では、白野&セイバーVS慎二&ライダー、どうぞお楽しみください!
――決戦日。
私とセイバーの、最初の戦い。
勝てば生き残り、負ければ死ぬ。そんな生きるか死ぬかの戦い。
準備は万端。作戦は良好。気分も上々だ。
であるならば、後は戦うだけだろう。
私とセイバーの力で戦って勝つだけだ。
「――いよいよ、決戦の日となったな」
後ろからかけられた声に振り返ると、そこに立っていたのは言峰だった。
その言葉はまるで、これがどういうことか分かるか?とでも言いたげなもので、ただの事実確認というわけでもないようだ。
まぁ、それだけのために会いに来られてもという感じにはなってしまいそうだが……
なんにせよ、言葉の意味がわかったのなら、返さないわけにもいかない。
――それの意味は、この勝敗が生む結果のことだ。
勝った方が生きて、負けた方が死ぬという単純明快な仕組みの話。
単純ゆえに、明快ゆえに、そんなことは分かっている。
負けたら死ぬということは、今日私か慎二のどちらかが死ぬということぐらいは。
「――ふむ、意外だな。てっきり私は、まだどちらかが死ぬという現実を受け入れてはいないと思っていた」
――あたり、まえだろう。
受け入れられないはずがない。だって、私が今までやってきたことは全て慎二を――
「まぁいいだろう。全ての準備が整ったら、私の所にきたまえ。購買部で支度するぐらいの時間はある」
そう言って、彼は教室の扉を開き去っていった。
まるで、他にやることがあるかのように早足で出て行った彼を見送り、私は後ろにいるセイバーを少し見た。セイバーがうなずくのを確認してから、再び私は前を向く。
そして私は、言峰が閉めた教室の扉を再び開き、外にでる――
さぁ、行くとしよう――
――私か慎二が居なくなる、決戦の舞台へ――
――準備は万端、作戦は良好。ただし気分は最悪だ。
勝てるのかという不安と、勝ったら相手が死ぬという現実。その二つが俺の気持ちを下降させる。
現代という平和な世界を生きてきた俺に人を殺すことが出来るのかということ。そして俺が、何の為に戦うのかということだ。
――私はこんなところで終わらない。
一番最初にマスターが口にした決意が、頭をよぎる。
そんな、生きたいという原始的な目的が、真っ直ぐな理由が、俺にはとても、明るく見える。
――なんて、今考えるべきことじゃない、か。
不安に対する対応として、考えないというのは上々ではないが下策な訳でもない。
他に考えるべき重要なことがあるのなら後回しというのもありだろう。
――マスターは、そういう悩みはないらしい。
言峰も、そう思ったのか驚いたような顔をしていたが……俺に言わせれば、というか俺が気付いて言峰が気付かないことが不思議なのだが、マスターは、いやマスターも現実を受け入れた訳ではなく、現実から目をそむけているとしか思えないのだが――
いや、これは考えるべきではない。だって、俺がこのあとマスターにやらせようとしているのは……
「セイバー準備はいい?」
――なんて考え事をしているうちに、決戦場への入口にたどり着いていたようだ。
「あぁ、大丈夫だ」
マスターにそう返すとマスターはこちらに向けていた体を反転させ、扉の前に立つ言峰に目を向ける。
「うん、私達は大丈夫」
それを聞いた言峰は扉の前から横に動き、入るように促す。
「いいだろう、若き戦士よ。決戦への扉は開かれた。ささやかではあるが幸運を祈ろう。再び校舎に戻るためにも――」
俺とマスターが扉を開き、中へ歩いていく。
後ろから最後に聞こえたのは――
「――存分に殺し合い給え」
そんな、激励とはとても取れない言葉だった。
決戦場へ私達を連れていくのは、どうやらこのエレベーターのようなものらしい。決戦への箱舟とでも言ったところか……
なんにせよ、
「なんだ、逃げずに来たんだ。そういえば生真面目さだけが取り柄だったっけ」
壁を越して慎二が話しかけてくる。
「でもさ、空気が読めない所は変わってないよね。悪いけど君じゃ僕に勝てないんたからさっさと棄権すればよかったのに」
――どうせ勝てない、か。
なんというか、正直気に入らない。私達が戦っているとき慎二は余裕綽々でいたとでもいうのだろうか?だとするならば、それは随分と甘く見られたものだ。
――ここで私が返す言葉はやってみなければわからない、なんて抽象的な、弱気なものじゃない。
相手が、慎二が強気で来ているのだ、ここで私が引いてどうすると、そういうこと。だから私は――
「――勝つよ」
「は?」
「この勝負私達が、勝つ」
――はっきりというべきだろう
目の前で唖然とする慎二に、少し笑って見せる。
……こんなキャラだったか?なんて呟きが後ろから聞こえたけど、聞かなかったことにしよう。
そして、私の言葉に最初に返したのは慎二ではなく――
「なんだか、随分と言うようになったじゃないか。お嬢ちゃん」
その後ろに立っていたライダーだった。
その表情に怒りや嘲笑はない。なんというか、敵でありながらひかれそうなまっすぐな笑みを浮かべている。
感心したように笑うライダーを、慎二は少し睨んでからこちらに、顔を向ける。
ライダーの笑みとは真逆の笑みを、その前に立つは慎二は浮かべている。
「……呆れを越して哀れだよ。分不相応の力を得て舞い上がるのは分かるけど勘違いはよくないな。勝負を決めるのはサーヴァントじゃなくてマスターだぜ?そこのサーヴァントからも言ってやれよ。どうせ勝てないってさ」
そう言ってセイバーを見る。
それに対してセイバーはまるで心外だとでも言いたげに首を振ってから。
「それはまた、随分と自信があるんだな。まぁ、当然と言えば当然か。お前も俺達と同じように相手の情報はかき集めただろう?正体が分かった相手ならば。その余裕も頷ける」
それを聞き、慎二は顔を顰め小さく舌打ちをした。
――その反応は、分かっていないのか?セイバーの正体が。
これは、武器の違いやらというところで攪乱できた成果とみてもいいのだろうか?
「おいおい?まさか分かっていないのか?ならそれは余裕ではなく油断というものだ。君からも言ったらどうだ?ライダーのサーヴァント」
「おやおや、言われちまったねぇ、マスター。さっきのセリフを聞く限り真名も知られちまってると思うが、それに対してアタシ達は……」
「分かってるさ!お前はどっちの味方だよ!くそ!今すぐお前らを後悔させてやるからな!」
そう言って私達を指さした時、室内が軽く揺れた。
まるで、エレベーターが止まったかのような――
――到着ということか。
箱の扉が開かれ、私達の前に決戦場が姿を表す。
――いよいよだ。
中央へと、私達は歩を進める。
――決戦が、始まる。
中央で向かい合うように立った私達。
――勝つ、絶対に。
セイバーはあの槍を、ライダーは二丁の拳銃を構える。
そして――
――戦いが、始まった。
「リヴォンツオーネッ!」
――戦闘の開始と同時に俺は宝具を開放し敵に突っ込んでいく。
その理由は当然のように、自分の有利な距離で戦うためだ。遠距離から、ひたすらに銃や宝具の大砲で攻撃されたらこちらに勝ち目は
敵が、槍の射程内に入ると同時に全力で、突きを放つ。
――通常であれば、一撃必殺先手必勝の勢いで敵を穿つ勢いで。
「ハッ、相変わらず速いねぇアンタは!」
――それに対し、余裕とでもいいたげな笑顔を顔に浮かべたまま、ライダーはそれを受け流し、弾き、時には銃でのカウンターを狙ってくる。
一撃で敵を屠ることができるほどの槍を平気な顔で受け流すあたり、さすがは英雄。
そして隙をついて仕掛けてくるカウンターをかわす俺もまた、英雄であるのだ。
すべての攻撃が一撃必殺な戦闘は、やはり平穏な世界で生きた俺からすればおそるべきことだ。
ただ、攻撃力やら筋力の面でとらえれば、ステータスの筋力が双方等しくDだとしても大砲などという武器を備えている相手のほうが有利ということだ。
――しかし、それは問題ではない。俺の
受け流されたら引いてもう一度。弾かれても戻してもう一度。カウンターには当然よけてからもう一度突き。
敏捷値はほぼ
今の目的はそれにある。時間稼ぎでもしているようだが、これが作戦、というわけだ。
「――やっぱり。ねぇ」
そんな風に、永遠に続きそうな、一進一退の攻防の最中にライダーが俺にそういった。
「やっぱり?まるでなにかわかったかのような言い方だな。」
「実際分かったんだ。そういう声を上げるのも当然だろう?――アンタの宝具の能力とか、ね」
――宝具の、能力ね。
そいつはまた、随分なものを知られたもんだ。
「いやぁ、意外とわかるもんさ、アンタの真名はさっぱりだがね。宝具は結構分かり易い」
「――ステータスの、その槍に限れば俊敏値の強化。そうだろう?」
――なるほど、さすが英雄。観察力も並ではないということか。
「いやいや、そんな凄いもんじゃないさ。単にアンタがこの前剣を使っていたときは、今ほど速くなかったと、思ったからだ」
「ハッ、となると、バレたのは俺のミス、か」
「ミス?アンタの狙い、じゃなくてかい?」
ニヤリと笑いながら戦うライダーに対して、同じく笑いを浮かべる。
――実際、当たっているのだ。
俺の宝具であるこの槍――このリヴォンツオーネの能力は、自身の俊敏の強化である。
本来、俊敏Dである俺が、俊敏Bを持つライダーと互・の速さを持っているのも、この槍のお陰というわけだ。
そして、ライダーの考察が当たっているのは、そこだけではなく――
「んで、前回の剣は筋力強化ってとこか」
――そこまで分かっているのか。
それもまた、正解だ。まあ、その程度は知られると思っていたから、驚きはない。
「ハッ、やっぱりバレるよなっと」
俺はそう言いながら、後ろに飛んで距離をとった。
別に、バレたからといってやばくなったわけではなく――
――作戦準備完了だ。
チラリ、とマスターとアイコンタクトを交わし、俺は手に持つ槍を消した。
そして、次に取り出すのは――
「へぇ……短剣、かい?」
中剣ではなく、短剣。
刃渡り20cmの、ダガーだ。持ち手は銀色に鈍く光るが、装飾のようなものは見当たらない。
銀色の棒に、刃を付けたような、そんなシンプル極まりないつくりの、短剣。ナイフともいえるようなものだが……
俺はそれを軽く振り回し、ライダーの懐へと飛び込んだ。
「おっと、速い速いっと」
そんな軽口を叩きながら、ライダーは俺のナイフを軽々と躱していく。明らかに、先程よりも、余裕そうだ。
当然といえば当然。俺がライダーと同じ速度で戦うことが出来ていたのは、先程も言ったがあの槍のお陰だ。
この短剣に俊敏強化の能力なんてないし、真名開放したところで勝てるような武器じゃない。これは
いくら、槍をもっているよりも、短剣を持っていたほうが身が軽くなるといっても、ステータスが下がってしまうのだ。速さが遅くなるのは必然で。
「しかし、アンタなんでわざわざ武器を変えたんだい?それじゃ、まるで――」
――自分から負けに行っているようなものだろうに。
ライダーの言うことはごもっともだ。事実、先程までは互・と呼べる戦いだったが、今は防戦一方だ。
しかし、その差は決して俊敏の差ではない。そもそも一つのステータスか上がった程度で追いつける程、俺とライダーは拮抗していない。ならば、その差を縮めたのは何かといえば、それはやはり、あの槍なのだ。
槍であってもそれは宝具としての能力、つまりは真名開放したときのステータスの上昇ではなく槍としてのリーチの長さだ。
現在、短刀特有の連撃を行っているものの、接近戦における持ち回りの良さならば、拳銃もまた同じ。先ほどまで行えていた攻撃による牽制も短剣が当たる距離まで近づくと牽制が行いずらい。そもそも、拳銃相手に、この距離は無謀なのだ。なにせ、ここまで近づけば狙いを定める必要はない、適当にでも打てば命中するような距離。そういう距離に、今俺はいるわけだ。
「しかしまぁ、アタシとしちゃ、別にいいんだけどね。勝ちやすくなるってんなら、いくらでも」
「勝ちやすく、ね」
「ああ、そうさ。そもそも短剣はアンタみたいなのが使う武器でも、激しい戦闘で使う武器でもない」
「だろうな。コレの利点といえば刃物なれしてない奴でも使えたり、女子供でも使えるのが利点だし、使用する場面も戦闘ではなく暗殺だろうしな」
「ああ、そうさ。アンタがランサーかセイバーかは知らないけどね、どちらにしろアンタの武器じゃない。それはアサシンの武器だろう?」
――確かに、な。
そもそも戦いに向かない武器を何故使うか分からないとい感じだろう。
そんな理由は一つしかないというのに――
「――まぁ、なんにせよ。さっさと終わりにしようか。これ以上続けても意味はない」
――ああ、その通りだな。なら、これ以上は意味がない。さっさと、終わらせようか。
「じゃあな、良く分からないサーヴァントさん」
――そういうライダーに向けて、俺は――
「アンタらのコンビはなかなかに面白かっ――」
――手に持つ短剣を――
「っ!」
――素早く、投擲した――
「おっと!」
それに対してライダーは、そう軽く声を上げ横によけた。実際、投げたと言ってもあまり速くない。そういう投げ方をしたのだから当然だ。
勢いをつけすぎず、それでも、前に飛ぶように。あの速度ならば、サーヴァントでなく、マスターである人間でも掴んで止めることができるくらいの速さ。
「おいおい、そんなことでアタシに勝てるとでも?」
――あぁ、そうだな。これは随分賭けのような作戦だ。
お前がいま、投げたナイフを、よけるのではなく弾いただけで、この作戦は終わる。
――だから、感謝をしようか。
にやりと笑ってこちらに銃を向けるライダー。
まるで、勝者が敗者に最後の一撃を叩き込むかのようだ。おかしな話だ。ここで負けるのは――
「っ!ライダー!後ろだ!」
ライダーの後ろにいる慎二が声を、いや、すぐ後ろではなく、一人はさんで、だが。
短剣の利点は女子供でも扱える軽さや小ささにあり、それが最も有効なのは暗殺、つまりは背後からの、奇襲だ。
だとするならば、利点ともならない投擲を行った理由などはただ一つしかなく。
「は……っ」
――俺達ではなくお前たちだ。
ライダーの背中に、俺の投げたナイフが突き刺さった。
勿論これは実は自動追跡するナイフだったなんて話ではなく、普通に持って、刺しただけ。
――あの速度ならば、サーヴァントでなく、マスターである人間でも掴んで止めることができるくらいの速さ――
「――本当に、慎二の言った通りだな」
――ならば、そのナイフを持って、ライダーに攻撃したのなんて、一人しかいないだろう。
「――勝負は確かに、マスターの差だったな」
――岸波白野。
彼女が突き立てたナイフの一撃でこの勝負は今――
――決した
――勝った……?
ライダーの背中に突き刺したナイフは、存外軽いものだった。血すら出ないのはサーヴァントの特性だろうか?
――だから、実感がなかった。私が勝ったという実感が。
「はぁ……こりゃ、予想外だったねぇ。まさかお嬢ちゃんちゃんにやられることになるとは」
ライダーが、私の前から離れ、私の後ろにいる慎二のほうに歩いていく。
――そこで気づいた。ライダーの体が、崩壊していることに。
「な、なんでだよ!なんで僕のサーヴァントが負けるんだよ!?どう考えても僕の方が優れてる!僕がこんなところで負けるわけにはいかないんだ!」
慎二は、まるで、本当に死に際かのように断末魔の――いや、事実死に際なのだ。
慎二は、ここで……
「……おいおい、ここまで来てそれをいうかい?さすがだよマスター、筋がいいと、思うな」
「っ、憎まれ口をたたく暇があるなら今すぐ立ち上がれよ!僕が、こんなところで……っ!」
「あー、悪いがそりゃ無茶ってもんさ。見てたろ?アタシはお嬢ちゃんの攻撃で心臓ぶっ刺されたんだ。ほら?なんかこの体も消えるっぽいぞ?」
「な――なんだよ、それ、勝手に消えるってのか!?僕はお前の油断のせいでっ……!」
そんな風に叫んだ慎二に、ライダーは安らかな笑みを、浮かべる。
――なんで、そんな顔が、消えるって時に、そんな優しげな――
「……ああ、たしかにアタシのせいかもね。実力天運執念油断と理由はいくらでも口にできるが……でもま、こんなもんさ。真の意味での偶然なんて、勝敗には関係ないのさ。私たちは負けるべくして負けた。――たとえ、こちらのほうが実力が上でもね」
――きっとなにかが、足りなかったんだ――
そんな風に笑うライダーは、やりきったかのような顔で――
「な、なんだよそれ……っ!そんなのおかしい!僕が劣っている!?くそっ、そんなわけあるか!僕が負けるなんて、こんなゲーム、つまらない、つまらない!」
「マスター」
泣き叫ぶ慎二の声を遮るように、セイバーがこちらに声をかけてくる。
その顔は、決して戦いに勝った人間の顔ではなかった。
「行くぞ。ここにいる必要は、もうない」
……たしかに、そうだろう。
校舎へと戻ろうと歩くセイバーの足が、ふと、扉の前でとまった。
「ライダー。お前は強かった。俺だけではきっと、倒せなかっただろう。君の戦いぶりは、まさに歴史に名を残す英雄にふさわしいものだった。――さらばだ。キャプテンドレイク」
それは、ライダーに向けた言葉で、そこからは敬意とも取れる感情が、私にも伝わった。
――その戦いぶりは素晴らしかったと、そういう感情が。
「間桐慎二」
セイバーは続いて、何か言いかけた慎二に、声をかける。
「お前の敗因は、前日までに俺の情報を得られなかったこと、戦闘への介入をしなかったこと。そして――岸波白野を、甘く見すぎていたということだ」
――それは、褒められることじゃない――そういう、叱咤の意味の、言葉だった。
「なんだよそれ!?僕のほうがそいつの何倍も優れて――」
「やめなマスター、これ以上何を言ったところで、みじめなだけだ」
「うるさい!お前のせいで負けたんだぞ!くそ、リアルなら僕のほうが優れてるんだ。いいか、先に地上に戻ったらお前がどこのだれかを調べて――」
――その慎二の言葉が、最後まで続くことはなかった。
その、理由は。
「――うわっ!?なんだよこれ!?僕の体が消えてく!?知らないぞ、こんなアウトの仕方なんて!?」
――崩壊が、始まっている。
わかる。自分に起こっているわけでもないのに、肌に突き刺さるこの感じは、予選の時私が感じた、圧倒的な『死』の感覚――
叫び声をあげる慎二の、手、足、そして体が、段々と、消えようとしている。慎二だけではなく、隣に立つサーヴァントとともに。
「聖杯戦争で負けたものは死ぬ。シンジもそれぐらい聞いていたはずだよな」
「な、なんだよそれ!?そんなのよくある脅しだろ?電脳死なんてあるわけが……」
「そりゃ死ぬだろ。これは戦争だ。負けるってのは死ぬってことだ。だいたい、こんな戦争に参加した時点で全員死んでるようなものさ。生きて帰れるのは本当に一人だけ」
「な、なんだよそれ……ゲームだろ、これ?なんとかしろよ!サーヴァントはマスターを助けるもんだろ!」
「そんな簡単にいくわけがないだろう?まぁ、結局どんな人間であれ最後はみんな仲良くあの世いき、別に文句を言うようなことじゃないだろう?」
「何わかったようなことをいってるんだよ……!悔しくないのか!?負けた上にこんなの……!」
慎二は、そう泣きながら言った。消えていく体を見つめながら、そう、叫ぶように。
ライダーはそれを聞き今まで浮かべていた笑みを少しゆがませた
「――そりゃ、悔しいさ。反吐が出るほどね」
「なら……!」
「だがねぇ、一番最初に言ったろう?勝っても負けても、悪党の最後なんてのは――」
「――笑っちまうほど、みじめなもんだってねぇ!」
そういって、笑い声を、心から愉快そうに笑う彼女の体は、もうかなり透けていて、よく見えなかった。
「あれだけ立派に悪党やったんだ。この死に方だって贅沢ってもんさ。愉しめよシンジ、この状況をさ。――そんでアンタらも、どうか容赦なく笑ってくれ、ピエロは笑われなきゃ哀れなもんだからねぇ」
――笑……える……ものか……!こんなの、勝った、はずなのに全然……
「……ま、ともあれ、よい航海を。次があるなら今より強くなっていてくれよ?アタシの本業は軍艦専門の海賊だ。自分より弱い相手と戦うのはどうも尻の座りが悪くていけない」
そんな、軽口をたたいて。
最後に、こちらを見て苦笑し、彼女は掻き消えた。
――人類初の世界一周を果たした英雄は、世界の歴史を変えた偉大な航海者は、消えるその最後まで、愉快に楽しげに笑っていた。
そんな、彼女の簡潔で簡単な結末は、慎二の運命を、はっきり告げるようだった。
「なんだよ!なんで先に消えるんだ!助けてくれって、そんなのないだろ!?」
「なんで、なんで……そうだ、ならお前が助けろよ!お前が負けないから……!くそっ、なんで、なんでこんなことに!」
「おい!はやく……はやくしてくれよ!友達、友達だったろ!?助けて……頼むから助けてくれよぉ!」
「こんな、ところで、死にたくな――ッ!」
――消えた。
慎二というひとりの人間が。
その体が、心が、魂が、存在が、永遠に。
慎二が先ほどまでそこにいたことを証明するもの一つ残さず、消えた。
残っているのは、ただただ勝者だけ。
こんな、こんな結末で。
――聖杯戦争の一回戦は、幕を閉じた。
戦闘後の二人の会話は、今週中に上げるつもりです。来週には二回戦に突入するつもりですので、どうぞよろしくお願いします!(そこにセイバーの今公開できるものだけですがステータスを乗せるつもりでいます)
誤字脱字ありましたら報告お願いします。あと、この小説は誰でも感想がかけますので、一回戦が終わった段階での感想など、お待ちしています!