――俺とマスターは、教会に来ていた。
ゲームとは違い魔法使いも人形師もいない。これは一回戦の時にわかったことで、ならばここに来る意味などない。
――なら、なぜ俺はここにいるのか。それはマスターが行きたいといったからに他ならないのだが……
「……セイバー、大丈夫?」
「……特に問題はないが」
「そう……ならいいんだけど……」
さっきからマスターはこの調子だ。俺の心配ばかりして、歩きながらこちらをちらちらと覗き見ている。
――ここに来るより先に、ラニのところへ行くべきだったのではないかと思わないでもない。先日ラニは、五日目になれば詠めるといっていたし、今日がその五日目だ。
まぁ、マスターが行きたいというのなら、反対をするつもりはないのだが。
「……あれ?あそこにいるのって」
教会の扉を開けたマスターが、少し高い声を上げる。
その視線を追ってみると、一人の男が教会の中央に立っていた。
「――む、君たちか」
――ダン・ブラックモア。
俺たちの対戦相手が、そこに立っていた。
「こん、にちわ」
「ああ、昨日はすまなかったな。命にかかわらなかったことは不幸中の幸いだと思うが」
――不幸中に幸いなんてあるものか、なんてそんなことを言える空気ではないのはわかっているが俺だからこそ思ってしまう。
そもそも、俺があんなミスをしなければその不幸すら起こらなかったのだ。不幸中なんていわなければならない状況になった時点で――
「でも……あなたは令呪を……」
――令呪。
それぞれのマスターに与えられた三つの絶対命令器にしてサーヴァント強化装置。
聖杯から与えられたまさしく例外にして万能の奇跡。
そんなものを使ったことは、やはりマスターも疑問に思ったらしい。
「それは、自分でもどうしてかと思っていた。まさか三つしかない令呪を二回戦で、しかも敵の利のために使うとはな」
なんて、まるで後悔しているかのようなセリフだが、その口調からはその感情は読み取れない。
「だが、それは今になって思えばに過ぎん。あの時は、それが自然なことに思えた。理由は……」
「……国のため、ですか?」
「知っていたのか?そうだな……いや、それはたぶん違うのだろうな」
「違う?」
「ああ、これは私の
――ならば、なぜ。
それは、マスターだけじゃない。俺の気持ちでもある。
俺には原作知識があって、この人の気持ちも過去も戦う理由も知っている。だけどだからって、そこまでできるとは思えない。
「しかしな、あれをやったのはおそらく、妻のためだろう」
「つ、ま?」
「ああ、もう顔も声も面影すら思い出せない妻だが、あの時思ってしまたのだよ、こんなわしを妻は喜ぶのかと」
最もらしい、理由だ。
戦い、自分を貫くには、十分どころか十二分。それは人を殺し、殺される覚悟を持った人間の言葉故かもしれないが、とてつもない、重みを帯びた言葉だった。
「君も気を付けたまえ、結末などすべて過程の産物にすぎん。後悔は轍に咲く花のように、歩いた軌道にしなびれた実を結ばせる」
――そういった時の彼の目は、マスターをとらえてはいなかった。
「故にだ
――俺の目を、とらえていた。
――誤りと知る過程から生み出されるものなどありはしない。誇れる道の先にこそ、勝利が存在する。
そんなことは、わかっている。いま後悔していたところで、何にもならないことぐらい。今のこの後悔している現状が誇れるものではないぐらい。
ダンから向けられるまっすぐな、問うような視線と、マスターの心配そうな視線に対して俺は――
ただただ、目をそらすことしかできなかった――
「ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう」
あの後――教会を出た私たちはラニのもとを訪れていた。
今日はラニの指定した五日目。星を詠むには最適な日(私には少しも理解できないけれど)なんだと思う。
「――まずは、礼を言います。今日ならばブラックモアの星も詠めるでしょう」
――人が知りたいと彼女は言っていたけれど、そんな理由で私を手伝ってもいいのだろうか?
彼女もマスターの一人であり、これから私は敵となるかもしれない人間だ。なのにここまでする――勝つための手助けをしてくれるなんて。
「私にとっては師の言葉こそが道しるべ。その師が言ったのです。だからあなたが気にすることなどありません」
「で、でもさ。そういうのって……」
「……ふむ、ならばこう考えてください。あなたに勝ってもらった方がこちらにも利があると」
――私が勝つことによる利?
「――あなたはダンよりも優れていると思いますか?」
――なるほど、戦うのなら弱い相手、強いダンにはここで負けてもらった方が好都合ということか。
なるほど確かに、「師の言葉」なんてものよりは、ずっと合理的だと思う。事実、私がラニだったらダンと戦うよりも私と戦いたいと思うだろう。
だって弱いのだから仕方がない。
――自分で言ってて悲しくなるけど。
閑話休題。私の目的はそれを聞きに来たことじゃない。
「そうでしたね。では、始めます――」
そう言うと、ラニはアリーナに残されていた矢を見ると何かを呟いてからコクリと頷いた。
それから遺物を柔らかい手つきでさわり目を閉じ空を仰ぐ。
――そして。
「星々が引き出すのは因果律。因果律の語りを聞けばあらゆることが、わかるものです。それは、ブラックモアのサーヴァントも例外ではありません」
「森……暗く、深い森」
アーチャーの矢を手に取ったまま虚空を睨むラニは、静かに見たナニカを語りだす。
「とても、暗い色。汚名を負い、暗い闇にひそみ過ごした人生……称賛の影にある自身の歩んだ道に対する苦渋の色が混りにごった、そんな色。森に溶け込み、影から敵を殺し続けた姿」
「それが……あのサーヴァントの……」
隠れて、敵を殺して殺して殺す卑怯者としての人生。それが彼を形作った人生にして生涯だとでもいうのだろうか?
それは確かに、ダンが話す騎士としての戦いとは正反対で、対極といってもいいぐらいに違うものだ。
でも、そんな英雄なんて……
「英雄はもれなくすべて、栄光を手にしたものではありますがその経緯すべてが輝かしいものではない、ということです」
「経緯は……違う……」
――それを聞いて、ふと後ろに立つセイバーのことが気になった。
彼は、どんな人生を送ったのだろうか?結果が、栄光あふれる偉烈であったことは確かだ。ならその過程は?彼もまた、苛烈にして峻烈、峻烈にして惨烈な人生を歩んだのだろうか?
「これは、私の探している者ではないかもしれませんが……亀裂とは憧憬から生まれます。人はそういう生き物ですから」
――これ以上は、わからないということか。
ならば、自分で問うしかないだろう。直接、あのサーヴァントに。
ありがとうございましたと頭を下げるラニに会釈してから、私たちはアリーナに向かい歩き出す。
――ここからは、私たちの勝負だ。
――彼らの、気配がする。
アリーナに入れば、敵の存在を感じ取ることができるのは単純にこの肉体の性能がいいからなのだが。
すぐ近くにはない。離れたところから感じるダンとアーチャーの気配。
ああ、そうだ。ここもまた、彼らとの戦闘イベントだったな。
原作知識は、少しぼやけたりはするけれどいまだに俺の中はっきりと存在している。たぶん、これからも。
勝つためになら何でも利用するのは、俺としては当然の考えだから利用できるものがなくならないのは勝利のためにも喜ばしいことだろう。
――勝利のため……か。
俺に今、戦う理由を問うのなら、おそらく答えはそれになるだろう。
勝つために戦って戦って戦い続け、そしてその中で相手を殺していく。そういう返しをするだろう。
しかし、それはおかしなことだ。俺自身、それは自覚している。
本来なら、勝利とは目的のための手段であるべきだ。
名誉のために勝つ。命のために勝つ。そして、聖杯を手に入れるために勝つ。だが今は、それが手段となってしまっているのだ。勝つために、戦う。
勝利への執念は力だと、そういえば遠坂は言っていた。その執念なしで戦えるのは軍人ぐらいのものだとも。
俺は軍人でもなければ、英雄でもないし、ましてや一般人でもないナニカだ。
――ならば、そんな俺が戦えるのはひとえに英雄であった体のおかげなのだが……
「セイバー……あそこ……」
前に出てくる敵を片っ端から薙ぎ払い進んでいると、マスターが声を潜めながら言葉を発する。
「あそこにいるの、ダンとアーチャーだよね?」
そういうマスターの目線の先には緑の衣装の二人が、そこに佇んでいた。
ダンとアーチャー、か。まさかこんなに近くにいるとは思わなかったが……なんにせよ、ここでやることは――
「旦那、どうします。敵が目の前に出てきたんですけど」
そう自身のマスターに聞くアーチャーではあるものの、武器を構えたその姿からは戦わないなんて選択肢はないように見える。
今の俺にはそれに返すだけの余裕は――
「なんだ?敵が目の前にいるなんて状況は始めてか?別にいいぜ隠れても、今から戦闘なんてせずに平和にかくれんぼでもするかい?」
――ない、はずなんだがな。
どうもそんなことはないらしい。
「ハッ!そりゃこっちのセリフだぜ?平和にいきたいならそういってくれよ!」
「ふむ、隠れるのがお前の得意技だったはずだが……それともまさか、それを失ったなんていうんじゃないよな」
――軽口の応酬。
マスターたちが止めないあたり、別におかしなことではないのだろう――いや俺のマスターは止められないだけかもしれないが……
ふむ、少しは調子が戻ってきたな。やはり、戦闘になると、ということだろうか。
挑発をするものの、相手もそれに応じるほど子供ではないらしい。それに対し、とりあえず俺も武器を出すとしようか。
空気中からナニカが収束し、俺の槍を形作る。……なんやかんや一番使っている武器だろう。
それを見て、相手方からはわずかな驚きが見て取れる。大方その理由は――
「あれ?てっきりあいつセイバーだと思ってたんだけどな。そこらへん、どう思います?」
「ふむ、単純に二つ宝具を持っているだけなのだろうがな。なんにせよ、ここで確かめるぞ」
「あいあい、それに関しちゃ了解ですって感じなんですけどねぇ……正直、正攻法で戦えってのが一番きついっすよ?シャーウッドの殺戮技巧は暗殺派なんでね」
「不服だと?なるほどならばお前の力は『顔のない王』に頼ったものだったということか?」
「……はぁ、そういわれちまうとねぇ……そりゃ俺だって弓に自身もプライドも持ってますけど……」
「ならば、その方向で奮闘を。なに問題はない。おまえの技量は狙撃手だったわしが一番知っている」
「あー、そういわれちゃ従うしかないよなぁ……そうは思わないか?あんた」
「……そこで俺に振るのか」
「まぁねぇ。つっても相手は子供どころかひな鳥だ。問題はないだろ」
……ひな鳥、か。
「言い訳づくりはうまいようだな。その実力はわからんが」
「おいおい、あんたホント嫌味だなおい。まぁいい、なんのクラスにしろ戦うだけだから、なッ!」
――相手が、こちらに向かって駆け出した。
「っと、いきなり接近戦か?」
なんて考えていた軽口をたたく俺の方に飛んできたのはそれに対する嫌味ではなく――
――一本の矢。
走りながらその腕に付けられたボウガンのようなものから打ち出された矢――
俺はそれを手に持った槍で受け流しながら一つつぶやく――
「
――敏捷のランクを大きく引き上げる宝具の名前。
その効果により速度を一気に上げた俺は――
――アーチャーの懐に飛び込んだ。
「おっと、おいおい!いきなり速くなりすぎじゃねぇのかあんた!」
なんて、慌てた声を出すものの、アーチャーは俺の突き出した槍をうまくその腕についた弓で受け流した。
しかし、受け流した際に腕が後ろに回る。
――チャンスだ。
そもそも飛び道具なんてこんな距離で使うもんじゃないのは一回戦でも証明済みだ。とはいえ、俺の槍をそれではじかれる可能性も捨てきれないのも経験済みッ!
なんて余裕に考えていた俺に飛び込んできたのは、弓から放たれた矢ではなく――
「アーチャーだからって!足使っちゃだめなんてルールはないだろっと!」
――足。
その足はそのまま俺の腹に突き刺さる。
「くっ……くそっ!」
言葉を吐き捨てて後ろに下がる。
アーチャーだからと言って、接近戦が苦手だとは限らないのは当然のことだろうに……!完全に油断していたからか、モロにくらった。
ああ、やはりか!確かこいつのステータスは敏捷が高かったはず。その差を埋めようとしたのが間違いだったとでもいうのか――!
俺は一つ舌打ちをして、再びアーチャーに向かって走りだそうとして――
「ストップ」
――出せなかった。
俺の目の前に立っていたのは弓を構え狙いを定めるアーチャーの姿。
そして、その弓が狙うのは――
「旦那!ちっと待ってください。一個聞きたいことがあるんだが、いいかおい」
――聞きたいこと?
……聞くしかないのだろうな。聞かなければ――
「わかってんじゃねぇの。マスターを殺す」
「……なんだ質問というのは」
「あー別に簡単な質問だよ。くっだらねぇ質問を一つだけ」
――そういってから放ったアーチャーの問は。
「お前さ、勝つつもりあんの?」
俺の胸に、深く突き刺さった――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――は?
――勝つつもりが、あるかだと?
「そんなもの、あるに決まってるだろう――」
「――ならなんで今お前は動けない?」
うご、けない理由。
そんなのお前がマスターを人質にして――
「ああそうだな。だけどそれができんのはあんたが俺の前からどいたからだ。つまりは結局お前のミスなんだよ」
――俺のミス?
ま、た?ああ、そういえばライダーとの戦いのときは基本的に俺はマスターと敵の間に立っていた気がするなぁ……なんてのんきに考えて、い、るのは、なん……
「そうさ、お前のミス。そういやこの前あんたのマスターがけがしたのもお前のミスだったよな」
「あ、ああ、あ、ああああ、」
少し、目を見開き驚く俺を見て、アーチャーはため息をつく。
「前から思ってたんだけどさ。あんたってメンタル弱いよな。とても英雄とは思えない」
「そ、れは……」
「別にそこはどうでもいいのさ。だけどな、面白くないのさ何で戦っているのかもわかんないやつと戦うなんてな」
――英雄じゃないから、なんて言い訳にもならない。
マスターだってそうだ、完全な
なのに、俺は何だ?普通のサーヴァントと同程度の能力。知識はほかのやつらの圧倒的上位を行くくせに、普通以下の成果しか出せない。
そして、なおかつ――
――戦う理由がない。
いつしか、遠坂凜は言っていた。
覚悟も持たずに勝てるマスターなんて、もういないと、それはマスターに向けられた言葉だったけれど、俺はその時気づくべきだったのだ。俺にも理由がないってことを。
「お、れの……戦う、りゆうは……」
気づかされた。今まで目を背けていた事実に。今朝のダンもおそらくそれに気づいていたんだ。
マスターよりも、俺に問題があると――
「はっ!返す言葉もないのかよ」
――その時に事実だと思って感じて何もできない俺を現実に戻したのは。
「ああいいぜ、なら今ここでお前を――!」
「ふ……る、な」
「あん?なんか言って」
「ふざけるなつってんだよ!このクソ野郎がァ!」
――笑っちゃうぐらい性格の変わった、マスターの叫びだった。
「マ、スター?」
――ふざけるなふざけるなふざけるな!
セイバーが、悪いだと。セイバーがだめだと。何も知らないくせに、何もわからないくせに。
――アーチャーの言葉を聞いて思いついたのなんて、そんなことだった。それで、いつの間にか、弓を向けられていることも構わずに叫び散らして――
アーチャーもダンも、セイバーも驚いた顔でこちらを見ている。
「……おいおい、アンタはそんなキャラだったのか?つーかアンタだって思ってたんじゃないの?このサーヴァン――」
「――さっきの聞こえなかったの!?ふざけるなってこっちはいってんだ!」
そうだ、なんてことはない。この私の叫びは、気持ちは、それだけのこと。
――仲間を、友人を、パートナーを、馬鹿にされた。
「何も知らないくせに何いってんだよ!私の、サーヴァンッ……セイバーはそんなことないッ!」
「おいおい!そりゃ聖人君子すぎるってもんじゃねぇの?あいつがミスしなけりゃアンタは俺の毒を受けなかったんだぜ?」
「違う違う違う!それは、セイバーのミスなんかじゃないッ!あれは私の――!」
「アンタのミスだってか!違うだろ!そもそもサーヴァントってのはマスターを守る存在だ!守れなかったのはあいつの――ッ」
「――違うッ!」
「何を、何をもってそういうんだよアンタは!」
――理由?
私が、セイバーを責めない、理由?
「ああ、わかんねぇよ。なんでアンタはあいつの味方をするのかな」
マスターと、不仲なんてことがあると知っているからか、彼は少し苦い顔をしてそう問う。
信じ続けられる理由。
考えてみたところで、すぐに出るわけじゃない。いつもだったらたぶんどもって答えられないと思う。
だけど今は、何も考えずに、言葉が出た。
「――好きだからね」
「――は?」
「――私はさ、セイバーのことが好き。一緒にいて楽しいし、敵との戦い方も教えてくれて、生き方だって教えてくれる」
――そんなセイバーのことが、好きなんだ。
純粋に、そう思う。邪念も何もなく信頼できる。まだ、好意や愛なんて呼べるものじゃない。だからこれは、この気持ちは。
好きだという言葉以外には、表現できやしない。
「……なんだよそりゃ、おかしすぎて笑いすらでやしねぇ。アンタも相当おかしいだろ?」
「ふふっ、光栄だよ。そんなおかしいとしか言えない力をもった人にそういわれて」
「ちっ、つーか、今考えりゃ何やってんだ俺って感じだな。なんにせよ、マスターのミスであいつのクラスも知れたし今日はここまでに――」
「――『俺』に問う。何のために戦うのかと」
ふと声が聞こえた。それは少し倒れこんだセイバーから発せられる言葉。
「――『俺』は答える。生き残るためだと」
「は、おい。あんたはあんたで何言って」
「――『私』に問う。何のために戦うのかと」
セイバーの言葉は続く。
「――『私』は答える。弱きを助けるためだと」
ゆらり、とセイバーは立ち上がった。
そして――
「――最後に、俺に問う。お前は、何のために戦う」
「おいおい、ついにあんたまで――」
――そうアーチャーがつぶやいた瞬間、セイバーは二つ言葉を発して――
「ヴァランクウォース、
――再び、アーチャーの懐に潜り込んで。
「は……あんたさっきより速くッ!」
――その腹に、刃を突き立てた。
――俺がアーチャーを切り裂いた瞬間、アーチャーは後ろに跳んだ。
「――大丈夫だったか、マスター」
まず俺は、マスターへの安全確認。それから。
「ありがとうマスター。これで俺も上々だ」
「え、あ……うんっ!」
そううなずいて笑うマスターの顔からは先ほどの気迫は感じられない。純粋な喜びの笑み。
あと、礼を言うべきなのがもう一人。
「ありがとよアーチャー。お前のおかげでお前に勝てそうだ」
「ってーなおい……つーかもしかしてやっちゃいけないやつやった?」
「そうだな、いわゆるところの覚醒ってやつを俺はした」
「いいぜ、ならそれを正面から――」
「――アーチャー」
正面から迎えうつ。そう言いかけたであろうアーチャーを止めたのはマスターであるダンだ。
――さすがに冷静だな。
「いったんひくぞ。理由はわかるだろう」
「っち、この傷のこと、だよなぁ」
「ああ、別にいいだろう、戦うのはここが最後ではないむしろ――」
「――倒すのに的確な場面が残ってると」
コクリとダンはうなずきそのままどこかに消えていった。
――それを見送ったあと、俺はマスターに話しかける。
「――マスター助かったよ。君のおかげで俺は」
「べ、べつにいいよ!いつも助けられてるのはこっちだし!」
「そう、か。そう言ってくれるとありがたい」
――少し前の俺とは大違いだ。余裕がある、というのはこういうことなのだろうか?
「あ、そういえば、セイバーが戦う理由って結局なんなの?いくつか言ってたし」
「ん?ああ、戦う理由、か」
「あ、別に言いたくないならいいよ?」
「ん、そうだな、今は勘弁してくれ。また今度な」
「そっか!じゃあ戻りながら特訓していこうか!」
ニカリと笑うマスターは、俺にはとてもまぶしく見えて。だから、俺からも言っておくべきかもしれない。
「俺も君のことは好いているよ、マスター」
「……へ?」
――俺に問う。お前は、何のために戦う。
――――そんなの、マスターのためだろうに。
本日の成果
セイバー 俺さんがついに復活しました
はくのん 私って実は二重人……ないよね!うん!
キャラ崩壊と取るべきか……
誤字脱字報告感想お待ちしております!