今回は正直私が思っていた量の倍以上の文字量になってしまいましたね〜(遠い目)
ちょっと長いですけどお付き合いください←
では、どうぞ!
スカウト4人目
FW「天野 孤白」編 (波の音様より)
キーンコーンカーンコーン。
本日最後6限目の授業終了のチャイムが高らかと鳴り響き、今まで静けさだけが支配していた教室内が一瞬にして騒がしさを取り戻した。
そう。
授業が終われば、終わりさえすればもう残るのは放課後だけなのだ。
荷物をまとめて部活へ向かう者。
数人で1人の机に群がって談笑する者。
先生に捕まって厄介事を頼まれている者。
はたまた愚痴を零しながら掃除用具入れから箒と雑巾を取り出している者、などなど。
私はと言うといつも通り教室で、窓際の席からいつも通り窓の外を眺めながらいつも通りぼーっとストレスを感じながら座っていた。
このはちゃんは授業の終了と同時に五十嵐さんと時乃さんを連れて教室を飛び出して行ったから今日もこの後スカウトをしに行くのだろう。
…………ということはあの二人は既にこのはちゃんのチームに所属していることになる。
あぁ、二人ともサッカーやってたんだ。
全然気づけなかった…………と言うよりかは、全く周りが見えていなかったと言うべきか。
まぁ、1ヶ月近く引きこもりで不登校していれば当然といわれればそれまでではある。
それからもう1つ。
今日初めて知った事実がある。
自然とため息が零れるついでに机の上に突っ伏して若干こみあげてくる眠気と戦いながら左手の指でグルグル丸を書いていると、昨日のように銀さんが私の机の前の席にストンと腰を下ろした。
「どうしたんです?悩みごとですか?」
「あ、銀さん。……違う、んです………………いや、これ、悩みごと……かな。あと2人。ちゃんと声をかけられるか不安で……。」
「あぁ、なるほど。確かに現美さんは自分からガツガツいくような性格ではありませんし。大変でしょう。」
「……うん。このはちゃん、凄い、です……。」
「相澤さんですか。むしろ彼女はガツガツ行き過ぎなような気もしますけど。」
やれやれと首を横に振る銀さん。
「しかし、あれが彼女の良いところでもあるわけですが。」
「私も、そう思います。」
銀さんの言葉に相槌を打ってそろそろ自分も行動に移さないとなんて思いながら鞄を机の上に置いたちょうど同じタイミング。
「ん…………現美は……お、いたいた。おーい!現美!」
「大声を出さないで。」
「ひゃあっ!……へ…………あ、友過ちゃんと涙ちゃん?」
「おっと、悪い脅かすつもりはなかったんだ。」
突然教室の入口付近から大声で自分の名前を呼ばれて反射的にビクリと体をふるわせてしまう。
恐る恐る声の主の方に視線を移すと、つい先日スカウトして入部してもらったばかりの村雨 涙ちゃんと蒼空 友過ちゃんがヒラヒラと手を振っていた。
そのせいでクラス内にいた女の子たちの視線が一瞬にして私の方へ向けられる。
「へ?…………あ…………。」
お世辞にも「好奇の」とは言い難い尖った視線に晒されて今にも世界がぐるぐる回りながら発狂しそうになるのをたまたま仕舞い忘れていたテキストで顔を隠すことで遮った。
…………そう。
これが今日初めて知った事実。
2人とも顔立ちは整っている上に、ぶっきらぼうなクールキャラの涙ちゃんはそんなクールな一面に加えて照れた時のギャップがたまらないと言う女の子が殺到し、片や友過ちゃんに関しては男勝りな口調に加えてその仕草の一つ一つが女の子の心を撃ち抜いていくのだとか。
ちなみに、友過ちゃんは女の子から告白まで受けたという噂まで聞いてしまった。
つまりこの視線の意味は全て「どうしてあの引きこもりが村雨さんと蒼空さんと仲良くしてるの?」ってところだろう。
正直ただでさえ人が密集している教室内にいるだけでもストレスだと言うのに、みんなで一気に視線を向けたりなんかしたらちょっと前のままであれば即気絶でもしていたはずだ、もしくは光の速さで掃除用具入れにでも閉じこもっていたと思う。
そんな状態の私を気にする素振りなど全く見せる様子もなく、涙ちゃんと友過ちゃんはそのまま教室内の所々から上がる歓喜の声に苦笑いを浮かべながら私の席まで来て、その近くにあった椅子にストンと腰を下ろした。
ただ、涙ちゃんは窓に背を向けて寄りかかるようにしながら腕を組む。
そしてもう1人は………………もう1人?
教室内に入ってきた瞬間の涙ちゃんと友過ちゃんの印象が強すぎて見落としていたがよくよく見ると2人の他にもう1人、涙ちゃんの後ろから着いてきていた女の子がいた。
このクラスではないと思うから…………2人と同じクラスなのかな?
「ふぅ、落ち着かねぇなここも。」
小声でボソリと呟くように本音をこぼした友過ちゃんにため息をつきつつ涙ちゃんも軽く首を縦に振る。
「ま、それはそれでいいとして。今日来たのは彼女をスカウトしたからその紹介みたいなものなの。」
このままでは友過ちゃんの愚痴が始まりそうになるのを涙ちゃんが軽く流し気味に遮った。
「彼女……ですか?」
銀さんも小首をかしげながらさっきから涙ちゃんの後を歩いて来ていた女の子に視線を向ける。
つられて私ももう一度その女の子に目を向けた………………ん?
……あれ?
そう言えばこの娘、どこかで見たことあるような…………。
紫髪という特徴の塊のような髪のツインテール。
若葉色の瞳の中に潜む瞳孔は少々縦に細めであり、そのせいもあってか若干の狐っぽさを身にまとった少女だ。
…………でも、何故かわからないけど私を見ながら驚愕してる。
わ、私、なにかしたのかな……。
「なんでも、涙曰くジュニアん時から有名だったやつだそうだぜ?」
「ジュニア……の時から?(あの紫の髪…………あ、ん?あれ……確かに見覚えある、んだけど…………。)」
「そう。現美もそうなんだけど…………どうしてこの学校にはこういう娘が集まっているのか不思議。」
「私はジュニアのチームには所属していなかったので詳しいことは分からないのですが…………村雨さんが言うならそれほどの事なのでしょうか。」
「本当ならあなたや彼女程のプレイヤーだったら名門校からのスカウトがいくつ来ててもおかしくない。なんでまたこんな無名校にいるのかやっぱりわたしにはわからない。」
「あう…………ご、ごめんな、さい。(う〜ん…………。もう少しで………思い出せ、そう………。)」
「謝らなくていい。」
「へぇ、お前意外と凄いやつだったんだな。」
「そ、そんなこと、ないよ。」
「ま、ともかく。とりあえず連れてきた。実力なら申し分ないはず。それは、あなたも知っているでしょ?」
紫髪の少女がぺこりと頭を下げた。
「へ?(あう…………わ、わかんないよ〜。)」
思い出せそうで思い出せないというなんとも形容しがたいモヤモヤが頭の中いっぱいに渦巻いているおかげで、ちょっとでも気を抜いたらすぐさま目を回して倒れてしまいそうになる。
ただでさえ、クラスの女の子達からの視線がプスプス刺さってきているというのに…………。
「あ………………。」
そんな視線に晒されていたからか、はたまた偶然の産物か分からないが不意に真っ白だった記憶の断片に僅かな色が戻ってきた。
───
紫色の髪の少女。
フィールドで向かい合う私。
試合は既に終盤。
このワンプレーが試合の流れを左右する。
そんな中でさえ、私達はお互いに軽く笑いあってひとつのボールを奪い合った。
「ここから先は行かせないよ!」
「なんの!私だって負けないから!」
───
記憶のフラッシュバックはそこで終止符を迎えた。
「あ…………も、もしかして…………。」
「ど、どうして…………あなたが…………。」
あまりに衝撃的な事実が故になかなか言葉を発することが出来なかった少女が、まさに信じられないとでも言いそうな雰囲気のままゆっくりと言葉に出した。
※
ジュニア時代のとある試合。
確かその日は違う地区のチームとの練習試合の予定だったのだが、それ以上に周りの観衆はある話題で持ちきりだった。
"天才と名高い2人の選手が一同に会して、真正面からぶつかり合う。"
という話題だ。
片方は全国でも名を轟かせるような強豪チームに所属していたジュニア選手にしては並外れたディフェンス能力を持ち、彼女の技にかかればどんなシュートをも無力化してしまうと言われる、まさに鉄壁、『ペナルティエリアの
御陵 現美。
彼女の実力を物語る噂としては、「現美がいればキーパーは必要ない。」というものだ。
そしてもう1人。
こちらはさほど強豪というチームでもなければそれこそ全国は愚か地区大会の優勝候補ですらないような無名チームに所属していた1人のストライカー。
その特徴的かつ妖艶な色彩を持つ紫髪を風に乗せて若葉色の瞳を揺らめかせながらフィールド上を駆け抜け、巧みなボールコントロールと鮮やかなトリックプレー、そしてまるで狙った獲物は逃がさないとでも言わんばかりに攻め立てるその姿は、まさに伝説上の妖怪、九尾の狐が舞い踊っているようだとまで噂された少女。
天野 狐白。
その名前は、「妖狐」の二つ名とともにジュニアサッカー界に名を連ねていた。
このカードがジュニア大会でもないただの練習試合でお目にかかれるなんて当時からしたらどれほど話題性があったか。
※
「…………とまぁ、この2人の説明はこれくらいでいい。」
何故か私が話そうとしていたことを勝手に代弁した涙ちゃんは、話し終わるのとともにふぅ、とひとつ息をつくと彼女にしてはかなり珍しいドヤ顔をかました。
「…………涙、お前。」
「涙ちゃん……。」
「……な、なんだy…………なんですか。」
「口調戻さなくてもよろしいですよ。にしても、やけに詳しいですね。この2人のこと。村雨さん。」
「当たり前。ジュニアチームに所属していてこの2人を知らないやつは恐らくいない。」
涙ちゃんの一言でもう一度私と紫髪の少女が顔を見合わせた。
「…………ってことは、やっぱり……。」
「やっぱり、そうなんだね。」
「久しぶり…………孤白ちゃん。」
「久しぶりだね…………現美ちゃん。」
※
「ふふふ、いや、まさかこんな形で再開することになるなんてね。あの練習試合以降1度も公式戦で当たること無かったから気になってはいたんだよ。あの娘どうしてるかな〜って。私のシュート、唯一キーパー以外で止めた娘だったし。」
「わ、わたし、も…………。あの時初めて、必殺技、破られた。ふふ、ふ…………楽しかったね。」
「…………でも、少し見ないうちにこんなに変わっちゃってるとは思わなかったよ。何があったの?」
「あう…………ご、ごめんなさい……。」
「はぁ…………。」
溜息をつきながら天野 孤白こと孤白ちゃんは視線を涙ちゃんの方に軽く投げた。
「それは私にもさっぱり。」
「はぁ〜、色々あったんだなお前らも。私と桃華には分からねぇ話っぽいしな〜。」
「興味はありますけど。」
「そんな、いい話じゃ…………ない。」
「であれば無理に話す必要もないですわ。話したくなったら話してくだされば結構ですよ。」
銀さんのフォローのおかげで何とか自分の過去がフラッシュバックするのを阻止した私は過呼吸になりかけた呼吸を整えながら話題を戻した。
「うん。ありがとう、銀さん……。そ、それで、その…………孤白ちゃんは…………。」
「ん〜、そう言えばそんな話だったね。
「ほ、本当……?じゃあ…………。」
「ごめん。」
予想外の一言に私は言葉を失った。
ようやく、あの時の少女と一緒のチームで試合ができると込み上げていた嬉しさが一気に霧散していく。
「興味、無くなっちゃったんだ。だからもう、サッカーはしない。」
そんな真っ向から向けられた拒絶の一言はこの教室内のどんな視線よりも鋭利で容赦のない一言だった。
私の中で最も同じフィールドでプレーしたいと思っていた人物からの拒絶の言葉。
「え…………あ…………。」
言葉にならない呻き声を上げながら唖然として孤白ちゃんを見つめる………………でも。
「(まずいかもしれないですわね。なんとか止めないと……)あ、あの……」
「わ……分かっ、た…………。」
「(現美さん……。)」
「現美ちゃん……。」
私は込み上げてきた気持ちを押し殺して震えながら言葉を出した。
「こ、孤白ちゃん……が、そう、言うなら…………。本当は……一緒に、やりたかった……け、ど………………。」
ガタン。
私は込み上げてくる感情を俯くことで隠し、勢いよく椅子から立ち上がった。
その衝撃で椅子は後ろに倒れるが気にしない。
「…………今日……この後、学校のグラウンドで練、習するから…………見に、来て…………。それでも…………変わらなければ……諦める、よ。」
私はそのまま鞄を引っつかむと勢いよく廊下に飛び出した。
今ままでの私ならさっきの拒絶の言葉で我を忘れていたことだろう。
やっぱりこれもこのはちゃんやみんなのおかげでなのかもしれない。
私は込み上げてくる涙を腕で拭きながら廊下を駆け抜けた。
※(三人称)
現美が教室を飛び出して言ってから僅かな静寂が4人の中を支配していた。
「はぁ。」
その真ん中で孤白は1人ため息をついてカタンと椅子を軽く引いた。
「じゃあ、私、帰るね。」
「練習。見にこないつもりか?」
「言ったでしょ?もう、興味が無くなったって。」
「だとしても、言い方ってものがあったと思いますけど。」
「………………。」
「あの様子なら、本当に楽しみにしてたんだと思う。」
「………………。」
孤白が不意に口を強く結んだ。
「…………無理だよ。」
「無理、ですか?」
「そう。わたしには無理だよ。あの娘と同じフィールドに立つなんて…………。だって、背中を追いかけるだけで精一杯だったのに。現美ちゃん………………追いつけるどころか、どんどんどんどん見えなくなっちゃうんだもん。」
さっきまでの彼女とは打って変わって急にしおらしくなった孤白に、3人は顔を見合わせてしまう。
「そのせいで…………私、自分が分からなくなっちゃったんだ。どうしたら現美ちゃんに追いつけるのかをひたすら考えていて…………気づいた時にはもう…………。」
そこまで喋ってから、何かに気づいたようにふっと小さな笑みを作ると孤白は持ってきていたスクールバッグを肩に掛け直した。
「そういうこと。だから、私はもうサッカーはしないって決めたの。…………それじゃ。」
バッグを握っていない方の手をヒラヒラとさせながら歩きだそうとする孤白。
その背中に向かってスっと腕組を解いた涙が言葉を投げかけた。
「…………逃げるのね。」
「っ…………!」
涙の一言で孤白が足を止めて唇を噛む。
「…………涙。」
「涙さん……。」
「友過、桃華。行こう…………現美が待ってる。」
「……はい。」
「おう……。」
涙はそれ以上喋ることなく自慢のマフラーで口元を隠す。
そのまま立ち止まったまま唇を噛み締める孤白の隣を素通りした。
抜き際に一言だけ添えて。
「………………あのときの『妖狐』はもういない、か。」
「…………っ!」
ガラガラ。
孤白の動揺も虚しく教室の扉は無常にも閉められる。
「あ、おい!涙!待てよ!」
「はぁ、全く、世話がやける方達ですね。孤白さんも、もし気が変わったらいつでもいらしてくださいね。相談に乗るくらいしかできないかもしれませんけど、必ず力になります。では。」
桃華と友過の2人も涙の後を追って教室を出ていった。
残された孤白は1人教室で立ち尽くしていた。
※(孤白視点)
どうして、私はここにいるんだろう。
もうサッカーはしないって決めたはずなのに。
学園の敷地内に作られたサッカーグラウンドは緑色のネットで覆われ、夜でも練習ができるようにナイター設備もしっかりと整っていた。
サッカーをしないならこんな所に用事なんて…………。
あんな表情されたら………………はぁ、ずるいなぁ。
「ーーーー!!」
「ーー!」
グラウンドでは4人の少女がひとつのボールを巡って駆けずり回っている。
人数が少ないため攻撃と守備をポジション事に分けた2体2の実戦形式。
攻撃側はどんな事があってもゴールを狙い続け、守備側はどんな事があってもゴールは死守するといった単純なものだが、これが意外と奥が深いものでプレイヤーのフィジカルやテクニック、はたまた状況判断能力等々様々なステータスが如実に現れる。
特に、相手の動きを予測して自分の行動を決定する能力に関しては大きく差ができる練習とも言える。
グラウンド脇に並び立つ木の陰に身を隠しながら私はそんなことを考えていた。
「…………"『妖狐』はもういない"か。本当にその通りかもしれない。」
1人木陰で呟いて自嘲気味に笑うとそのまま木に背中を預けながらズルズルと座り込む。
…………それでも、やっぱり。
───サッカー、やりたいな…………。───
そうやって無意識のうちにふとグラウンドの方に視線を向けた時、フィールドの現美ちゃんと目が合った。
私はふいっと視線を逸らすが向こうはそうもいかないらしい。
木の幹を挟んで反対側。
軽やかな足音が近づいてくるのがわかる。
その音は自分の近くまで来ると不意に止み、木を挟んで背中合わせになるように腰を下ろした。
「…………来て、くれたんだ、ね。孤白ちゃん……。」
「…………。」
「…………やっぱり……ダメ、かな。」
「…………。」
こんな時、言葉が出せなくなる自分が憎らしい。
「私は、孤白ちゃんと一緒に…………サッカー、したい。」
現美ちゃんの言葉が嘘偽りの全くない純粋な言葉だからこそ、余計に胸が締め付けられる。
「…………。」
「…………孤白ちゃん……。」
現美ちゃん。
久しぶりに再開した時、あなたがこれほどまで変わり果ててるなんて予想もしてなかった。
あんなに明るくてよく笑って…………そして、遠く高い壁だったそんな現美ちゃんが今では面影すら無くなってしまっているなんて。
でも、どんなに変わり果てても人間って芯のところだけはなかなか変わらないんだな。
あぁ、私はどうしてこんなにも苦しんでいるのだろうか。
この心にポッカリと空いてしまった穴を埋めるためには今ここで彼女の手を取ればいいだけの話なのだ。
それが出来ないのは一体なぜなんだろうか…………。
サッカーに興味が無くなったなんて大嘘なのに……。
「…………孤白ちゃん。私…………。」
背中越しに現美ちゃんがポツリと言葉を漏らした。
「私、ね。孤白ちゃんとサッカーした時、すごく楽しかったの。それから…………。」
「…………。」
ワンテンポ置いてから現美ちゃんが丁寧に言葉を並べていく。
「……すごく、悔しかった…………。」
「え…………?」
自分が走っても走っても全力以上の力を振り絞って走っても追いつけないと思っていた人物からの意外な一言に、つい反射的に言葉を発してしまう。
「やっと、喋ってくれた……。」
「…………。」
「私……あの時、初めて自分の技を破られて…………すごく、悔しくて……。それから、いつも、練習中は孤白ちゃんのことを考えながらプレーしてた、んだよ。孤白ちゃんならどう動く、孤白ちゃんなら…………って。」
「…………。」
「周りからは色々、言われてたけど…………本当は……ずっと不安で。あの試合から孤白ちゃんと試合で当たらなくなっちゃったし。私は………………。」
背中越しの声がピタリと止んだ。
「………………現美ちゃん?」
そう返すが返答はすぐには返ってこない。
しばしの静寂の後、ゆっくりと現美ちゃんが言葉を繋いだ。
「…………私は、今までずっと、孤白ちゃんの背中を追いかけてここまで来たんだから……。孤白ちゃんの見えない背中を追いかけ続けてここまで…………。でも、やっぱり頑張りすぎちゃった…………みたい。えへへ……。」
背中に現美ちゃんの気配を感じながら絶句していた。
「ジュニアの試合で精神を壊して倒れるまで…………孤白ちゃん以外の選手には誰一人破らせなかったよ。」
…………これには自分でも理解が追いつかないほどのスピードだと自負できる。
背中越しに小さく膝を抱えながら気に寄りかかる現美ちゃんをその場に物凄い速さで押し倒した。
「ふぇっ!?…………あ……。」
「
「あ…………ちょ、ちょっと…………孤白ちゃん…………ま、待って…………。」
「答えてよ!精神を壊した?試合中に倒れた?どういうこと?私そんなの聞いてない!!」
「ま、待って…………ってば…………はぁ……はぁはぁ!!!……っはぁ……!!」
「…………あ。ご、ごめん。」
押し倒して怒鳴りつけた相手が真っ青な表情で呼吸を乱している姿を見て我に返った。
「…………はぁ……はぁ、ふぅ…………。ケホッケホッ…………。私!」
そんな過呼吸で苦しいはずなのに…………目の前の少女は弱気な引っ込み思案とは思えないほど真っ直ぐに私の目を見据えてきた。
「…………現美、ちゃん。」
「私!……はぁ……はぁはぁ!!……もう、孤白ちゃんを追いかけているだけじゃ…………嫌。私…………じゃ、力不足……かも…………はぁはぁ!……しれないけど……それでも!!私は孤白ちゃんの隣にいたい!……はぁはぁ……!」
「…………はぁはぁ!!……あの時、は敵どうし……だったけど……はぁ!ふぅ!…………今度は、孤白ちゃんと同じチームでサッカーしたい!…………ケホッケホッ……はぁはぁはぁ!!!…………だって…………だって……なによりもサッカーが好きだって言ってた孤白ちゃんがサッカーに興味がないなんて…………絶対に大嘘だから!!!」
「………………。」
…………やっぱり、現美ちゃんの方がずるい。
私は上半身だけ起こして尻もちを着いた状態で強く胸を抑えながら荒い呼吸を繰り返している現美ちゃんを落ち着くまで背中を撫でていた。
※
「そういうわけなので、改めて自己紹介を。天野 孤白です。よろしくね。」
いきなり押し倒された挙句すぐ近くで大声を出されたおかけで若干の過呼吸に陥っていた私の腕を肩に掛けて支えてくれながらグラウンドに戻ってきた私と孤白ちゃん。
待っていた3人に向かってまず第一声は謝罪の言葉を述べ、続いて今度はこのチームに入る意志を述べた。
「遅いんだよ全く。いつまで待たせんだ。待ちくたびれて帰るところだったぜ。」
「の割には1番ソワソワしていたのは友過さんでしょう?」
「…………桃華。この世界にはな、話すべきことと話さなくてもいいことってものがあるんだ。覚えておいた方がいいぜ?」
銀さんの一言に友過ちゃんが口元をヒクつかせながら苦笑いを浮かべた。
「いい表情。それでこそ天野 孤白だと思う。」
涙ちゃんもそんな中でふわりと微笑む。
「でもまぁ、タダでって訳にも行かないな。なんたって入部テストがあるからな。それに通れば晴れて私たちとチームメイトって訳だ。」
「入部テスト?」
「へ?入部……テスト?そんなのあったっけ…………。」
「私の時にやったアレだ。」
「アレって…………確か友過さんがただ勝手に勝負の話を持ちかけただけじゃ。」
「細かいことはいいんだ。で?やるのか?やらないのか?」
「ま、そっとしておいてやって。自分だけ負けて悔しいんだよ。」
「あぁ、なるほど。」
「涙、桃華…………お前らな。」
図星を突かれて肩を落とす友過ちゃんとそれに対して笑い合う涙ちゃんと銀さん。
つられて私も口元が綻んでくる。
「分かった。やろう。…………現美ちゃんは大丈夫?」
「へへ、そう来なくっちゃな。おい、現美。無理そうなら休んでていいぞ?」
私の体の事を気遣ってくれる孤白ちゃんと友過ちゃんに向かって、私は軽く首を左右に降ることで否定の意思を見せた。
「私
「
「そう…………。孤白ちゃんは、私たち、4人で止める。……孤白ちゃんは私たちから1点取れば、勝ち。私たちは孤白ちゃんからボールを奪えれば勝ち。」
「4対1、ですか?さすがにそれでは…………。」
「大丈夫。」
「…………現美さんがそう言うのでしたら。」
「私も構わないよ。じゃあ、着替えるから先にグラウンドに行ってて。」
「うん。」
深呼吸をして呼吸が落ち着いてきたのを再確認しつつ返事を返し、3人に視線を順番に合わせてひとつ頷き合うとフィールドに散った。
※(三人称視点)
「OK。準備はいいよ。」
制服から練習着に着替えた孤白がセンターサークルでボールを弄びなから目の前の4人に向かって声を出した。
「なんだよ、あれだけ拒否しておきながら練習着だけはちゃんと持ってるんだな。」
「素直になれなかっただけだったのですね。」
「ほ、ほっといて//じゃあ、現美ちゃん!」
「うん!孤白ちゃん。」
「いくよ!!!」
そう叫んで私は足元のボールを軽く蹴り出した。
続けて一気にトップスピードへ引き上げる。
「へっ!行かせないぜ!!」
まずは友過が最前線でプレッシング。
それを左右にボールをキープさせながら隙を伺う。
……いや、左右から抜くのは厳しそうだ。
友過の反応がいいおかげでどうやっても着いてくる。
「なら!」
横でダメなら他の選択肢は………………。
孤白は1度ボールを止めてから、右足でボールを跨ぐようにしながら前へ踏み出した。
そして右足の踵と左足のつま先を器用に使いながらボールを背後から空中へ。
「なっ!?ボールは!?」
プレッシングのために孤白の足元1点凝視だった友過はその一瞬だけで完全にボールを見失った。
「いや…………上か!?」
ヒールリフト。
しかも走り出すモーションと全くおなじモーションから繰り出す通常のヒールリフトよりも難易度が高めの技。
そのまま友過の左を走り抜けながら落ちてくるボールをピンポイントで右足に収めて抜き去った。
「…………おいおい、あんなのありかよ。」
友過は口元をヒクつかせながら苦笑いを浮かべる。
続けて今度は涙と桃華のダブルプレス。
「涙さん!ここで止めますよ!」
「当然!」
しかし、孤白はそれに臆することなくむしろドリブルのスピードを上げた。
「(……ここで立ち止まったら現美ちゃんにはいつになっても届かない!)」
ドリブルをしながら左手の拳を握ってそのまま胸の前へ。
ドクン
心臓が大きく鼓動を打った。
「(現美ちゃんに追いつくために…………いや、現美ちゃんの隣で胸を張って居られるように!!)」
ドクン
また1回。
「はぁぁぁっ!!!!」
握りしめた左手に真紅の光が収束していく。
「(……左……右………)そこだ!!」
「なっ!?」
「これって……。」
ドクン
ひときわ大きな鼓動とともに収束した光が解放された。
「アグレッシブビート!!!!」
真紅の残光と共に涙と桃華を一瞬にして抜き去り、最後、ゴールの前で待ち構える現美と真正面から向かい合った。
そして数メートル離れた位置でボールを止める。
「…………懐かしいね。この感じ。」
「うん。本当に…………。」
「でも、私は勝つよ。」
「私だって……負けない。」
その言葉を聞くや否やふっと小さく笑った孤白がうずくまるようなモーションと共に体の前で両の腕をクロスさせた。
刹那。
孤白の周囲を激しい気流が包み込む。
続けてボールとともにキリモミ回転をしながら大きく空中へ。
「これが!いつか現美ちゃんと戦う時のために密かに温めておいた必殺技!!」
上空高くで周囲に風をまといながら大きなテイクバックと共にボールを思い切り蹴りこんだ。
「スピニングトランザム!!!!!」
ボールを中心に渦巻く風が空気中を無数に切り裂きながらゴールへ向かって一直線に疾り抜ける。
その間に現美が割って入った。
全力で間に走り込んでその勢いを殺さないように右足のかかとを滑らせながら反転。
続けて左足で思い切り地面を殴りつけ、大地を隆起させる。
青白いオーラを纏った岩盤は現美の目の前で壁を作るように集結した。
「やっぱり………………孤白ちゃんは、凄い。でも、私も…………負けない!!」
「
次の瞬間。
孤白のシュートが岩盤を直撃した。
凄まじい衝撃波が周りに広がっていく。
そんな中、現美が最後に見たのは目の前の岩盤にヒビが入る瞬間だった…………。
はい
長々とお疲れ様でした。
スカウト3日目の選手は天野 孤白ちゃん(波の音様より)でした。
まずはありがとうございます!
キャラの概要欄で「ジュニア時代に少し有名だった」という設定から現美との二大巨頭にしてみました←
そして、「1度断る」「もう一度やりたくなる」という設定から現美と孤白のそれぞれお互いに対する評価を含めてもりもりしてたら展開がすごく重くなってきちゃいまして…………。
このままでは収拾がつかないのではと不安になったりもしたんですが…………意外と何とかなりました。
ちなみに最後の勝負の行方ですけど…………想像に任せます←(笑)
で、ですね。
今回の見どころは前回の「エクリプティカ」と同様必殺技の演出ですかね〜。
特に、「アグレッシブビート」は私自身特に気に入ってます←(笑)
ただ、原作とはカラーリングを変更しています。
「スピニングトランザム」と「
しかし!
私はこれからも必殺技は「演出」に最大限の力を注いでいきますとも!
せっかく皆さんが考えてくれたものなので出来るだけかっこよく!華麗に!ド派手に!をモットーにしていこうと思います!←(笑)
それから、技の威力は原作とは異なるので御了承。
恐らく原作通りの威力なら「スピニングトランザム」で現美の「大地の加護(ガイアズフォース)」にヒビを入れるのは無理かと。
そんな感じで出来上がりました現美ルート3日目。
楽しんで貰えたら幸いです←
良かったら、敵チームの選手もどしどし募集中なので気が向いたらよろしくお願いします。
では、さらば〜。