Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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決戦日

 ――二度目の決戦日。

 

 俺たちはついに、二回目の決戦を迎えようとしていた。

 一回戦の時は随分と気分が下がっていたものだが……今は一回戦よりも高揚している。なるほど、これが覚悟と決意がもたらす効果か。遠坂がそれなしでは勝てないといっていたのもうなずける話だ。

 

「――セイバー」

 

 なんて、考え事をしているとマスターから声がかけられた。

 

「絶対、勝とうね」

 

「ああ、当然だ」

 

 ――視線を合わせたマスターからは、一回戦の時のような迷いはなかった。許したわけでも受け入れたわけでもないのかもしれないけれど、戦い勝てば相手が死ぬという真実を受け止めた目だ。これなら、問題はない。上々だ。

 あのサーヴァントとの戦い方勝ち方は完璧だ。マスターにも、頑張ってもらうことになるが――まぁ、一回戦ほどじゃないから問題はないか。

 

「さて、行くぞマスター」

 

「うん!」

 

 そういって俺たちは言峰の待つ場所へ歩みを進めるのだった。

 

 

 

 

 

 ――決戦が、始まる。

 

 決戦上への箱舟へと乗り込んだ私たちは改めてその事実を感じさせられる。当然といえば当然、これが最下層にたどり着いたとき、戦いは始まるのだから。

 そして、その箱舟の中にいるのは当然私たちだけじゃなくて――

 

「…………」

 

 ――敵である二人も当然のごとくそこに立っていた。

 静かにたたずむダンと、その横で力を抜き立っているアーチャー。……一回戦の時とは違った雰囲気が狭い空間の中を包み込んでいた。

 

「ふむ、話す気はないってことか」

 

 そんな沈黙を破ったのは、こちらがわ――セイバーだった。

 

「はっ!そりゃそうだろお前らはここで負けんだから会話する意味もない」

 

 ――随分な勝利宣言だ。

 セイバーはそれに思うところがあったのかなかったのか、それに関してはスルーの方向らしい。……挑発優先ってことなのかな?

 

「ふむ、それにしては随分不満そうだな」

 

「あ、わかる?実際退屈なんだよ。うちのダンナは無駄がなくてねぇ。たまにゃ茶飲み話といきたいんだが」

 

「それはまた悲しいな、余裕のないマスターと当たるなんて同情をかくせないぜ?」

 

「性能の低いマスターほど悲しくはないね。でもま、一理あるっちゃある。どうだい?そっちのマスターさん、うちのマスターと話す気とかは」

 

 ええ!?……いや、いきなり話せって言われても。と、とりあえずなんか言わないと!

 

「あの……ご趣味は……」

 

「マスター……ここでか……」

 

 うっ……セイバーからの視線が冷たい。……悲しい。

 

「あらら、性能低いっていうか天然って感じだなそっちのマスターは、あんたも苦労する――」

 

「――ふむ戦場で敵から質問を受けたのは初めてだな……趣味、そうだな……」

 

「ちょいダンナ!?別に答えなくってもいいやつだよ今の」

 

 同情か何かだろうか今の返しは。なんか普通に返してくれただけなのに卑屈な考えに至ってしまう。

 

「どうやら、天然マスターはそちらもなようだが……」

 

「はぁ、お互い苦労するねぇ……」

 

 私とダンが似ていると……?いや普通にそんなことはないと思うけど……

 

「ならそっちのアンタ的にはどうなんだ?卑怯な戦い方は……いや卑怯な殺し方は許せないタイプ?」

 

 ――卑怯な、殺し方。

 否定は、したい。できることなら正面からといきたいけれど、正直一回戦をその卑怯なやり方ともいえるやり方で突破した私的にはなんとも言えない。……闇討ちも、不意打ち、背後からなんて結構当てはまってるよね。

 

「――へぇ、なんだ意外だな。そいつぁ上々。毒と女は使いようさ。いい勝負になりそうでなにより」

 

「……少なくともそれは女性の前で言うことではない気がするが」

 

「意外と紳士なんだな、あんた全然そうは見えな――」

 

「――随分と楽しそうだな、アーチャー」

 

 少し、声のトーンを上げたアーチャーに話しかけたのはそのマスターであるダン。

 

「戦いを控えながら、その相手の人となりを楽しんでいる。……わしにはそう見えたが?」

 

「ご明察。でもまそこら辺は大目にみてくれよ。敵と話すことなんて珍しいしさ。それにダンナも若者の声に耳傾けたほうがいいですよ?これ以上老け込んでも面白くないっしょ」

 

「気遣いは受け取るが無用だ。戦いに理解は必要ない。敵を知るとするなら、それは戦いの後とするべきだ」

 

 それを聞き、うへぇとうなだれるアーチャー。……前から思ってたけど随分とサーヴァントらしくない。

 ……まぁ、私の思うサーヴァントらしいという基準がおかしいのかもしれないけれど。そういえば一回戦のライダーもこんな感じだったような?

 

「ま、なんにせよこの戦い勝てればいいんでしょ?それなら楽でいい。後ろからバシュっとやって終わりっと、いければいいんだけどね……」

 

「ふむ、いけない理由でもあるのか?」

 

「……ホントは、理想やら騎士道やらは嫌なんだけどさ。ダンナがそうはやらせてくれない」

 

 無言でコクリとうなずくダンに、アーチャーは再びうなだれる。

 

「ほんとかっこいいけどさ。そろそろ誰でも自分の人生に自信持てるってわけじゃないことを知ってほしいんだけどさ」

 

 ――そう、アーチャーが言った瞬間体に大きな振動が伝わった。

 

 到着、そして開幕だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――らッ!」

 

 戦闘の開始と同時に、俺は一気にアーチャーとの距離を詰める。

 ――先手必勝。それを実現させるような速度で。とはいえ相手も甘くはない、俺も第二革命の中槍(リヴォンツオーネ)を使っていない状態なのだし、一気に接近できるとなんて思ってはいなかったが、それでもその予想を上回る速度で弓を構え矢を――放った。

 

 ――後手必殺。

 俺に対して相手が見せたのは、そういうものだ。素早い攻撃をしてきたならばさらに早い攻撃をすればいいなんて単純な理屈に基づいた攻撃。それを俺は、手に持った武器ではじき、少し距離をとる。――相手が簡単に狙いを定められなず、かつ俺の攻撃の脅威を感じられる距離。近距離武器と遠距離武器では攻撃範囲(アタックレンジ)に違いがあるがゆえに、若干相手に利があるものの、この距離ならば一発くらいなら容易にかわすことができる。

 そういう距離を、一瞬で見極められるあたり、俺も英雄なんだと実感するが、相手はそんなことより俺の手に持たれた武器にご執心のようだ。

 

「――短剣、か?」

 

 ――第六革命の短剣(レヴォリューツィア)

 もって念じるだけで低ランクの気配遮断の効果を得ることができる暗殺用の短剣だ。

 とはいえ今回は、その能力のお世話になることはないだろう。勝利への布石とでも言ったところか。その程度の価値しかない。――しかない、なんていうがそれはつまり『勝利への布石』としての効果ならば上々ということを指す。

 

「おいおい!アンタ正気かよ!こっちは弓持ってんだ、持ってる武器のリーチをさらに短くしてどうすんだ。前使ってた槍の方がよかったんじゃねぇの?」

 

 ――ふむ、確かにな。この短剣にはステータスの強化なんていう能力なんてないが、それでも足が遅くなることはない。――速くなることもないけれど。

 槍を使えば、確かに足は速くなるがそれで相手の矢をすべて捌けるかといえば――不可能ではないだろうが難しいことは確かだ。槍が、無用の長物なんてよばれる要因としてその長さがあると俺は考える。単純に動きずらいのだ。そりゃそんな棒を持ちながら動くのには相応の技術がいる。故に俺は今、短剣を持っているわけだ。

 

 ――足の速さではなく身の軽さ。

 

 短剣で捌いてそして持ち前の身軽さで捌けなかったものを躱す。そういう作戦に、俺は出ているわけだ。

 事実、今牽制として撃たれている矢をマスターに当たりそうなものを捌き、そうでないものは躱すことができている。

 

「――それに」

 

 ――別に敏捷を強化する術は、一つだけじゃないだろう?

 

「gain_agi!」

 

 ――その、マスターの叫びが聞こえた瞬間。

 

 俺は一気に距離を詰めて――

 

「んッ……なッ」

 

 驚きに目を染めながらもこちらに向けてきたアーチャーの弓を打ち払い、手に持った短剣を突き刺――

 

 ――さらなかった。

 

 その腹に短剣が少しめり込んだあたりで、アーチャーが一気に身を後ろに下げたためだ。――やっぱ、この程度じゃダメか。

 ――だが、傷を負わせることはできた。

 

「――チッ、コードキャストか!」

 

 腹を少し抑えながら後ろに飛んだアーチャーはこちらを、マスターを睨みながらそういった。

 ――コードキャスト。この世界に存在する魔術であり、マスターが戦闘中行うサポートのことである。……困ったことに、今まで使う機会はなかったが……今となってはそれのおかげで不意打ちできたといってもいい。

 温存は、しておくものだということだろう。――だがそれは。

 

「大丈夫かアーチャー。――heal」

 

 ――コードキャストを使えるのは、こちらだけではない。

 ダンが、そうつぶやいた瞬間アーチャーの傷を光がつつみ、そしてそれが消えたころには――

 

 ――俺がつけた傷が、ほぼ完全に癒えていた。

 

「回復魔術か……随分なの持ってんだな」

 

「ハッ!別に卑怯とか言ってもいいぜ?所詮負け犬の遠吠えにしかならないけどな」

 

「いうつもりなどはないさ。こちらはそれを持っていないというだけで、別にうらやましいわけではない」

 

「それも、ただの言い訳にしか聞こえないな」

 

「ふん、そこら辺はすきに想像してもらって構わないさ」

 

「ま、今みたいに話しながら俺の矢を捌けるあたりは、さすが英雄と思ってやるさ」

 

 ――結局、状況は硬直したままだ。

 

 変わったのはおそらく、マスターの状態だけ。MPの消費だけだろう。

 今も、目の前からの攻撃を右手の短剣で捌き、時には左に持ち替えて捌き、そして時には体を動かし躱す。それをひたすらに繰り返す。

 

「は、それはそんな話をしながら矢を正確無比に撃てるお前にもいえることだと思うがね」

 

 ――捌く、捌く、捌く、捌く、捌く。

 

「前にも言わなかったか?一応、弓にはプライド持ってんだよ、俺もね」

 

 ――捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く。

 

「アーチャーなのだから当然といえば当然か」

 

「そういうアンタはセイバーとしての武器は使わないのか?」

 

 ――捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く。

 

「アーチャー、無駄話もそこまでにしておけ」

 

「はぁ、ダンナ。さっきも言いましたよね?珍しいんですよ敵と話すのが、しかも戦闘中でも話すなんてさらに珍しい。愉しんどかないと、損ですよ?」

 

 ――捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く、捌く。

 

 ダンの言葉を受け、アーチャーはこちらを見据える。戦闘中の会話はここまでといったところか。――時間稼ぎもここまでか。

 

「セイバー……!」

 

 後ろから聞こえたマスターの声。それは、俺らの中で決めた合図だ。

 

 ――さて、反撃開始といこうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイバー……!」

 

 私の口から洩れたのは、目の前で矢を捌き続ける騎士のこと。

 ――すごい。

 一回戦から、思っていたことではあるけれど、やはりセイバーの実力は並じゃない。ならば、私もそれにこたえなければ――!

 

 チラリ、とセイバーがこちらの様子をうかがう。――作戦開始の合図。

 そして、私がコクリとうなずいた瞬間セイバーは一気に走り出し、アーチャーとの距離を――

 

 ――離した。

 

「――はっ!?」

 

 その行動には相手のサーヴァントも驚きを――いや、マスターものようだけど。その反応は当然だ。アーチャーと距離を取る。狙撃銃を持っている相手と距離を空けるようなもので、当然、私たちにとっては不利な距離となる。

 驚きのスキに離した距離はセイバーでも走るのには時間を要するであろうほどの距離。そして私は――

 

「ハッ、馬鹿かアンタら!俺から距離をとるってのがどういうことか、教えてあげるべきだよな!」

 

 弓を構え、セイバーを狙い撃とうとするアーチャー。あの距離であれ、狙えば確実にアーチャーはあてるだろう。だけど、動揺は隠しきれていないのか、多少の時間はかかるはず。

 ――そしてここで私が。

 

「hack!」

 

 ――コードキャストをぶち当てるッ!

 

 ――私の手から放たれ相手のサーヴァントへ一直線に向かっていく光。

 相手へと向かっていく光は完璧な軌道を描いているが――それは当然。なぜならば、自動追尾するからに他ならない(なんていってみたものの、発動した瞬間に相手の方に向かって放たれる程度のもので避ければ大丈夫程度の自動追尾だけれど)から。セイバーが言っていた。そもそもこれがもし発動するだけで相手の方に向かっていくものではなかった場合、当たるはずがないらしい。そりゃそうだろう、音速の速度で動く生物を狙い打てるのなんて、それこそ英雄ぐらいのものだ。

 

 ――だから、私の放ったこれはきっちり相手の方へ向かい。

 

「――くそっ!」

 

 ――アーチャーに当たった。

 

「アーチャー!」

 

「大丈夫だよ、この程度!驚いただけで!」

 

 ダンに対するその返事は、嘘偽りないものらしい。それは、当然だろう。マスターの攻撃で相手のサーヴァントにダメージが当たるなら最初からやっているという話だ。

 ――だけど、私の目的はそこじゃない。私の真の目的はきっちりと、果たされた。

 

「――助かったよマスター。隙を作ってくれて」

 

 ――セイバーの、声。私よりも後ろに下がったセイバーの声が聞こえた。

 

「――は?おい、待てよ、あんたそれは……!」

 

 そのセイバーを見て、アーチャーとダンは驚愕の表情を浮かべる。

 ――ああ、そうなると思うよ。私だって驚いた。正直、今更な気もするけれど。

 

「悪いな、あんたが俺より前に、赤いアーチャーと戦ってれば少し変わったかもしれないけどさ」

 

 ――その驚きの理由は、セイバーの手に持たれた武器にあって。

 

 ――その手には、セイバーの身の丈ほどもある。

 

「剣を使うアーチャーがいるんだ、弓を使うセイバーだって、いてもいいとは思わないか?」

 

 ――長い弓が握られていた。

 

第三革命の長弓(ベイルディング)

 

 

 

 ――――光が、放たれた。

 

 それはまっすぐアーチャーの左胸に突き刺さり――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――勝負は決した。

 

「――――」

 

 その現実に対して、ダンは何を思ったのかこちらを見つめてくる。負けたというのに、これから死ぬというのに随分と落ち着いているものだ。慎二とは大違いだな……それでも、サーヴァントの方はそうはいかないらしく。

 

「バカな、どうして俺たちが負けたんだよ……!実力覚悟全部ダンナが勝ってたはずだろうに……!」

 

 ――そう言い放ったアーチャーの体も、こちらを見つめるダンの体も、すでに消え始めていた。――死、か。

 アーチャーの言葉を聞いたからか、それとも負けたという真実からかダンは静かに語りだす。

 

「……私が、未熟だったようだな。今になって気づくとは……ここ聖杯戦争では意志の強さではなく、意志の質にあるらしい」

 

 ――意志の質。それはまるで自身の意志に後悔でもあるかのような言い方だ。

 

「――聖杯を求めるのは、亡くした妻に会うためか……その生涯を軍に捧げ、無個人をよしとした人間が、今更個人として戦おうなどと……」

 

「そんなのっ……」

 

 ――マスターがなにか話そうとして、やめていた。……ああ、それでいい今のダンに話しかけるべきなのは俺やマスターじゃない。それに――

 

「騎士の誇りなどと言い、亡くしたものを取り戻した気になって……本当はどちらか迷っていたのだな。妻と軍人になる前の、自分と」

 

 それはまるで、遺言のような言葉。少しずつ、体が霧散していく。――ここまでだ。彼らの命はここまでなのだ。

 

「――君には、なかったな」

 

「……え?」

 

「最後の、一撃だよ。君には迷いというものがなかった。言葉にできずとも譲れぬものがあるということだろう」

 

「…………っ」

 

「わしにはないものだな、そのひたむきに願いを追う心は。時には迷うこともあるだろうが、それでいい。その迷いはいずれ敵を穿つ意志になる」

 

「……は、い」

 

 そういって、コクリとうなずくマスターを見てダンは満足げに笑う。……まるでそれは、父親のような優しい笑みで、晴れやかだった。

 

「……敗北というのも、悪くない。今までの戦いよりもずっと意義のある戦いだ。なにせ未来のある若者の礎となれたのだからな」

 

 そしてその笑顔からは、先ほどまでの苛烈さは見られなかった。穏やかさに満ちた老戦士に話しかけたのは――

 

「すまねぇなダンナ。やっぱオレには騎士道ってやつは向いてないらしい。俺みたいなのじゃ、あんたの器に答えることすらできやしない」

 

 ――本当に、情けねぇ。

 アーチャーは、心底心からの声のように、声を震わせながらそういった。

 

「他のサーヴァントなら、こんなことにならなかっただろうに……!」

 

「いや、それは違う。謝罪は、私がすべきことだ。わしの我儘でお前の矜持を汚してしまったのだから」

 

「ハッ!そりゃ今更ってもんですよ。苦労したどころじゃないってのにさ。それじゃ、オレが馬鹿みたいじゃねぇかよ」

 

「そう、か」

 

「オレのことはいい。勝っても負けてもどうせ消えるんだからさ。そら願いはあったけど、基本楽しけりゃなんでもいいんですよ、俺は」

 

「そう……か」

 

「ま、ダンナとの戦いは、面白くはなかったですけどね」

 

「はは、それはすまんな。騎士の誇り、騎士道なとお前には無価値だっただろう」

 

「んー、いや、あれです。たまにだったらそういうのもありだと思いますけどね。面白くなかったけどさ、くだらない騎士の真似事はいい経験になりましたよ、まぁ」

 

「そうか……それは、それでなによりだ」

 

「……生前縁はなかったけどさ、結局俺もかっこつけたかったんだよ、オレも」

 

 照れたように顔を増えるアーチャー。それから、聞こえないぐらいの声で、いやそもそも聞かせるつもりもないのだろうが一言つぶやく。

 

「だから……あんたは謝んなくていいんだ。戦いなんて上等なものできると思ってなかったしさ。思えば、生前大抵のものは手に入れたけどさ、それだけは手に入れちゃいなかった。だから、いいんだよ――」

 

 ――最後に、手に入らなかったもん掴ませてもらったからさ。

 

 姿が、消えた。

 彼の言葉のはその通り最後の言葉で、その言葉と同時に彼はこの世界から完全に消え去った。その顔には、消えゆく顔には後悔なんてものはなく。ただただ、勝つために戦いつづけた彼は満足げに微笑んでいた。

 一人残ったのは――

 

「――岸波君、最後に年寄りの戯言を聞いてくれ」

 

 少し、驚いた顔をしたマスターはそれを理解したらしく悲しげな顔でうなずいた。――遺言、のようなものだと気づいたのだろう。

 

「ありがとう……これから先、誰が敵になろうとも誰を敵として討とうとも、その結果はうけとめなさい」

 

「うけ……とめる……」

 

「ああ、迷いも悔いも消す必要などない。だが、結果を拒むことだけはしてはならん。それが覚悟というものだ」

 

「覚悟……」

 

「そうだ、それなしに進めば君は必ず未練を残してしまう……。それらすべてを糧として、できるならば戦いに意味を見出してほしい」

 

「……」

 

「何のために戦い、何のために負けず、そして何のために勝つのか、自分なりの答えを模索し――」

 

 ――勝ち続けた責任を、果たすのだ。

 

 そう、まるで実の子供への娘への言葉のような優しい口調で、言った。

 

「はい……っ、はい……!」

 

 コクリコクリとうなずき続けるマスターを見届け、ダンは――

 

「さて……ようやく会えそうだ、長かったな……アン……ヌ……」

 

 ――最後に一つつぶやきを残して消えていった。




二回戦無事終了!
アンケートの方は来週、三月十八日朝八時までとさせていただきますので投票の方よろしくお願いします!

ではでは!次は三回戦でお会いしましょう!

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