二日目。
何度このセリフを言ったかもわからないが、一日目が終わった。
実力の差は当然のことながら大きい。……なんだか、実力がこちらのほうが低いのを「当然だろ」と普通に受け入れられるようになってしまった。全然嬉しくない。最も、俺が低くないといったところで過信とすら言えない、只の馬鹿である。
主人公らしく、その実力差を覆したいところだが。まあ俺のマスターはどこぞの正義の味方と同じく不利を覆す主人公属性の持ち主故に問題はないと信じたい。
……ああ、そうだ。なんにせよ俺が実力を思うということはここで行われるのは戦闘行為であり必要なのは力だ。そう、戦闘のはずなのだ。戦闘の、はずなのだ。
「だからよ、お前がどこの英雄かは知らねえがまっとうな英雄じゃねえってのはわかる」
「ホント、そうよね。私もそう思うわ。私とランサーが戦ってきたサーヴァントが全部ド直球のいわば王道の英雄とは言えないけど、どうにもそういう次元で収まるものじゃない気がするしねえ。そこらへんマスターはどう思ってるの?」
「へっ?私!?……えっと、確かにほかの英雄とは違う感じはあるけど、ここまで勝てたのは……」
……なんだこれ。
「どうしてこうなった……」
「その呟きはどうしてこんな戦争に参加することになったのかという事に対してかしら?それともこれから戦おうって二組がいっしょに昼食をとっている今の状況に関してかしら?」
「……完全に後者だろ、つーか遠坂お前はもうサーヴァントがランサーであることを隠そうとすらしないのな」
「そりゃね。私のサーヴァントの正体は基本的に割れやすいほうだし?クラスだって見たまんまじゃない」
「……そりゃ、割れやすいぐらい有名で強力なサーヴァントだって言ってるのか?」
「そうだろうな。ついでにお前は正体が割れないぐらいマイナーで弱いサーヴァントだってうちのマスターは言ってんだと思うぜ?」
その理論は正しいような間違っているような。原作においてだって、な。アーサーペンドラゴンにギルガメッシュにメデューサにヘラクレスにメディアと大物ぞろいの第五次聖杯戦争を考えればそれもそのとおりなのだろう。もちろん例はそれだけではなく……
「そうだな。有名どころで言うのなら心臓を確実に突き刺す槍を持つ英雄とか、厄介だろうしな」
――確実に、必中で相手の心臓を貫き相手を殺す宝具。
「あ、やっぱわかってんだな俺の正体を」
「……まだ真名開放してないのにわかるのはなんでかと問いたいけど……答えはしてくれないんでしょうね」
俺がランサーの正体を当てて見せても遠坂は全く慌てない。むしろうちのマスターのほうが驚いてる。……マスター、後で教えてあげるから今は少し我慢しときなさい。相変わらず自分の感情がすぐに出る。良いところと言えばその通りなのだけれど。
「まあ、真名が知られやすく対策が取られやすいってのが有名英雄の弱点だしね。知られてることは想定内よ。それに比べて貴方は全くわからないわ。さっきから貴方のマスターに探りを入れてるのに全く話さないわよね」
「確かに、嬢ちゃんはそういうのあんま得意そうに見えないけどな」
――まあ、マスターは俺の戦い方を理解しているからかほかのマスターがいるときは俺をセイバーと呼ぶことすらしないしな。苦手そうではあるが実際に苦手なわけじゃない。マスターがどういうことを思っているのか意外とわかりずらいし、これに関しては常にのほほんとしているからかもしれないけど。
「私も一応マスターだしね。そう簡単に漏らさないよ。それに……」
「それに……?」
――私もセイバーの真名知らないし。
多分、マスターの言葉の続きはそれだろう。たとえあまり情報を口にしなくともあいてはあの遠坂凛だ。聞き出すことぐらいは簡単にできる。知っている情報なら、だが。
口がかたいかたくないの話以前にそもそもマスターは俺の真名を知らない。知らないことは話せない、当然だ。
「なんでも、それに真名を漏らさないように努力するのは普通のことだと思うよ?」
「ふーん、それは真名を隠そうとしない私に対するあてつけか何かかしら?まあ貴女はそうでしょうね。貴女のサーヴァントは私のサーヴァントよりも強いとかなんとか、言ってなかったかしら?」
「結構前の話な気がするけど……なんだかなつかしいねー、よく考えてみたらそんなに時間が経ってるわけじゃないのかな?」
「……大物なんだか呑気なんだか、戦争って規模で考えるならたった七週間で終わるこの聖杯戦争はかなり短いんでしょうけどね。一応一ヶ月ぐらいは始まってから経ってるわけだし」
その二択で言えば確実にマスターは呑気なのだろうな。最も――
「――こんなところで仲良く会話してる俺ら全員呑気だろうに」
原作だけでなくここで会って遠坂と話しての感想だが意外と遠坂は戦闘前の会話とかをするタイプだ。もちろんそこには相手を動揺させて勝率をあげるとかそういう打算的なものも含まれているのだろうが、打算を含まないいわゆる世間話も遠坂はしようとする。それは『絶対に勝てる』という自信からくるものなのだろうが……
「確かにね、でもこの戦争にだって当然のように情報戦というジャンルも存在するし?別に的外れなことをやっているわけじゃないと思うけど」
「何か得られたのなら、という前置きがそれにはつくぞ。何も得られなきゃ結局無駄なことだろうに」
「それはごもっとも、確かに実入りのない情報戦ほど無駄なものはそうありはしないけれどね。ならあなたに問うけどそれと同じくらい無駄なものってまだあると思わないかしら」
「言わなくても結構だよ、お前の性格は大体わかってる」
「皮肉の先読みは嫌われるわよ?」
「皮肉をいうのも嫌われる気がするけど……」
「マスター、もっと言ってやれ。こういうタイプは言わなきゃわからん」
「皮肉ってのはむしろ嫌われることも想定内でいうことだと思うのだけれど……」
と、そう言いながら遠坂は立ち上がった。
「お、もう終わりか?」
「昼食も食べ終わったしここに残る理由もないしね」
そういい、遠坂とランサーはそろって立ち去ろうとする。……マスター、いつの間にか食べ終わってたことに今気づいて急いで食べようとするのはいいんだが一気に食べると詰まるぞ。
「じゃあね、今度はより良い戦いができることを期待しているわ」
――最後に一つ皮肉を残して遠坂とランサーは立ち去っていった。
「マスター」
「ごほっ、ごほごほっ……な、なにせいばー?」
「……いや、何でもない」
――さて、と。一通りの邂逅はここで終わり。多分遠坂の方も、仲間気分はここまでだとこちらに言うつもりで皮肉連発してたんだと思う。といっても、俺もマスターも皮肉が通じないタイプの人間だし……最も、皮肉が通用する英雄なんていうのも珍しいけれど。
だけれど、そんなことは今話すことではない。今話すべきなのは、対応すべきなのはそんなことじゃない。
ああそうだ。とりあえず今やるべきことは――
「――マスター、飲み物でも飲んで落ち着け」
「う、うん。ありがとう……」
とりあえず、マスターを落ち着けることから始めよう。
「――で、どうするのセイバー?」
落ち着いてから私は隣で私を生暖かい目で見ているセイバーに問いかける。……地味に恥ずかしい。
セイバーは私がその話をふると途端に真面目な顔になる。切り替えの速さは流石だと思う。……こういう切り替えもマスターには必要な能力だと思うのだけれどそう上手くはいかないらしい。凛もたとえ前まで普通に話していた私であっても敵とみなすことができているみたいだし……最も、凛の切り替えで言えば戦闘時とそうでない時の切り替えの速さの方がすごいと思うけど。
「そうだな……結局のところ俺たちが前もってできる対策なんてものはないわけだしな……まあいつもどおりアリーナにでも行くか。もしかしたら遠坂たちと鉢合わせるかもしれないが……とりあえずは
――やっぱりそうか。そういえば初戦で凛が慎二に向かって「物理障壁を用意する」とか言ってたりしたけれどあれもやはり遠坂クラスの実力がないとできないのだろうか?私たち、というかセイバーの情報が少なすぎるためかそういうことをしてきたマスターはラニを含めていなかったからわからなかったけど……存外、みんなやっていることなのかも知れない。私がやっていないだけで。……最も、優秀であったとしてもそれをやるとは思えない人もいるのだけど。……レオとかレオとかレオとか。
私だけやっていないという可能性は悲しくなるから考えないとしてもだ。相手がそれをしなかった理由としてセイバーの戦闘方法に確信が持てなかったというのはあると思う。実際、あの凛ですら真名にたどり着いてはいないのだから――
なんて、『凛ですら』なんて言ったところで、私がセイバーの正体を知らないことに対する言い訳にはならないだろう。――味方すら知らない情報を敵が知れるはずがない。セイバー最初にしたこの主張は私も納得していた。だから私は人前でセイバーと呼ばないようにしたりと私も情報を隠せることを証明しようとした。――信頼を、得るために。今は無理でもいずれは信頼を得てそれを、セイバーのことを教えてくれると信じていた。
――一ヶ月。
この戦争が始まりそれほどの月日が経った。一ヶ月の間行動を共にし、共に戦ってきたから私はセイバーを信じることができている。だけれどセイバーはどうだろう?セイバーは、私を信じていてくれるのだろうか。今だって私は、共に戦ってきたなんて偉そうに言っているけれど実際に戦っているのはセイバー一人、共になんて思っているのは私だけかもしれない。『マスターが必要だからとりあえず一緒にいるだけ』そんな風に、セイバーが思っているんじゃないかと、不安になる。
「セイ、バー……」
名前を呼ぶことが、出来ない。セイバーのことを呼ぼうとした時に口から出るのは、出すことができるのはその名前、クラス名だけだ。
「マスター?行かないのか?」
「え!?うん、行くよ、今行く」
少し歩みが遅くなった私に向かってセイバーが先を急かす。その言葉からも、イラつきを感じて仕方がない。実際に、そんなことがあろうとなかろうと、そう感じてしまっている。
――遠い。
なんだかとてもとても、違う場所にいるみたいだ。凛よりもレオよりも桜よりもずっと、ずっと。
――遠く離れている気分だ。
本日の成果
セイバー 意外と俺と遠坂は似てるのかもな。
はくのん ‥‥‥‥‥‥
正直ごめんなさい。
『夏休みだしキリッ』とか言ってた自分を全力で殴りたい。
とりあえず完結はさせるつもりです!今年中には!
待たせてしまって申し訳ありません。感想への返信はまた後日まとめて行おうと思いますのでじゃんじゃん送ってきてください!『待っているんだ』という感想がすごい胸に来た。
感想誤字脱字お待ちしております!