Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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――少女に立ちふさがる少女は凛と立ち


五回戦
一日目


――あと、三つ。

 

五回戦を迎えた俺たちが、いや俺たちを含めた全ての参加者が多分思ったはずだ。『あと半分』だと。スポーツ大会のトーナメント戦で考えてみればこれは準々決勝のようなものである。これを勝てば準決勝決勝とあとわずか、優勝が見えてくる頃合いだ。そして今行われているもので考えてみれば、自分の夢の実現が見えてくる時。途方もない奇跡が起こりうるかも知れない希望に変わる頃合いだ。

それゆえ多くのマスターが、サーヴァントが、気合をやる気を入れ直し更なる力を注ぎ込み出す時期。

 

それはマスターも例外ではなく、三回戦が終わったあと次の敵のことを考えているのか三回戦の敵のことを考えているのかは分からないが自室から一歩も出ることはなかった。そしてそれは俺も例外ではない。俺の場合、理由は前者次の敵のことだ。三回戦まで順調に、順調というのは語弊があるか……?いや、それはともかくとして俺の原作知識は正確にこれからの未来を教えてくれた。間違いはなくミスもない。知識として一片の狂いもなかった。それが四回戦に崩れ去ったわけだ。原作知識の狂いが、四回戦だけのものだったという考えは余りにも希望的観測すぎる。そこまで行けば希望的どころか願望的だ。間違いなく、ここでも狂ってくるだろう。となった場合、当たる可能性がある人間を考えてみれば、確実に当たると思われる人間はわかる。

 

――遠坂凛とレオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。

 

そのどちらかとは、当たるだろう。

どちらかとは、と言うのはもしかしたらこの二人が俺たちと戦う前にぶつかるかも知れないからだ。そして俺は遠坂を倒せるやつをレオ以外に知らないしレオを倒せそうなやつを遠坂以外に知らない。――マスターを除き、と一応付け加えておこう。

 

では、それ以外で当たるかも知れないという予想を立てるとするならばそれは必然原作での四回戦目の敵であった二人かCCCの登場人物たちに絞られる。むしろそれ以外のマスターを知らないというだけなのだが……俺が持っているのは原作知識であって参加者のデータではない。俺の知らないマスターということは……まあ、流石にないと思う。原作知識が狂った四回戦ですらラニと当たったのだ、であればこれからも原作登場人物と当たると思ってもいいかも知れない。こちらもまた、完全に願望であるけれど。

 

――電子音。

 

唐突に、マスターの方から電子音がなった。……ふむ、このタイミングでのお知らせとなれば。

 

「――対戦相手が決まったみたい」

 

――そう言って掲示板へと足を運ぶマスターの後ろをついていきながら、普通に思う。

 

もしかして、三回戦まで原作通りに進んだことが奇跡だったのかもしれないなあ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――五回戦の、敵は。

 

今までと同様に掲示板へと向かう私の脳内に浮かぶのは、ここまで倒してきた四人のマスター。

問題は、ない。今までだって順調に勝ち進んで来たんだ、またそれをやるだけのこと。それに――ラニと約束してしまった。私は生き残ると、ラニに言ってしまった。であるなら、それは守らないと……非力なマスターにできることは、自分が殺した敵のためにできることはそれぐらいのものだろう。

 

――慎二のように執念を持ちダンのように信念を持ちありすのように考えを貫きラニのように気高く、そして私らしく勝つだけだ。

 

五回戦も六回戦も七回戦も。最後まで、貫き通すだけだ――

 

「あら?ようやく来たのね」

 

――と、掲示板の近くに来たところで目の前から声がかかった。どうやら考え事をしていたせいで気付かなかったらしい。そして、掲示板の前に立ち私に声をかけてきたのは――

 

「――凛?」

 

「ええ、貴女も対戦相手を確認しに来たんでしょう?」

 

相変わらずよく目立つ赤い服を着た凛がそこには立っていた。

……やっぱり凛は勝ち上がるよね。おそらく、凛はこの戦争の中でもトップクラスの実力を持っているはずだ。レオと並ぶほどの実力を。

 

……貴女も、ということは凛も確認しに来たのだろうか?笑っている凛を見る限り相手はさほど強くない相手に当たったようだ。最も、凛の場合どんな相手でも笑いそうだけれど。あ、でも流石にレオ相手でこの笑顔はないか。

 

「ま、そんなところね。私は随分と運がいいみたいね。ここまでもさほど強い奴はいなかったし……」

 

「……それは凛だから言えるんだよ」

 

心の底からそう思う。凛からすればほとんど弱い敵だろうに。私からみれば大体強敵なのと同じだ。

 

「ま、そうだとしても運がいいのは確かね。それに比べて、貴方の運は相当悪いみたいだけど」

 

あ、私の相手も知ってるんだ。まあ、今までも私の対戦相手を把握してたりしたし別に不思議なことじゃないのか。……私が知らないだけで意外とみんな他の対戦カードも把握しているものなのかも知れない。それは余裕と呼べるものなのだろう。

 

「……運が悪いって、また厄介なってこと?」

 

「まあ、そうね。最初から最後まで大変だったわね?」

 

自然に、凛はそういった。

 

「その言い方は、私がここで負けるみたいな言い方だよね」

 

最後まで。ここが最後であると、そう言っている。

 

「ええそうね、理解してくれて良かったわ。これで理解されなかったら皮肉を言う意味がないわ。あ、今回のは皮肉じゃなくて『事実』なんだけど」

 

「……でも、今までだって勝ってきた、なら今回も――」

 

「――無理ね、それは」

 

……一つ、疑問を覚えた。

私が負けるなんていうのは凛から何度も聞いた言葉のはずだ。だけど今回のは、今のは今までのものとは違う。なにが……?確信のあるなしのような。今の口調はまるで……

 

――セイバーが、敵のサーヴァントのことを話す時と同じ口調だ。

 

「だって、今回の貴女の対戦相手は――」

 

私は、凛の顔から視線を逸らし、掲示板を覗き込む。しっかりと記された私と対戦相手の名前。岸波白野とともに記されたその名は――

 

「私、なんだから」

 

 

――遠坂凛。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――予想は出来ていた。

 

出来ていたどころか、予想通りと言えるぐらいの対戦カードとなった。――ラニと当たったし、次あたりに遠坂と当たるんじゃないか。なんとなくなんてのが理由でも予想は予想、あたっているということにしておく。

しかし、だ。その予想は俺的には外れてほしかった。できるなら、遠坂は俺たちと戦う前にユリウスやレオを倒しておいてほしかった。レオを倒せなかったとしても強敵は減るからそこはどちらでもいいのだが。結局、その願いは届かなかったらしい。ラニと来て遠坂に当たるというのは遠坂の言うとおりかなり運が悪いのかも知れない。

 

――と、遠坂と当たった運の悪さを嘆いてもしょうがない(一応運は俺のステータスの中でも最高のCなんだけどな……)し何も変わらないわけで、とりあえずそれは置いておこう。

 

遠坂という最高クラスのマスターにそのサーヴァントはかの大英雄クーフーリンだ。最強のサーヴァントの次は最速のサーヴァント。まあ、一応俺も最優のサーヴァントなんだけどな。

と、俺たちとの実力の違いという問題は当然ある。今までと同じだ。こんなことは毎回言っていることだし今更だろう。

 

――ただ、メンタルにも問題がある。

 

四回戦のマスターの様子を見るに、ラニを殺したことはマスターの精神に少なくない傷をつけたはずだ。――三回戦もラニのおかげでかてたようなものだしそれも仕方ない。だが、今まで俺たちが助けてもらったマスターはラニだけでなく遠坂もだ。そして今回はその遠坂と戦い――殺さなくちゃいけない。

 

決意はある。

ラニとの決別は、マスターにそれを与えた。だが……

 

なんて考えていたところで、俺にどうにかできることではないしこれはマスター自身が自分の力でどうにかするべき問題だというのも確かな話だ。だから俺はとりあえず――

 

――マスターを、見守ることにしようか。

 

 

 

 

 

暗号鍵(トリガー)の取得。

 

敵のことを何も知らない一日目において最優先すべきことだ。結局これがないと決戦すら、戦わずに負けることになる。そして、それを取得しなくてはならないのは当然私たちだけじゃなくて……

 

「意外ね、あなたたちがこんなに早くここまで来るとは思わなかったわ。楽に勝てそうでいいわね」

 

――挑発。

 

アリーナであった凛は一言目からこちらを挑発してきた。……これ、本当に癖なんじゃないかと思ってきた。

なんて、ならセイバーもそれに当てはまるんだけど。

 

「そうか、意外か。こっちも意外だよ、お前がここまで暗号鍵(トリガー)の取得に手間取ると思わなかった。楽に勝てそうで何よりだ」

 

まあ、そうだよね。セイバーにも同じ癖がある気がする。……言われたら言い返さないと気がすまないって言い方すると完全に子供なんだけど。

 

「……あなた、結構いい性格してるわよね」

 

「お前ほどじゃないけどな」

 

完全に舌戦になっている気がする。……意外とこのふたりは似てるのかもしれない。

 

「マスター」「ちょっと……」

 

私と相手のサーヴァントの声が重なる。凛とセイバーは注意されたからか気まずそうな顔をしてセイバーは私の前に、凛はサーヴァントの後ろに立った。

 

「……まあ、口論なんてもんはアリーナでやることでもない」

 

「……そうね」

 

 

 

 

 

――武器を、構える。

 

セイバーも相手のサーヴァントも全く同じ武器を、槍を構える。

 

「――へえ、あんたも槍使いか、同じランサーにゃ見えなかったが……」

 

「ハッ、なんだ?お前は見るだけで敵のクラスがわかるのか?随分と便利な能力だな」

 

「いやいや、単純にそこまで強くなさそうって思っただけだから褒めてくれなくてもいいぜ?」

 

「確かにな、それが理由ならお前の見る目は全くなかったということになる。それを、今から証明するとしようか――!」

 

 

 

 

槍が、ぶつかる。

 

同時に放った突きは相手の体にぶつかる前に互の槍の腹と腹がぶつかり弾かれる。が、どちらもそれでは終わらない。

相手の放つ超光速と呼べる槍撃をセイバーがうまく防いでいる。

 

――防戦一方といったところか。

最も、セイバーはいつも最初は大体こういう戦いをする。……敵の出方を見るということだろうか?最初に敵の戦い方を見てそれになれる。普通ならそんなことをしていれば敵もまたセイバーの戦いに慣れてしまうものだがセイバーにはそれをされても問題がないほどの戦い方がある。セイバーの剣術に相手が慣れてしまったのなら槍を使う、といった具合に。

 

「ふ……ッ、ぐっ……」

 

――ただし、セイバーが慣れ相手が慣れるまで戦いが長引けば、なのだが。

押し、負けてる。ランサーの圧倒的な攻撃速度に防御の速度が間に合っていない。

 

「くそ……っ!」

 

セイバーが、悪態をつく。――それは、当然かも知れない。やはりここで押されている原因は前回圧倒的に感じた地力の差。

ステータスという崩すことができない差はやはり大きい。

そして、それでもなんとか相手についていけているのはセイバーの実力のおかげだろう。セイバーの生前鍛え上げた槍術、それだけが今私たちが相手に互角とも言える戦いをすることができている理由だ。

 

「お前本当にランサーか?ランサーって感じの速さじゃないだろうに!」

 

「ほっとけってんだ!全部のランサーがアンタクラスに速いと思うなってんだ!」

 

「ま、確かに今まで戦ったランサーもそんなもんだけどよ!」

 

槍を弾き、いなし、躱す。なんとか戦うことができているだけで攻撃に転じることができない。前に出ることが、できない。

負けてはいないがかっているわけではない。

 

と、戦いが続く中ふとパチリ、という音がした。その音は――

 

――凛?

 

「――そこまでよ」

 

どうやら、凛が指を鳴らした音らしい。凛のサーヴァントはそれを聞き疑問を凛へ。

 

「おいおい、今いいとこだってのに……」

 

 

「しょうがないでしょう、こんなところで長時間戦えないのはあんたも知ってるでしょ?」

 

――こんなところで長くは戦えない……?

その言葉に答えを返したのは凛のサーヴァントではなくセイバーだった。

 

「セラフ、か……」

 

「そ、流石にわかってるか。そろそろセラフからの介入がある頃でしょう?」

 

「……ああ、確かにそうだな」

 

――セイバーが、顔をしかめる。

理由は、多分わかる。思ってしまったんだろう、助かったとそう思ってしまった。安心してしまったのだ。これ以上ここで凛たちと戦わなくても良いことを、喜んでしまった。

それは、敗北を認めることにほかならない――

 

「ま、決着は決戦の時に付けるものだし帰るわよ」

 

「了解、ま暗号鍵(トリガー)もとったしな」

 

――瞬間、移動した。

 

あれは多分消えたのではなく普通に移動したんだと思う。あの凛のサーヴァント、いやランサーが抱えて一瞬で移動したんだと思う。

 

「……マスター」

 

「……何?」

 

「――次は、勝つ」

 

セイバーは、こちらを見てそういった。

ただ一言、それだけを言った。なら、私がセイバーに言えるのは一つだけ。

 

「――うん、任せたよセイバー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の成果

 

セイバー 凛とい……いや何でもない。

はくのん 凛とランサー、か。




と、いうことでラニの次は遠坂編です。ついに出てきたよランサーが!

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