来週から、この時間になると思いますが、よろしくお願いします!
では、二回戦もお楽しみに!
一日目
参戦人数 64人
聖杯戦争二回戦
――開幕――
二回戦が、始まる。
慎二の死と、凜から投げられた言葉に、私の精神は、心は、混乱していた。
まるで、心に穴が開いているようだ。
覚悟と気概という名の、二つの穴が、ぽっかりと。
凜の言葉は、正しい。戦争が人を殺すのは当然のこと。
私だって、それは受け止めきったと考えて、いや、それは結局のところ過信しすぎの勘違いでしかなかった。しかしそれでも、理解ぐらいはしている。
だけど、頭が理解していても、心がそれを受け入れないのなら、理解も誤解も関係ない。受け入れられないものが真実でも虚実でも変わらないように。
――わからないのだ。どこに進むべきなのかが、さっぱり。
当たり前だ、覚悟も気概も、持っていないのだから――
「マスター」
なんて、迷い故に、部屋から出ようとしない私を見かねてか、セイバーが声をかけてきた。
「君も、理解はしているだろう。凜のいうことは正しく、殺される覚悟も殺す気概もない人間は戦士ではなくただの人だ。戦いにはまったく向かない、な」
――わかっている。そんなことは。
彼女の正しさも、私の無力さも、全部。
「だがマスターは、違ったはずだ」
――ち、がう?
「ああ、そうだ。お前は、俺をよんだ。その時に、君は言っただろう。こんなところで終わらないと。死にたくなど、ないと」
「――でも、それはっ!目標とは、違うものでっ……!」
「変わらないさ。生物の根本にある大きな願いだよ、それは。生理的であれ、社会的であれ、それが願いであることは変わらないし、人に否定できるものでも、否定されるようなものでもない」
――生きる、ために?
私は、生きるために、戦うべきだと?
「正直、さっきは正しいといった凜の言葉も、俺に言わせればただの正論。正しくはあるが現実的じゃない。俺が必要だと思うのは、少し違う」
「――大事なのは、殺されないという気概と、そのためになら何でもするという、覚悟だ」
――それは、殺される覚悟などではなく、殺す気概などではなく。
――殺されたくないという、気概と覚悟。
「――知っているか?サーヴァントの召喚というのは、マスターと似た英雄が召喚されるものだ。自分で言うのもなんだけど、『俺』が生きていた理由なんて、実際そんなもんだったさ。そんな、適当な殺される覚悟と殺す気概で、『俺』はいつの間にか英雄にまでなった。ならきっと――」
――お前だって、英雄になれる。
凜の話に比べれば、随分とおかしな話に聞こえた。
そんなんで英雄になれるなら、全人類が英雄になれる。
それに、正論は正しいだけだというけれど、それは自分の言ってることが正論でなく正しくはないことだといっているようなものじゃないか。
正しくなくてもいいなんて、そんな言葉を、たぶん言いたいんだと思う。
英雄らしくないとだって思う。
そんなめちゃくちゃで、稚拙で、適当な理由だけれど――
――私の今の目標が、決まった気がした。
――カチリと、音を立てて私の心の穴を、埋めた気がした。
――恥ずかしい。
二回戦になって早々に俺は何を言っているんだ……!
殺されない気概と覚悟、それが一番大事なことさっ!みたいな感じだったよな俺!?
……くそ、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。もしかしてこの前マスターを恥ずかしい目に合わせた罰だとでもいうのだろうか?……あり得るかもしれないと思ってしまえるのが不思議なところだ。
――さて、俺の恥ずかしい話は、俺の精神衛生上よくないのでここまでにしておこう。
閑話休題元のお題に、というやつだ。
とはいえ、まだ問題提示すらしていないのでそこから始めるべきだろう。
二回戦の一日目となり、俺の頭を悩ませるのは、当然というか一回戦から何も変わらず、ぶっちゃけ勝てなくないですかコレ?ということに尽きる。
現在、俺とマスターは、対戦相手決定の知らせを受け、掲示板へ向かっているわけだが……俺には当然対戦相手が誰なのかはわかっている。一回戦よりも、俺からすれば厄介な相手だと、正直思う。
対抗手段がないわけじゃないが、それでも苦戦は必至、簡単に勝てるなんて確実にないだろう。
「あ、これだよね。対戦相手」
掲示板の前に立ち、軽く確認の声をかけたマスターにうなずきを返すと、マスターはそこに書いてある文字をよんだ。
一回戦の時と変わらずに、二つの名前だけ示された紙。
――ちらりと見た紙に書いてあったのは、どうか対戦相手が変わって弱いやつに当たりますようにと願う俺を大きく裏切るもので――
マスター:ダン・ブラックモア
決戦場:二の月想海
「ふむ、次の対戦相手は君かね」
いつの前にか、マスターの隣に立った男(俺は気づいたが)が、紙を見つめるマスターに話しかける。
――やばい。この人は、本気でやばい。
そう、感じさせるような人間だった。
髪は混じりけのない白髪だし、顔や体にも老いが見受けられる。
しかしそれでも、衰えを感じることが、まったくできない。本物の戦士、いや兵士というべき風格だ。
まるで年月を重ねた大樹のように揺るがない芯の強さが、衰えを消しているんだと思う。
原作の時から思っていたが、実際に見ると思っていたのよりも数倍は雰囲気がある。勝てないんじゃないかという不安を強める雰囲気が。
「……若いな。実戦経験はほぼ皆無。相手の風貌に臆するその様が、それを示している。そして何より、その目は――」
――迷っているな。
そんな風に言い切って見せる彼からは、まったくその迷いが感じられなかった。
残念だ。そう言い残し、去っていくのを、俺とマスターは、見送ることしかできなくて……
「あれは手ごわいぞ。マスター」
そんな風に、マスターに声をかけてみるが、雰囲気にのまれているのか、返事がまったく帰ってこない。
ちらり、とマスターに目を向けると、こちらに気づいたようで、ハッとしてこちらを見つめる。
「……あれは歴戦の兵士とでもいうべき人間だ。高い洞察力に自信。そしてその二つを勘違いと過信にしない戦闘年月。間桐慎二とは、比べることすらできない相手だ」
――だから、勝つためには。
そう、言外に伝えたのが、きっちり伝わったのかいないのか、マスターはコクリとうなずき、彼が去って行った廊下の先を見つめていた――
「で、どうするマスター?アリーナへ向かうか?」
ダン・ブラックモアとの初対面を終えた後、私に声をかけたセイバーが言ったのは、今後の話。といっても、今日これから程度の今後だけど。
……直ぐアリーナに向かうのも、アリと言えばアリだ。とりあえずやることもないし、どうせ
なんて、悩みながら歩いている私の視界の端に、見覚えのある赤色が見えた。
あれは……
「遠坂凛か……どうやら屋上へ行くようだが……」
そうつぶやいたセイバーは、確認を取るように私を見た。……うん、私も思っていた。とりあえず、凛に話を聞いてみよう。何といってもあの遠坂凛だ。私の対戦相手のことを知っていてもおかしくない。
それに――私の、一時凌ぎの答えも教えなければ――
そう思い、一気に駆け上がった階段の向こうにある扉をあけると、初めてあった時と同じ場所に、彼女は立っていた。
凛も扉を開けた私に気付いたようで、こちら側に近づいてきた。
「あなたの二回戦の相手、聞いたわよ」
聞いた?誰に、という疑問が真っ先に上がってきたが、それを飲み込み別の言葉で返す。
「知ってるの?」
「まぁ、ね。もう現役じゃないけど、
――軍人、なるほど。彼の歴戦の戦士とでもいうべき雰囲気はそういうところからきていたということだろう。
「西欧財閥の一角を担う王国の狙撃手でね。匍匐前進で一キロ進んだとか、そういう逸話すら出るような人間よ。事実にしろ何にしろ、並の精神力じゃないのは確か」
「匍匐前進で、一キロ……」
「そ、ここまで言えばわかるでしょ?一回戦とは何もかも違うの。根性論は好きじゃないけど、勝利への執念は目的から、記憶が戻らないってのは、結構ヤバいわよ?」
記憶が戻らないのは大変、か。
でも、聖杯戦争は個人の戦いだしそれほど影響を及ぼすようなマイナスには思えな――
「――それが違うのよ。勝利への執着イコール集中力よ?義務だけで戦えるのなんて、それこそ軍人くらいね。あなたにはそれが不足している。一回戦勝ったとしてもまだふわふわしてんのは、そういうことよ」
――記憶がないから、か。
一応、この聖杯戦争に参加しているということは、私にもかなえたい望みが願いがあったということだろうか?
「それじゃ、どんなに宝具が強くても、あっさりダンに殺されるでしょうね」
「宝具が、強くても?」
宝具、というのは、セイバーが教えてくれたあれだよね。英雄の必殺技みたいな……
「必殺技って……あなたのところのサーヴァントはそんな説明したの?でもま、間違ってはいないか、それを持ってるサーヴァントらしい言い方といえば言い方だし」
しかし、それが強力?名前と、必殺技ということから、強力な一撃を放つものだと思っているのだが、セイバーがそんなものを使ったことがあったか?
確かにセイバーは宝具を使ったといったが、てっきり私は普通の武器として使っただけだと思うのだが……
「……宝具を開放してない?つまりはサーヴァントの力を開放してないってこと?そんな状況でエル・ドラゴ倒したわけ?」
……やっぱり、凛も知ってたみたいだ。まぁ、あそこまで言っていたから、そうだとは思っていたけど。
今の問いにはうなずくしかない。私が見る限り使ってない……と思う。
後ろからすごい暗い気配がするけど気のせい、だよね?
「……私はてっきり桁違いの宝具を持ってるサーヴァントを引いてその宝具頼みで倒したと思ってたわ……ちょっと、見直したかも」
後ろの暗い気配が、さらに落ち込んだ気がするけど、気のせいだと思いたい。
目の前に立つ凛はそんなことは少し笑顔になったが、そのあと、また鋭い顔つきに戻った。
「でも、ますます危なっかしいなぁ。予選を突破したのに記憶を取り戻していない事といい、宝具を使っていないことといい」
「危なっかしいって……宝具だって使い方とかわかんないし……」
「別に使い方はあなたじゃなくてサーヴァントが知ってればいいんだけど……もしかしてあなたのサーヴァント宝具使えないんじゃない?だって格上との戦いで戦闘のプロとも言えるサーヴァントが宝具を使わないなんてありえないわよ」
「……確かにそうかもしれないけど」
「なんにせよ、問題を抱えすぎているのは確かね。バグでも発生してパーソナルデータに傷をつけたか、それとも魔術回路あたりに異常があるのか。いずれにしても何とかしなきゃいけないのは確かなわけだし」
そんな風にアドバイスしてくれるのはうれしいし、こちらとしても助かるのだが……
「別に、助けようとしてるわけじゃないわ。結局私は何もしてないわけだし。それにそんなに悲観することでもないと思うわよ?だって
――運営からの支援、か。
確かに、これは戦争であっても個人の能力以外の点では公平がなされているようだし、そういうこともあるのだろう。
バグが起こったお詫びに、アイテムプレゼント!みたいなことがあるのだろうか?
「うん、ありがとうね凜!気が楽になったよ!」
「ふぅ……別にあなたの気を楽にしようとしたわけじゃないから気にしなくてもいいわよ。それに、そう思うならさっさと
そんな、ちょっと照れたような凜の言葉に力強くうなずき、階段の方へと走っていった。
よし!これからアリーナにいってさっそく!……?
あれ?なんでセイバーはそんなに落ち込んでるの?あれ?
――なにこれすごく気まずい。
なにやってんだ昨日の俺!せめて真名開放したことぐらい言っとけよ!いや、違うんです遠坂さん、宝具使ってないとか、使えないとか、そんなことは全然ないんです。むしろバリバリ使って戦闘の度に使っている勢いです。はい。
……これ終わったらマスターにしっかり説明しないとだめかもしれない。でも、マスターもどうなのさ!?確かにエクスカリバーとかゲートオブバビロンとかに比べたら地味だけどさ!頼むから気づいてよ!俺の宝具の使用にさ!それに確か俺言わなかったっけ!?宝具使ったって言ってなかったっけ俺!?
とかなんとか言っている間に階段をさっさと下りていくマスター。
はぁ、とため息をついて、俺も階段を下りていく。
二回戦ともなると、やはり校舎内で見かけるマスターも少ない。まぁ、どんなことでもトーナメント形式の戦いは一回戦で半分が消えるわけだし、当然といえば当然か。
……あれ?なんか忘れているような気がするんだけど。気のせいか?
「……?どうしたマスター?急に止まって」
「あのさ、セイバー」
いきなりなんだ、改まって。
「宝具、今使わなくてもいいからね?」
……はい?今使わなくてもいい?
いや、それどころか今までバンバン使いまくって……
「だって、ほら。宝具って英霊を象徴する切り札、なんでしょ?だから、最後まで使いたくないっていうのは私もわかるし……」
――なにか勘違いしていませんかねマスター!?
違います違います!俺はそんな戦力温存みたいなことなんてまったく考えてないですって!
「いや、マスターあのな……」
「ううん!なにも言わなくていいよ!ほら!アリーナに向かおうか!」
――あれぇ!?なんかおかしくないかマスター!
アリーナへと早足で向かうマスターの後ろから慌てて声をかかけ――
「マス――」
「しっ、静かにっ」
――ようとしたらマスターに止められた。どうやら、アリーナの前に敵のマスターがいるようだ。
……いくら慌ててたからって気づかないのはよくないな。気を引き締めなおさないと……
「二回戦の相手を確認した。まだ若く未熟なマスターではあったが、一回戦を勝ち残ったのは確か。油断も予断も独断も、関心はせんぞ」
そんな風にダンが声をかけるのは自身のサーヴァント。
「わかってますって。どんな相手でも手加減なしでぶっ殺しますよ。ま、相手も一人殺してるわけですし?一回戦より気はらくじゃないすかね。ほら、精神的に」
やっぱり緑ち……あのサーヴァントか……!
「それを油断というのだがな……ともあれ、一回戦のような独断をしなければ文句はない。この戦場は勝つだけでは許されぬ戦いだ」
「あーはいはい、わかりましたよ。ったく口うるさい爺さんだぜ」
原作通りに、ひょうひょうとした態度を見せる彼は、サーヴァントらしくないといえばらしくない。
「サーヴァントに外見があてにならないのはわかっていると思うが一応言っておく。一回戦と同様、強力な相手であることに変わりはない。気を引き締めていけ」
こくり、とマスターがうなずくのとほぼ同時に、彼らはアリーナの中に入っていった。
「よし、俺たちもいくぞ」
「うん!」
俺とマスターはそのまま中に――
あれ?だから何か忘れているような?
――何を忘れてるんだ俺は……!
「ん……っなに……これ……?」
アリーナに入った瞬間、俺とマスターをまとわりつくような空気が流れ込む。
その空気が、手に、足に、体に、心臓に、そして脳に、危険を告げる。
そうか、これは、このイベントは――
――あいつの、毒だ!
このイベントはこれからを左右する重大イベントだろうに……!何をやってるんだ俺は……っ
たしか、これを生み出すのは木だったはず、それを壊せば――
とにかく、急いでいかなくてはならない。だからマスター、速く走って……!
……ん?あれ?なんかこんな危険な場面にふさわしくない発想が思い浮かんだきがした。
え?なに?またやんのこれ?でも、やっぱりそれしかないよね、これ。
つまり、このイベントってもしや――
――
――まるで、地面に足が縫い付けられているようだ。
アリーナに入った瞬間に感じた不快感に疑問を感じる間もなく襲ったこの重圧。
――立ち止まるな。
頭の中で警告が鳴らされる。
だけど、それでも動かない。本能が恐怖という
わかっている。
ここにいればいるほど、私の命は削られるということぐらい、私には理解できている。
だけど、それでも、足が動かない。
意志の力だけではどうにもできない力が私の足に――
「マスター」
そんな、絶望の中に、セイバーの声が響いた。
「最初に、謝っておく。すまない」
……はい?え、なんで謝ったの?それじゃ、まるで。
――ここで負けてしまうかのようなタイミングだ。
――それは、だめだ。
そう、私が心の中で思っても、それが口から出ることはなかった。いや、出せなかった。
こんな風に立ち止まっている間にも、この空気は、私の体をむしばんでいる。
足が地面に縫い付けられたように動かないし、その足にすら、力が入らなくなってくる。
そして、私が感じるのはただ一つの現象。この聖杯戦争の予選を抜けるときに感じたものと同じ。
――圧倒的な、『死』という現象。
脳裏に、あの時の死体の山が思い浮かぶ。
私はあそこを超えた。一回戦も超えた。
死体の山を踏み越えて、慎二の死体を踏み越えて、そして私はここでその死体になるとでも?
それがどんなに絶望的なことかは、わかっている。
本能が、理性が、すべての感情と心が、私に動けと叫び続ける。だけど、動けない。
その叫びは、肉体には届かない。手も足も動かない、いずれは心臓すらも――
なんて、思った瞬間、足から力が抜けた。
普通に立っていた私は、それと同時に前のめりに体が傾き、地面に倒れ――
「……もう一度謝る。すまない」
――倒れ、ていない。
倒れる寸前に聞こえたセイバーの謝罪の声。それと同時に感じた浮遊感。
しかしその浮遊感は、今も途切れず続いている。
そこで、私は、限、界を――
――私はそこで、気を失った。
「マスター、気を失うにはまだ早いぞ」
――木を倒した。マスターが気絶している間に、迅速に。
「……え?あれ?あの変な感覚は……?」
「あぁ、あれはどうやら敵サーヴァントの仕業のようでな。結界でも張ったのだろう、今結界の起点を破壊した」
「へ?あ、そう……なの……?」
……どうやらマスターは状況に追いつけてないらしい。
でも、こちらとしては好都合といえば好都合。さっきの行為をマスターが見ていないし覚えていないのなら、それはそれで好ましい。……マスターに二度も恥ずかしい目に合わせたとなれば俺がどんな目にあうか。
「毒が消えたばかりでそうなるのもわかるが、呆けている場合ではないぞ、マスター」
マスターがそれに気づかないように、話題をそらす。
軽く、指をさした先にいたのは――
「――あれ、ダン?」
対戦相手であるダン・ブラックモアとそのサーヴァントである緑ち……彼がそこに立っていた。
……最近、性格の『俺』の要素が占める割合が多くなっている気がする。
「これはどういうことだ?」
歴戦の雰囲気を崩さずに、静かに怒りを燃やすダンの姿は、正直サーヴァントである自分のほうが強いとわかっていても怖い。いくつになっても母親に怒られるの怖いのといっしょだろうか?……違うか。
それに、飄々とした態度を崩さない彼も、随分と良い性格をしていると思う。
そんな彼には、今の質問の意味が分からなかったようで。
「へ?どうもこうも結界張ったんですよ、勝つために。わざわざ決戦まで待たなくてもここでおっちんでくれるなら楽で来て万々歳でしょ」
それは、俺からすれば正論だ。隣で驚くマスターには悪いと思うが、実際俺もそう思う。実際、俺は一回戦でもアリーナでライダーと戦った時も宝具を使ったわけだし。
「……誰が、そのような真似をしろと命じた。死肉をあさる禿鷹にも矜持はあるのだぞ」
しかしそれはダンの方針には合わないものらしく、鋭く言い返す。
――方針での食い違い。マスターとサーヴァントの協力が勝利のために必須であるこの戦いにおいては、絶対に起こってはならないことだ。
「イチイの毒は不要だと、決して使うなと命じたはずだが……どうにもお前には、誇りというものが欠落している」
「誇り、ねぇ。そんなもん求められてもこまりますよ、俺。実際、そんなもんで勝てるなら最強でいいんですけどね、残念ながら俺はそんなこと出来ねぇのさ。だから毒に頼って殺す。誇りなんてもんで倒すなんてよりはずっと現実的だと思いますけどね」
「……ふむ、なるほどな。条約違反に奇襲、裏切り。それがお前の戦いだということか」
結界を張ったサーヴァント。俺からすれば、それは勝つために必要な決断だ。
時には、ルールすら破らなければ、勝つことはできても勝ち続けることなどできはしない。
しかし、それをせずに勝ち続けてきたマスターとしては、それは受け入れられるものでは――いや、受け入れられないのはもっと別の理由、だったか。
「ま、その結界も解かれちまったみたいですけどね。まさかあんなスピードでいくとは――」
「今回は、これまでにしておく。だが、次に信義にもとる場合があれば――」
サーヴァントの軽い返事とともに、二人の気配は消えた。
「毒……か……」
小さくつぶやくマスターに、やはり大変な戦いになりそうだと再確認する。
「マスターとサーヴァントの不仲。俺たちが勝つためのカギになるかもしれないな」
「あ、そっか。そういうことも、勝利のためには……」
「なんにせよ、警戒を怠るべきでないのは確かだ。気を引き締めていくぞマスター」
――この戦いは、マスターにとっても有意義なものとなるだろう。
うん!とうなずくマスターを見てそう思う。
歴戦の兵士たる彼らから、学べるものは多いだろう。俺もマスターも、まだ成長途中だ。
俺も、頑張らなければ――
「――そういえばセイバー」
「――?なんだマスター?質問か?」
「あ、うん。ちょっと疑問なんだけどさ――」
「――なんで私気絶してたのに、いつの間にこんなところに移動してるの?」
――あ、気づいちゃいますよね。はい。
本日の成果
セイバー おんぶじゃないよ!コレ本当に!
はくのん お姫様抱っこのほうが恥ずかしいよ!
……追記
セイバー あれ?なんか解かなきゃいけない誤解があったような?
誤字脱字感想お待ちしております!