Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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決戦に近づいて来た――!


五日目

――固有結界を突破した。

 

俺にとってこの三回戦にてもっとも驚異と思われたものが件の結界なわけだが、それも随分とあっさり突破できた。……そういえばゲーム内でもサーヴァントはあまり動じていなかった。あれはサーヴァントの能力だったのか、単純に精神力から来るものなのかはわからないけれど……

なんにせよあの結界が終わった今三回戦で恐るものなど何もないーーとは、いかないのだ。まあ今は結界を突破した事を喜ぼうか。

 

「セイバー」

 

「ん?どうかしたのかマスター?」

 

「えっと、あのさ、ちょっと思ったんだけどね」

 

――ふむ、疑問か。それを胸にしまい込まず他人に聞くのは素晴らしいことなのだが……少し驚いてしまっている自分がいる。

なんだか最近は(最初からだったような気もするが)そういう疑問があっても俺ではなくほかのマスターに聞いたりしていたからここで俺に聞くのは少し意外だった。……サーヴァントと話さないのはそれぞれ性格が違い応答も違うなんて言う制作側の問題があるような気がしないでもない原作に引っ張られているのかもしれない。小説やゲームなどへ転生するサブカルチャーにありがちな原作への軌道修正というやつだ。――今のところ、それを実感させるようなものは()()()なかったと思うが。

 

閑話休題。今はそんなことを話している場合ではない。

 

「あのさ、あれって……ありすのあれって異常なこと……なの?」

 

「異常かどうか?」

 

「う、うん。だってほら、凜もすごく驚いてたし……」

 

――なるほど。

遠坂のような一流の霊子ハッカーが驚くほどのものが、平常であるはずもないという考えか。うん、相手が魔術を使っているからその認識は正しいもののそれがあてにならない時もあると思うのだがな。そもそも人間の常識が当てはまらない存在こそがサーヴァントなわけだし……いや、こんなことを言い出したら『アレが異常というかサーヴァントに異常じゃないやつなんていない』なんていう元も子もない回答になってしまいそうだ。たとえそれが事実だとしても今マスターが求めているのはそういう事ではないだろう。

今はなした異常というのは『人間』から見てという事。マスターが聞きたいのはありすとアリスが『サーヴァント』から見て異常かどうかだろう。

 

「うん、サーヴァント側から見てありす達は……なんていうか、異端、なのかな?」

 

「――異端、か。その通りだな、あれは十分、いや十二分に異端で異常だ」

 

――少し、目を見開くマスターはそのしぐさからしても少し驚いているようだ。まさか、本当に異端だとは思っていなかったのだろうか?なんにせよ、聞かれたからには説明しなければならないだろう。

 

「――言っておくが、あれは異常で異端であったとしても違法ではない。これはまず最初に知っておくべきだ」

 

「違反では、ない?それってルールは破ってないってこと?」

 

「そうなる、もしそれが違法であるのなら、あの遠坂が何も感知していないという事はないだろう。感知し関知しているはずだ。実際、あれは固有結界という技なわけだし、使えるサーヴァントは少ないとはいえ確実に存在する」

 

「……なら、何で凜はあそこまで」

 

「単純に、普通なら固有結界は使()()()()からだよ」

 

「……え?使えるのに、使えないの?」

 

「うん、少しわかりずらかったか。サーヴァントの中には『固有結界』という技を、いや機能(ほうぐ)を持っている奴は多い。だけどそれだけじゃ結界を張ることはできない。それを動かすためには、それ相応の燃料(まりょく)が必要になる。もし、だ。普通の人間の脳や魔術回路でそれを使おうとしても――」

 

「――燃料(まりょく)が足りずに発動しない……ってこと?」

 

「ああそうだ。さらに簡単に言うならば、MP0の魔法使いってところか。魔法は覚えてる最下級から最上級まですべてを、しかしMPがないから発動できない」

 

「……って、それが本当ならありすは――」

 

「ああ、ありすは存在自体が軽く――」

 

――人という存在を超えている。

これは、超人なんて言葉ではかたずけることができないものだ。もはや、人ではないといった方が早いかもしれない。

 

「――サイバー、ゴースト」

 

「ふむ、確かにそれもここに存在する人以外のものだ。まあアレはゴーストといっても幽霊ではなくただの痕跡なのだが……それにな、さっきから人ではないとか言ってはいるが、そもそもここに人間なんて存在しないという事はわかっているか?」

 

「あ……生者や死者以前の問題ってこと、か。情報しかないから……」

 

――そうなるな。そしてこれにも、サイバーゴーストが幽霊ではない事としてもう一つ。

 

「その、唯一存在するマスターたちが死んだところでゴーストにはならない。そしてそれがもし奇跡的に痕跡として残ったとしてもそんな不正データを月は、ムーンセルは許さない。人間から亡霊になる存在なんてな」

 

「じゃあ、もし死んでいたマスターが存在するとしたらそれは――」

 

「ああ、そういうことだ。それがありうるとすればそれは――」

 

――始まり(デフォルト)で死んでいるという事に他ならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ありすは亡霊である。

 

私とセイバーの話は、結局そこで終わった。固有結界なんてものを使うほどの魔力。普通ではありえない異常。でも、それはつまり――

 

――もう、ありすは死んでいるってことじゃないのか?

 

「――事実、それは正しいと思うがな。身体的制約がある普通のマスターとは違い、全力で魔力を使える。それも、リミッターなしで」

 

制限がないのは、精神体のみの存在だから。納得は、できなくはない。だけどそれを受け入れろというのは――あまりにも難しい。私たちが戦っているのはただの亡霊だなんて――

 

――と、私とセイバーが廊下を歩いていると。

 

「あ、お姉ちゃんだ」

 

ありすの、声がした。声がした方を見ると視線を向けるのと同時にアリスが話し出した。

 

「また怖いことをされたら大変だわ。早く逃げましょう、あたし(ありす)

 

「そうだね、早く逃げなくちゃ」

 

「なら、どこに行こうか?」

 

「お話が読みたいわあたし(アリス)

 

「それはいいわね、行きましょうかあたし(ありす)

 

そしてこちらが話す間もなく話し続け、そして虚空へと姿を消した。――なんにせよ、先ほどの話を確かめるためにも話をしてみるべきだろう。どこに行ったかはわからないが探してみない事には始まらない――

 

「マスター、彼女たちはお話を読むといっていた、なら行く場所は一つだと思う」

 

「そうだね、お話、つまりは本を読むわけだから――」

 

――図書室か。

 

先ほどの予想が本当なのかどうかを確かめるために私たちは図書室に向かうのだが……これを知る意味は本当にあるのだろうか?ありすの正体が何であれ相手が強敵であることには変わらないし、いまだにサーヴァントが誰なのかすらわかっていないのだ、知るならばまずはそこからなきがする。

そういえば、私は今まであの赤い怪物がありすのサーヴァントだと思っていた。クラスは見た目からバーサーカーだと。しかし、セイバーとの話からもそれはどうも間違っているらしい。私がそれを聞いたとき――固有結界という魔術を使うバーサーカーなど存在するのかと聞いたとき、セイバーは首を横に振っていた。そもそもキャスター以外が使えるようなものではないらしい。……もっとも、セイバーはそれ以外の方が使っているとも言っていたけれど。それでも、キャスター以外の、アーチャーやライダーが(セイバーが言ったたとえがこの二つだった)使えたとしてもバーサーカーが使うことはあり得ないらしい。

それは、狂っているゆえの障壁なのかもしれないが……

 

「――白いウサギ、ここにはいないよね」

 

図書室についた私たちの耳に最初に聞こえてきたのは、ありすのそんなつぶやきだった。

 

「そのウサギって、三月ウサギ(マーチ・ヘアー)の見間違いかしら?」

 

そして聞こえてきたのは二人目のありすの声。

 

三月ウサギ(マーチ・ヘアー)って、きっとあなたの事よ」

 

「ひどいわ」

 

「白いウサギ、捕まえてどうする?」

 

「くびをきっちゃうわ」

 

「きゃ!ウサギさんにげなきゃ!」

 

「そうね、でも白いウサギはきっとここにいるわ」

 

「どうしてわかるの?」

 

――それは、私たちに向けた言葉なのか。それすらわからない二人の会話。

わからないのはそれだけではなく、意味すらも理解できない。いや、意味があるのかどうかということからか――

 

「だってわたしたちのことじっと見てるから」

 

「なら一緒に遊べばいいのに」

 

「だめよ。遊ぶのはもう少し後にしないと」

 

「そうだったわね。じゃあねお姉ちゃん。こんど遊びましょう」

 

――そんな会話をして、終わったと思ったら二人の姿は一瞬で消えていった。

 

やはり、おかしい。

何が、といえば実力が高すぎるという話か。慎二など比較にはならないほどの、圧倒的実力。慎二ですら及ばないのなら、私なんて――

 

なんにせよ、学園側のプロコトルなど気にしないとでも――そんなものがそもそも存在するのかと思わせるぐらいの行動。一瞬で目の前に現れ一瞬で消える。それはまさにアレの――

 

――亡霊のようだ。

 

今までは、勝てないかもしれないということはあった。というよりも毎回そんな感じではあった。だが、勝てるかどうかはわからなくとも、こうすれば勝てるんじゃないかという希望ぐらいはあったものだ。だが今回は、それすらもない。勝つためにどうすればいいのか、まったく思いつかない。そもそも、私がというよりありすに勝てるマスターなど存在するのだろうか?凜はラニははたまたレオは。

 

――これは、どうすればいいのだろうか?

 

ふと、うつむき下を向いた視界に、一枚の紙が写りこんだ。足元に、ひとつの紙。

 

……なんだこれ?

 

意味の分からない暗号のような言葉で埋め尽くされた紙。

これは、ありすの持ち物、という事でいいのだろうか――?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――鏡文字?」

 

「ああ、先ほど拾った暗号は、おそらくそうやって読むものだ」

 

――図書室から出て、最初に悩んだのはあの暗号の事である。

 

……その悩んだのはの前にはマスターがという言葉が入るのだが。これは本編でも出たものであり、だから俺も答えを知っているわけだ。……まあ原作ではこれはサーヴァントが教えるのではなくあの教会にいる人形師が教えることなのだがいない事には仕方ないだろう。

必死になって鏡に映して思うとしているマスターを見ながら、とりあえずは今後のことを考えるか。

たぶん、マスターも気づいてはいるんだろうがあれは、あの赤いのはサーヴァントではない。バーサーカーが固有結界を使うなんてありえないことだしな。そしてこの戦いの中で、相手の正体を探るにあたり、重要なことが一つだけ。これも教会にて教えてもらえることだったと思うのだが、バーサーカーが固有結界という認識を逆転させるという事だ。バーサーカーが固有結界を作ったのではなく固有結界がバーサーカーを作った。これは過去編であるFate/zeroを知っていると簡単に受け入れられるかもしれない。あのライダーの固有結界と同じだ。あれもサーヴァントの召喚をしている固有結界なわけだしな。

と、そこで。

 

「――えっと、あ!こういうこと……かな?」

 

マスターの喜びの声が聞こえた。

 

「読めたのか?」

 

「あ、うん!えっと呼んでみるね……」

 

『荒ぶる思いで歩みを止めると燃え盛る炎を瞳に宿すジャバウォック。荒々しくタルジの森を駆け下り眼前に嵐のごとく現れる。それを一撃二撃とヴォ―パルの剣で切り裂いて、悪しき獣が倒れるとき、その首もって、意気揚々と帰路につかん』

 

――ヴォ―パルの剣で刈られる怪物ジャバウォック。

 

ありすの落としたメモにあったのはそういう怪物の名前。たぶんマスターの中でもそれが何を指しているかは明瞭だろう。――あの赤い怪物だ。

 

「とりあえず、もう一回図書室に行ってみよっか」

 

「そうだな、俺もそれに賛成――」

 

「あ、お姉ちゃんだ!」

 

と、図書室に向かおうとした俺たちに声がかかる。この声は――ありすか。

 

「えっと、こ、こんにちわ?」

 

「うん!こんにちわ!」

 

マスターも少し戸惑っている。こちらをちらちら見ているのがいい証拠だ。しょうがない、ここは俺が助け船を出しておこうか。

 

「少し、聞いてもいいか?」

 

「え?うん、いいよ!」

 

「君のサーヴァントはジャバウォックなのか?」

 

それを聞いてとたんに真剣そうな顔になるマスターとは対照的にありすは少し驚いたような顔をする。

 

「何いってるのお兄ちゃん。ジャバウォックはサーヴァントじゃないよ?ジャバウォックは――」

 

「しっ!あたし(ありす)!それ以上はだめ!」

 

話そうとしたありすの言葉を遮ったのはアリスの声。

 

「え?」

 

「さ、もう行きましょ。あまりしゃべると夢が覚めてしまうわ」

 

「うん。じゃあねお姉ちゃん」

 

――そういって二人はまた姿を消した。だからアレは俺には使えないのだろうか?

 

今の会話は、相手の情報としては実入りがよかった。

 

「――やっぱりアレはサーヴァントじゃなかったんだ」

 

「そのようだな。あの怪物はサーヴァントではなく宝具か何かなのだろう」

 

「って、ちょっとまって。ならもしかして相手のサーヴァントって――」

 

――気づいたか。

 

「う、うん。もし相手のサーヴァントの能力が鏡写しのようなものなら――」

 

――あの黒い少女は双子ではなく鏡のようにそっくりな自分を作るサーヴァントという事になる。

 

「――ってことは相手のクラスはキャスターかな」

 

――一歩、迫った。

俺からすれば最初からなかったような距離だけど、それでも近づいた。相手に近づき、相手との戦いにも近づき、そしてもちろんこの戦いの勝利へも――

 

――これから全力で、やっていくとしようか。戦うために負けないために死なないために生き残るために勝つために。そしてマスターのために。

 

本番は、ここからだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の成果

 

セイバー 俺たちの戦いはまだまだこれからだ!

はくのん 姿を変えるサーヴァントか……




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