Fate/EXTRA ava   作:後ろに敵が

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――少女の歯車は狂いだし


五日目

――俺は、セイバーである。

 

ふたり分の過去を背負っている俺が名乗れる名前は二つ存在するが現在の俺を示すとするならばセイバーという一つの名になるだろう。全てのサーヴァントが二つ、クラス名と真名と持っているわけだが……当然のように三つある俺は珍しい例というか、三つあったとしても俺のような理由ではないだろう。転生なんていう摩訶不思議な現象だが、『俺』が生きていた世界には創作物としてではあるがその現象は存在していた。そしてその多くにある共通点がある。それは『何かの意思で転生した』ということである。何か、というのは様々で多くは神であったが中には天使や悪魔なんてものもあった。ともかく人間を超越した何かの力で転生したということである。で、あるならば。――俺は何の力で転生したのだろうか?一番有力なのは聖杯にほかならないのだが、月の聖杯には意思なんてものはない。観測装置であるのだから当然のことだ。

それに、もし神による転生だとするなら『俺』の世界の神と『私』の世界の神のどちらなのだと思うところだが。

 

――と、ここまで戯言を並べたわけだが単純に疑問に思っただけだ。ステータスはともかくとして俺のスキルや宝具は一応チートに入る(どんなサーヴァントであろうともチートであるということは言わないでおこう)はずだ。すなわちこれは俗に言うチート持ちの異世界転生ということになる。……今更ではあるけれど。

この転生に意味があったのかとかは俺が考えることでもないのかもしれない。事実考えてしまえばその意味はとても不確かなものになってしまう。なにせ、俺がサーヴァントでなかった場合なんていう結果は『俺』の知識の中にしっかりと入っていているのだ。赤いセイバーにしろ外装のアーチャーにしろ狐のキャスターにしろ、だ。だがそれを知ったところで聖杯戦争に参加しているサーヴァントが変わることはなく、岸波白野のサーヴァントは俺なのだ。何をしようとそれは揺るがない。

 

――さて、なぜいきなりこんなことをと自分でも考えてしまうが……

 

俺は――不安なのか?

 

マスターの意思は知っているはずだ。覚悟がなくとも願いがなくともそれでも生きたいと思うことは素晴らしいと俺は思っていたはずだ。

ならなぜ、こんなことを思うのか。

どうにも、マスターがマスターであるとは思えないからだと思うのだが……いや、その点は衛宮士郎を含めで別に悪いことではないのだけれど……

 

原作のセイバーも、衛宮相手にこういうことを思っていたのだろうか――?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――私は遠坂凛、聖杯戦争の参加者である。

 

なんて、今更のように自己確認をしてみる。どうにも、今回の敵はマスターもサーヴァントも今までの敵とは感じが違い混乱してしまいそうだ。

サーヴァントのほうはまだしも、マスターである岸波さんなんて何かあったのか前あったときと随分感じが違っていているし……なんだかこちらのペースを崩すためにわざとやっているのではないかと疑ってしまうほどだ。

 

「――マスター、こっちにはそれっぽいのなかったぜ」

 

「そう、じゃあここにあるの調べといて」

 

軽い返事をするランサーの声を聞き流しながら私がいましているのは情報収集、である。

 

この聖杯戦争において、いや戦争であるならばその全てにおいて重要になるものである『情報』。それを今集めているわけだ。敵を知り自分を知ればなんとやらということでやってきてはいるものの……ここ数日かけても敵の正体はしれそうにない。……こんなこと言うのもあれだが、私は優秀である。ただの驕りではなく驕りではなくなるような努力もしてきたつもりだ。しかし、今回ばかりはどうにもならない。なぜ、どうにもならないのだと何度も自問自答してみるも、一概に自分の技量が不足しているだけだという話だ。

 

私は、私自身が自信家であるということはわかっているし、完全に自覚しているし変える気もない。もちろんそれは根拠のないものではない。実力に裏付けられていると少なくとも私は思っている。負けがないわけではない。レオナルドのようなやつもこの世界にはいるわけだから、それにその上で、今回私が苦戦している(情報戦で)のはどれだけ俗っぽくても英雄なのだ。私のサーヴァントのように戦闘に特化したものもいれば、話術や情報戦に優れたサーヴァントもいるだろう。

 

――その部類なら、伝承があまり残っていないのも少しは頷ける話なのだが……

 

それでも、伝承が一つもないなんていうのはおかしい。といってもそれは相手が何もしなかった場合の話だ。おそらくこれは相手がそれを、自身の情報を隠したのだろう。

 

一流の英雄、か。

 

だが、どうに納得できないところはある。

それほどまでの情報の隠蔽ができるのならおそらく先に言ったように情報戦が得意な英雄なのだろう。しかし、なら当然のように戦闘力は劣るはずだ。少なくとも戦闘特化のサーヴァントよりは。しかし彼は、あの男は戦闘特化であるはずのランサーと互角に戦ってみせた。確かに私のランサーの方が有利には見えたがおそらくそれはステータスの差だろう、マスターの差。

 

では、サーヴァントの差などないも同然ではないか。かのケルト神話の英雄と同格の戦闘を、マスターの差を埋め行うとするならば、その実力、知名度はランサーよりも上をいくかもしれない。

 

――厄介なサーヴァントだ。ランサー以上の戦闘能力、私を超える情報隠蔽能力。

 

「――どうにも、あのへっぽこはサーヴァント運だけはあったようね」

 

そう思い、私は図書館で情報収集を続ける……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、随分と様子が変わったものだな」

 

――私が、セイバーと一緒に廊下を歩いていると後ろからそう声がかけられた。私を『変化している』と評したその言葉を発したのは……

 

「迷いというものが、君にはあったと思っていたのだが……なるほど、決意でもしたのか迷いが消えているな」

 

――言峰綺礼

 

この聖杯戦争の監督者のNPC。……そういう立場であるということは知っているけれど、見た感じNPCに見えないのは単純にその胡散臭さというか性格のせい(性質とでも言ったほうが正しい気もする)なのだろう。近いところをあげるならば凛だと思う。

 

「変わった、ね」

 

私は、言峰の言葉を一言反復し。

 

「私は、特に変わってはいないと思うけど?変わったように見えるのなら、成長したってところじゃないかしらね?――願いが、あるわけでもないし」

 

と、返す。

前の神父よりも、いつの間にか後ろに移動したセイバーからの方が驚きを感じる。――変わっていない、はずなのだが。

 

「いやいや、随分な変わりようじゃないか。前までの君なら、皮肉を飛ばすことはあってもそこまで自身の意見をはっきり言うことはなかったはずだが……それにしても願いなし、か。そこにおいては確かに言うとおり変わっていないようだが……」

 

こちらをどこまでも不快にさせる笑みを浮かべながら言峰はそう話す。少し前に出ようとするセイバーを手で止める。――相変わらずの心配性だ。こういうのは私の仕事なのだから、セイバーは素直に休んでいてもらいたいと思う。最も、そういうふうに人を助けようとするのもセイバーの優しさであり、いいところなのかもしれないけれど……

 

「――ほう、なるほど、な」

 

ふと、言峰が呟く。少し驚いたような顔をこちらに向けながら、それでも笑顔(こうとしか表せない自分の語彙を恨む)を崩すことはなく私が返事をする前に言峰は言葉を続ける。

 

「なるほど、確かにそこまで行けば願いなど必要もないだろうな。そして、どうにも覚悟があるが故の迷いのなさではないらしい」

 

――と、言峰は私の目を見つめながらそういう。まるで、こちらの奥底を覗き込まれているかのようだ。不快感と嫌悪感の狭間を行き来するような感覚に襲われながらも、動揺していないのは後ろにセイバーが立っているからにほかならないのだが……

 

「確かに、私に願いはないけれど覚悟はある。始まりの時から変わらない覚悟が――」

 

「いいや、それは違うぞ。岸波白野」

 

――な、に?

 

随分と、知ったような口を利く。苛立ちに身を任せたい気持ちを抑え、理性を持って対峙する。――流石に、引きつる顔を抑えることはできないが……

 

「君が、今考えていることは大体分かる。苛立ち、不快感。それを感じる心は間違っていないし、感じ方もおかしくはない――だがな」

 

一旦呼吸を、挟む。

 

――やめろ、と心が叫んだ。

 

理由も理屈もわからないけれど、やめてくれと叫ぶ。声に出ない叫びを超えて、言峰は言葉を――

 

「――それは、覚悟ではないだろう」

 

―――――――――――――――は?

 

今、こいつは何といった?覚悟、じゃないだと?ふざけるな、私のこれが覚悟じゃなくてなんだと――

 

「――依存」

 

ごつん、と音がした。私の頭から発せられたその音はバットで殴られたかのような衝撃を伴い私の頭を、全身を襲う。そくりと走る悪寒とそれによる全身の麻痺は、私の体を、心を、感情を停止させるには十分な衝撃であり衝動だった。

それは、言峰のただ一言から生まれた衝撃。心が、揺れる。揺れて揺れて引き裂かれそうなぐらいに。

 

「マスター!おい、どうしたんだ!」

 

セイバーの、声が聞こえる。霊体化をとき、倒れそうになる私を抱えるセイバーの声。

 

――揺れが、やんだ。

 

「――心の揺れは収まったか?」

 

言峰は、私の方を見ながらそう話す。――あ、れ?私の動揺は、なぜ今……?

 

「くく……思ったよりも当てはまっているようだな。しかし、当人に自覚はなしときたか。いや、悪いことではない。マスターの力は弱いのだからな。サーヴァントに頼るという選択肢も、別に悪くはない」

 

――やめろ。

 

「依存という選択肢は当然あるべきものなのだ。特に、君は強いマスターではないのだからな。弱きものが強きものに依存するのは当然のことだ」

 

――やめろ。それ以上は。

 

「――しかし、初めて会った時、君はもう少し強かったと思うのだがな。依存ではなく共存を目指す人種だと思っていたが……どうやら私の人を見る目も落ちたようだ」

 

――やめろと、言っているだろうが。なんで、それがわからないんだ。わたしの、こころ、は。

 

「だが、弱くなったのなら仕方ない。君のその選択肢は間違って――」

 

 

 

「――黙れよ」

 

 

『やめてくれ』と叫ぶ心を、そのまま口に出す前に、セイバーが一言そう告げた。

 

「おっと、済まないな。君のマスターを侮辱する気は――」

 

 

「黙れ」

 

もう一度発したその言葉は確かな殺意と共にこの空間を支配していく。――セイバー、怒っている?

 

「黙れ、と俺はいったはずだ。それとも貴様はそれを聞くこともできないのか?」

 

――恐怖、を感じなかった。

 

「俺はサーヴァントだぞ。貴様がいかに強かろうとも俺はお前を殺せる」

 

――この空間を満たす、全てを殺し尽くしそうな殺意と敵意にさらされながらも私は、恐怖を感じなかった。

 

「ましてや、貴様はNPCだろうが。システムの奴隷風情が――」

 

それどころか私は――

 

「――人間に、口を出すなよ」

 

――そう、冷たい目で告げるセイバーに、安心感を覚えてしまっている。

 

「マスター、早く行こう」

 

心地よさを、覚えてしまっている――

 

 

 

心の揺れは収まった。

 

なのになぜだろう?その停止と共になにか――

 

なにか大切なものをなくした気が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の収穫

 

セイバー EXTRAになっても絶好調だな

はくのん 収穫なし。大切な『ナニカ』を喪失した




2014年中に終わるといったな。あれは嘘だ。
この物語はまだまだ続くのじゃ(私の更新速度のせいで)

はくのん「セイバーの殺意……興奮する!」みたいな感じになってきていますがこんなことになるとは思わなかった。
ペンデュラムを売りたいのはわかりますがハーピィが制限になるとは思わなかった。

作者の私にもわからずHERO使いの私にはあまり被害のないことですが……

次はいつになるかはさっぱり予測できませんが今後共この小説と遊戯王をどうぞよろしくお願いします。
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