Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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――少女は、『強さ』を見る。


五日目

――情報を、整理しようか。

 

結局、昨日私たちはソレの撃退に成功しあいての、ラニのサーヴァントを引きずり出すことに成功した。――成功した、だけだけれど。

引きずり出して相手のサーヴァントの姿を見て、雰囲気を感じることができた。――最初はその姿を見たところで相手のことなど分かりはしないと、思っていた。『英雄の姿を見たところで正体はわからない』実際、その正体まではわからないものの、そのクラスはわかる。剣を使うからと言ってセイバーではないというのはセイバーに教えられたことであり、セイバー自身が当てはまる事柄。故に敵がなんの武器を使おうと、予想止まりだということだ。だから、敵を引きずり出したところで敵のクラスは普通わからない。

 

――普通なら、だが。

 

結局のところ、あの敵のクラスはわかっているわけだ。というよりもあのクラス以外はありえないと確信を持って言えるということなのだけれど。武器での判断は不可能、見た目での判断は不可能。で、あるならば雰囲気から察するしかない。

――あれは、バーサーカーであると。

 

雰囲気なんて基本的にはわかるもんじゃない。セイバーとランサーの雰囲気の違いが、もしかしたら本人たちにはわかるのかもしれないけれど、私からすれば武器以外に違いなんてない。――最も、その武器という判断基準も間違っているのだけれど。なんにせよ、基本的には雰囲気でクラスを把握することはできない。だけれど、何事にも例外はあるもので。セイバーが剣を使うとは限らないように例外は存在する。

その例外こそが、あのバーサーカーなわけだ。

 

私たちは一度、アレというバーサーカーのようなものを見ている。ゆえに、わかりやすいのかもしれない。あそこまでの威圧感を放つものがバーサーカーでないはずがないと、あっさり納得することができた。納得し理解することができた。

 

「――さて、とりあえずこれからどうするか」

 

――と、セイバーが口に出す。

 

それは、私も思ったことだ。あの力の暴力の塊のような存在に、私たちは勝てるのかという事。

 

「今までの誰とも違うタイプの――最も、かぶることなんてそうそうないけれど。今までとは違う対処法で臨むしかない」

 

――と、セイバーはいうわけだが。

 

私には、なんとなくわかる。セイバーがこういうことを言う時は、なんやかんやでなにか思いついている時だと。

 

「――なにか、あるの?」

 

――それが、なんなのかは想像できない。

そもそも、私たちが勝てる要素なんてものは常常奇跡に頼ったものと言ってもいい。――いや、セイバーにか。私に奇跡があるとするならば、セイバーが私のサーヴァントであったということなんだと思う。ラッキーなんて言葉で片付けられないほどの。

と、それがなんにせよ今までの戦いは常に相手の不意をついたものだ。隙を突くことができるのは相手が英雄でありサーヴァントであろうとも動揺し、動揺すれば動きが止まるからだ。しかしバーサーカーが、動揺するはずもない。そういう、理性とか感情とかを犠牲に強さを求めたのがバーサーカーなわけだし……

 

「まあ、流石にわかるか。一応、奥の手はある――」

 

「あ、そうなんだ。一応、ね」

 

「ああ、一応。だってそれは――」

 

――宝具ですらない、俺の基本スキルの話になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――と、先程まで話していたのはこの四回戦勝つためにどうするかという話。そしてこれからするのは四回戦五日目、どうするかという話だ。

 

勝つ算段は、結局のところついている。というか、俺はラニと戦うことを当然想定していたわけだからもともと少しは考えてあった。――もっとも、そんなことを考え出したのがこの世界に来てから故にそう余裕をもって考えられたことではないのだけれど、そこらへんは置いておく。焦りがいい方へ傾くと信じつつも、置いておこう。

 

「マスター、とりあえずなんだが……」

 

とりあえず、今は俺たちのできることをすべきだろう。それがあまりに微々たることだったとしても。

――と言うことで、俺たちは今アリーナにいる。

 

毎日いることはいるのだが……今回の目的は昨日やったことの結果を知ることである。俺たちは昨日暗号鍵(トリガー)の前で陣取り、敵を引きずり出した……はいいものの、その後戦わずに撤退したため、あの後どうなったかはわからない。――といっても、大体想像はつく。ラニはなんというか、合理的だが合理的故に分かり易い。遠坂とは違うところと言ったところか。ラニは効率良くを重視するため感情等で行動することが基本的に少ない。それに比べて遠坂はあえて感情で行動することもある。――それが、こちらの作戦をきっちり壊すことになるのだけれど。

 

――なんて、あの二人を比べることなんてのはここでやらなくともどこか別のところでもやっているだろうから、この話はここまで。

 

すべきはラニと遠坂の話ではなく、マスターとラニの話だ。

 

取り敢えず、ラニがあの後とったであろう行動について話しておこう。――おそらくだが。

 

ラニはあの後暗号鍵(トリガー)を取得、アリーナを探索して帰投。

 

ほぼ確実にこの流れだ。

無駄の無い、動き。――最も、これはこのアリーナにまだラニにとって有益と思えるような物が転がっている場合なのだが……でなかったとしてもアリーナの探索がなくなるだけで概ねこの通りのはずだ。

 

とはいえ、人間確認しなければ怖くなるものである。もしかしたらラニが暗号鍵(トリガー)を取得していないかも……みたいな。それはないとしてもなにか情報を得られるものを落としているかもしれない。

 

――なんて、原作知識持ちの俺がいうことじゃないか。

 

はてさて、とまあそんな考えで俺たちは今までアリーナを歩き、そして今昨日ソレを倒した地点についた。

 

「――ない、ね」

 

――何もなし。

一応、そこは昨日ソレを倒した地点、すなわち昨日まで暗号鍵(トリガー)があった場所なのだ。最も、その暗号鍵(トリガー)が残ってるなんて思っては当然いなかったけれど、何の後も残っていないとは……

そこらへんの雑魚との戦闘のあとぐらいは残っていると思っていたんだけどな。――ラニたちも、俺たちと同じようにリターンクリスタルあたりで帰ったということなのだろうか?

 

「まあ、ここらへんは予想してたけどな。さて、どうするマスター?俺としては特にやることもないわけだが」

 

「うーん、やることがないっていうよりできることがないって感じだし……どうしよっか」

 

「――それはまた、その通りだな。結局、敵も暗号鍵(トリガー)もないとなればこの場所(アリーナ)にいる意味なんてないと思うしな」

 

「うん……二日前だし休むっていうのも手かな?」

 

「それには、まあ同意するけどな。しかし結局ここはどこまで言ってもデータの世界。精神的な疲れは回復するだろうが根本的には……」

 

「――でも、とりあえずやることないし、ここでよっか?作戦会議をするにしてもとりあえず部屋に戻りたいし」

 

――ああ、確かにその通りだな。

 

と、俺は言おうとした。あくまで、言おうと。

 

「――――――――――――――――――ッ!」

 

――背筋に寒気が走るこの感覚は。

 

――バーサーカーか……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――その様子を見るに、話し合いはできそうにありませんね」

 

と、剣を構えるセイバーとその後ろに立つ私を見てラニはまず、そういった。

――事実、話し合いなどする気はないのだけれど。

 

「はっ、こっちが話し合いするつもりでも、そっちがどうかも知らないしな。――まあそっちがどんなつもりでも、こちらのすることは変わらないが」

 

剣をラニに、そしてその後ろに立つバーサーカーに鋒を向ける。――宣戦布告のようだ。

 

「まあ、そうでしょうね。こちらとて、今回はサーヴァントを連れてきているわけですし。――それにここは闘技場(アリーナ)、戦わないのはナンセンスというものでしょう」

 

「――確かにな、結局のところ決戦場出なかったとしてもここは戦闘、いや戦争の場所だって話か」

 

――なんて、二人は話しているものの私の意識はその会話にはなかった。

いや、私とセイバーの意識は、の方が正しいか。話していながらもセイバーの視線はラニを捉えてはいない。となれば、その視線の先にいるのはただ一つ。

 

――バーサーカー。

 

その圧力は、ここまで近づいたことでさらに大きくなっている。まるでそれは正しく物理的な圧力となっているかのように。――だが、私は倒れない。倒れるわけにもいかない。それに、私の前にはセイバーがいる。

意識を、セイバーに移す。今までと何も変わらず剣を構えるその姿は、不動で不変。その変わらなく私を守るその背中は――安心感、と呼べるものを私に与えていた。――そうだ、何も問題はない。だから私は集中しろ。相手を観察することに、相手の姿を見ることに。サポートも、満足にできない私が、今やれること今やるべきこと。――そうだろう?岸波白野。

 

「――なら、お前らは今から俺たちと戦うわけだが……さて」

 

と、セイバーは腰を低くし――

 

「――さて、全力で行かせてもらおうかッ!」

 

――前に、飛び出した。

セイバーが小さく口を動かし――おそらく宝具を発動させたからだろう。その発動とともにセイバーの走る音が、地面を蹴る音が強くなる。

そして、セイバーは、その剣を振りおろ――

 

――せなかった。

 

と、振り下ろす以前にラニの前にたどり着くことも、できなかった。

その要因は当然のごとく――ひとつしかないだろう。

 

セイバーが、剣を振り上げたのは攻撃のためではなく――防御のため。走り出していたセイバーよりも先に、バーサーカーがその手に持った武器を振り下ろした。

 

「■■■■■■■■■■■ッ!」

 

意味のないバーサーカーの叫びがアリーナ中に響き渡る。地鳴りにも似たその叫びに呼応するかのように、その武器を上段で受け止めているセイバーの足がアリーナに沈み込む。――ああ、アリーナの地面も地球の土のように沈むんだなあ、なんてそんなことに気が行くこともなく、感じたのはその圧倒的な力のみ。――やはり、筋力の問題か。セイバー曰く『万能のセイバーに最速のランサー、射程距離が圧倒的なのはアーチャーであり手数のライダーに拠点作りのキャスター必殺のアサシンと、それぞれ個性があるものの結局のところ最強とは呼ばれない――』ああ、そうだ。セイバーは最優であり最高と呼ばれても――最強ではない。そして、この戦争においてその他に類を見ない、ほかのクラスの特徴と比べてしまえばなんとも単純な理論。勝利への、方程式。

 

――『最』も『強』いサーヴァント(バーサーカー)

 

強ければ勝てる。それは単純にして最も有効な勝利の方法。

 

「――だけど、時にそれが覆るのが戦争ってもんだろうに!」

 

――横に、避ける。

剣を右に払い体を右に、受け流す。――柔よく剛を制す。私のような日本人からすればわかりやすい考え方だ。

 

「それに、あんたがいくら最強つっても流石に攻撃を無効にするほど『最強』じゃあないだろうに!」

 

右に受け流した剣を右手から――離した。いやむしろ左に投げたという方が正しい。それをセイバーは空いている左手で受け取り、そのまま――!

 

「■■■■■■■■■ッ」

 

また、あの叫び――っ。それと同時にバーサーカーが動く。――受け止めたのだ。セイバーの剣を。

 

ガキン、なんて軽い音とともにセイバーの剣がはじかれ、それと同時にセイバーの体が一気にこちら側まで下がる。緊急回避、そのセイバーの判断の早さもまたサーヴァントとしての凄さではあるのだが、あのバーサーカーは、そういうものとは、関係のない強さ。

 

――だって、弾いたのだ。

 

別に、腕で弾いたなんてことはない。普通に武器で防ぎ、押し返しただけだ。バーサーカーのように理性がないのだから当然。ただ、向かってきたから持っている武器で叩いた。そんな単純な行動。しかし問題はあの体勢から、一瞬でセイバーの武器を弾けたことにある――!

 

「――チッ、マスター。まだアイテムは残ってるか?」

 

「……アイテムって、もしかして」

 

「ああ、リターンクリスタル。持っているなら今使ってくれ」

 

「う、うん!」

 

私は、懐からそのクリスタルを取り出し発動させる。

薄れゆく視界の中、私の脳裏には忠犬のように佇むバーサーカーの姿が頭に残っていた――

 

 

 

 

 

本日の成果

 

セイバー これやばい

はくのん バーサーカーマジ化物




先週は投稿できずに申し訳ありませんでした!
これからはもちろん毎週投稿していくつもりですので!

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