結城友奈は勇者である R/Bの章   作:ベンジャー

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第1話 『南兄弟はウルトラマンである』

むかしむかし、あるところに勇者がいました。

 

勇者は人々に嫌がらせを続ける魔王を説得するために旅を続けています。

 

そして遂に、勇者は魔王の城に辿り着いたのです。

 

「やっとここまで辿り着いたぞ、魔王! もう悪いことはやめるんだ!!」

「私を怖がって悪者扱いを始めたのは村人達の方ではないか!」

「だからって嫌がらせはよくない!! 話し合えば分かるよ!」

「君を悪者なんかにはしない!!」

 

と、そこまで勇者が魔王に言ったところで……2人の立っていた土台は倒れ、そこに2人の少女の姿が現れた。

 

その2人の少女の手にはそれぞれ勇者と魔王のパペットがはめられており……つまり、この勇者と魔王の話は今現在、幼稚園で子供達に見せている彼女等のお芝居。

 

勇者のパペットを手にはめている赤い髪の少女の名は「結城 友奈」中学2年生、もう1人の魔王のパペットを手にはめているのは中学3年生の金髪の少女の名は「犬吠埼 風」。

 

またナレーションや音楽を担当しているのは風の妹である中学1年の「犬吠埼 樹」と友奈と同じく中学2年で車椅子に乗った黒髪の少女、友奈の親友でもある「東郷 美森」。

 

そして魔王の部下役として背景として使われているボードの後ろに立ってスタンバっているのはメガネをかけた中学1年生の少年「南 良(みなみ りょう)」ともう1人は良の兄である中学3年生の「南 春木(みなみ はるき)」である。

 

ちなみにこの2人は友奈の幼馴染みである。

 

6人は香川県「綾香市」にある讃州中学に通う中学生であり、なぜこの6人がこのようなお芝居をしているかと言うとそれはこれが彼等彼女等「勇者部」の部活動だからである。

 

「勇者部」とは部長の風が設立した「人々のためになることを勇んで実施する」ことを目的としている活動であり、「幼稚園での交流会」や「猫の里親探し」などといったボランティア活動などをメインにした部活。

 

そしてこの勇者と魔王のお芝居も、幼稚園の子供達のために行われた勇者部の活動の一環なのだ。

 

「えっ!? なにどうした?」

「友奈さんがやらかした。 腕が土台に当たって倒れたらしい」

 

良の説明を聞いて春木が「あちゃ~」と頭を抱えて「やっちまったな友奈」と言いながらボードの後ろからこっそりと様子を伺う。

 

「あ、当たんなくて良かった~。 でもどうしよう……」

「もうゴリ押しで! ゴリ押しで行け友奈!」

 

ボードの後ろからなるべくこっそりとそう伝える春木、それを聞いて友奈は「分かった!」とでも言うように頷き、友奈が手にはめていた勇者は風が手につけている魔王にパンチを叩きこむ。

 

「勇者キィーック!!」

「えぇ~!!? ゴリ押しってえぇ~!!?」

 

春木の言葉は風にも聞こえていたが、あまりにもゴリ押し過ぎたのか風は友奈の取った行動に驚く。

 

「おま、それキックじゃないし!! っていうか話し合おうって言ってたところじゃないの!?」

 

その辺どうなんだ……とでも言うように怒る風に友奈は「あわわわ……!」と慌てふためき、それを見て良は呆れたように「はぁ」と溜め息を吐いた。

 

「ちょっ、どうするんだよこのグダグダ感……」

「園児には割と受けているぞ兄貴? 取りあえず樹さん、ミュージック適当になんか流してください」

 

良が樹にそう指示を出し、それに樹は「えぇ!?」と戸惑うが良は兎に角なにか状況に合うのを流すように言い、彼女は言われた通り「じゃあこれで!」とパソコンから音楽を流す。

 

するとパソコンから魔王のテーマが流れ、それに友奈は「ここで魔王のテーマ!?」と驚きの声をあげる。

 

「ワハハハ!! ここが貴様の墓場だ!! であえであえ~!! 我が部下達!!」

「この状況で俺等の出番かよ!?」

「良いから、やるぞ兄貴」

 

良は春木の首根っこを掴んで一緒に魔王の部下役としてボードの裏から出てきて勇者の前に立ち塞がる。

 

「イィー!!」

「おい兄貴、俺達ショ〇カーじゃないぞ。 台本にない台詞を言うんじゃない」

「いや、でも戦闘員って大体こんな声出さない?」

 

春木と良がそんな会話をしているが風に小声で「なんでも良いから続けるわよ!」と言われ、風演じる魔王の命令を受けて春木と良が勇者に襲いかかる。

 

「やってしまえ者どもー!!」

「お、おのれ~!?」

 

また一部始終を見ていた東郷は「このままではきっといけない!!」と判断し、彼女は勇者の為にここは園児達を先導しなければと考え、マイクで園児達に勇者を応援するように言い放つ。

 

『みんな!! 勇者を応援して! 一緒にグーで勇者にパワーを送ろう!! がんばれがんばれ!!』

 

そんな東郷の言葉を受け、園児達は言われた通りに手をグーにして勇者を応援する。

 

『がんばれー!! がんばれー!!』

「うぐ!? みんなの声援が私を弱らせる~!!?」

「「うわあ~!!? 俺達も力が~!!?」」

 

園児達の声援により、魔王とその部下2人は弱体化し、それを見て友奈演じる勇者は「今だ!!」と言って部下2人を軽く蹴散らし、魔王にトドメの一撃を放つ。

 

「勇者パーンチ!!」

「いってぇ~!!?」

(今の『いってぇ~』は絶対マジな奴だな)

 

それによって魔王は遂に倒れ、勇者は魔王を抱きしめる。

 

「これで分かってくれたよね? もう友達だよ!」

「なんという物理的な説得(?)……。 ハッ! 東郷締めて締めて!」

 

春木に言われ、東郷はそこでナレーションを入れる。

 

『と、いう訳でみんなの力で魔王は改心し、祖国は守られました』

「みんなのおかげだよ! やったー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月曜日……讃州中学の勇者部の部室にて。

 

そこでは勇者部のミーティングが行われており、ホワイトボードには「子猫の飼い主探し」という文字が書かれ、幾つかの子猫の写真が張られていた。

 

「うわ~、可愛い!」

「こんなにも未解決の依頼が残っているのよ!」

 

写真に写っている猫は全部で2匹1組なのも入れると全部で7匹、それを見て樹は「た、たくさん来たね……」これを全部探すのは大変そうだと冷や汗をかき、なので風は今日から強化月刊として学校を巻き込んだキャンペーンにしてしまおうと言うのだ。

 

「ふむ、学校を巻き込むというのは良いアイデアですが何か景品みたいなものがあった方がみんなもやる気が出るのでは?」

 

ただ良も風の意見には賛成なのだが、どうせならばなにか景品のようなものがあった方がみんな俄然やる気を出すのではないかと提案し、それに風も「確かにね……」と頷く。

 

「東郷の作るぼた餅とかで良いんじゃ無いか? 美味いし」

「あら、それじゃ沢山作った方が良いかしら?」

 

春木は景品に東郷の作るぼた餅を勧め、それを聞いて東郷もやる気を見せるが……取りあえずその辺は後回しにすべきだろうと風は言い、景品は後回しにして先ずは猫を探すための準備をするべきだろうと彼女は主張。

 

「成程、確かにそうですね。 それに学校を巻き込む政治的発想は流石1年先輩です!」

「あ、ありがとう……」

「東郷それお前褒めてんの?」

 

春木がジトッとした視線を東郷に向け尋ねると彼女は「勿論!」と力強く答え、それに対し春木は「そうは聞こえんぞ」と苦笑する。

 

「兎に角、学校への対応はアタシがやるとして先ずはホームページの強化準備ね? これは東郷か良に任せた!」

「はい! 携帯からもアクセスできるようにモバイル版も作ります!」

「あっ、それは俺が!!」

 

風に頼まれ、東郷と良はパソコンに向かうのだが……パソコンは一台しかないために2人のパソコンの取り合いが勃発する。

 

「いいえここは私が」

「いや俺が」

「私の方が早いわ!!」

「俺の方が早い!!」

「オイお前等喧嘩すんな。 良、ここは東郷に任せろ」

 

春木に言われ、良は「ぐぬぬ……!」と悔しそうな表情を浮かべ、逆に東郷は良に対して勝ち誇ったような笑みを浮かべ、パソコンでの作業を開始する。

 

「アイツ等相変わらず仲悪いな~」

「喧嘩するほど仲が良いんだよ、きっと」

 

そんな友奈の言葉を聞いて良と東郷は2人揃って「違う!!/違うわ!!」と声をあげ、それに友奈が「えぇ!?」と驚きの声をあげる。

 

「まぁ、多分アイツ等が喧嘩してる原因は……」

「んっ?」

 

春木が視線を友奈に向けると彼女は不思議そうに「んっ?」と首を傾げ、「どうかしたの春木先輩?」と尋ね、それに春木は「なんでもない」とだけ答えるのだった。

 

「それで風? 俺達は他になにするんだ?」

「んっ? えっと~先ずは今まで通りだけど……今まで以上に頑張る!!」

「成程、分かりやすい!! つまりは魂燃やして根性出せってことだな!!」

「そういうことよ!!」

 

風と春木はそんな感じに気合いを入れるのだが、すかさず樹が「アバウトだよ2人とも……」とツッコミを入れ、良も呆れて頭を抱える。

 

「それだったら、階段の掃除行くでしょ? そこでも人に当たってみようよ!」

「わあ! それ良いです!!」

「俺も、それに賛成です、友奈さん」

 

樹や良も友奈の意見に賛同し、それと同時に東郷も敬礼しながらホームページの強化も終了したという報告が入り、それに他の5人は「えっ!? 早っ!?」と驚く。

 

「しかもよく出来てる……!」

「すご……!」

「くっ、俺もこれくらい……!!」

 

友奈と風が唖然としながらも東郷の仕事の速さに感心し、また良はそんな東郷を見て悔しそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、勇者部一同は行きつけのうどん屋である「かめや」を訪れ、みんなでうどんを食べることに。

 

尚、風は既に1人だけ三杯目のうどんを注文しており、それを見て友奈は「三杯目……」と唖然とした顔を浮かべていた。

 

「お前太るぞ風!?」

「大丈夫大丈夫!! アタシそう簡単に太らないから!! それにうどんは女子力をあげるのよ~?」

 

春木は風に流石に食べ過ぎでは無いかと言われるが、風は平気だと返すのだが……。

 

「太らないといっても風先輩、そんなに食べると糖尿病の恐れも……」

「あぁ~、確かにそれは嫌かもねぇ……。 まぁ、ボチボチ勇者部の活動で身体も動かしてるし!! その分も運動もするから大丈夫!!」

 

良の指摘に対してそんな感じで風は言葉を返し、それに良も春木は呆れた視線を彼女に向けていた。

 

「それにしても東郷先輩のホームページ強化凄かったです!!」

「あの短時間で仕上げるとか……」

「プロだ~」

「東郷って何気にハイスペックだよなぁ」

「科学者を目指している俺だって……!!」

 

樹、風、友奈、春木、良がそれぞれ東郷の仕事の速さに(1人は嫉妬だが)改めて5人は感心し、それに東郷は「ありがとうございます♪」と言って褒められたお礼代わりにてんぷらを風に差し出す。

 

「おぉ~、気が効くねぇ! 君、時期部長は遠くないよ!」

「いえ、先輩見てるだけでお腹がいっぱいに……」

 

するとそこで友奈が「あっ!」と声をあげ、今日かめやに来たのはうどんだけを食べに来ただけで無く風がなにかみんなに相談したいことがあるからということで集められたのを思い出し、そのことを風に友奈は尋ねる。

 

「あぁ、そうだ。 文化祭の出し物の相談!」

「えっ? まだ4月なのに?」

 

ぺろりとうどんを平らげた風の言葉に、樹が文化祭の出し物を相談するには少し時期が早いのではないかと言うが……。

 

なんでも去年は準備が間に合わず、何も出来なかったので今回はそれの反省として早めに準備をしておきたいのだと風は語り、それに樹は納得する。

 

「夏休みに入っちゃう前にさ~、色々決めておきたいんだよね~」

「確かに、常に先手で有事に備えることは大切ですね!」

「善は急げとも言うしな?」

 

風の考えに東郷や春木も同意し、風は「今年は猫の手も入ったし~」と樹の頭を撫で、それに彼女は「私!?」と驚きの声をあげる。

 

「うーん、折角だし一生の思い出になることが良いよね!!」

「尚且つ娯楽性が高い大衆がなびくものではないと」

 

友奈と東郷がそう言うのだが、しかしそれだけでは何をすれば良いのか分からず樹は困惑。

 

そんな彼女に風は「それをみんなで考えるのよ!!」と言い、宿題として各自考えてくるように指示。

 

「俺はもう既に考えたぞ、日本古来の妖怪やUFOなど、実在するのかどうかなどの歴史の謎を紹介する……!!」

「「「却下」」」

 

良が初々とした様子で提案を出そうとするのだが、即座に風、春木、東郷の3人に却下され、それにしょぼんっと良は落ち込む。

 

「良、お前がオカルト好きなのは知ってるけど流石にそれは……」

「でもまぁ、日本古来の妖怪を紹介するというのは案外良いかもしれないわね」

 

しかし東郷だけは他の部分は春木と風同様却下ではあるが妖怪の部分は良いかもしれないと言いだし、春木と風は「えぇ!?」と驚く声を出す。

 

「東郷先輩ならその辺は分かってくれると思っていた!!」

「私、妖怪なら酒呑童子とかが好きなのよ、強そうで」

「京を荒らし回った大鬼のことですね」

 

さっきまでの仲の悪さはどこへ行ったのか急に仲良く語り出す東郷と良。

 

またその光景を見て風は「さっきまで仲悪そうだったのに……」と目を丸くし、そんな風に春木が説明を入れる。

 

「アイツ等妖怪とか、そういう関係の話とかならウマが合うみたいなんだよな。 普段仲悪いけど、互いに嫌ってる訳じゃないからさ……。 ライバルみたいなもんなんだよ」

「ライバル……?」

 

春木の言葉に風が首を傾げ、そんな彼女に分かりやすく説明するために親指で友奈の方を指差す。

 

「アハハ、私そういう話よく分からないけど……好きなことを楽しそうに語る良くんや東郷さん好きだなぁ」

「っ……」

「そ、そうかしら?」

 

愛らしい笑顔で良と東郷にそう言う友奈に対し、良は顔を赤くし、東郷も思わず笑みを浮かべてしまう。

 

そしてそんな3人のやり取りを見て風は「あぁ、成程」と春木の言っていることを理解した。

 

その後、友奈と東郷、春木と良、風と樹といった組合わせで一同は帰ることになり、本日は解散することになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰宅途中、風は今日の夕飯はなにをしようかと本日の献立を考え、そんな風に樹はあれだけ食べたのにまだ食べるのかと思わず苦笑してしまう。

 

「樹は小食ねぇ?」

「お姉ちゃんが食べ過ぎなの!」

 

その時、風のスマホが鳴り、彼女はポケットからスマホを取り出すとそこには「大赦」と呼ばれる組織から来たメールが入っていた。

 

それを見て風は怪訝な顔を浮かべ、それを見て樹が「お姉ちゃんどうしたの?」と尋ね、風は慌てて「なんでもない」と首を横に振って答える。

 

「……ねえ樹?」

「なに?」

「お姉ちゃんに隠し事があったらどうする?」

「えっと~、よく分からないけど……」

 

風の言葉の意味がよく分からず、首を傾げる樹。

 

なので風は分かりやすい例えば話を樹に聞かせる。

 

「例えばね? 甲州勝沼で援軍が来ないのに戦えって言わなきゃいけなかったとして……」

「えっとぉ~」

「あはは、ごめんなんでもない!」

 

風は笑って今の自分の質問を誤魔化すように笑うのだが、樹は風の質問に答える。

 

「ついて行くよ、何があっても」

「えっ?」

「お姉ちゃんは……唯一の家族だもん!」

 

そう答える樹の言葉に風は一瞬悲しげな表情を浮かべて顔を俯かせるが、すぐにうっすらと笑みを浮かべ「ありがとう……」と樹に伝えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土曜日、今日は特に勇者部の活動もなく春木は父である「南 ウシオ」が経営している実家兼セレクトショップ「クワトロM」で仕事の手伝いをしていた。

 

「なぁ! 春木!! どうよこの服?」

「んっ? なにそれ『うちゅ~ん』?」

 

ウシオが見せてきたのは地球が「うちゅ~ん」と叫んでいるような柄の自分が制作した服であり、ウシオは服の感想を春木に求めるのだが……。

 

「いや、普通にクソダッサイ!! こんなのホテルおじさんくらいしか買いに来ねーよ!! 在庫の山が増えるだけだろこんなの!!」

 

そこへ、頭をボサボサの寝癖だらけにして両手にツリーのようなものを持った良が現れる。

 

「ふむ、夕べは研究に没頭し過ぎたな……、兄貴朝飯あるか?」

「お前また夜更かししたのか? 変なもんもまた作って……今日が日曜だからってたるみ過ぎだろ。 あと今はもう昼だ」

「変なもんじゃないぞ兄貴!! これは地上を観測し地球環境などを調査したりするためのものだ!! 環境を調査すれば四国外にあるウィルスの駆逐も可能かもしれん!!」

 

良の語る「四国外にあるウィルス」……というのは今からおよそ300年前、突如として世界中に発生した即座に人を死に至らしめるウィルスのこと。

 

そのウィルスは未だに四国の外で蔓延しているらしく、良はいつかそのウィルスを消し去り、再び世界が300年前のように広くなることを夢見て科学者を目指しているのだ。

 

最も、中学生である彼にできることなどかなり限られてはいるのだが。

 

ちなみに、彼等の住む四国はなぜウィルスに浸食されていないのかと言うとそれは土着の神々が、残された人類を守るために融合し「神樹」となることで四国を守る結界を作り出しからであり、人々が生きるための資源も供給しているのである。

 

そのことから神樹は人々の信仰の対象となっており、敬っている人も数多く存在する。

 

「それにだ兄貴、これはそれだけではなくバイブス波の反射を解析し、数百年前の地層だって調べることできる優れものだぞ!!?」

「へぇー!! よく分かんないけど良くん凄いね!!」

「そうだろう!! 友奈さんならそう言うと……えっ?」

「えっ?」

 

そこにはいつの間にか来ていた友奈が興味深そうに良のツリー型装置を眺めており、それに良は慌ててその辺にあった机の上に置いてボサボサの髪を慌てて直そうとする。

 

「ゆ、友奈さん!!? いつの間に……!!?」

「母親と一緒に服を買いに来たんだと。 っていうかお前がここに来る少し前に試着室に既にいたんだよ」

「そ、それを早く言ってくれ兄貴!!」

 

しかし春木は「普段だらしないお前が悪い」と返し、良は「身だしなみちゃんと直してくる!!」とだけ言ってその場を立ち去り、春木はそんな良に対し苦笑いして友奈に謝罪する。

 

「なんかすまんな、友奈?」

「ほぇ? なんで春木先輩が謝るの?」

「いや、弟のみっともない姿を見せてしまったなと・・・・・・」

 

だが、友奈は「そんなことないよ」と首を横に振る。

 

「だって良くん、この凄い感じの装置作るのに夢中で徹夜しちゃったんでしょ? そんな風になにかに夢中な良くん私は好きだもん!!」

「それ聞いたら良の奴飛んで喜ぶだろうな・・・・・・」

「えっ、なんでですか先輩?」

 

友奈がなんで今の自分の言葉を聞いたら良が喜ぶのか分からず、首を傾げる友奈だったが春木は彼女の頭を撫で「気にすんな」とだけ言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜・・・・・・綾香山という山にある橋の上で2人の男女のカップルが星を眺めていた。

 

「すごーい! 星綺麗ね?」

「ホントだね」

 

それと同じ頃、カップルの近くである人物が青いアイテム・・・・・・「ルーブジャイロ」の中央に怪獣が描かれた「怪獣クリスタル」と呼ばれるものをはめ込み、両端のレバーを引っ張る。

 

『グルジオボーン!』

「んっ? 今なんか動かなかった?」

「えっ? なになに?」

 

そして星をバックにスマホカメラで自分達を撮影していたカップル達は、カメラに何かが動いたことに気づき、後ろを振り返ると・・・・・・。

 

2人の目の前に、黒く蠢く巨大な影が現れた。

 

「う、うわああああ!!!!?」

「きゃああああ!!!?」

 

それと同時にクワトロMにある良の作ったあのツリー型装置が突如として回転を始めていたのだが・・・・・・爆睡していた良はそのことに気がつかなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、日曜日・・・・・・春木とウシオは店の開店準備を早めに済ませ、今は2人で開店するまでテレビを視聴しており、そこには綾香市に拠点を置く大企業「アイゼンテック」の社長「愛染(あいぜん) アキラ」が女性レポーターからインタビューを受けているところだった。

 

『愛と善意の伝道師、愛染 アキラです!』

 

手でハートを作りながら笑顔で決めポーズを取る愛染。

 

『早速ですが愛染社長、あれはなんでしょうか?』

 

レポーターがの視線の先には人がピョンピョンと跳びはねており、愛染は「よくぞ聞いてくれました!」と言わんばかりの表情を浮かべて質問に答える。

 

『あれは筋肉強化『バイオパワード・フットギア』です! 人間が本来持っている筋肉の電気信号を解析、増幅してフィードバックするシステムです!!』

「いやぁ、愛染社長は素晴らしいなぁ!」

 

ウシオは愛染の発明に感心するが、それに春木は「そうかぁ?」と疑問を口にする。

 

「そうだよ、だってこの町もアイゼンテックがあるから発展したんだし、母さんだってあの人には随分お世話になったもんだ」

「・・・・・・母さん・・・・・・。 あれからもう数年か・・・・・・。 そう言えば今日は母さんの誕生日だっけ」

 

春木がどこか悲しげな表情を浮かべながらそう呟くとウシオは「あぁ」と頷く。

 

「今どこでなにしてるんだろうな」

「んっー? なぁに、母さんはいつかきっと帰ってくる。 港に船が戻るように」

 

ウシオの言葉を聞き、春木は笑みを浮かべて「そうだね」と答え、テレビに再び視線を映すと今は愛染の「本日のお言葉」というコーナーが始まっていた。

 

『本日のお言葉は・・・・・・【石橋に当たって砕けろ】何事にもまず、チャレンジする精神が大切です!』

 

にこやかな笑みを浮かべながら愛染はそう語るのだった。

 

「さて、そろそろ開店時間だなっと・・・・・・」

 

春木はテレビを消し、開店の時間に備えようとするのだが・・・・・・その時、珍しく早起きした良が慌ただしく春木の元へと走りより、スマホの画面を見せる。

 

「兄貴!! これ観てくれこれ!!」

「おぉ!? なんだよ!?」

 

そこには昨晩あのカップルの目の前に現れた黒いシルエットの巨大な怪物を雄叫びをあげており、「兄貴はこれをどう思う!?」と興奮した様子で尋ねてくるが、春木はそんな良に呆れ、「こんなものはCGかなんかだろ」と言い、それに良がムッとした表情を浮かべていると・・・・・・。

 

「あら、でもCGにしてはよくできてると思うわ」

「あー、これなんかニュースでやってたよね! なんかカッコイイ!!」

 

そこにはいつの間にか友奈と東郷が良の持つスマホの画面を一緒になって観ており、それに「おわあ!?」と春木と良は驚きの声をあげる。

 

「東郷! 友奈!! お前等いつの間に!?」

「それよりも兄貴!! これがフェイクだと言うならこれを見てみろ!!」

 

良は自分のノートパソコンを開いて綾香山の地表のデータを見せる。

 

「バイブス波の発生源が山中から大きく移動している!! 綾香山には絶対になにかいる!!」

「そう言えば、あの山には『グルジオ』様がいるっていう伝説があったわね。 あの動画に映っていた怪物・・・・・・どことなくグルジオ様に似てる気がするわ」

 

東郷の言葉を聞いてウシオが「もしかしてこれのことかな?」と尋ねながらある絵本を渡し、受け取った東郷はウシオに「ありがとうございます」とお礼を言った後、ページを開いて先ほどの動画に映っていた怪物と絵本に映っているグルジオを交互に見つめる。

 

「確かに、ちょっと似てる」

「あっ、私もその話知ってるよ! 確か大昔に空から『綾香星』が振ってきてその中からグルジオ様が出てきて・・・・・・戦で争っていた人達はみんなグルジオ様に飲み込まれちゃったって話だよね!」

「流石友奈ちゃん、よく知ってるわね?」

 

東郷に褒められ、友奈が「えへへ~」可愛らしく笑うが・・・・・・春木は「でもおとぎ話だろ?」と言うのだが、良はそれに反論。

 

「綾香市っていう町の名前にもなってるくらい歴史的な事実だ! 綾香星は今だと隕石なんて言われてるが俺はそうは思わん!! 地磁気の異常もある!! 母さんだって綾香山の研究をやっていただろう!?」

「そういやそうか。 それにしても、綾香山か・・・・・・」

「そういうことだ兄貴!! 俺は今から調査に向かう!!」

 

良はそう言って荷物をバックにまとめて綾香山に向け店を飛び出し、そんな良に危なっかしさを感じた春木は自分もついて行き、また東郷も友奈も「私達も気になる!!」ということで2人も良と春木の後を追いかけるのだった。

 

ちなみに移動にはバスを使う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾香山の公園にて・・・・・・。

 

「おぉ~、懐かしいな!! なあ、良!! 昔はよくここに母さんと一緒に遊びに来てたよな!! 覚えてないか!?」

 

春木は公園を見渡しながら良に尋ねるのだが、良からの返事は返って来ず、いつの間にか良の姿がいなくなっていた。

 

「あれ!? 良!!?」

「良くんなら既にあそこに・・・・・・」

 

東郷が指差す方向を見ると既にかなり離れた位置にバイブス波を検知する為の装置を持った良を発見し、良の興奮した様子から彼は全く自分の話を聞いていないのを春木は即座に理解し、溜め息を吐いた。

 

ちなみに友奈は良と一緒にそのバイブス波の発生源を探している。

 

「・・・・・・はぁ。 あいつの変なところは母さんとホントよく似てるよ」

 

それから春木は再び公園を見渡し、公園を見ながら数年前の日を思い出していた。

 

春木と良の母親は地元ではちょっとした有名な考古学者であり、数年前の丁度この日、すき焼きの豆腐を買いに行くと言ったままそのまま母は帰っては来なかったのだ。

 

(でも、あの時の母さんの温もりはよく覚えてるな・・・・・・。 ってん?)

「・・・・・・」

 

するとそこで春木が東郷が黙ったまま公園にあった遊具をジッと見ていることに気づき、春木はそんな東郷に「どうかしたのか?」と尋ねると東郷は「あっ、いえ!」と慌てて首を横に振る。

 

「ここ、私初めて来るんですけど・・・・・・なんだか初めてじゃないような気がして・・・・・・」

「ふむ。 そういや東郷って昔の交通事故のせいで記憶を失ってるんだっけ。 もしかしたら、本当に前にここに来たことがあるんじゃないか?」

「・・・・・・かもしれませんね・・・・・・」

 

春木の言うように東郷は2年前、交通事故にあったが為に過去数年の記憶を失ってしまい、さらにはそのせいで足が不自由になってしまったのだ。

 

そしてどことなく暗い表情を浮かべる東郷を見て春木は「すまん」と彼女に頭を下げて謝罪し、そのことに東郷は驚く。

 

「ど、どうしたんですか春木先輩? いきなり謝って・・・・・・」

「いや、記憶喪失のこと、気にしてたんなら悪かったなって思って・・・・・・。 なんか、悲しそうな顔してたし・・・・・・」

「えぇ? そんな顔してました!? そんな私気にしてませんから頭あげてください」

 

東郷にそう言われて春木は頭を上げるがその顔には未だに申し訳無さそうにしている様子が伺え、東郷はそんな彼に対し「本当に平気ですから」と思わず苦笑いしてしまう。

 

「それよりも友奈ちゃん達のところに行きましょう? このまま友奈ちゃんと良くんを2人っきりにさせたくもないですし」

「・・・・・・そうだな」

 

春木は東郷の言葉に頷き、彼女の車椅子を押して友奈と良の元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一同は良のバイブス波を追いかけ、1つの廃墟が目に入ったのだが・・・・・・そこに進む為の道には「立ち入り禁止」と書かれた看板が置かれてあったのだが・・・・・・。

 

良は問答無用で立ち入り禁止エリアに入ろうし、それを慌てて友奈と春木が止めに入る。

 

「ちょっと良くん!! ここ立ち入り禁止って書いてあるよ!?」

「そうだぞ、良!! 幾ら何でも・・・・・・」

「だが!! この先に何かあるのは確かなんだ!! 見てくれこれを!!」

 

そう言って良は端末機の画面を友奈と春木に見せるのだが・・・・・・その時・・・・・・。

 

「グルアアアアアア!!!!!」

 

廃墟から赤黒い禍々しい体色と骨格を彷彿させる姿をした巨大な怪獣・・・・・・「火炎骨獣 グルジオボーン」が出現。

 

「わああ!!? か、怪獣だ~!!?」

「「・・・・・・グルジオ様?」」

 

友奈はグルジオボーンの登場に驚きの声をあげ、また東郷と春木はグルジオボーンが絵本に書いてあったグルジオに似たことからその名を呟き、そして良はグルジオボーンの登場に興奮した様子でグルジオボーンを追いかけようと先へ進もうとする。

 

「おい何やってんだ良!!?」

「こんな機会二度とないかもしれないんだ!! 追いかけないと損だぞ兄貴!!」

 

そう言って良は自分の腕を掴む春木の手を払いのけてグルジオボーンの元に向かおうとするのだが、グルジオボーンがこちらを睨み付けているのを見て思わず足を止める。

 

「・・・・・・やっぱ逃げようか・・・・・・」

「そうだね! 命は大切にだよ良くん!!」

 

ということで先ほどの言葉を前言撤回、一同は逃げることに。

 

「でも東郷の車椅子押しながらじゃ逃げにくいよな・・・・・・!」

「へっ? きゃあ!!?」

 

しかし、東郷の車椅子を押しながら逃げるのは困難な為、春木は東郷を抱きかかえて一同はグルジオボーンから逃げる為に走り出すのだが、東郷は突然のことに困惑し、顔を赤く染める。

 

「そ、その春木先輩・・・・・・恥ずかしいのですが・・・・・・」

「今そんな場合じゃないだろうが!!」

 

やがて公園の方まで戻って来たのだが、グルジオボーンが口から放つ100万度もの高熱火炎「ボーンブレスター」が地面に直撃し、その衝撃で春木達は吹き飛ばされてしまう。

 

「「わあああああ!!!?」」

「「ひゃあああ!!?」」

 

4人は地面に倒れ込むが春木はすぐに立ち上がり、良達の元へと駆け寄る。

 

「大丈夫か!?」

「なんとか・・・・・・」

「こっちも平気だよ!」

「私も・・・・・・」

 

その時、春木が泣きじゃくって動けなくなっている少年の姿を発見し、その少年の母親が少年を助けに行こうとしているのだが、逃げ惑う人々のせいで中々息子の元へと向かうことが出来ずにいた。

 

「っ! 良!! お前はあの怪獣の注意を引いてくれ!! その間に俺はあの子を!! 友奈は東郷連れて逃げろ!!」

「よし、分かった!! 早く頼むぞ兄貴!!」

 

だが、それを東郷は「ダメよ!! 危ないわ!!」と言って引き止めようとするのだが、春木は彼女の肩に手を置き、「大丈夫だ」と言って笑みを浮かべる。

 

「またな」

「っ・・・・・・!!」

 

そんな彼の姿と、言葉を聞いてなぜかとてつもない不安にかられた彼女は必死に春木に手を伸ばし、彼を引き止めようとする。

 

「ダメ・・・・・・行かないで・・・・・・。 ダメよ!!」

「そうだよ!! 2人とも危ないよ!! 怪獣は私が・・・・・・!!」

「友奈!! お前は東郷を守れ!! それに女の子にこんな危なっかしい真似させられっか!!」

 

東郷と友奈が必死に止めようとするが、春木と良は2人の言葉を聞かないで春木は少年、良はグルジオボーンに向かって行く。

 

「おいこのデカ物!! こっち見ろ!!」

 

良は石をグルジオボーンに投げながら必死に注意を逸らそうとし、春木はその間に少年を抱きかかえて母親の元まで連れて行き、少年を母親に渡し、母親は頭を下げてお礼を言った後、そこから急いで立ち去る。

 

「いよし!! 早く俺達も・・・・・・!!」

 

良も急いでグルジオボーンから逃げようとするのだが、途中でつまずいてしまい、それを見た春木は急いで良を助けようと彼に手を差し伸べながら走り出す。

 

「良ーーーーー!!!!」

「兄貴ーーーー!!!!」

 

それに良も手を差し伸べ、2人の手がもう少し届きそうになった瞬間・・・・・・!!

 

グルジオボーンがボーンブレスターを吐き出し、春木と良の2人は炎の中に包まれてしまう。

 

「そんな・・・・・・良くーーーーーん!!!!」

「せんぱーーーーーい!!!!!」

 

それを見て友奈と東郷は悲痛な声をあげて叫ぶのだった。

 

しかし、東郷と友奈は気づかなかったが・・・・・・炎の中で春木と良の2人の手は互いに届いており、次の瞬間、春木と良の2人は1つの光に包まれそこから姿を消していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づけば、春木と良は白い空間を漂っており、2人は当然ながら突然のことに困惑する。

 

「なになに!? 俺達どうなったんだ!?」

「まさか、死んだのか・・・・・・?」

 

するとその時、2人の目の前に突如4つのクリスタル「ルーブクリスタル」とそれを収納する為のケースである「ルーブクリスタルホルダー」、そして青い2つのアイテム「ルーブジャイロ」が2人の目の前に現れたのだ。

 

「なんだこれ?」

「さあ・・・・・・?」

 

次の瞬間、いきなり2人の頭の中にあるビジョンが浮かび上がり、地球に隕石が落下し、グルジオボーンに倒された2人の巨人の姿だった。

 

「今のは・・・・・・」

「これを俺達に使えってことなんだろうか・・・・・・」

「かもな」

 

クリスタルは自動的にホルダーの中に収納され、戸惑いつつも良は春木に「兎に角使ってみよう!!」と提案し、春木もそれに頷く。

 

「じゃあ1、2の3で行こう!!」

「よし!!」

「「1、2の3!! 俺色に染め上げろ!! ルーブ!!」」

 

そして春木と良はルーブジャイロを手に取り、最初に春木がホルダーを手に取り、「ウルトラマンタロウ」という戦士の絵が描かれた火のクリスタルを取り出す。

 

「セレクト!! クリスタル!!」

 

タロウクリスタルの角を2つ立ててルーブジャイロの中央に春木はセット。

 

『ウルトラマンタロウ!』

「纏うは火!! 紅蓮の炎!!」

 

最後に春木はルーブジャイロのトリガーを3回引いて右腕を掲げる。

 

「はあああ、はあ!!」

『ウルトラマンロッソ! フレイム!!』

 

春木は炎に包まれ、赤い巨人「ウルトラマンロッソ フレイム」へと変身を完了させる。

 

「セレクト!! クリスタル!!」

 

続けて今度は良がホルダーから「ウルトラマンギンガ」という戦士の描かれた水のクリスタルを取り出し、それをルーブジャイロにセットさせる。

 

『ウルトラマンギンガ!』

「纏うは水!! 紺碧の海!!」

 

また春木と同様に良もルーブクリスタルのトリガーを3回引き、彼は左腕を掲げる。

 

「はあああ、はあ!!」

『ウルトラマンブル! アクア!』

 

良は水に飲み込まれ、青い巨人「ウルトラマンブル アクア」へと変身を完了させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

グルジオボーンの炎によって春木と良が消されたと思った友奈と東郷はそこから逃げることも考えられず、ただただ2人の名を呟きながらその場で泣きじゃくっていた。

 

「先輩・・・・・・! う、うぅ・・・・・・!! 良くん、私との決着がまだついてないわよ・・・・・・グスッ!」

「せんぱぁ~い!! 良く~ん!! うわああああん!!」

 

そんな2人にお構いなしにグルジオボーンは口からボーンブレスターを2人に放とうとするのだが・・・・・・その時!!

 

空から2人の巨人・・・・・・ウルトラマンロッソとウルトラマンブルが大地へと降り立ち、それに気づいたグルジオボーンはそちらの方へと顔を向ける。

 

「こ、今度はなに・・・・・・!?」

 

ロッソとブルの登場に友奈の東郷は驚きの声をあげ、その一方でロッソとブルはというと・・・・・・。

 

『お、おぉ~!! なんだかよく分からんが凄いことになっているな兄貴!!』

『な、なんじゃこりゃああああああ!!!!?』

 

変身者である良は興奮気味、春木は戸惑いの色を隠せないでいたが、グルジオボーンはそんな2人を待たずに攻撃を仕掛けようと走り出す。

 

『やる気か!? 望むところだ!!』

『あっ、おい良!!』

 

対してブルもグルジオボーンに向かって走って行き、跳び蹴りを繰り出すのだが・・・・・・。

 

グルジオボーンはそれをヒョイッと簡単に躱し、ブルの蹴りは空振りに終わってしまう。

 

『ジャンピングキィーック!! ってん!? どこ行ったあいつ!?』

 

グルジオボーンはそんなブルに背後から掴みかかってロッソの方へと放り投げ、投げ飛ばされたブルはロッソと激突し、2人で倒れ込んでしまう。

 

『『うああああ!!!!?』』

 

倒れ込んだ2人に追撃しようとグルジオボーンは素早い動きでロッソとブルに接近。

 

『うおっ!!?』

 

それに思わず驚いたロッソは咄嗟に指先を前に突き出すとそこから赤い火球が放たれてグルジオボーンに直撃し、動きを止めることに成功した。

 

『兄貴!? 今の火球どうやって出したんだ!?』

『あっ? う~ん? 勢い?』

『勢いか、よし、なら俺も!!』

 

それを聞いたブルは立ち上がり、指先をグルジオボーンの足に向けて水流を放つのだが、狙いは外れて木々をそれで切り裂いて倒してしまう。

 

『バカお前!! 自然破壊してんじゃねえよ!!』

『いたっ!?』

 

木を壊すブルの頭をロッソが平手で叩き、ブルを押し退かしてロッソがグルジオボーンに向かって行き、グルジオボーンと取っ組み合いが始まる。

 

『デヤアアアア!!!!』

 

ロッソはグルジオボーンの頭を殴りまくるが全く効果はなく、グルジオボーンに振り払われてしまい、さらには振るった尻尾を横腹に叩きつけられて吹き飛ばされてしまう。

 

『ぐあああ!!?』

『こんのぉ~!!』

 

 

今度はブルがグルジオボーンに戦いを挑み、グルジオボーンの腹部に拳を何発も叩き込み、多少怯むグルジオボーンだったが即座に口からボーンブレスターを吐きだしてブルに直撃させ、ブルは火花を散らして大きく後退し、膝を突く。

 

『うぐあああああ!!!!?』

『良!!? 大丈夫か!?』

『あ、あぁ!』

 

ロッソはブルの元に駆け寄って彼の肩に手を置くが、2人揃ったところを狙い、グルジオボーンは再びボーンブレスターを吐きだして2人纏めて攻撃し、ロッソとブルを巻き込んで辺りが爆発する。

 

『うっ・・・・・・ぐっ!? どうする兄貴!? このままだとやられてしまう!?』

『俺に聞くな! ぐじぐじ頭で考えんのは苦手なんだよ!! だから俺は直球勝負だ!!』

 

立ち上がったロッソはグルジオボーンへと駆け出し、自分に向かって走ってくるロッソにグルジオボーンはボーンブレスターを発射するのだが、ロッソはそれをジャンプして回避し、そのまま急降下しながらグルジオボーンの頭部にチョップを叩きこむ。

 

『オラァ!!』

「グルアアア!!?」

『おぉ!? 効き目あったか!?』

 

そのままロッソは何発も拳をがむしゃらにグルジオボーンの身体に叩き込み、グルジオボーンは距離を取ろうとするのだがすぐさまロッソは詰め寄ってくるため、中々反撃することが出来なかった。

 

『この力、身体にだんだん馴染んで来た!! 勇気!! 根性!! あとは気合いだあああああああ!!!!!』

 

最後に拳を一発グルジオボーンに叩き込もうとするロッソだったが、動きを見切られ、その拳をグルジオボーンは右手で受け止め、左手の爪を振るってロッソの胸部を斬りつける。

 

『うぐあああ!!!?』

『兄貴!!』

「グオオオオオオン!!!!」

 

グルジオボーンは続けざまに右手の爪を振るおうとロッソに攻撃を仕掛けようとするが、それをブルが受け止め、膝蹴りを喰らわせてグルジオボーンを後退させる。

 

『アクアジェットブラスト!!』

 

さらに今度は先ほどと同じように水流・・・・・・「アクアジェットブラスト」を放ち、グルジオボーンをブルは引き離す。

 

『大丈夫か兄貴?』

『あ、あぁ、なんとかな・・・・・・』

 

するとその時、突然ロッソとブルの胸部のクリスタル「カラータイマー」が点滅を始め、活動時間の限界が迫っていることを知らせる。

 

『おぉ!? なんだこれ!?』

『一瞬、力が抜ける感じがした・・・・・・。 早く決着つけないとヤバいのかもしれないぞ兄貴!!』

 

ブルの言葉にロッソは「そうだな」と頷き、一気に決めようとロッソとブルは並び立つのだが・・・・・・そうはさせまいとグルジオボーンは高速移動して動き、すれ違いざまに両手の爪でブルとロッソを斬りつける。

 

『『うわああああ!!!!?』』

 

さらに旋回して再びグルジオボーンはロッソとブルの身体を斬りつけ、2人は地面に倒れ込んでしまう。

 

『ぐっ・・・・・・! どうすれば・・・・・・!』

『・・・・・・そうだ!! 兄貴!! 他の2つのクリスタルも試してみよう!!』

『それしかないか!』

 

グルジオボーンの攻撃を受け、フラつきながらもロッソとブルはなんとか立ち上がり、ロッソとブルの中にいる2人はホルダーから新たなクリスタルを取り出す。

 

『セレクト、クリスタル!!』

 

ホルダーの中の2つの内のクリスタル、桔梗が描かれ「翼」という文字が刻まれたクリスタルを取り出した春木はそれをルーブジャイロに新たにセット。

 

『大天狗!!』

「纏うは翼!! 剣撃の嵐!!」

 

そして3回トリガーを引き、右腕を掲げる。

 

『はああ、はあ!!』

『ウルトラマンロッソ!! ダイテング!!』

 

するとロッソの赤かった足の部分と頭部、胸部は白に、腕は黒になり、右肩にはカラスの嘴を模した黒いショルダーが現れ、左には黒い翼のようなショルダーが現れた「ウルトラマンロッソ ダイテング」変身を完了させる。

 

『セレクト、クリスタル!!』

 

続けて良も新たなクリスタル、桜が中央に描かれ「勇」という文字が刻まれたをクリスタル取り出し、それをルーブジャイロにセット。

 

『酒呑童子!!』

『纏うは勇気!! 荒ぶる拳!!』

 

そして良もまた3回トリガーを引き、左腕を掲げる。

 

『はああ、はあ!!』

『ウルトラマンブル!! シュテンドウジ!!』

 

するとブルは胸部が黒くなりX字の赤い鎧のようなものが装着され、青かった頭部と足と手の部分は桃色に変化し、その後腕に赤いガントレットのようなものが装着された「ウルトラマンブル シュテンドウジ」に変身を完了させる。

 

『おぉ! 酒呑童子ってマジか・・・・・・!!』

 

戦闘BGM「威風堂々」

 

自分の好きな妖怪の力を纏い、興奮するブルだったが、グルジオボーンは容赦なくボーンブレスターをブルに向かって放ち、それをブルは巨大な拳を交差して炎をガード。

 

その間にブルの横をロッソが走り抜け、グルジオボーンに接近してすれ違いざまに右手を白く輝かせた手刀を繰り出すが、グルジオボーンはロッソの手を掴んで攻撃を阻止。

 

『まだ俺の攻撃が残っているぞ!!』

 

だが、そこへブルの放った拳がグルジオボーンに迫るのだが、グルジオボーンはロッソを盾にしてブルの拳はロッソの背中に直撃した。

 

『ぐっはああああああ!!!!!? こ、腰がぁ!!?』

『す、すまん兄貴!?』

 

膝を突いて腰を摩るロッソにブルは両手を合わせて謝罪するが、グルジオボーンはそんな2人を容赦なく尻尾を振るって叩きつけ、2人は吹き飛ばされる。

 

「あの2人、戦い方下手くそね・・・・・・」

 

そんなロッソとブルの戦いの様子を見て東郷がそう小さく呟くのだった。

 

『ぐううう、良!! 息を合わせろ!! 先ずは俺が奴と戦う。 お前は俺の合図であいつに攻撃するんだ!!』

『分かった!!』

 

ブルはロッソの言葉に頷き、ロッソは右手を掲げるとその手に1つの光の刀「生大刀」を出現させ、それを静かに構える。

 

またグルジオボーンは素早い動きでロッソに向かって行き、それにロッソもグルジオボーンに向かって駈け出す。

 

そしてロッソはすれ違いざまにグルジオボーンの腹部を生大刀で切り裂き、斬りつけられたグルジオボーンの腹部から火花が飛び散る。

 

『グルアアアア!!!!?』

『今だ良!!』

『よし!!』

 

ロッソの合図でブルも腹部を抑えるグルジオボーンに向かって行き、ブルは千回の拳を連続で叩き込む「千回連続勇者パンチ」を叩きこむ。

 

『千回ぃぃ……!! 連続勇者ぁ!! パーンチ!!!!』

「グギャアアアアア!!!!?」

 

何発もの拳が叩き込まれた後、最後にブルはアッパーカットでグルジオボーンの顎を殴って空中へと殴り飛ばし、ブルとロッソはクリスタルを元のアクアとフレイムに戻す。

 

『『セレクト!!』』

 

ロッソはフレイム、ブルはアクアに戻るとロッソは十字に組んだ腕から炎の力を宿した破壊光弾を放つ「フレイムスフィアシュート」を繰り出し、ブルは腕をL字に組み、水のパワーを宿した破壊光線「アクアストリューム」をグルジオボーンに向けて発射。

 

『フレイムスフィアシュート!!』

『アクアストリューム!!』

 

2人の光線の直撃を受け、グルジオボーンは身体中から火花をあげて頭から地上に落下し、爆発するのだった。

 

「ギシャアアアアア!!!!?」

 

グルジオボーンを倒し、ロッソとブルは互いに顔を見合わせる。

 

『やった・・・・・・!! おいやったぞ!!』

『あぁ!!』

 

怪獣を倒したことに2人は喜び、2人は拳を上下にぶつけあった後、ハイタッチ。

 

『って、なんか力が抜けて・・・・・・ふわ~』

『良!! って俺も・・・・・・あぁ~』

 

その時、ロッソとブルの時間制限が来てしまったが為に、2人は力が抜け、倒れそうになるのだが・・・・・・途中で2人はそこから忽然と消えてしまうのだった。

 

また同じ頃、倒されたグルジオボーンは「魔」と書かれたクリスタルに変化し、とある人物の手の中へと落っこちていた。

 

 

 

 

 

 

「春にぃ!! 良にぃ!! 目を覚ましてください!!」

「先輩!! 良くん!!」

「2人ともしっかりして!!」

 

ウルトラマンから人間の姿に戻った春木と良を友奈と東郷・・・・・・そして春木と良の妹である「南 ヒナタ」が2人を揺さぶって必死に起こそうとしていた。

 

「んんっ・・・・・・ヒナタ? 友奈に、東郷も・・・・・・」

「もうっ、心配したんですよ先輩?」

 

やがて春木と良は目を覚まし、東郷と友奈は目尻に溜った涙を拭い、2人が目を覚ましたことにほっと一安心。

 

「良かったよぉ~!!」

「おぉう!?」

 

友奈は起き上がった良に泣きながら抱きつき、それに良が顔を真っ赤にしてまた倒れそうになってしまう。

 

「ってかヒナタ、お前なんでここに?」

「お父さんがきっと2人はここにいるだろうって!! さぁ、皆さんそろそろ暗くなりますし、帰りましょう! 今夜はすき焼きです!! 友奈さんや東郷さんも良ければ」

 

ヒナタの言葉を聞いて友奈は「えっ!? 良いの!?」と嬉しそうな顔を浮かべ、それにヒナタも笑顔で頷く。

 

(それにしても、なんか凄いことになっちまったな。 でもまぁ、取りあえず母さん、誕生日おめでとう!!)

 

それから一同はバス停まで歩くことになり、車椅子を無くした東郷は春木が背負って歩くのだった。

 

「あの・・・・・・先輩重くないですか?」

「重くねえよ。 重いとしてもそれ多分お前の胸のせ・・・・・・」

 

そこまで言いかけて東郷は頬を赤くしながらビシっと春木の頭にチョップを入れ、春木は「いてぇ!?」と小さな悲鳴をあげるのだった。

 

「セクハラですよ、先輩。 もう・・・・・・」

「はは、すまん・・・・・・」

 


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