故に短いです←(笑)
ちなみにどうして紅白戦しようとしたのかというと………………私が書きたかったから!以上。
では、ブリーフィングをどうぞ。
私立弓鶴学園サッカーグラウンド。
パッ。
ちょうどボールが見えなくなりそうになったそんなタイミング。
春先のまだ気持ちの良い暖かなそよ風も視覚化出来るのではないかと思うほどの明るさを誇るナイターの照明が一斉に点灯した。
さっきまで敷地内の所々で飛び交っていた運動部の掛け声の数々もさすがにこんな時間ではもうほとんど聞こえなくなっている。
そんなグラウンドの上を何かに弾かれたボールが夜の空へと舞い上がり、グラウンドに落ちるのと同時に友過がライジングで思い切りそれをゴールに向かって蹴りこんだ。
「っ!?はっ!!」
しかし、一瞬だけ驚いた顔を見せたGKの亜蘭もすぐさまその瞬発力を使ってゴールポストの角へピンポイントに狙い済まされたシュートをパンチングで弾いた。
そもそもサッカーではあまりお目にかかることは無いであろうライジングショットを正確にゴールの角へとコントロール出来る友過に、一瞬タイミングを崩されたとはいえ並外れた瞬発力とパワーによって難なくボールを弾く亜蘭。
「へっ、やるじゃねぇか。」
「あなたも。まさかライジングをサッカーで見れる日が来るなんてね。Excellent。」
「そりゃどうも!んじゃ、もう1発行くぜ!!」
「どこからでも来なさい!!」
軽くやり取りを交わしながら弾かれたボールを受け止めてもう一度シュート体勢に入る友過に、グローブをパシンと力強く撃つことで答えた亜蘭だった。
センターサークル付近。
ここでは2対2のミニゲームのような練習が行われていた。
「良いですか?ルールはいつもと同じです。私と孤白さんで攻めますので現美さんと涙さんは守備。制限時間は5分間、必殺技の使用は禁止、守備側にボールを取られたらセンターサークルに戻ってやり直し、以上です。問題ありませんか?」
「えぇ。問題ないわ。」
「問題ない。」
「大丈夫。」
短いルール確認後、4人はそれぞれの持ち場に散開した。
コートはグラウンドの半面。
2人で攻めるにはかなり広すぎるコート。
2人で守るにはかなり広すぎるコート。
故に攻撃側は攻めるタイミングと攻め方が勝つ上で最も重要になってくる。
単純にゴールを目指せばそれでいいという訳ではないのだ。
迂闊にシュートを打って止められたらそれこそ大幅なタイムロスになる訳だから。
守備側も守備側でフィールドの半面を2人のみで守るため迂闊に動けないのがこれの厄介なところだ。
策も無しに向かっていくと瞬く間に勝負が着いてしまう。
かと言って慎重になりすぎてもボールを奪うことなんて出来ない。
そして5分という時間はお互いの手の内を探るには全くもって短すぎる。
これこそ咄嗟の判断力以外に頼る道具が存在しない簡単な訓練になるのだ。
試合中であればたとえ司令塔がいたとしてもいつ
『司令塔が機能しなければ勝てないチームは脆い』……………という涙の提案で始まったこの特訓もそろそろ板についてきた頃だった。
「行きますよ………………2対2、開始です!」
桃華の合図と同時に4人がいっせいにグラウンドを蹴った。
※
練習後。
御陵宅。
私は………………リビングの入口で立ち尽くしていた。
理由は目の前に広がった光景にある意味複雑な感情が込み上げてきてきているからだ。
「あ……その、どうして…………私、の、家?」
つい最近まで自分が引きこもりだったことを加味したとしても一人暮らしにしては閑散としすぎてしまっていた部屋だったのだが…………。
「あぁ!友過!それ私が持ってきたお菓子じゃない!!自分で買ってきたやつ食べなさいよ!」
「いいじゃねぇか孤白。細かい事でケチケチすんなよ。」
「してないわよ!」
「Oh!Delicious!!なにこれ!すごく美味しい!本当に桃華が作ったの?」
「砂糖とココアのバランス…………クッキーってこんなに美味しかったっけ。」
「喜んでいただけてなによりです。あ、現美さん、キッチン借りますね。」
「あ……は、はい…………?」
持参していたのだろうバスケットを持ちながらキッチンに向かう桃華さんにあやふやに返事を返してもう一度自分の部屋を見渡した。
「あぁ!もう怒ったわ。そっちがその気なら…………こうしてやるわよ!!あぐっ!!」
「あ!!おい!そりゃあ私の持ってきたチョコレートじゃんか!!」
「へん!おあいこよおあいこ!!………………って、に、苦っ!?なにこれ!チョコじゃないの!?」
「何言ってんだどっからどう見てもチョコだろ?たかだか、カカオ95%ってだけのチョコレートだ。」
「…………なんてもの食べてるのよあんた。」
「Hey。カカオ95%?それ、甘いの?」
「まぁ、甘過ぎないって感じか。亜蘭も食べるか?」
「え、遠慮しとくわ。」
「私は貰う。………………うん、これは美味しい。」
「おぉ!やっぱりそうだよな!涙ならわかってくれるって思ってたぜ!」
「え?待ってよ涙。苦くないの?」
「美味しい。まぁ、孤白には早いかも。」
「なによ、私にはって……。」
「はい。一応マフィンも作ってきたんです。みなさんで食べてください。」
「おお〜、さすがだな桃華。」
「すごく美味しそう。…………ねえ、桃華って本当にお嬢様?」
「そうです……と私が言うのもなにか変なのかもしれませんが。それに、私としてはあまり好きではないステータスではあるのですけれど。」
「あ、あの……!!!……あぅ。」
何とか声を出そうと試みるもののその声はワイワイと楽しそうに盛り上がる5人の少女の声によって無常にもかき消されてしまう。
「はぁ………………。」
何となくここに全員集まった理由は分からなくもないのだが、何故私の家なのかという疑問しか浮かんでこない。
要は明日の紅白戦の作戦会議だ……………恐らく、多分………いや、もしかしたら違うのかも………………いやいや、そうに違いない。
というか、そうだと願いたい。
そうならそうと、事前に私に話してくれてもよかったと思う。
仕方ないので私もテーブル上いっぱいにわんさかと広げられたお菓子やらジュースを目の前にして、溜息をつきながら座ることにする。
同時に頭の中にとある聞き覚えのある声が木霊した。
"ククク。現美、ちょっとだけ変わって。"
「はぁ…………え?お姉ちゃん?うん。わかった………………(コツン)」
みんなが各々盛り上がるなか、私は静かに右手の拳で軽く右のこめかみを軽く叩いた。
刹那、私の意識に一瞬だけ暗幕がかかった。
(フッ……)
【Change】
「………………クククク♪」
表に出るのと同時に私は軽く息を吸い込んだ。
そして……小さく口角を上げて。
「ちゅうも〜く!!!!!!!」
叫び終わるのと同時に顔に張りつけたニヤニヤ顔を崩さないまま今度は左側のこめかみを拳で軽く叩いた。
(フッ)
【Change】
再び姉からバトンを戻された私はその場の状況を一瞬で理解した。
理解したくなくても理解した。
…………してしまった。
もう今すぐにでもこの場から逃げたしたい。
なぜなら………………今全員の視線がただ1点、私に全て向けられているからだ。
しかもみんな驚いたように目をパチパチさせながら。
…………なにしたの?お姉ちゃん。
「へ?…………あ、あの、その……。な、なにか…………。」
「いや、今、お前が叫んだのか…………?」
マフィンを食べようとしていた友過ちゃんが僅かに眉を寄せた。
「What a surprise…….。引きこもりで引っ込み思案って聞いていたのだけど…………。」
寒朱さんも驚いて目を見開いている。
「…………でも、何となく懐かしい感じのするしゃべり方だった……。」
そして最後に孤白ちゃんも口につけようとしていた紙コップをテーブルの上に戻していた。
「え………そ、そうかな……?い、いや、そうじゃなくて…………その、明日の、こと……。」
「「「「「あぁ〜(ぽん)」」」」」
私のその一言でその場の全員が一斉に手をぽんと叩いた。
※
「コホン。では、明日の紅白戦のブリーフィングを行いたいと思います。まずは…………そうですね、改めて自己紹介とポジションの確認からしましょうか。私は銀 桃華。ポジションはMFです。」
ブリーフィングは桃華さん司会の元進められていく。
「村雨 涙。ポジションはDF。」
「私は蒼空 友過。FWだ。」
「同じくFW。天野 孤白よ。」
「寒朱 亜蘭。GK。そして…………」
「は、はい。御陵 現美です……。ポジションはDF、です。」
そんな感じで一通り簡単な自己紹介を終えた時、桃華さんが一つ息をついた。
「……現美さん。」
「は、はい?」
「
「確かに。」
桃華さんに続いて涙さんもその意見に同意している。
それには私も首を縦に振るしかなかった。
2人の言っている
それに………………多分、作戦を考えるとかに関しては私より
"おっと、ご指名かな?クククク♪"
「…………うん、お願い、出来る?」
"お易い御用だよ。じゃあ、代わってくれるかな?"
頭に響くその言葉に導かれながら私は再び自分の頭右側面のこめかみを軽く拳でコツンと叩く。
刹那、私の頭がいきなり力が抜けたようにガクンと前に垂れた。
※ここから三人称視点
「(フッ)…………ククク……クククク♪」
唐突の出来事に友過を含む3人が僅かに眉を寄せる。
「やぁ。こうやって面と向かって話すのは初めてかな?」
「……現美……ちゃんだよね?」
恐る恐るという様子を見せる孤白の問いに対して1度3人に向かって1人ずつ視線をめぐらせてから軽やかに顔を上げた。
「違うよ。クク、初めまして。私は御陵 現美の『姉』、御陵
『御陵 現美』という人物からは想像も出来ないような底の抜けるような、しかもそれでいてどこか脳裏に張り付いてくるような声で自身のことを『現美の姉』と自称する明夢が不敵に口角を上げる。
その細く釣り上がった瞳に加えて気持ち右に流し目だった前髪も反対の左側に寄っていた。
「さて、それじゃあ明日の話に移ろうか。おっと、私に対しての質問事項は受け付けないからそのつもりで。」
その一言で、なにかを言いかけた孤白がそのまま口を結んだ。
「Unbelievable…………。(信じられない…………)」
「……まさか、あの時のも。」
「ククク、Exactly。とでも言っておこうか、『
「なっ……!?」
「明夢さん。脱線してます。」
「おや、それは失敬。じゃあ、明日の試合の作戦を考えようじゃないか。どうせこういうことは現美よりも私の方が適任だからさ。あの娘はそういうキャラじゃないからね。そう思わないかい?」
「まぁ、そう、かもしれないわね。」
「でしょ?ということで。私からちょいと提案がね〜あるのでございますよ。」
「提案?」
「そう提案。明日の作戦の提案。クククク♪」
テーブル上で指を組みながらニヤニヤと不敵に笑う明夢に5人が一斉に互いの顔を見た。
※少女説明中……
「…………と、言う感じの作戦でどうだい?」
作戦の説明が終わった瞬間、部屋の中にコクリと喉を鳴らす音と共に静寂が支配していった。
その静寂を切り裂くように友過がゆっくりと言葉を漏らす。
「……おい、そんなこと、本当に出来るのかよ。」
「出来るか出来ないかの問題じゃないよ。『やる』んだよ。ククク♪もし、勝ちたいと思うのならね。」
「明夢さん。確かにいい作戦ではあるのですけど……。」
「けど?」
「もし、作戦が相手にバレたら……。」
「そうだね。これがもし勘づかれたら相当やりずらくなるだろうね。だからこの作戦の最大の肝は………………私達6人の『演技力』が八割、そして、残りの二割は私達の指揮を執る君のセンスに委ねられるというわけさ。ねぇ?
「私の…………指揮?」
「そう。あ、それからGKの
「What?サイン?」
「私が指1本の時は私がシュートを打ち返す。2本立てたら…………分かるよね?クククク♪」
「…………ワザと。」
「そ、技を破られたフリをするから、それを止めて欲しいんだ。詳細は明日話すよ。」
「…………わかった。」
「うん。あとは
「あぁ、わかった。」
「あ、狐っ子って私の事?まぁ、作戦を悟られないように前半は動けばいいのよね?」
「任せて。」
「うんうん。あぁ、そうだ。後で紙に書いておかないと。現美にも伝えないといけないからね。」
そう言いながら机の引き出しからガサガサとシャーペンとメモ用紙を取り出すと慣れた手つきで先の作戦の概要を書き連ねた明夢は描き終わるのと同時に放り投げるようにしてシャーペンを机の上に転がした。
「さて、これでよし。さてとここでもう一度確認しておこうか。」
テーブルに戻ってきた明夢が再び指を組む。
「勝負は後半。まず前半の前半、出来ればこのタイミングで2点取られたい。3点になると少し厳しいから2点にとどめること。そして、前半の後半。ここで、現美を中心にディフェンスを固める。2点取られたわけだしディフェンス面を強化するのは自然のことだから相当変なことしない限りバレないとは思うけど、まぁ、気をつけるのに越したことはないよね?そして後半。タイミングを見計らって私が現美と入れ替わるからそのタイミングで一気に畳み掛ける。簡単に言うとこんな感じかな。前半の指揮は桃の字。出来るだけさりげなく相手のシューターをサイドじゃなくて正面から撃たせるように誘導をお願いね?」
「わかりました。」
「他の人も、質問は?」
「いや。」
「私もない。」
「大丈夫。」
「OK(問題ないわ。)」
5人それぞれの返事を聞いて満足気にこくこくと首を振る明夢。
「じゃあ、明日だね。よろしく頼むよ。クククク♪」
その言葉を最後に明夢は自身の左手で頭の左側面をコツンと軽く叩いた。
※
ようやく暗幕の晴れた私はゆっくりと目を開けるのと共に顔を上げた。
「あ、あの……桃華さん。お姉ちゃんは、なんて?」
「…………そうですね。まずは……」
そんな感じで試合前日のブリーフィングは過ぎていった。
さて、ようやく書きました現美サイドのブリーフィングです←
まぁ、大まかな作戦しか書いてないので細かい事は試合当日に書いていこうと思います。
…………ん〜、なんか書いてるうちに送ってもらった設定と変わってきちゃってる?もしかして……。
短いですけど今回はこの辺で、次回、紅白戦。お楽しみに〜←