Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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――少女たちは未だ、味方でなくとも敵でもない。


六日目

さて、四回戦もついにこの日を迎えたわけだし、いつも通りの一言でこの日を始めようか。

 

――決選前日、である。

 

と、決選も前日に迫ってきたものの結局前日は前日でしかなく、とくに何か起こるわけでもないだろう。

なんて、今までのことを振り帰ってみれば簡単に分かることだが、実際何も起きないなんてことはほとんどない気がする。それに、今までは相手方がなにかしてきたとしても、できることなら今回はこちらから仕掛けていきたいところだ。……本当なら、この前日なんていうのはやれることはもうやった、あとは心の準備をするだけだ。みたいな状況で迎えたいものだが……今回は特にそれがうまくいかない。戦争なのだから自分の予想と違い、自分の考えとズレるのは当たり前とはいえ、そのズレがなくなればいいのにと思うことを、悪いことだとは言わないで欲しい。――なんて言ってみるも、ただここまで何もできなかったことのツケが回ってきただけなのだから完全に自業自得なわけだけど。

 

はてさて、油断は当然しないにしてもこの勝負に勝機はあるのかといえば、正直微妙なところである。実際、俺たちの現状からすればあのバーサーカーに勝てるような要素はほとんどない。そもそもあんなふうに高ステータスによる力技「レベルを上げて物理で殴る」をガチで突き詰めたようなあの怪物に作戦で、言っちまえば小手先の技で戦う俺が勝てるかなんて、考えればすぐわかる。一応、全く勝機がないというわけではないんだけどね。もし全くないんだったらもう少し焦りもしているだろう。最も、今もかなり焦ってはいるんだが。

 

しかしどうにも、俺の精神が『俺』が日本人だったからなのか、『俺』と『私』の混ざる中途半端な俺だからなのかはわからないけれど、どうにもこう言う戦いの前は緊張に押しつぶされそうになる。緊張していようが緊張していなかろうが、俺が行うことができる戦闘の質は常に最高のものにはなるのだけれど……これは俺の精神面の成熟とかそんな話ではなく単純にそういう類のスキルを持っているというだけの――

 

「――えっと、セイバー今日はどうする?」

 

――と、俺の考えを遮ってマスターが声を出す。

……考えることは結局勝つためのことなのは同じなわけだし、多分マスターも今日なにかするべきだと考えているんだろう。――というよりも、なにかしなくてはならないというべきなのかもしれない。それぐらい切羽詰っているというか相手の情報が足りてない。これには原作知識を持たないマスターからすればという注釈がつくものの、俺の思うこともそれである。知識と現実の力が違うのは当然といえば当然の話。

 

なんて言っていたところで、そうそういい案なんてものは出るわけないのだが。

 

「そうだな、とりあえず図書館にでも行ってみるか。もしかしたら姿とか武器からなにかわかるかも知れないし――」

 

――そうだね、とこちらを眩しいくらい綺麗な目で見てくるマスターを見ているとなんだかこっちが辛くなってくる。どうも、嘘をついているようで気分が悪い――ようで、ではなく実際ついているのだけれど。

 

「えっと、図書室いってからのことは調べものが終わってからでいっか――」

 

――どうにも、さっきから問題を後回しにしている気がするのだけれど……それも仕方ないと思うべきなのかもしれない。

 

どうせそう思ったところで、何かできるわけでもないのだから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――結論から言って、さっぱりわからなかった。

 

当然といえば当然だ。今まであったようなヒントもないわけだし――それに、今回の相手はバーサーカー喋ることがない故に、その性格を知ることができない。――英雄の性格なんて知っているわけはないけど、それでも推察とかぐらいならできる要素なだけに、結構きつい。もしかして、その情報の漏洩しにくさからラニはバーサーカーを選んだのだろうか?……って、この戦争は別にサーヴァントを選べるわけじゃないんだった。選べたらみんな強いサーヴァントだらけだよね……それを考えれば隠蔽を徹底するラニとバーサーカーの相性は抜群、なかなか運が良かったと言えるのかもしれない。――それは、私もなんだけれど。結局私がここまで生きてこられたのもその運の強さ、悪運の強さと呼べるものがあったからだと思うし――

 

なんて自分の低スペックを嘆いたところでこの戦いに勝てるわけでもない。――それに私のサーヴァントであるセイバーだって、私なんかがマスターのせいでだいぶステータスが下がっているはずなのに今までの強敵相手にも臆せず戦い勝ってみせた。それは、今私がすべきことでもあるのかもしれないけれど。

 

「マスター、少しここで待っていてくれないか?」

 

……ん?セイバーが私の方を見ながらそう告げる。

 

「すまない、少し気になることがあってなすぐもどる」

 

「へ?セイバー!?ちょっと!……えー」

 

私の声を聞く前にセイバーは図書室の奥の方に消えていった。気になる本が何かっていうのがいま一番気になるんだけど……それにいつもなら私が声をかけると絶対に返事してくれるのに。……遅めの反抗期かな?ま、まさかここに来てマスターに対する不満が爆発したとかじゃないよね。……気になることって私よりもマスターにしたい人がいたとかじゃないよね。……そんなばかな。

 

なんだかすごい不安になってきた。なれないよね?これのシステム的にサーヴァントの交換とかできないよね?セイバーは優秀だから引く手数多だろうし……いやいや、そんなことがあるわけが。

 

――思い返してみれば、図書室の隅で頭を抱えたり急に笑ったりしている私は完全に変な人だった。

 

と、なんだか疑心暗鬼スパイラルに捕まっていた私を引っ張ったのは、ふと耳に届いた声だった。

 

「こん―――。こ――――」

 

「ごき―――。図書―――――」

 

どうやら、一つ本棚を挟んだ向こう側で話しているらしい。……どこかで聞いたことがあるような――

 

「調べ物、ね。前日に調べものとは随分余裕ねラニ。それとも前日になっても相手の正体がわからなくて焦ってるのかしら」

 

「その言葉は、そのままお返ししますよ遠坂さん。図書室に来ているのはあなたも同じでしょうに」

 

――ラニに、凛か……!

 

……違うよね、さっきのセイバーとは無関係だよね?

 

「私はその余裕の方かしらね?正直負ける気もしないし、前日なんてやることもないからここには読書にきたのよ」

 

「それはまた、この調子なら私が貴女と当たっても勝てそうですね」

 

「ふーん、まあそう思うのはいいんじゃないかしらね?油断はともかく自信を持つことはいいことだし――最も、それは自信ではなく過信ってものだけれど」

 

「…………」

 

「…………」

 

――怖っ。あの二人なんで別にここで戦うわけじゃないのに舌戦を繰り広げてるの……?普通さ、ラニの相手は私な気がする。したくないけど。

 

しかし、あの二人が戦うとなるとかなりの戦いになりそうだ。――私の中ではラニ凛レオの三人はここにいる参加者たちの中でもずば抜けて強い印象がある。凛が、ラニよりも下とは思えないし――あの二人が戦ったとするならば、どちらが勝つのかはその時の運で決まりそうなきもする。といったところで、私はその戦いを見ることはできないんだけど。

ここであの二人の間に入って『そんな争ってるけどごめんなさい、ラニは私がここで倒すから凛がラニと戦うことはないよ?』とか言えるぐらいなら私も成長したと言えるんだけど。……いろんな理由を総動員してそれは却下。

 

「――それに、私は四回戦余裕だけど貴女は違うんでしょ?随分と苦戦しているみたいね」

 

「……それは」

 

「そもそもさっきの私の焦っているのかという質問を否定しなかったあたりからそうよね。意外と、嘘がつけなくて驚き」

 

「……そういうわけではないんですが、まあいいでしょう。しかしその意見が出るあたり、私の相手もその強さも知っていると思って構いませんか?」

 

「そうね、強さを詳しく知っているわけじゃないけど……ま、ある程度はみればわかるし――」

 

――私たちの、話か。

 

「――あの子は、岸波さんは変わらずへっぽこみたいだけどね」

 

‥‥‥‥‥‥言い返したいけど言葉もない。

 

「岸波さん『は』ですか?まるでサーヴァントの方は違うみたいな言い方ですね」

 

「……別に私だって直接戦っているのを見たわけじゃないけどね?姿ぐらいは見たことあるわ。私のサーヴァントも私と同じような感想を持っていたけど……きっと貴女も同じ感想を抱いたんじゃないかしらね?」

 

同じ印象……?ハッ!もしかして優秀なサーヴァントだな、ってこと?これはまさか……さっきのサーヴァント交換説か!

 

「……それは、そうだと思いますよ。というより多分あのサーヴァントを見た人はみんな同じことを思っているんじゃないですか?」

 

み、見た目かな?髪黒すぎとかそういう感じかな?

だといいんだけ――

 

「発展途上、ですよね」

 

――は?

 

発展、途上?セイバーが?

 

「そう、そのとおり。やっぱりそうよね」

 

――それは、セイバーが優秀とは真逆の話なのだろうか?確かにセイバーのステータスは低いが……どういうことなのだろうか?ステータスには現れない何かを感じているとでも言うべきな感覚なのだと、聞いている限りではそう思ったのだけれど。

 

「――ですが、それが厄介なんです」

 

――厄介?

 

「――そうね、基本的に英雄は完成されているもの……というより完成したものが英雄になれるって言ったほうがいいかしら?ともかく基礎完成しているものであるはずの英雄。その英雄と同じ存在でありながら完成していないあのサーヴァント。これから分かることは、推察できることは一つだけ」

 

「――未だ完成していないにも関わらず、英雄の座に君臨する実力を持っていた」

 

「結局、成長の余地があるってのが一番怖いのよね。漫画なんかでよくある『戦闘のなかで成長』できるやつが、結局一番強く、相手に有効的――」

 

――可能性。成長の可能性。

私が、悩むところであるその『成長』ということを、セイバーもしているという。私からすれば完成されたセイバーも、セイバー本人からすればまだまだ上にいけると思っているのかもしれない。

 

「最も、まだ完成していないわけですし私が戦うのは完成していない英雄ですからね。幾分、楽に進めると思いますよ」

 

――舐められている。というべきなのかもしれない。

特に、私が。いま、あの二人の話を聞く限り警戒しているのはセイバーだけみたいな感じだ。――どうにも、私が警戒されないのは当然なのだけれど憤りを感じて仕方がない。ラニでも凛でもセイバーでもなく、自分自身に。自分の実力に。

 

ごきげんよう、という言葉とともに徐々に小さくなっていく足音が私の耳を撫でる。――ラニが、行ったみたいだ。聞いて、見たほうがいいだろうか?私がこれからどうするべきかを。セイバーにでも凛にでも。私は、どうすればセイバーに――

 

「さて、ラニも行ったしここには私しかいないわね」

 

ふと、私の耳に凛の言葉が聞こえてきた。――あれ?そういえば凛の足音は聞こえなかったな。

 

「一応、前置きしておくけどこれは只の独り言。気にするも気にしないも私は関係ないわ」

 

――これは、もしかして。

 

「さっきの話、もう一度蒸し返すことになるけどね、成長の余地があるってのが一番怖い。私もね、それは思ってるし誰だってそう。自分に追いつくかもしれない人間を恐れない人間なんていないわ。とはいえここで感じるとは思ってなかったけど――」

 

――――――

 

「ここは、ここでやっているのは只の戦いではなく戦争。すべて完成された能力を持った人間たちである。これは基本のはず。だけど当然例外もあるわ。それがどこかの誰かさんのサーヴァントだったりするんだけど……私はね、この成長の余地っていうのは、サーヴァントだけじゃなくてマスターにも言えると思うわ」

 

 

 

「だから、ここで一応聞いている誰かのために一つアドバイスを。その成長する余地を持ったマスターを一人教えておきましょうか。最初は私も只の雑魚だと思ってたけれど、当然その実力から言ったら負けるような一回戦を、そいつは勝ち抜いた。そして、一回戦だけではなく二回戦も三回戦も。だから、さっきの成長する余地のあるマスターと言えるんだと私は思う――」

 

ああ、なるほど。これはまた。

 

「――格下のマスターに負けるのがどういうことか教えてくれるそうだから、楽しみにしてるわよ?」

 

――凛の、足音が遠ざかる。

ああ、なんだ単純な話だ。私のやることなんてのはただ一つ。強くなること、そして――

 

――セイバーと並んで、戦うことだ。

 

すぐは無理かもしれないけれど、いつかセイバーと同じ練度に成長してセイバーのパートナーとして戦うべきだ――

 

そうときまれば。

 

「――セイバー!」

 

走ってきた私をセイバーはきょとんとした目で見てくる。

 

「私、いつかセイバーに追いついて見せるから!」

 

ぱちくりと目を瞬かせるセイバーに私はそれを、目標を言い切った。今は目の前の勝利のことしか考えるしかできないかもしれないけれど……いつか、絶対に!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでセイバー、その手に持ってる本は何?」

 

「え?あ、ああ。多分あのバーサーカーの正体はこれだと思うぞ?」

 

「……え?」

 

――まだ、セイバーは遠いようです。

 

 

 

本日の成果

セイバー なんかマスターやる気出てる?

はくのん この短時間で正体わかるセイバーまじぱない!




お久しBLEACH。最近の前書きは完全にBLEACHの影響です。師匠のオサレポエムだけでご飯三倍いける(誤字にあらず)
もう文章力よりも先にオサレ力が欲しいところ。たまにすごく厨二なポエムを書きたくなる。私の中に眠る厨二魂が、行きどころをなくしてざわめいているからでしょうか?

……私は書くのが遅れるたり申し訳ないことが重なると口数が多くなるタイプです。はっきりわかんだね。ネタも増える。大体ネタの数で書いた時の精神状態を察することができます。

ではでは、今回はこのへんで。誤字脱字報告よろしくお願いします!
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