――三日目、である。
結局あの後
私としては、一回戦のような無茶はあまりやりたくない。
まぁ、セイバーも。
「あんなものは慎二だから通用したようなものだ。二回戦以降の敵には通用しないだろう」
とか言ってたから、たぶん二度とやることはないと思うんだけど……
結局無茶をやらされた一回戦を思うと、二回戦はどんな作戦で突破するんだと思ってしまう。
セイバーも慎二だから、なんていっていたが、事実その通りで、間桐慎二以外にはたぶん通用しないんじゃないかと、随分と慎二を下に見るものだ、なんて考えながらもそう思う。
……まぁ、私たちがさんざんそうやって下に見て卑下している慎二より、私は弱いわけだけど。そこら辺、セイバーもわかっていて言っているのだろうか?もしかしたら、自分のマスターだからなんて曇った目で見ているのではないかと思うぐらいにセイバーから私の能力への不満は出ない。
まるで私のことを知っていて、こんなものだと納得、いや私だったら知っていても納得はできないから……そう、まるで――
――まるで私が今は弱くてもこれから強くなると思って、いや強くなることを知っているぐらいのことはないとあんな態度はとれないんじゃないだろうか?
まぁ、まさかそんなことがあるわけもないし、もしわかっていたとしたらそれはセイバーの観察力の高さが要因だろう。
「マスター」
「……ん?どうかしたの?」
「いや、今日の方針は、どうするのかと思ってな、まだ二階層は開放されないようだし……」
「あ、そうだね。とりあえず昨日取ったやつ渡しにいこっか、あの矢みたいなやつ」
「みたいなやつではなく矢そのものなのだが……」
――そんな細かいことは気にしない!
というかセイバー、そういう突っ込みはよくないと私は思います。……人のミスをそういう風に言うのは、ね!
「あぁ……普通にミスだったのか……いや、なんでもない」
私がじとー、とした目で見ると、すぐにセイバーはばつの悪そうな顔をして、前を歩き出した。
――速くいくぞ、ということなのだろうか?
「あ、うん。確か三階の奥だったよね?」
「ん……確かな、彼女はそういっていたが」
そんな風に歩き出した私たちは、とりあえず一つ階を上がって三階に来た。
廊下の先で外を見つめる彼女のもとに、階段近くにいた一成に挨拶をしてから近づいていく。
「遺物を持っていますね。見せてください」
ラニはこちらの顔を見るなりそういってきた。
まるで確信をもっているかのような聞き方だけど、これも星を詠んだってことなのかな?
そんな疑問を抱きながら、私が持っていた遺物を見せると……
「これだけあれば十分。星の満ちる日――五日目にまた来てください。結果もその時お伝えします」
それだけ言って、また窓の外に目を向けた。
……あれ?会話とかないの?世間話とか。
「あ、うん。じゃあまた五日目に」
それに対してこんな返ししかできない私も私だけれど……
「そういえば、一つ言わせてください」
「……え?何?」
後ろを向いて立ち去ろうとした私に話しかけてきたのは、当然先ほどまで話していたラニで……
……?もしかしてさっきの世間話どうこうのあたり口に出してた?だからそれをしようと……
「――勘です」
「あの、世間話ならつきあ――はい?」
「だから、勘です」
――勘?それはいったい……
「なぜ遺物を持っているとわかったのか、その答えです」
「あ、なるほど。勘ね。ありがとね!わざわざ!」
ぺこりとお辞儀をしてくるラニに私もお辞儀をし返して、今度こそ体を翻し去っていく。
にしても、勘か。なんだ、勘と言われれば納得もできるしそういってくれればよかったのに――
――って勘!?占星術とかじゃなくて!?
この時、思わずすごい勢いで振り返ってしまったのは数多い私の恥ずかしい話の一つである――
--何やってるんだマスター?
ラニの返し、いやボケを間に受けたのか、それから階段を降りているときも考え込んでいる様子だ。
……あのラニがボケとかすることに驚きだが、素でやってるとしたらちょっと怖いので意識してのボケだと思うことにする。
……それより問題はこれからだ。
本日やることなんてあるのだろうか?どうも最近、記憶力が低下しているというか……いや、違うな、どちらかといえば記憶が薄くなっていく感じだ。
俺の記憶ではなく、『俺』の記憶でもない。
つまりは、『私』の記憶。
とはいえ多分、これは忘れたとかそういうことじゃないと思う、事実原作知識だって全て覚えている訳じゃないしな……忘れたわけではなく元々覚えていなかった、って所だと思う。そう思う理由なんてのは……そう、これこそ勘でしかないんだけど。
--そんな風に、アホみたいに考え込んでいるマスターと、それこそ意味のない考え事をしていた俺に。
--突然、唐突に、敵が現れる。
体が、沈んだ。
俺の、ではなくマスターの体が地面へと沈む。
体が重いのはマスターだけではなく俺もだが、耐えられたのは単にサーヴァントであったが故だろう。それ以上も以下もない。
「……な、にっ、これっ!」
小さく叫ぶマスターは、何とか立つことは出来たようだ。足が震えてはいるもののその場で立ち上がる。
そして、マスターにも分かっているのだろう、この足が地面に縫いつけられるような、縛り付けられたこの感覚がなんなのか、誰が起こしたものなのかということを。
「振り向くなよマスター。殺される」
簡潔な注意にマスターは頷くと、こちらを見る。
「さ、サーヴァントだよね?ど、どうするの、ここから」
「走って逃げるしかないだろう。アイツがどんな攻撃をするか分からない以上な」
こくりと頷くマスターに、アリーナの方に視線を移し合図する。
「確認の余裕はない、一気に走り抜けるぞ」
--その言葉とほぼ同時にアリーナの方向にマスターは走り出した。
後ろからの視線は何も変わらず、こちらに手を出してくる様子も見られない。ならば、走りきれない理由もなく--
「はぁはぁ……ここまで、くれば大丈夫、かな……?」
立ったまま息を整えているマスターには悪いが、どうもそうはいかないらしい。
サーヴァントとなったからか、それともこの体が元々そういう能力があったのか、鋭くなった感覚が叫び続ける。
--これが、殺気か……!
「殺気、まだこちらへの狙いを外してはいない」
「っ!なら、どうするの?」
「もう少し進むぞ、ただ嬲り殺される趣味はないだろう?」
こくりと頷き走るマスターの背を見ながら、俺もそのあとに続いてゆく。
殺気の強さは変わらないが、それはまだこちらに追いついていないからなのか、それとも追いついていてもそれを変化させない、だけなのかは分からないが……
今はとにかく逃げるしかないだろう--
--大きな、広場のような場所に着いた。
心臓が、鳴らすアラートは私に向かって限界を叫ぶ。
これ以上走ることなど出来ない--そもそもあの毒のようなもので限界だったのだ。その上ここまで走ったのだ、自分的にはよくやったと褒めたいぐらいの--
「--予想通り、ほんと助かるねこんな簡単にいくと」
そんな軽い声が、後ろから響いた。セイバーのものじゃない、これは相手の、サーヴァントの--!
先ほどとは違う叫びを、心臓が、心が上げる。逃げないと逃げないと逃げないと--!
だけどそれ以上歩くことなどできは--
「本当に助かるな、こんなに予想通りだと」
風きり音と金属音。
連続して響いたその音はこちらを狙った矢を、セイバーが防いだ音。
「済まないなマスター、俺が背負えば良かったのだが、それでは奇襲に対応が--」
そこまで言ったセイバーの言葉は、そこで途切れた。
あぁ、違うよセイバー、これはセイバーのせいじゃなくて、逃げるしかなかった私の--
--二連撃、いや、一度に二つに矢を放ったといったほうがいいような、そんな攻撃。
鈍痛。
微かに腕に刻まれた傷が、それを放つ。矢ではなく、なにか鈍器で殴られたような痛み。
セイバーは確かに奇襲に対して的確な対応をした、問題は私にあって--
「くそっ……!忘れてたじゃすまないぞ……!大丈夫か、マスターっ!」
こちらに話しかけるセイバーは。今まで見たこともないくらい必死な顔をしていた。自分のせいだと、そんなことを、思っていそうな顔だ。
「でも、これで分かったよ、ね……これだけの射撃、相手は多分アーチャー、だと思う、よ?」
それを聞いたセイバーは、目を見開きさらに、顔を曇らせる。あれ……これ結構良い情報だと思うんだけど……?
「く……そっ!マスター今からマスターを担いで逃げる!文句は言うなよ!」
「いうわけ、ない、よ」
そう返した私は、ソレガ精一杯で。
そこで私の意識は落ちた。
だけど、私は見たんだ。最後に、気絶する前に。
--セイバー、泣いてた?
私の気の所為、かなぁ……
本日の成果
セイバー ………………………………………………
はくのん 相手のクラスがわかったよ!
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