Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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四日目

『あなたの名前はなあに?』

 

――昨日、あの結界の中でセイバーが拾った紙にはそう書いてあった。名前のわからなくなるあの結界内では答えることができなかったであろう質問も結界の外にいる今は当たり前のように答えることができるものだ。

しかし、これはいったいどういう事なんだろう?何かのヒントだという事はわかるのだが……しかし――

 

「――そうだな、確かにこれがヒントで今は答えられたとしても」

 

そう、あの結界内ではそれを答えることができない。名前から失われるあの結界内で名前を知ることなどできるのだろうか?試す価値はある、だがどうやって?この月において、忘れた情報を知るなにかがあればいいのだけれど……いや、そんなものがあったらまず自分の記憶を取り戻すところからだろう。

 

「で、マスターはこれからどうするつもりだ?」

 

「えっと……とりあえず人に聞いて見ようかな?」

 

「……ああ、了解した」

 

……?今なんか……まあセイバーが言わないという事は別に言わなくちゃいけない事でもないのかな?

それはともかくとして問題はありすの話。あの結界へのヒントは得たものの、それは所詮『技への対処策』でしかなく、『勝つ方法』ではないのだ。名前がわかっただけで倒せるわけがないから当然といえば当然だけど……それにそもそも、相手のサーヴァントが何なのかすらわからないのだから考えようもない。たぶん、あの化け物(アレ)がサーヴァントだとは思うんだけどアレから感じた雰囲気と昨日感じた結界はなんだか違う気がするというか……アレはどちらかといえば肉体で敵を圧倒するタイプに見える。それに比べ、昨日の結界は精神攻撃だ。物理攻撃か精神攻撃か。これは戦い方の分類においてもっとも根本にあるものではないだろうか?魔術か化学か以前の物に思う。それだけの違いがあるのだ。だから――

 

「ならマスター?とりあえず誰に聞きに行くんだ?」

 

「え……うーん、とりあえず屋上に行こうかな?」

 

「了解した」

 

――なんにせよどちらにせよ、ここで考えたところで答えが出るはずもない。こんな簡単に答えが出るぐらいならとっくに出ているという話だ。

取りあえずは目先のあの結界の問題を解決するとしよう。彼女に聞けばそういうことは大体わかるしね……あ、そうだ!ついでにその相手がいったい何なのかについても聞いておこうか。どうせならそれらを一緒に聞いた方がはやいし。

 

――そんなことを考えながら、私は屋上の扉を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――名前を忘れない方法?」

 

という事でお助けキャラである遠坂に俺たちは会いに来た。……なんか最近疑問がある時俺よりも遠坂に聞くことの方が多い気がする。これがもしギャルゲー(間違いではない)だったらセイバールートが消えて遠坂ルートへ一直線である。……地味に悲しくなってくる。

――それはともかく。今の話はこれからの信頼関係に多大な影響を及ぼしそうではあるが俺の精神面と進行の問題で置いておく。……ずっとそこに置いておきたいところだ。

 

「なに?あなたついにそんなことまで忘れちゃったの?」

 

まあ記憶がない人からそんな話を聞かされればそう思うのも無理はない。俺が遠坂の立場だったとしたら同じことを聞いただろうしな。そもそも、名前を忘れない方法を聞くなんて時点でそいつの正気を疑うレベル。

呆れの混じった遠坂の言葉を聞いてマスターは慌てて事情を説明する。

 

「――ってことなんだけど」

 

「ふーん、名前がわからなくなる結界の中で自分の名前を言う方法?……って何でよ!?何結界って!?」

 

「えっと、私のサーヴァントはこゆうけっかい……?って言ってたよ」

 

「こっ、固有結界!?あの子のサーヴァントそんなの使うの!?」

 

うんうん、確かにそれぐらい慌てるよな。でもさ、この世界は外伝の世界だから違うけど本編だと遠坂のサーヴァントが使うんだよな、それ。具体的には無限の剣製。俺的には『unlimitedbladeworks』って言うよりそのまま『むげんのけんせい』って読むほうが好きです。……どうでもいいか。

 

「……すごいの?」

 

「すごいなんてもんじゃないわ!しかもアリーナ全体を長時間書き換えるなんて反則じみてるし……」

 

「えっと……とにかくすごいんだねっ!」

 

そんな風に笑ったマスターを見てガクッっと体を崩した遠坂には芸人の才能がある気がする。確実に素だし。

 

「……はあ、こんなんで大丈夫かしら。できるならここでつぶれてほしいんだけど……」

 

すごい自信満々に言ったのに遠坂にため息をつかれてマスターはおろおろし始めた。……はあ、マスター俺たちの目的を忘れてないか?

 

「あっ!それで何かない?名前を忘れない方法!」

 

「……っていうかそれぐらい自分で考えなさいよ、おちょくってんの?」

 

「へ!?違うよ!普通に聞きに……」

 

「……ふーん。私としてはあなたはともかくあなたのサーヴァントが思いつかないとは思えないんだけど……」

 

余計なことを!そもそも原作知識でわかってるし考えればすぐわかるようなことだったけどさ!見ろ!マスターから俺にそうなの?という視線が突き刺さる(実際は、柔らかい感じの視線だったけど)。

 

「……ああ、まあわかっていたことはわかっていたんだがな」

 

「ほら見なさい、つーかあんた普通に出て来たわね」

 

それに対し俺が今更だろうというとそれもそうねと遠坂は笑う。

 

「え……そ、その方法って何?」

 

「……いや、マスター君は覚えておきたいときに何をするんだ?」

 

「あらら、直接教えてあげないのね」

 

にやにやとこちらを見る遠坂は無視してマスターを見つめる。しばらくマスターは考え込むとハッとしたように顔を上げる。

それを見て俺も口を少しゆがめる。さすがにわかったか。マスターの顔にも「これだ!」と言っているような笑顔。

 

「そっか!なんだ考えてみれば一つしかない!」

 

すごいきらきらしているマスターを見て俺と遠坂はコクコクとうなずく。……何この連帯感。

なんにせよとりあえず戻ろう。しかしよかった、いくら天然といってもそこまででは――

 

「――気合で頑張る、だよね!」

 

『根性論!?』

 

――訂正。どうやら俺のマスターはそこまでの天然だったようです。

 

ちなみに答えはメモをする、でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――手にメモをすればいいそうです。

 

うん、確かにそうだよね。書いたものが、書かれたものが、なんなのかは理解できないだろうけど書いた文字を読み上げるということぐらいなら覚えてられるだろうし……最悪それも一緒に、『これを読み上げる』という事も手に書いておけば忘れてしまっても大丈夫だ。子供だましには子供だまし。それによく考えればありすがメモを残したのは結界に必要なものだからかもしれないし。遊びには遊びのルールってこと。

……こんな簡単なことに気付かないとは思わなかった。少し、いや結構恥ずかしい。おかげでセイバーと凜から息の合ったツッコミをされた。一応、教えてくれた凜にもお礼を言ったのだが。

 

『べ、別にお礼なんて言わなくていいわよ。この程度で言われてたらわたしは今頃女王さまだっていうの』

 

なんていわれた。そっけない気がするけど当然だろう。私とだっていずれ殺しあうかもしれないのだから。少し寂しい気がするけど――

 

――ってそうじゃない。今はありすのことだ。

 

ふと、自分の手に視線を落とす。片方の手の甲には月の聖杯戦争に参加する権利である令呪が三角刻まれている。そしてそこから視線を移しもう片方の手を見ると――

 

『これを読む! 岸波 白野』

 

――なんかバカみたいだ。これが一番有効な手段なんだけど……いや、こんなのが有効だと信じて行うのがバカみたいという事か。ま、今の私たちはそれがどんなにバカみたいでもやらなくてはならない状況にあるのだが。

ともかく、アリーナに行かないことは始まらない。私たちはアリーナへの扉を開ける。

 

――空気が違う。

 

入ったアリーナの中は昨日感じた世界とまったく同じものだ。長期間に及ぶ結界、凜も怪しいといっていたけれどこれがもし昨日から続いているものだとしたら怪しいにもほどがある。かなり、反則的だ。

 

「マスター、考え事はいいがとりあえず読んでみたらどうだ?」

 

「う、うん。そうだね。読めって書いてあるし」

 

手の甲に書いてある意味の分からない言葉。だが今はとりあえずその言葉を叫んで――

 

「岸波白野!」

 

――空気が入れ替わる。

 

今まで侵入者を拒むかのように張りつめた空気が一瞬で入れ替わる。苦労させられた分、随分とあっけなく終わったものだ。

 

「――名無しの森が壊れてしまったわ」

 

――目の前に、ありすがあらわれる。

 

「――名無しの森が消えてしまったわ」

 

――目の前に、アリスもあらわれる。

 

結界を破られたからか二人の少女は私たちの前に出て話を始める。

 

「残念だわ。別の遊びを考えないと」

 

「大丈夫。もう少しで時計が鳴るもの。その時はいっぱい遊べるわ」

 

「本当?壊しても?」

 

「ええそうよあたし(ありす)。今は少し我慢しましょう。楽しみはとっておくものよ」

 

「うんうん、そうだね。じゃあねお姉ちゃん」

 

「さようならお姉ちゃん」

 

――そういってありすとアリスは消えていった。

 

「名無しの森。マスター、これも相手の正体を見極めるカギだな」

 

「そうだね、戻ったらとりあえず図書室にいこっか」

 

セイバーは私の言葉にコクリとうなずくと私の前へ歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の成果。

 

セイバー これからどうするか

はくのん 結界突破?




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