、これがいわゆる『記憶喪失』というやつかと悟ったことと、「あれ、大丈夫!?」と心配するなのはの声であった。
王様は記憶喪失中なので、性格が結構丸くなってます
次は王様の新生活
一話毎の文字量とか読みやすさとか大丈夫かな?