Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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――脱落していなかった少女も


三日目

――手詰まり。

 

私たちが置かれている現在の状況を端的に表すならばそういうのが一番適していると思う。昨日、私たちは人形と……ソレと戦った。それに負けることもなく、むしろ勝ったと言っていい。ああ、なんというか前哨戦において勝利を収めたのは四回戦にして初めてだというのだから驚きだ。――最も、今までだって負けることはなかったんだけど。だからって、今回も負けないなんてのは楽観的過ぎるけど。

 

とはいえ、手詰まりとは言えこの聖杯戦争においては意外とそれは大きな問題にはならないのかもしれない。なにせ、現実の戦争ではありうる戦争の硬直状態というものがないわけだしどれだけゆっくり進めようとしてもすぐ決戦の日がくる。冷たく動かない戦争にはならないが、激化し燃え上がる戦争にはなる。結局、戦争がいずれ起こると分かっているだけで前哨戦で情報を得られないのはその戦争において不利になる要因なわけだし……

 

「――うーん」

 

――なんて、今の状況の説明をしたところで今の状況が変わるわけがない。むしろ、その状況の確認をすればするほど今の現状のまま動かないような気がしてくる。事実、考えれば考えるほど。その思考に答えが見つからない限り動かない時間は長くなり動ける時間は短くなっているんだけど。だからといってどうにかできるものでもない。

 

「できればどうにかしてるよね……で、どう思う?」

 

と、ここで私は質問を振ってみた。

言葉と同時に投げつける私の疑問の視線の先には、一人の少女が立っていた。黒い長髪によく目立つ赤い服の――

 

「……全然状況が掴めないんだけどいきなりなにかあったの?」

 

――遠坂凛である。

 

なんだか、私たちにとってのお助けキャラみたいになってる気がする。今更なことだけどさ。

とはいえそのお助けキャラという立ち位置というか、そういう人達とだって結局戦わなくてはならない。こんなことは最初からわかっていたことではあるけれど、実際に今まで助けてくれた人と――ラニと戦うことになって改めてそれを認識した。認識し直した。結局、私はそのことを頭の隅にはおいていたもののそれだけだったのだ。それについて考えることはなく(考える暇なんてなかったとも言えるけど)理解なんてしていなかった。認識していただけ。知っているだけで考えてはいない。なんとも中途半端で救えない話だ。

 

「今度はラニ……ねえ?随分と悪運に恵まれてるわね」

 

――遠坂なりの皮肉なのかはわからなかったけど、それは確かにと思わされた。

一回戦から間桐慎二とあたりダンにありす。最も、一番の悪運の強いところは、ここまで生きてこれたことなのかもしれないけれど。なんて、セイバーに言ったら怒られそうだ。

 

「えっとね……じつは……」

 

とりあえず、凛にソレについての話をしてみる。

ソレがラニのサーヴァントの能力なのかはわからないけれどこれがもしサーヴァントの力ではなくラニの能力だとするならば――

 

「――ふうん。人形ねえ。それは多分、ラニの力だと思うわよ?」

 

――凛ならわかるだろうと、思ったのだが……どうやらあたりみたいだ。

 

「サーヴァントの能力じゃなくて?」

 

「まあそういうのを操る奴だっていることはいると思うんだけどねえ……だったらもうちょい強くてもいいんじゃない?確か、戦ったことあるんでしょ?サーヴァントが作った敵と」

 

――ああ、なるほど。確かにそうだ。

 

私たちは一度、サーヴァントが作り出した敵と戦っている。

アレ。

私たちがそう呼ぶあの赤い怪物。確かにあれと比べれば弱すぎる。いや、強さだけではなく威圧感も。アレは存在しているだけでアリーナのどこにいようと明確に存在を感じることができた。だけど、ソレは違う。アレとは比べ物にならないほどに威圧感はなかった。――ソレがなんにせよ、サーヴァントの宝具ならば少しは神秘を帯び大きな力を秘めているはずなのに。ソレにはなかった。神秘が。

 

「ま、単に神秘が低いだけなんて言われたらお手上げなんだけど……」

 

「えっと……ソレがラニの技だっていう理由は他にあるの?」

 

「……ソレ?まあ、そのソレってのがさっきから言ってる奴のことならあるわよ。神秘以外の理由。というより私的にはそっちが本命かしら?」

 

――まあ、そうか。そもそも凛はソレを見ていないわけだし。

 

なら、それはなんなのだろう?

 

「……むしろなんでわかんないのよ」

 

「……え?」

 

「だって――」

 

――ラニって、錬金術とか得意じゃなかったかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ああ、なんとも言えないまま三日目が始まった。

 

結局、正体を知る俺にとってはこの凛との会話も無意味っちゃ無意味なのだが……これで、俺がもし原作知識が薄れているのならまだ役に立ったのかもしれないが。と、ここまで原作知識に色々頼ったりしてきたわけだが、これからもそれが通用するのだろうか?そもそも、三回戦の相手がラニという時点で原作からは外れている。こういう二次創作の場合原作への修正とかいう世界の力が働いたりするものだと『俺』は言っているのだけれど……まあ、それならこの三回戦でラニと当たるはずもないか。目の前に立つ遠坂が、今も生きているということも驚きだ。ラニがいて遠坂もいるのならラニと遠坂は戦わなかったということなのだろう。

 

――はてさて、原作知識の話だがどうにも最近それが薄くなっている……なんてことはない。むしろ、今までよりも冴えているような気がする。まあ、それは精神的なものなのかもしれないけれど……まあ、今が冴えているいないは関係ないとして、俺はどうにもその原作知識というものを忘れる気がしない。『俺』の記憶はかなり残っているが、もちろん忘れていることもある。生前習った勉強だって忘れていることは多いだろう。だけど、このゲームのことは忘れていない。ザコ敵の行動まで細かく忘れていない。これは、なにか意味のあることなのかはわからないけれど……

 

「――うーん。どうしようか?」

 

――マスターが、声をあげる。

いつの間にかマスターと話していた遠坂は姿を消し屋上には俺とマスターの二人だけになっていた。

 

「どうする、ね」

 

「うん。今までも相手は情報を隠してきてたけどさ……今回ほどじゃないよね。姿すら見えないっていうのがここまで影響を与えてくるとは思わなかった」

 

確かに。姿を見たところで正体がわかるはずもない英雄でいえば、姿を見たかどうかはあまり関係なさそうだが……まあ、そこは心の問題なのかもしれない。敵の姿があれば今何を知るべきかがわかるが敵の姿すらわからないのならヒントすら得られない。

 

――と、そこをヒントを飛ばして答えを得ているチートじみたやつが、俺なわけだけど。

 

「やっぱり、なにか作戦を立てるしかないのかな?」

 

「――作戦、ね」

 

――結局、そうなる。

そりゃあ相手は多分これからもずっとソレを使ってくるだろうし……そりゃあ使い続けていれば自分のサーヴァントの姿を晒すことなく相手の情報を得ることができ、そのまま有利な状況で決戦に挑むことができる。

 

「セイバーはなんかない?作戦っていうか……」

 

……まあ、そうだよな。俺は一応これまでそんなことをやってたわけだし、流石にそんなことまで遠坂に聞くわけにもいかないだろう。いくら今は味方になってくれていてもいずれは敵となる。その時、おそらく遠坂は何の躊躇もなくこちらを攻撃することができるだろう。――そういうタイプの人間だ。と、遠坂の話は置いておくとして……

 

「――ないことは、ない」

 

うん、そうだ。

ないことはない。というか、これもまたゲームをやっていて思ったことなんだけど……俺は意外とそういうの思いつくな。

 

「ホント!?なになに!」

 

「……三つ、ある。どれにするかはマスターが決めてくれ」

 

――少しの躊躇のあとこくこくとマスターが頷く。

 

なんか、またマスターから俺への尊敬の視線が強くなってる気がする。

 

「一つ目は、完全に無視する」

 

「……無視する?」

 

「ああ、これは愚策中の愚策。だけど一応策ではあるから言っておく。最悪の展開のときだが、相手の正体を知らぬまま決戦に挑むことだ」

 

――知ることができないなら別に知らなくてもいいじゃん、ってことだ。

とはいえ命をかけた戦いに初見プレイはきついだろう。そもそも、そうならないために作戦を立てているところが大きいわけだが……

 

「えっと、それじゃあ……」

 

「ああ、もちろん完全に後手に回っているわけだから不利になるな」

 

――まあ、これに関する反応は沈黙以外はなさそうだが。

 

「二つ目は……?」

 

「ああ、二つ目は敵の正体を知る前に殺す」

 

「……え?」

 

「二回戦のアーチャーと同じように、学校内で遭遇した時にマスターを殺すってことだ」

 

――あれは、ダン的には許せない行為だったのだろうが俺に言わせれば勝つためだ。負けてマスターが死ぬよりは何倍も良い。――正しいかは、別として。

 

「…………」

 

「マスターはそういう反応をすると思っていたがな、結局そういうのもありだと思うぞ。殺さないにしろラニを無理やりアリーナに連れ込むということでもいいし」

 

「それ、は……」

 

「……結論は、最後の一つを聞いてからにしてくれ」

 

「あ、うん」

 

マスターは、最後の決心をしたのか一つ頷いた。

――最も、俺に言わせれば最後以外に選択肢なんてないようなものだけど。流石に一つ目は勝ち目がないし、二つ目は勝てるかもしれないがペナルティが怖い。これ以上ステータスが下がるのは喜ばしくない。

 

「最後の作戦っていうのはな」

 

俺は、真剣な顔をして話を聞くマスターに、それを伝える。

 

「――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の成果

 

セイバー そろそろ本格的に動こうか

はくのん ……うーん?





【挿絵表示】

絵を描いていただき本当にありがとうございました!

……ここで申し訳ないのですがもしかしたら次の話が火曜日に投稿できないかもしれません。可能な限り火曜日にしようと思いますがどうもオリジナルとなると難しい……
毎週更新は必ずしていくのでこれからもどうぞよろしくお願いします!
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