Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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やっぱり一週間かかりましたね。
今回は、説明回なので、結構文字数いった……?


一回戦
一日目


 参加人数 128人

 

 聖杯戦争一回戦

 ――開幕――

 

 

 

 

 兵士がいる。

 

 広い広い平原に、百を超える兵士たち。

 

「兵士たちはこちらに向かって叫ぶ」

 

 ――――ッ

 

 言葉は分からない。

 ただその感情は、間違えようもない。

 

 怒り。

 

 突然、兵士が槍を高くあげる。

 

 次の瞬間、兵士たちは槍を突き出し、こちらに向かって――

 

 

 

 

 

 ――――――

 ……いじめか?これは。

 現代社会から転生し、これまた別の異世界の英雄の体を得て、今、月の聖杯戦争へ……ということなんだが。

 

 マスターが岸波白野だとは思わなかった……

 いや、まぁ、予想外ではあったが悪くはない。彼女はマスターとしての腕は三流(へっぽこでも可)だが、人格や性格的には上々だ。

 

 ……もう一度言おう。性能は別として、だ。

 彼女は、仕方がないかもしれないが、正直マスターとしての能力は高くない。彼女がマスターであるために、ステータスが大分低くなっている。

 平均ステータスはDという有様。まぁ、ゲームだと初期ステータスは全てEだから、まだましと言うべきか?

 

 問題は、これがゲームではないということだ。

 ゲームではなく遊びでもない。

 ゲームではシステム的に、ステータスがオールEだとしても、勝つことが出来た。

 しかしこれは現実。ステータスの差は単純に性能の差となってしまう。

 

 そもそも、サーヴァントの強さがどれほどものか知っているだろうか?

 原作者曰く、その戦闘力は基本的に戦闘機のようなものらしい。

 それは、戦闘機が個人で戦うには圧倒的な性能を持っているものの、街を滅ぼす為には、何度も補給をしなくてはならないからだ。

 そしてそれぞれに利点があり、破壊力においては、近代兵器たるミサイルの方が強く、古今東西全てにおいても破壊力最強は核兵器であろう。(例外もまた存在するだろうが)しかし、サーヴァントにもまた、特徴がある。

 それは霊体故に、通常兵器が通用しない点である。

 両方に利点があるが故に、それらは同類だと言われるのだろう。

 

 サーヴァントの性能は戦闘機のようなもの。

 これに当てはめると、筋力は火力。敏捷はそのまま速さそして耐久は装甲の強固さだとする。

 また、マスターの魔力量は補給量だとするならば――

 

 機関銃のみを搭載した最高速度がマッハ1の機体で、補給出来る回数3回の戦闘機と、機関銃、ミサイルを搭載、最高でマッハ2をたたき出し、10回以上補給の出来る戦闘機の戦い。

 

 つまり簡単にいうと、勝ち目なくね?

 わかってるから言えるが、最初の敵はかなりの英雄であり、マスターの実力もまた高い。

 これはまた、こちらのマスターの奮闘に期待するしかないということか。

 

 後勝ち目があるとするならば、俺のスキルと宝具ということになるだろう――

 

 がさりと、ベッドの方から音がした(今更ながら保健室、である)

 ――マスターか。

 

(未だに策なんてなにもないが……)

 

 今考えることはそうじゃないよな?

 

 

 

 ――ここは何処だろう?

 目が覚めて、最初に見たのは白い天井と白いカーテン。

 

(見た感じ病院……ううん、保健室ってかんじかな?)

 

 なんか変な夢を見ていたような――――

 ううん、夢じゃない、あれは……

 

 ゾクリと、なにかが背中を走る。

 上から下まで、一気に体が硬直してしまう。

 悪寒というのがしっくりくる。

 これは――

 

 ――これは、恐怖だ。

 

 あの時の、人形に殺されそうになった時の、恐怖。

 あれからどれくらいたったかわからないけれど、それが未だに体を蝕む。

 

「……はぁ」

 

 なにもしていないと、さらにきつくなりそうだ……

 そう思って立ち上がると同時に、白いカーテンが開かれる。

 そこに立っていたのは――

 

「目が覚めたか、マスター」

 

 あの時の、あの聖堂のような場所で出会った青年だ。

 黒い髪と黒い目。顔立ちは良く言って普通の青年。

 

「起きてくれて助かった。このままだと聖杯戦争を続けることすら出来ないかもしれなかったからな」

 

 心配……してくれていたのたろうか?

 ……いや、今はそれよりも――聖杯戦争?

 

「ん?あぁ、まだ状況がよく理解出来ていないということか……」

 

 私が、それについて聞くと、そう言葉が返ってくる。

 ……なんだか、悪いことをした気分だ。

 

「いや、責めているわけじゃない。むしろ分からないことを聞くのは上々だ」

 

 励ましているのか、それとも素で言っているのか……

 

「ともかく分からないなら、説明するべきだろう。この月の聖杯戦争について――」

 

 

 ――ムーンセル・オートマトン

 

 月で発見された太陽系最古の遺物であり、神の自動書記。また、七天の聖杯(セブンスヘブン・アートグラフ)とも呼ばれる。

 

 そして、それが万能の願望器としての機能があるため、聖杯と呼ばれるようになった。

 

 そしてその聖杯を巡る争いが、聖杯戦争である。

 

 霊子虚構世界『serial phantasm』

 通称『SE.RA.PH(セラフ)』を舞台に、128人もの魔術師(ウィザード)たる霊子ハッカーが、英雄であるサーヴァントを操り戦う。敗者に待つのは間違えなく死であり、参加したマスターは、願いを叶え、生き残るために、聖杯戦争を戦っていくことになる――――

 

 

「まぁ、こんなとこか」

 

 ……理解したか?とこちらを見る彼に私はかろうじて頷いた。

 

「なら、いい」

 

 そう言ったきり、彼は黙った。

 ……そういえば、私のことをマスターと呼ぶということは彼はサーヴァントということで。つまり彼も英雄であるということか……?

 

「まぁ、そうなるな。そういえば、まだクラスすら言っていなかったな」

 

 クラス?なんだそれは?

 そう聞くと、再び説明が始まった。

 

 クラスとは、サーヴァントが生前成した偉業や、使用していた武器などにより割り振られる七つのクラス。

 

 剣の英霊『セイバー』

 弓の英霊『アーチャー』

 槍の英霊『ランサー』

 騎乗の英霊『ライダー』

 魔術師の英霊『キャスター』

 狂戦士の英霊『バーサーカー』

 暗殺の英霊『アサシン』

 

 とはいえ、そのクラスだけで、武器は判断しにくいという。彼の説明によれば、剣を使うアーチャーもいるらしい。

 

「そして、俺のクラスはセイバーだ」

 

 ――セイバー。

 確かに、あの人形との戦いの時には、ハンド・アンド・ハーフ・ソードを使っていた。

 つまりは彼は普通の、剣を使うセイバーということだ。

 

「ああ、俺のことはセイバーと呼んでくれ」

 

 セイバー……しかし、セイバーにも名前があるはずだ。英雄としての名前が、そちらの名前は――

 

「――すまないがそちらは伏せさせてくれ」

 

 ――え?

 

「信頼していない訳ではないが、真名というのは敵に知られればこちらが不利になってしまう。」

 

 あぁ、なるほど、味方すら知らない情報を敵が知り得るはずもない、か。

 

「戦えば知られてしまうかもしれんが、念を押させてくれ。……すまない」

 

 うん、まぁ、私に不満はない。

 聖杯戦争に今さっき知った私よりもセイバーの方が正しい判断が出来るだろうし……

 戦闘のイロハも知らない平凡な人間よりも、英雄の方が上なのは必然。

 

「自分が名乗っていないのに失礼かもしれないが……マスターの名前を聞いてもいいだろうか?」

 

 ……そういえば、名乗ってなかった。

 

「あ、うん。岸波、岸波白野」

 

「岸波、白野か……」

 

 そう言って考えた後に。

 

「白野、うん。この響きは君に似合っている」

 

 ――はい?

 ……英雄というのはみんなこんな感じなのだろうか?

 その割にはなんか恥ずかしがってる?

 

「さて、そろそろここから出るぞマスター」

 

 長居するのもあれだしな。

 そう、口に出し、体を翻す。

 

「れいたいかしておくか……」

 

 れいたいか?そう聞く前にセイバーの姿はまるで霧のように消えていった。

 なるほど、霊体化か。恐らくこれも、サーヴァントに与えられた能力なのだろう。

 

 敵に見られて、正体を悟られないように……ということだろうか?

 まぁ、英雄を見たことがある人なんて普通いないわけだから、外見でわかるなんてことはないのだろうけど……

 

 さて、セイバーのいう通りここから出て――

 

「あ、起きたんですね?」

 

 行く前に、保健室のドアが開かれ、少女が入ってきた。

 

「おはようございます。起きたばかりで申し訳ありませんが、少し、説明してもいいでしょうか?」

 

 それから少女が(間桐桜、というらしい)説明したのは、セイバーに聞いた本戦の話ではなく、既に突破した予選の話だった。

 なんでも、聖杯戦争に参加したマスターは一時的に記憶が奪われ、仮初の学校生活を一般生徒として送ることになる。そしてその中で、自我を取り戻した者のみが聖杯戦争に参加出来るのだとか。

 そして、それを突破したものには記憶が戻る、らしい。

 

 ――のだが、どうも私に記憶が戻っていないのだ。

 その仮初の学校生活の記憶はあるものの、それ以前の記憶が全くない。

 これはいったいどういう――?

 

「すいません、私には少しわかりません……」

 

 運営用のAIですから……

 そう言って、答えてはくれなかった。

 申し訳なさそうに言われると、なんとも言えなくなる。

 しかしAIか。恐らくムーンセルが用意したものなのだろうが……まぁNPCといったところか?

 

「では取り敢えず、これを渡しておきますね?」

 

 そう言って私に、小さな携帯端末を渡してきた。

 なんでも、連絡等はこれで行うらしい。

 

 どうやら、話は終わりらしく、桜はペコリと礼をして、保健室のベットの方へ歩いていく桜と別れ、保健室をでるのだった――

 

 

 

 ――ふぅ、説明疲れた……

 原作の知識があるから、なんか余計なことを言ってなければいいんだが……

 

 そんなことを考えながら、俺はマスターの後ろを――

 

 ……そういえば、俺はなにを言っているんだ。

 

『その響きは君に似合っている』じゃないだろ!?

 俺もはしゃいでいたってことか、アーチャーじゃあるまいし……

 

 そういえば、アーチャーで思い出したが、俺たちは今、屋上へ向かっている。

 マスターの友人の柳洞一成曰く、屋上からの眺めは素晴らしい、とのことで……意外とそういうのも知ってるんだな、お前……

 

 もう一つ思ったのだが、俺がアーチャーから連想した『ある人物』と一成の仲はここでも悪いのだろうか?

 まぁ、悪かったら屋上を進めることは無いだろうから多分知り合っていない、または関心がない、というのが妥当か。

 

 ――もう、分かるだろう?

 屋上で出会う人物と言えば――

 

 

「一通り調べたけど、おおまかな作りは予選とあまり変わらないのね」

 

 床や壁を触りながら、なにかを呟く美少女。

 ……そう、「あかいあくま」こと、遠坂凛である。

 

 容姿端麗、成績優秀の少女で、本編でも番外編でもメインキャラなFateといえばなキャラだろう。

 そしてご存知の通り、テンプレーションなキャラだ。

 ただ、やはり実物を見ると認識を変えざるをえない。

 その目に宿る強い意思の光はそんな俗物的なものなどではない。

 そしてマスターにはない威圧感とも言える空気を纏っている――

 

「……あれ?ちょっと、そこのあなた」

 

 ――のだが……

 

 遠坂凛はマスターを見て、少し雰囲気が和らいだ。

 突然のことにマスターが固まっていると……

 

「そう。あなたよ……そういえばキャラはチェックしてなかったわよね」

 

 凄い笑顔でマスターにそう言い放った遠坂は、カツカツと歩み寄り、マスターに手を伸ばして……

 

 ――その頬に、ゆっくりと触れた。

 ……百合の花が見える気がするのは俺だけでしょうか?

 

「へぇ、温かいんだ生意気にも」

 

 少女らしい笑みを浮かべそう言った。

 マスターにいたっては驚いてさっきから微動だにしていない。

 

「あれ?おかしいわね。顔が赤くなっているような気がするけど……」

 

 遠坂はマスターに鼻先3センチ程まで顔を近づける。

 その際、マスターの肩が驚きに揺れていたが、気にしないほうがいいだろうか?

 

 とかやりながらも、お腹や肩を触る遠坂凛を見ているとさっきまでの威圧感も嘘のようだ。

 マスターも呆然としている。

 

「なるほどね」

 

 遠坂は納得したような声を上げ。

 

「思ったより作りがいいんだ。見かけだけじゃなく感触もリアルなんて。人間以上、褒めるべきかしら」

 

 そこまで言うと、いきなり眉を顰め、後ろを振り向く。うん分かるぞランサー(確かランサーだよな?犬だったと思うが)俺も笑いそうだ。

 

「ちょっと、なに笑ってんのよ。NPCだって調べたほうが今後なにかの役に……」

 

 そこにサーヴァントがいるのだろう。こちらがマスターでないと思っているからか、アッサリ場所が分かった。

 ……まぁ、簡単にいうと「うっかり」だ。

 

「……え?彼女もマスター?ウソ……だ、だってマスターならもっと……」

 

 それはウチのマスターがモブ顔だと言うことか?

 OK、その言葉宣戦布告と受け取った!当方に迎撃の――とかやってるときじゃないか。

 

「ちょ、ちょっと、待って。それじゃ調査とか言って体を触ってた私って――」

 

 どう見ても痴女です。本当にありがとうございました。

 そのことに気づいたからか、遠坂凛の顔が赤くなる。

 

「くっ、なんて恥ずかしい……。うるさい。私だって失敗ぐらいするってーの!痴女とかいうなっ!」

 

 おお、気が合うな。同じことを思ってた。

 

「職業病みたいなものよ。これだけキャラの作りが精密な仮想世界もないんだから。調べなくて何がハッカーだっての」

 

 そう自身のサーヴァントに言い放つと、今度はこちらに顔を向け。

 

「大体、そっちも紛らわしいんじゃない?マスターの癖にそこらの一般生徒(モブ)と同程度の影の薄さってどうなのよ?」

 

 ……それはまた理不尽な。逆ギレにも程があるだろう。

 

「今だってぼんやりした顔して。まさかまだ予選の学生気分で、記憶がちゃんと戻ってないんじゃないでしょうね?」

 

 これまた返答に困る質問だ。

 遠坂自身、冗談のつもりで言ったのだろうが、それは紛れもない事実だ。

 ほら見ろ、うちのマスターも固まっていらっしゃる。

 

「え……うそ。本当に戻ってないの?それってかなりまずいわよ?」

 

 システム的に出られるのは一人だけ、記憶がなくてもホームに戻ることは出来ない、らしい。

 遠坂はそう吐き捨ててから、急に声色を変えた。

 心配しているようなものが、醒めたようなものに。

 その理由は恐らく――

 

「……あ。でも関係ないわね。聖杯戦争の勝者は一人きり、あなたは結局、どこかで脱落するんだから」

 

 ――こちらが聖杯を奪い合う敵だと認知したから。

 

「マスターは気にしなくてもいい、今はそう言われても仕方がないかも知れないがまだ時間はあるのだからな」

 

 一応、慰めの言葉をかけておく。

 ……なんか、この体で喋ると口調が変わるんだよな……精神が体に引っ張られている、ということか。

 

 それに対しマスターは返事すらせずに、立っていた。

 

「ま、ご愁傷様とだけいっておくわ」

 

 夢見ごちで勝てる戦いじゃないしね。彼女の話は、それで終わったようで……

 

 マスターはそれに対し、なにも返せなかった。それは多分マスターにも自覚があるからだろう。

 

 ――このままでは、勝てない。

 

 

 

 遠坂凛との邂逅の後に私は廊下を歩きながら、携帯端末を見ていた。

 どうやら連絡のみ、というわけでもないらしい。

 ふと、「マトリクス」というものが目に入る。

 なんでもステータスが見れるらしく、セイバーのステータスを見ることが出来た。

 

 ステータスは基本的にAからEの5段階で表されるらしく……オールDに近いセイバーはかなり低いらしい。

 ……多分私のせいだよね。

 マスターが弱いと生前の力を発揮できないらしいし……

 ――はぁ、とりあえずどうしよう……?

 

「待ちたまえ、そこのマスター」

 

 ふと、声をかけられた。

 黒い服を来た、異様な雰囲気の神父。

 

「本戦出場おめでとう。これより君は正式に聖杯戦争の参加者になったわけだ」

 

 祝いの言葉。

 なんというか、似合ってはいないが、お礼ぐらいは言った方がいいだろうか?

 

「私は言峰。この戦争の監督役であるNPCだ」

 

 ……遮られた。

 わざとらしいくらいタイミングがピッタリだ。

 ここは文句の一つでも――

 

「今日この日より、君たちマスターは戦場にて戦うことを義務付けられている」

 

 今度は思考。

 ――なんだ、この神父は!?

 

「この戦いは一週間毎に行われる。128人のマスターたちが毎週殺し合いを続け、最後に残った一人だけが聖杯に辿りつくのだ」

 

 ――殺し合い

 否が応にもあの人形との戦いが思い浮かぶ。

 既に一度死にかけた私には、それを嘘だと断じることが出来なかった。

 

「それが真実かどうかは、一回戦が終われば分かる。そこで、勝とうと負けようとな」

 

 嫌味……だろうか?

 いや、例えそうであろうとなかろうと、ここからの話を聞かないわけにも行かない。

 戦いの、戦争のルールすら知らない人間が、この先生き残れるはずもないのだから――

 

「 各マスターには六日間、相手と戦う準備をする猶予期間(モラトリアム)が与えられ、七日目の決戦をし、勝敗をつけてもらう 」

 

 ――戦う準備。

 つまりは、相手の情報を探ったりしろ、ということか?

 相手の、相手に勝つための。

 勝つ。負けたら死ぬから、勝つ。そんな理由で、良いのだろうか?相手もまた、負けたら死ぬ。つまり、生き残るのは私か敵かの二択。両方は不可能だ。

 生きるために、敵を殺す。そんなことが私に――

 

「それから、その 猶予期間(モラトリアム)の間に二枚の暗号鍵(トリガー)を得なくてはならない」

 

 トリガー?

 

「そうだ。その二枚の暗号鍵(トリガー)を集めないと、決戦場への扉は開かれない。つまりは不戦敗ということになるわけだ。」

 

 猶予期間(モラトリアム)で行うのは情報収集だけではないらしい。

 戦えないということはまず避けるべきだ。故にまずは暗号鍵(トリガー)取得を最優先し、次に情報収集。そして上の二つと平行して、強くなるための特訓、というのが妥当だろうか?

 

「質問はあるか?」

 

 ……ある。

 トーナメント戦であるということを聞いたときは、そういう仕様だと思ってたけど……

 相手と戦う準備をしろ、と言われて思った。

 私の対戦相手って誰だ?

 まさか、そこから調べろとでも言うつもりなのだろうか――?

 

「対戦相手が分からないだと?……ふむ、どうやらシステムにエラーがあったらしいな。君の対戦相手は明日発表しよう」

 

 エラー……多分それがなんなのかは教えてくれないだろう。特に長い付き合いどころかさっきが初対面だが、そう思った。多分そういうの教えてくれない人だ。

 

 明日……か……

 

「それと、マスターには一人につき一部屋、個室が与えられる。2−Bの教室にこの認証コードを使って入れる」

 

 神父は、そう言って、私の端末にコードを送るともう用はないとでも言うように立ち去っていった。

 

 

 

 アリーナ。

 この月の聖杯戦争に置ける戦場であり、マスター達は決戦までここで敵サーヴァントの情報を集め、暗号鍵(トリガー)を取得し、そして自分自身の力を高めていく。

 

 今日もまた一人、足を踏み入れる者たちがいた。

 というより、俺とマスターである。

 

 あの人形を除けば、俺にとってもマスターにとっても初めての戦闘である。

 

 ここで、俺の悩みを説明しよう。

 

 いきなりであるが、戦闘前に戦闘に関する不安を上げておく、まぁ、事前に出来ることはやっとこうぜ。ということだ。

 一つ目は、先ほども言ったが、これが初戦闘だということだ。

 この初めての、というのは曲者だ。

 なぜなら、低いステータスをカバーするための最高の材料は経験なのだから。

 衛宮がマスターのセイバーしかり、Extraのサーヴァントたちしかり。

 しかし、その経験もない俺が、その上低ステータス。

 そしてもう一つの不安は戦いの経験もなければ、人を殺したこともない、ということだ。

「負けたら死ぬ」ということだ。そして、勝ったとき相手は死ぬ。つまり俺が相手を殺すことになる。

 この、人を殺す覚悟が俺にはないのだ。

 古今東西、様々な小説があろうとも、異世界転生やらトリップやら憑依やらをする主人公達が、最初に悩むことである。現代社会にて、殺人は最悪の行為であると刷り込みとも呼べるほどに言われてきたが故に、それに対する嫌悪感ややってしまったときの罪悪感は、半端なものではない。

 

 二つを纏めると、現代からきた「俺」の経験不足のせいで、この聖杯戦争勝てんのか?みたいな感じ。

 

 以上二つが俺の悩みである。

 はあ、なにかないものだろうか、「精神安定」みたいな感じのスキル。

 

 あ、そういえば。サーヴァントって自分のステータスが見れるんだから、スキルだって見える、よな――?

 

 

 

 

 本日の収穫。

 

 セイバー あれ?結構戦える?

 はくのん あれ?私の役目は?




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次も一週間後、かな?
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