Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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――その姿、その威圧感はまさしく


四日目

――半分を、切った。

 

正確には今日の昼できることになるのだが、ちょうど今日で半分だ。

もちろん、俺たちが直面している四回戦においても、今日でちょうど半分だけれども、今言っているのは四回戦の半分ではない。

 

――月の聖杯戦争が、半分終わった。

 

原作知識としても、ここで得た知識としても知っていることだがこの月の聖杯戦争は全部で七回戦である。七日間で行われるものが七回。総四十九日にも渡り行われるこの戦争のうち既に半分が終わった。なんとも言えない日数であり、体感的には早かったと思えるぐらいの日数だが……逆にいえばまだ半分ある。これまでのものがもう一度。

 

――なんて、時間の流れを今更感じたところで今の問題がなくなるわけでもないゆえに、この話はここまでにしておこう。

結局、俺が既にこの世界に来てから二十日以上経っていることなどは、所詮俺の事情だということだ。俺が生まれてから二十日以上が経ったことも、な。

 

はてさて、今回もしっかり思っていたことを実行するわけだが今回のこれは原作をやっていて思ったことだが、今までとは違い俺が思いついたわけではなくゲーム内で自身が直面したことのある壁を今度は俺たちがその壁になろうという話。実際、この月に来てから苦しめられたものでもあるわけだから、それをやろうという気になったのだけれど。

 

「――セイバー、あったよ?」

 

――と、ここで今俺たちがいる場所を話しておこう。俺たちは今、アリーナの第二層にいる。

 

本日、四回戦の半分を切ろうとしているが故かアリーナの第二層が解放された。

そして今、マスターが二個目の暗号鍵(トリガー)を見つけたところである。

 

「えっと、とりあえず作戦の準備は完了だね」

 

俺たちの目の前で取得したトリガーが再び現れるのを見ながらそんなことを話す。

 

「ああとりあえずは、な。本番はここからなわけだが」

 

「――あ、のさ。セイバー、本当にうまくいくかな?」

 

「さあな、そこらへんはやってみなければわからないだろう」

 

「そ、そうかもだけどさ。っていうかこれセイバーの負担が大きいというか……」

 

――私の負担がないというか。

 

そんな風につぶやくマスターだが……まあ、そうかもしれないがな。そういうふうに負担を背負うのもサーヴァントの役割だと思うのだけれど。それにマスターはほかのマスターに比べればかなり大きな負担を背負ってきたと思うしな。まあ、背負わせた立場で言えることではないけれど。

 

「――本当に、来るのかな?」

 

「そりゃ、くるさ。ここで待ってればさ、だってあいつらも――」

 

 

――暗号鍵(トリガー)前に陣取っているやつを無視はできないだろう。

 

――それはかつて、『アレ』が俺たちを阻んだ時と同じ方法だった。

 

 

 

 

 

 

――そう言えば、あの時はラニと凛のおかげで助かったんだったな。

 

ふと、『アレ』と戦っていたときのことを思い出す。ほんの数日前のことの筈なのに随分と前のことに思える。

あの時は、あの時までは、ラニは私達を助けてくれる人で――敵じゃ、なかった筈なのに。

 

――これが、戦争ってことなのだろう。

 

一回戦で、慎二と戦った時かわかっていたことだろうに。結局私はまた理解はしていても受け入れることが出来ていなかったとでも言うのだろうか?なんとも、成長のないことだ。

 

「――来たか」

 

ふ、と。セイバーが呟いた。

目は変わらず鋭く、正面を睨んでいる。

そして、そのセイバーの射抜く視線の先に一つの影が現れる。

それは足と片腕のない『ソレ』の姿。

 

「――修復は無し、か」

 

セイバーが、その姿を見て呟いた。――確かに、あのラニのことだ腕の一本ぐらいは簡単に直せると思っていたのだけれど……まあ、それは誤算だけれど嬉しい誤算だ。直せていないのならそれはそれでこちらが有利になるだけなわけだし……ソレは、直せないぐらいに貴重なものなのだろうか?それとも直すために必要な技量に、ラニが届いていないのか――

 

「よし、マスター作戦を始めるぞ。マスターは予定通りそこでコードキャストを使っていてくれ」

 

「うん――」

 

と、一つ頷き私はコードキャスト発動に取り掛かる。

 

―― view_map!

 

私は水晶を握り締めコードキャストを発動した。フィールドの地形、敵の位置が頭の中に流れ込んでくる。――これで、相手の動きはわかる。

 

私がコードキャストを使ったことを確認するとセイバーは中剣を握り締め戦闘態勢を――

 

「らっ!」

 

――取る、前に相手へと斬りかかった。

単純に、速攻。只々速い剣戟がソレに向かって走る。――ソレはその攻撃に対し、当然のごとく横に避ける。まあ、受けるわけにもいかないということなのだろう。なにせソレには腕が一本しかない。つばぜり合いにでもなって単純な力勝負になったとき当然ソレの方が不利になる。――最も、最初から足がない時点で不利なのかもしれないけれど。加えて、片腕しかないのなら受け流すという選択肢もほぼほぼ消える。受け流した瞬間完全な隙が生まれるからだ。両腕があるならまだ防げるかもしれないが片腕しかないのに受け流しでもすれば防御できる腕がなくなる。――相手は、腕が二本あるのだから当然といえば当然。

 

――ここに来て、ソレの腕を一本切り落としていたことが功を奏した。

 

「ふっ!」

 

右上から、ソレに向かって振り下ろした剣をなんとか相手は避けきる。――それができるのもセイバーがあえてあまり力を入れてない故のことだが、それは所詮一時しのぎの回避でしかない。事実、回避はできていても反撃はできていない。片腕に持ったその武器も今は意味をなしていない――

 

「そもそも、サーヴァントでもないやつで、しかも五体不満足。そんなんでサーヴァントに勝てるって方がおかしいんだよ。ここは、順当に負けておけ!」

 

――切り、裂いた。

 

セイバーの振った剣がソレの無機質な体に沈み込む。そして、そのまま剣は振り抜かれソレの体を一刀のもとに両断した。

カラン、という音とともに倒れるソレの体からは、生命というものを感じることができなかった。まるで――金属が落ちたような音だ。とはいえ、結局情報で作られていることにはかわりないのか、全ての身体(パーツ)が地面に落ちると同時にそれは霧のように消えていった。

 

「――よし!とりあえず第一段階は成功かな」

 

「ああ、そうだな。どうだマスター、俺の方は何も感じないが敵になにか動きはあるか?」

 

――そうだった、この作戦はここからだ。

四日目が始まり、第二層が解放されたと同時に相手よりも早く暗号鍵(トリガー)を取得し、暗号鍵(トリガー)の前で待ち伏せ回収しに来るであろう『ソレ』を撃退し、再び暗号鍵(トリガー)の前を陣取る。――さて、勝手に暗号鍵(トリガー)取得をしてくれる人形は消え去った。取らなければならない鍵の前には厄介な敵がいる。どうするのが、一番良いのだろうか?

その、相手の動きを探知するのは私の役目だ。

 

「えっと、今のところ特に動きは――」

 

――――――――寒気が、走った。

 

――手を、足を、体を、頭を、一瞬のうちに悪寒が走り去っていく。この、感覚は。

 

――『アレ』の時感じたものと同じもの。すなわち。

 

 

 

――恐怖、か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ああ、俺はどうやら相手を見誤っていたらしい。

 

俺は、『アレ』と一番最初に会った時、一つ思ったことがある。

 

――これが、バーサーカーの圧力か。

 

結局、画面越しで見ていただけの『俺』やその『俺』の知識でしかバーサーカーという存在を知らない俺にとっては初めてであった単純な『力』の具現。原作でもバーサーカーに違いないと言われていた『アレ』は、俺の中でもバーサーカークラスの魔力を放ち、殺気を放ち、威圧感をバラ撒いているものだと思っていた。だから、あの時は、『アレ』と会った時に思った。バーサーカーもこんな感じなんだろうな、と。

――その時に感じた恐怖は、恐ろしさは、バーサーカーそのものだと思っていた。なんともおかしな話だ。ラニが敵だと知った時も『アレ』を相手にする感じか、と思いもした。そうだ、これはおかしい。

 

――アレは所詮、アリスの作り出したものでサーヴァントですらなかったというのに。

 

「――はっ」

 

息が、漏れる。震えの混じったその吐息の理由は当然――

 

――威圧感。

 

三回戦で感じた、アレの威圧感とは一線を介した圧倒的な威圧感。アレは所詮作られたものだと。アレ程度といっしょにするなとでも言いたげな、同一視していた俺の思考を一瞬で塗りつぶす『暴力』。ただ、アリーナに入ってきただけだというのに、攻撃の如き激しさで押し寄せる圧力は、アリーナ全体を包み込んでいる。

 

「――せい……ば、あ……?これ、もしかして……?」

 

――とぎれとぎれの声で問いかけるマスターに対し、俺は何かを返すことはできなかった。ああ、どうやら俺は完全に。

 

――バーサーカーを見誤っていたようだ。

 

右手に握る中剣を頼りになんとか意識をアリーナに、この場に縫い付ける。

強くなる威圧感に耐える俺とマスターの耳に、一つ音が聞こえた。

 

――カツン。

 

軽く、軽快な音。重厚な雰囲気を、重圧の降り注ぐ空間にただ一つ軽やかに、音が鳴った。それは、明らかに人が歩いた時に鳴らされる音で。それは、俺とマスターのすぐ後ろから――!

 

「まさか、暗号鍵(トリガー)の前で待ち伏せとは思いませんでした。こうなれば、私が出るしかないということでしょう、随分と乱暴な作戦ですが有効的なものです、ここは流石ですねと言わせて頂きましょう」

 

――振り向いた俺たちに話しかけるのは俺たちの目下の敵ラニ。だが、俺たちの目線はラニにとどまってはいなかった。

 

顔から、汗が落ちる。そんな当たり前に存在する重力すら生み出しているのではないかというほどの、存在感。

 

――俺たちの、意識と視線はラニのすぐ後ろ。ただ、静かに立つ一人の大男に向けられていた。

 

「バー、サーカー……?」

 

マスターが、あのサーヴァントの正体を知らないはずのマスターが、そうつぶやいた。そりゃ、そうだろう。アレすら軽く凌駕する存在感を放つものなど、バーサーカー以外にはありえない。

 

「さて、どうしますか。貴方方の作戦どおり、私はここに来たわけですが――」

 

ひと呼吸、置いた。俺たちには永久とも取れるほどに引き伸ばされた時間の中ラニは自分のペースのまま、こちらに問いかける。――飲まれる、と分かっていても何もできない。相手のペースに飲まれるのはわかっている、何もできない、いやなんとかしなければ――そんな思考が。

 

「――ここで、戦いますか」

 

――絶たれた。

 

戦う?あの怪物と?アレに比べれば人間らしい姿をしているが俺にはとても人間には見えなかった。

沈黙と、緊張のその空間を裂いたのは、俺でもラニでもなく――

 

「リ――リターンクリスタルッ!」

 

――マスター。

 

動けると、思った一瞬に持っていたリターンクリスタルを発動させる。

一瞬で校舎に戻れるという、奇跡とも取れる瞬間移動を実現するアイテムを発動したことにより俺とマスターの体は一瞬で消える。

 

――一回戦は、巨大な武器。大砲を使い火力で攻めてきた。

 

――二回戦は、繊細な技巧。毒に弓矢とこちらを追い詰めてきた。

 

――三回戦は、魔術の砲撃。固有結界と魔術が実現する弾幕を放ってきた。

 

――四回戦は、そのどれとも違う。大砲がごとき武器も、繊細な技巧も、魔術だってありはしない。単純なる、強さ。

 

力が強く、攻撃されても倒れない。そういう類の単純なる強さ。ああ、そうだ。この戦い方こそが、この大雑把にして最強の戦闘方法こそが。

 

 

 

――狂戦士(バーサーカー)

 

 

 

 

本日の成果。

 

セイバー ばーさーかーこわい

はくのん ばーさーかーすごい




最強のサーヴァントというのは結局のところバーサーカーなのです。かつての敵の中で最もステータスが高く、単純に『強い』バーサーカーはこういうセイバーにとっては天敵なのかも?

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