Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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遅れてすいませんでした!


三日目

――わからない。

 

私が、二日間通してわかったことはそれだけ。それもわからないことがわかったなんてことだけど。事実、その程度なのだ。今まではまったくなかった類のもの。根本的に違う謎は状況を整理することすら許さない。

ありすは双子のマスターなのか、あの赤い化け物は何だったのか、マスターとしての実力が高いことはわかるものの、それ以上のことはわからない。勝てるかどうか以前の、戦えるかどうかという悩み。混乱しか生まないような状況で、最悪ともいえる状況で、それの打開策はまったくない。――戦闘力の差ではなく、もっと別のところから生まれた、何かの違い。

 

なんにせよ、とりあえずアリーナに言って情報を――

 

「見つけたー!」

 

――一階の廊下を歩いていると、後ろからそんな声が聞こえて来た。別に、隠れていたわけではないのだが、その声に体が震えた。

 

「お姉ちゃん!またあそぼう!」

 

遊びの誘い。ここ数日で、すでに慣れたことではあるが、それの意味は分からない。初日から続くこれには、いったい何の意味があるのか――

 

「あたらしい遊び、かんがえたんだ」

 

「新しい穴の中にいって遊ぼうよ!」

 

交互に話す二人の少女は、そういうとアリーナに走って行った。――新しい、穴というと……第二層の事だろうか?だが、問題はそこではなく――

 

――何もできなかった。

 

二人に話しかけられたとたんに、体が凍り付く。返事の一つもできないほどに、手足がしびれ意識も凍る。二人がいなくなって現実に引き戻されるまで、私は動けなかった。――恐怖だ。

先日であったあの化け物に向けるものとはまた別の類の恐怖。頭では、冷静になれと叫んでいる。しかし、そう簡単に割り切れるものではない。

 

あれは何だ?あれはいったい何なんだ?正体は?能力は?

 

――頭にまとわりついてくる彼女たちの亡霊が、私の足を重くさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ついに、来た。

 

俺という存在が、もっとも試される日が。

マスターと一緒にアリーナに向かいながら、俺はそんなことを考えていた。

俺は、原作知識なんていう反則(チート)じみたものを持っているから、ありすの正体も能力もわかっているし、何がサーヴァントで何がマスターでなんてことに悩むことはない。――俺が悩むのは、俺が気に病んでいるのはもっと先、その知っている能力についての事。あれが危険だという事はわかっているし、俺なんて言う不安定な存在相手には、たぶんもっとも有効に作用するものだろう。俺の中でも、原作知識としても、ここが、アリス(・・・)の持つアレはもっとも危険。どれぐらいかといえば転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラディーン)とどっちが危険かといわれて悩むぐらい危険。

 

――だとしても、俺はそれに勝たなければならないのだ。ありすにしろ転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラディーン)にしろ、俺は勝たなくちゃいけない。

これは戦争だ。聖杯という宝を奪い合う戦争。故に俺はここで――

 

「あ、お姉ちゃん来てくれたんだね!」

 

アリーナに入るとすぐにありすが俺たちを迎える。いや――ありすとアリスがといった方がいいか。

 

「ちょっと待ってね!今遊び場を作るから!」

 

来た……!アリスのアレが……!

 

「――ここでは、鳥はただの鳥」

 

白い少女(ありす)が一言告げる。空気が、変わる。

 

「――ここでは、人はただの人」

 

黒い少女(アリス)がそれに続く。空気が、染まる。

 

――これが、魔術の中でも最も魔法に近い現象を起こす魔術。魔術師ではなければ到底実現などはできない神秘。

 

「お姉ちゃん、ようこそありすのお茶会に!」

 

世界が、変異し染まりあがった。――そうだ、これこそが。

 

「――固有結界……!」

 

黄色に染まりあがった世界は、先ほどまでいた世界とは全くの別物だ。原理も理屈も法則も規則も何もかもが変異し、遷移し、変容し、変遷した世界。

 

「――ここではね、みんな平等なの。アナタもオマエもヤマダさんもスズキさんもみーんな一緒でおんなじ。つけた名前なんて、すぐわすれちゃう」

 

「それだけじゃないよ?だんだんと自分がわからなくなっていってね、最後にはお姉ちゃんもサーヴァントも――」

 

――消えていなくなる。

 

――ついに、来たか。

自我とともに存在を削り取り、消滅させる固有結界。原作知識から、これがどういうものなのかの理解はある。そして、現在の状況からも――

 

「え……?あれ?私……」

 

隣で呆然とするマスターを気にしながら、ありすはどこかへ走っていく。――ここは、追うべきだろう。

 

「――追うぞ」

 

ああ、体感して初めて分かった。これは、やばい。俺のナニカ(・・・)の知識(・・・)でもわかっていたことだけれど――

 

――俺は既に、自分の名前がわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

――わからない。わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない。

 

――自分の名前がわからない。

 

先ほどまで当たり前のように持っていたであろう知識が、まったくわからない。そもそも、私たちが今追っている少女は誰だっけ?それらのことがまるで頭に石でも詰まっているかのように、意志が石にでもなったかのように、いう事を聞かない。――思い出す力が失われたのか?記憶力が喪失したのか?あれ?そもそも私に名前なんてあったっけ――?

 

「マスター!目を背けろ!ここで考えれば飲まれるぞ!」

 

後ろから、誰かの声が――あれ?これはどこかで?

 

「うふふ、お姉ちゃんが忘れちゃったのは本当に名前だけ?」

 

――え、それ は どうい う。

 

めのまえで しょうじょ たち が たちど まる。

 

「さて、追いかけっこはここまでにしておくか……ここまでとは思っていなかったしな」

 

「でも、お姉ちゃん大丈夫?もう、体が消えかかってるよ?」

 

とな りにたつ おとこがした をうつ。

あ れ? わたし なんで――

 

「くそっ!ペナルティなんて気にしてる場合じゃねぇか!」

 

「怖いわ、あたし(アリス)。なんで怒ってるの……?」

 

「わからないわ、あたし(ありす)。少し遊んであげてるだけなのに……」

 

「……ひっく、なんで?お姉ちゃんと遊びたかっただけなのに……」

 

「ここはもう危ないわ、もう行きましょうあたし(ありす)

 

「うん……」

 

めのまえの しょうじょたちが きえた。

 

「ちッ。マスター!とりあえずあいつ等は後回しだ!とりあえずここから出るぞッ!」

 

ますたー? そのますたーっていうのは いったいだれの――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――やばい、やばいやばいやばいッ!

 

走りながら、チラリと後ろにいるマスターを見る。俺が無理やり手を引くマスターは何もわかっていないかのように呆然としていた。くそっ!俺がまだ正気を保っていられるのは、英雄としての補正、スキル対魔力が低いながらも作用しているのかもしれない。――いや、たぶんそれは違う。あれは無効化でありそれも低級の物しか無効化できないはずだ。このクラスの魔術に通用するとは思えない。だからたぶん、俺が正気を保っているのはこの、謎の知識のおかげだ。

わかっているから。これがどうすれば解除されるのか。記憶が、段々薄れてこの知識も薄れてきているけれど――

 

「コレの意味も分からないしな――」

 

マスターとつないだ手とは逆に握られたもの。先ほど彼女たちが落としたもの、とりあえず情報を得る目的で拾っておいたわけだが――いまはその意味を考える余裕なんてない。

走る走る走る。俺はマスターの手を引き走った先にアリーナの出口が見えた。あれがゴールか。あれに行けば何がどうなるかすらわからないけれど、あそこに行けと本能と知識が叫んでる。

 

走って走って走って、俺はようやくその入り口を――

 

――超えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の成果

 

セイバー 成果なし

はくのん 固有結界?




……一番悩んだ気がする。一回戦二回戦に比べると三回戦は書くのが難しい……

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