――私は死んだ。
起こした革命の果てに。
成した終焉の果てに。
――私は死んだ。
全ては、虐げられる人のため。
そう思って、行動した。
何度も何度も革命を起こして。
虐げるものを倒して。
何度も何度も人を助けた。助けたはずだ。
だけど、だけど。
――私は、間違っていたのだろうか?
いや、それはない。
弱いもののために戦うことが、間違っているはずがない。
それがもし、間違いならば、私の全ては否定される。
――私は間違っていない。
――たとえその結果、世界が滅びたとしても。
――間違っては、いないはずだ。
――ムーンセルの記録した。
――英雄■■■■■■最後の独白。
――俺は死んだ。
うん、なんか神妙な感じで始めたが、ぶっちゃけ、そんな雰囲気じゃない。
俺もう、笑っちゃってる。
……面白いことなんて一つもないが……
静かな空間に俺の笑い声が響く。
ここで一つ
「人は本当に想定外の事態にあったとき、笑うことしか出来ない生き物だ。」
名言風に言ってみた。まぁ、簡単に言えば、「こんなとき、どういう顔をすればいいか分からないんだ」「笑えばいいと思うよ?」つまりはそういうことだ。
……大分混乱してるな。こんなキャラではなかったと思ったが……
そんな、少しの笑みを浮かべてはいる俺がいるのはどこかといえば……
「海」である。
いやまぁ、呼吸出来ていることを考えれば、本物の海ではないのだろう。
そんな、不思議空間にいるにも関わらず、驚いてはいても、慌てはしない理由が、俺にはある訳だ。
それは知っているからだ。
不思議ではあっても、どうしてそうなったのかを知っているから。
そう、知識だ。
自分の、現代日本を生きた俺ではない何かの知識。
理解はした。だが、信じられるかはまた別だ。
だってそうだろう?
ここが、ムーンセルだなんて、
Fate/Extraの世界だなんて、信じられる、はずもない!
――と、俺が喚いた所で、どうにかなるほど甘くはないだろう。
本当に、ムーンセルだとすれば、そこは問題ではない。
問題は、ここが「どこ」で、自分が「何なのか」にあるのだ。
記憶喪失にでもなったような物言いだが、事実故に仕方がない。
どこか、というのは、ここが「月のどこなのか」という意であり、何なのかというのは、自分が「何と呼ばれる存在」なのか、ということだ。
この二つが俺を悩ませる問題だ。
――と、問題を提示したはいいものの、正直、その答えは分かっているのだ。
ムーンセルから与えられた知識の中に、しっかりと。
まぁ、俺が未だ、発狂していないのは、そんな知識のおかげではなく(言いきれるかといえばそうでもないが……)かつての、現代社会を生き抜いた「俺」の知識である。
一般的に、戦いとかとは無縁な人生をおくった「俺」だからこそわかることがある。
(日本文化は伊達じゃない、ということか)
憑依転生。
それはかつて、数えられない程にえがかれた、一次創作二次創作関係すら関係のない、1大ジャンルである。
異世界を生きる人間に、精神だけ憑依するというもの。
利点は、その人の肉体記憶が受け継がれるため、修行の必要がない。とかだろうか(一概にそうだと言えないものなのだが……)
Fateでいうと、どういうのがあるだろうか?
俺的にはアーチャー(赤と金どちらでも)あたりがチートでオススメだ。
……なんていっているものの、別に自分がそうなったというわけではない。
所謂、オリ鯖と呼ばれる存在に、俺はなったようだ。
しかし、オリ鯖とはいえ(だからこそ?)おかしな英雄になったようで……
まぁ、赤い弓兵クラスに、凄い所の英雄、と言ったところか。
もともと、あのアーチャーのステータスはあまり高くはない。(……まぁ、それを補う実力があるということだが。)俺が言いたいのは、アーチャーがリアルに「未来人」に近いということだ。
未来からの召喚。それがありならありだろう。
なんて単直な考えかもしれないが……
この体、どうやら異世界の英雄のもののようだ――
一つ、世界がある。
それは、「俺」の生きた現代社会。
これを世界Aとしよう。
もう一つ、世界がある。
それは、この体が、つまり『私』が生きた世界
こっちは世界Bとする。
そして更に、世界がある。
それこそが、俺が今いるFate/Extraの世界。
ここを、世界Cとしよう。
世界Aの人間の精神が、なにかの拍子に世界Cに来た。
世界Bの英雄の肉体が、なにかの作為で世界Cに来た。
それぞれは肉体と精神、片方ずつ持っている。
しかし人間は精神だけでは生きれない。
しかし英雄は肉体だけでは生きれない。
魂は体を欲し、体は魂を欲する。
その魂の前に魂のない体があった。
その体の前に体のない魂があった。
――その結果が、今、ということだ。。
異世界の英雄と異世界の人間。
立場もいた世界も違うが、異世界というのは同じである。
そして、どちらの記憶も持ち、どちらの経験も持つ俺は既に「俺」でも『私』でもない存在に、なったのだと思う。
人間でも、英雄でもない、サーヴァントである、俺に。
きっと、なったのである。
――とか決意をしてみたけれど、召喚されなきゃなにもなくね?
いいマスターだといいなぁ、と考えながら、俺は海をふわふわと漂っているのだった……
私は死ぬ。
漠然とした死への感覚に、私はただ、そう思った。
なんでだろうか?
なぜ私は死にそうなのだろう。
学校の用務室に入った。
一人の生徒を追って、入った。
中には一つ、人形が置いてあった。
声に従い、私に従い、戦う人形。
敵を人形が、切り裂き、倒していく。
――そして終点にたどり着いた。
そこはまるで、協会のような、聖堂のような場所。
そこには、見覚えのある、男子生徒の――と、その横に立つ、人形。
そして、それから私は――
私と一緒にいた人形と、同じような人形と出会って、負けた。
今まで、傷一つなかった私の人形が、脆くも相手の一撃で崩れ去る。
そして、唖然とする私に相手の尖った腕による攻撃が、叩き込まれた。
弱肉強食。
これが、真理だとでも言わんばかりに、容赦なく。
負けたら、死ぬしかない。そういうことなのか?
倒れる際に見えたー体。
周囲を埋め尽くす死ー。
まさか、あれもまた――
――周囲に転がる、数多くの死体もそうやって積み上げられたものだとでも?
――私も所詮、その人間の砂山の一粒に過ぎないとでも言うのだろうか?
死ぬというのは、こういうことか。
死ぬ感覚というのは、こんなにも。
――その時。
『……ふむ、君も駄目か』
――声が聞こえた。
失望したでもない、ただの呟きが漏れたような声。
『そろそろ刻限だ。君を最後の候補とし、その落選を持って、予選を終了する』
では、安らかに。
それを最後に、声は途切れた。
なんだそれは。その言葉は。
業務連絡のようなその声が、私に対する死刑宣告のようで――
終わる、私の生きた人生が。
私も、あの死体の山の一粒になる。
それは、憶測でも、予想でもなく、確定した、私の未来。
――もはや諦めるしかないのだろうか?
諦めれば、この私の体があげる悲鳴を、止められる。
この苦痛から逃れられる。
床を見つめることしか出来ないこの目を閉じれば、ここまでの、私の全ては終わってしまう。
なんとなしにあげた顔に、私の視界に、また、あの山が移り込む。
もう、男か女かも判別することは出来ないけれど、あれもまた私と同じ、敗者だ。
目を閉じれば、私もアレの仲間になる。
もういいか。
全力は尽くした。
だから、悔いはない。
もう、終わりにしようか。
体中に、痛みが走る。
激痛といってもよい程の、激しい痛み。
それほどの痛みなのに私は――
『む?』
――なのに、私は今立とうとしている。
理由は分からない。
死ぬのが怖いのか?生にしがみついているだけか?
ああ――そうだ。私はただ。
まだ、生きたいだけだ。
生きていたいと思うだけだ。
だから、死ねない。
――死にたくない!
全身に力を込める。
だが、立ち上がれない。
体が悲鳴を上げるばかりで、それは叶わない。
こんな無茶をすれば、死期を早めるだけだということも、分かっている。
でも、それでも。
それでも、構わない。
なにもしなくてもどうせ死ぬ。
だけど、たとえそうであったとしても……!
まだ生きたいからこそ――
――最後まで、最後の最後のまで、抗ってみせる!
「うん、いい答えだ」
どこからか、声が聞こえた。
普通の、男の声。
街中で友人に声をかけるような調子の、声。
その声は私に向けられた声。
「まさか主人公だとは思わなかったが……まぁ、なるようになるか」
その声は、段々と近づいてきていた。
それに呼応するように、体に力が戻ってようで、麻痺した体の感覚が戻る。
それと同時に、体を走る痛みも大きくなった。
――だけど、感覚が戻り、力も戻ったのなら。
――私は、立てる!
「うん、取り敢えずはその決意は上々、最高だ」
け……つい……?
「あぁ、決意だ。分からないなら聞いておこう、君は今、どうしたい?」
――私が今。
……はっきりした目標なんて、正直ない。
今の状況すら理解していないんだ。
彼の言う上々の決意というものなんて……
あるのは一つ、本能としての感情。
だけど、それでも、本能に近いものでも、私がしたいことは一つだけ。したくないことも一つだけ――
――私は、私……は……
――こんなところで、終わらないッ!
その時、この空間の中央に立つ硝子が砕かれた。
それと同時に、足音が、響き始める。
小さくも、大きなもの、私ですら、近づいてくるとわかった。
また、それが近づく度に体に力が戻る。
響く足音を気にせず、私は全身に力を込める。
ゆっくりと、立ち上がる私に気づいたのか、人形が、再び、私に近づく。
そして私に、その鋭く尖った腕が、振りおろされ――
――され、なかった。
その腕はまるで、何かに弾かれたように、そして、辺りに響きわたる金属音とともに、弾かれた腕ごと、人形が後ろへ吹き飛ぶ。
ストン、なんて軽い音とともに、何かが降りてきた。
「――――」
一人の男。
まるで東洋の人間のような、いや、それ以上に黒い髪。
さして高くも低くもない身長に、白い服を身にまとっている。
そしてその手に持つのは――
――ハンド・アンド・ハーフ・ソード?
1m以上ある、中剣とも呼ばれる剣が握られていた。
困惑した。あの中剣の威圧感もそうだが、いきなり現れた彼という存在に。
そして、彼は、その髪と同じ黒い目をこちらにむけながら、一言声をかけた。
「問おう、君が俺のマスターか?」
――何かが、始まった。
そんな感覚。
その質問の、意味も意義も分からないけれど――
――答えるべき言葉は一つだろう。
「わ……たし……が、私が……」
声が詰まる。それでも――
「私が貴方の、マスターだ!」
その言葉を聞いて、一瞬、驚いた顔をしたあと、彼は苦笑を漏らしながら。
「オーケーだよマスター。そのセリフもまた上々」
視界の隅で、立ち上がる人形を尻目に、彼はそう言い、今度ははっきりと笑った。
「じゃあ、早速、俺とマスターの初戦といくか」
「ッ、いたっ……」
彼が言葉を切るったと同時に、右手に鋭い痛みが走る。
――痣?
私が右手を見ると、そこには3画の紋章が刻まれていた。
「その紋章はマスターである称号。つまりはマスターも立派な……っと」
彼が説明するのを、人形が律儀に待つはずもなく……
彼に襲いかかる人形を手に持った中剣で弾き返す。
「いいか?マスターの役割は、サーヴァントに命令を下し、操り、そしてサポートすることにある」
彼は人形の攻撃を弾き避けながらそう語る。
――彼の、サポート。
そんなの、出来るはずも……
「今はできなくても構わない」
心を読んだようにそう言って。
「だから、今は、戦闘に慣れることだっ!」
轟音。
地鳴りのような、音が鳴り響く。
それが彼が地面を蹴る音だと気づいたときには既に……
「……よし、やっぱサーヴァントは強いな」
既に、人形に斬撃が叩き込まれていた。
一瞬の攻防。
先ほどの人形と人形の戦いもまた、同じ過程であったが、勝敗は真逆。
――しかし、私の状態は……
痛み。
傷つけられた痛みではなく、右手の放つ痛みで意識が飛びそうになる。
『その手に刻まれたものは令呪。サーヴァントを使役し、命令し、強化するための道具だ』
薄れる意識に、声が聞こえる。
令……呪……?
この痛みを放つものが、それなのだろう。
『ただしそれは、聖杯戦争への参加券でもある。全て使えば、マスターは死ぬ。注意しておくように』
――体が冷たくなった気がした。
先程の死の感覚がまた、蘇ってきたような気分だ。
聖杯戦争と言う言葉もまた、聞いた覚えがある、程度のものだ。
その声の言葉は続き。
『おめでとう。 傷つき、迷い、辿り着いた者よ。とりあえずは、ここがゴールという事になる。そこの存在もまたおかしなものだが……まぁいいだろう』
それは私と彼に向けられた言葉。
『未熟な行軍だったが、だからこそ見応えあふれるものだった。数多くのマスターを見てきたが、君ほど無防備なマスター候補は初めてだ』
『誇るといい、君は臆病だったが、蛮勇だった』
私と彼に対する言葉を紡ぎ、そして――
『光あれ』
その言葉を最後に、意識が一気に遠のいていく。
薄れいく意識のなか、最後に聞こえたのは――
――いかなる時代、いかなる歳月が流れようと、戦いをもって頂点を決するのは世界の摂理――
――月に招かれた、電子の世界の魔術師たち。汝、自らを以て最強を証明せよ――
ただ一つの開戦の、合図だ。
――これより、聖杯戦争を開始する――
なんか前より随分ながくなったなぁ、という感じだぜ!……続きはいつになるかなぁ
誤字脱字指摘や感想お待ちしてます。