結城友奈は勇者である R/Bの章   作:ベンジャー

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ちゅるっと放送記念に更新。


第5話 『新たな仲間』

友奈達が勇者になってから、1ヶ月ほどが経った頃。

 

今回は久しぶりに樹海化が発生し、既に友奈達は勇者に変身して樹海で結界の外から来るバーテックスを待ち構えているところだった。

 

また、春木や良も何時でも変身できるようにルーブジャイロを構えており、やがて全体的にメカニカルな姿をした山羊座を模したバーテックス、「カプリコーン・バーテックス」が出現する。

 

「あれが5体目・・・・・・」

 

後方で寝そべるような体勢で狙撃銃を構えながらカプリコーンの姿を見て、そう小さく呟く東郷。

 

「来た!」

「あれ? 今回はバーテックスだけですかね?」

 

しかし、良は出現したバーテックスがたった1体だけしか出現しないことを疑問に思い、ガルバラードのような例を除けば何時もバーテックスのお共のようにツインテール、リトマルス、ガドンなどが出現していた筈。

 

なので良は今回、ウルトラマンである自分達もいるのにバーテックスたった1体なのだろうかと首を傾げるが・・・・・・。

 

「バーテックスが1体だけと油断しない方が良いわよ、良。 忘れたの? 最初の樹海での戦いの時も、2回目の樹海での戦いの時も怪獣達や地中や勇者アプリのセンサーが反応できないくらい遥か上空から待機していたのを」

「あっ、そうか!」

 

風に言われて良ははっと樹海に出現した怪獣達は何時もよく隠れていたことを思い出し、だとしたら今回もどこかに怪獣が隠れている可能性があるかもしれないと良は辺りを見回して警戒する。

 

「・・・・・・1ヶ月ぶりだから、ちゃんと出来るかな」

 

そこで友奈がボソッと不安そうな表情を浮かべながら呟くが、それを受けた樹がスマホを操作しながら「ここをこうこう」と友奈と作戦を練り、友奈は「ほうほう!」と納得するが・・・・・・。

 

「えーい!! 成せば大抵なんとかなる!! 四の五の言わず、ビシッとやるわよ!!」

「風の言う通りだ!! 今更作戦なんて考えたって遅い!! 用は気合いだ!! 気合いがあればなんとかある!! 当たって砕けろだ!! さぁ、気持ち燃え上がらせるぞぉ!!」

「この脳筋年長者共・・・・・・」

 

年長者の癖に春木も風もロクな作戦1つ考えないことに良は呆れたような溜め息を吐き出し、「砕けたらダメだろ、砕けたら世界滅びることにならない?」と春木の言葉にツッコミを入れるが、春木はなんの根拠も無いのにサムズアップしながら「大丈夫!!」と良に言葉を返す。

 

「例え砕けても砕けた状態のまま敵に立ち向かえば良いんだよ!!」

「もう言ってること無茶苦茶じゃないのこの脳筋兄貴!!」

 

もはやもう何を言ってるんだがよく分からない春木に良は再び溜め息を吐きつつ、友奈の方へと顔を向け「でもまぁ、きっと大丈夫ですよ」と声をかける。

 

「実際のところ、みんなで力を合わせれば、確かに風先輩の言うようにきっとなんとかなると思います。 今までもそれで実際なんとかなりましたし」

「あっ、うん、ありがとう良くん! 良くんがそう言ってくれたおかげで、私もちょっと不安が消えたよ!」

 

良が友奈を励ますようにそう言うと、友奈も笑顔を取り戻し、「よーし、やるぞー!」と気合いを入れる。

 

しかし、その時、良は背筋にゾワリとした悪寒を感じ、誰かの視線を感じて何気なく東郷の方に目を向けると・・・・・・。

 

そこでは彼女の目からハイライトが消えて、良に対して指で首を斬るかのような動作をしながら「お前を殺す」というジェスチャーを送る東郷の姿があるのだった。

 

(こっわぁ・・・・・・!! いやだが、この程度で友奈さんのことを諦める俺じゃないぞ、東郷先輩! でも銃口こっち向けるのやめてくれませんかね!? 向けるならずっとバーテックスに向けといて欲しいんですけど!?)

「取りあえず、先ず俺と良が先行して行くか。 怪獣が隠れてて、出て来るなら多分ウルトラマンがいる時だろうし」

 

樹海に出現する怪獣は何時もウルトラマンが現れている時にしか姿を見せないので、春木は今回は先行して自分と良がカプリコーンの相手をすると言いだし、春木はもし怪獣が出現した時などは援護を頼むと風達にお願いすると、春木は冷や汗を大量に流す良の肩をポンッと叩き呼びかける。

 

「おい、行くぞ、良?」

「うおっ!? お、おぅ、兄貴・・・・・・」

「?」

 

春木は良の様子を不思議に思いながらも春木と良は互いに手をぶつけ合わせてからルーブジャイロを同時に構える。

 

「「オレ色に染め上げろ!! ルーブ!!!!」」

 

最初に春木が空中に浮かんだホルダーを手に取り、そこから「ウルトラマンタロウ」の絵が描かれた火のクリスタルを取り出す。

 

「セレクト!! クリスタル!!」

 

タロウクリスタルの角を2つ立ててルーブジャイロの中央に春木はセット。

 

『ウルトラマンタロウ!』

「纏うは火!! 紅蓮の炎!!」

 

最後に春木はルーブジャイロのトリガーを3回引いて右腕を掲げる。

 

「はあああ、はあ!!」

『ウルトラマンロッソ! フレイム!!』

 

春木は炎に包まれ、赤い巨人「ウルトラマンロッソ フレイム」へと変身。

 

「セレクト!! クリスタル!!」

 

続けて今度は良がホルダーから「ウルトラマンギンガ」の描かれた水のクリスタルを取り出し、それをルーブジャイロにセットさせる。

 

『ウルトラマンギンガ!』

「纏うは水!! 紺碧の海!!」

 

また春木と同様に良もルーブクリスタルのトリガーを3回引き、彼は左腕を掲げる。

 

「はあああ、はあ!!」

『ウルトラマンブル! アクア!』

 

良は水に飲み込まれ、青い巨人「ウルトラマンブル アクア」へと変身を完了させる。

 

変身を完了させた2人はカプリコーンに向かって駈け出し、ロッソの跳び蹴りとブルの拳が同時にカプリコーンに叩きこませ、カプリコーンは火花を散らしながら後退する。

 

『シュア!!』

 

そこからさらにブルの後ろ回し蹴りがカプリコーンに繰り出されるが、カプリコーンは空中で飛ぶことで攻撃を回避し、下部に存在する四つの突起をドリル状にしてロッソに向かって突っ込み、攻撃を受けたロッソは吹き飛ばされて倒れ込む。

 

『ウアアアッ!!?』

『兄貴!?』

 

さらにカプリコーンが地上に降り立つと、地震を発生させ・・・・・・ロッソとブル、友奈達も思わずバランスを崩し、倒れそうになる。

 

「わわわ!? 地震!?」

『こんの・・・・・・調子に、乗るなぁ!!』

 

ロッソは爆裂光弾をオーバースローの要領で発射する「ストライクスフィア」を放ち、それの直撃をカプリコーンが受けると地震は止み、その間にブルが掌から水流を発射する「アクアジェットブラスト」をカプリコーンに放とうとするのだが・・・・・・。

 

『アクアジェットブラス・・・・・・ぐあっ!?』

 

その時、地面から顔を出し、ブルの足に噛みつく怪獣、「地底怪獣 マグラー」が出現し、マグラーは身体を全体を地中から出現させると同時に足に噛みついていたブルを投げ飛ばし、その際にブルは空中を一回転しながら背中を地面に激突させる。

 

『ぐぅ!? いったぁ~!!』

『良!! この!!』

 

ロッソはマグラーを蹴り飛ばし、噛みつかれた自分の足を摩るブルに「大丈夫か!?」とすぐさま駆け寄る。

 

「グルアアアアア!!!」

 

マグラーとカプリコーンはロッソとブルを挟み込むようにして2人に立ち塞がり、立ち上がったブルとロッソはファイティングポーズを構えながら2体の攻撃に警戒する。

 

「春木の予想通り、怪獣が出てきたわね! みんな!! あの2人を援護するわよ!」

「「「了解!!」」」

 

風の言葉に友奈、東郷、樹が頷き、先ずはマグラーとカプリコーンが自分達に注意が向くよう仕向けようと風は友奈と樹に指示するのだが・・・・・・その直後のことだった。

 

空から飛んで来た複数の刀がカプリコーンとマグラーの頭部に突き刺さり、爆発。

 

「グルアアアアア!!!?」

『なんだ!?』

「東郷さん!?」

 

それを見ててっきり友奈は東郷がロッソとブルを援護射撃したのかと思ったが・・・・・・。

 

「私じゃない」

 

どうやら攻撃を行ったのは東郷ではないようで・・・・・・なら誰がと友奈達が疑問に思っていると・・・・・・。

 

ヤマツツジ・レンゲツツジを模した赤い勇者服を着た少女、「三好 夏凜」が赤い甲冑をまとった武士のような姿の精霊、「義輝」を出しながら両手に刀を持った状態で空から現れ、「ちょろい!!」と言い放つと同時にすれ違いざまにマグラーの身体を何度も滅多切りにし、斬りつけられたマグラーは悲鳴をあげる。

 

「グルアアアアア!!!!?」

『えっ!? 誰あれ!?』

『そんなの今は後だ! 俺達も行くぞ!!』

 

ブルは突然現れた夏凜の存在に驚きつつも、今はそれどころではないとロッソに言われてカプリコーンに視線を移す。

 

対して、カプリコーンは紫色の毒煙を放ち、友奈達は精霊バリアのおかげで毒煙の影響を受けなかったが、バリアのないロッソとブルは煙に触れた瞬間身体から火花が散り、ロッソとブルは悲痛な声をあげながら素早く後退する。

 

『ぐああっ!? だったら光線でって・・・・・・これじゃ相手の姿も・・・・・・!』

 

ならばブルは光線技でカプリコーンを倒そうと考えるが、カプリコーンは毒煙に姿を消してしまった為、どこに光線を撃ち込めば良いのか分からなくなってしまった。

 

『それなら! 俺に任せろ!!』

 

ロッソのインナースペース内にいる春木はホルダーから「勇」という文字が刻まれたをクリスタル取り出し、1本角を立たせるとそれをルーブジャイロにセット。

 

『酒呑童子!!』

『纏うは勇気!! 荒ぶる拳!!』

 

そして春木は3回ジャイロのレバーを引き、右腕を掲げる。

 

『はああ、はあ!!』

『ウルトラマンロッソ! シュテンドウジ!』

 

胸部が黒くなりX字の赤い鎧のようなものが装着され、赤かった頭部と足と手の部分は桃色に変化し、その後腕に赤いガントレットのようなものが装着された姿「ウルトラマンロッソ シュテンドウジ」となるとロッソは拳を前に突き出す度に放つ「ナックルインパクト」を発射。

 

『ナックルインパクト!!』

 

連続で放たれる衝撃波によって毒煙が振り払われ、さらにそのまま衝撃波はカプリコーンの身体に直撃し、カプリコーンの姿を見つけたロッソは巨大な拳を模った衝撃波、「ナックルビッグインパクト」を放つ。

 

『ナックルビッグインパクト!!』

 

同時にブルも腕をL字に組み、水のパワーを宿したエネルギーを放つ「アクアストリューム」を発射。

 

『アクアストリューム!!』

 

2人の必殺技がカプリコーンに見事直撃し、火花を散らしながらカプリコーンは「御霊」ごと爆発するのだった。

 

一方、夏凜の方はというと・・・・・・。

 

マグラーは何度も夏凜を踏み潰そうとするのだが、彼女は素早い動きでマグラーの攻撃を躱しまくり、その度に反撃としてマグラーの身体を斬りつける夏凜。

 

「遅い遅い!! 遅すぎる!! 怪獣って言うのもこの程度!? 思い知れ!! 私の力!!」

 

そのまま夏凜何度もマグラーを一方的に攻撃し、最後に大きく跳び上がった夏凜が右手に持った刀を振るってマグラーの身体を一刀両断すると、マグラーは身体中から火花を散らして爆発するのだった。

 

「殲・滅・・・・・・!」

『所行無業~』

「グルアアアアアア!!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、誰?」

 

マグラーを倒し終えた夏凜が友奈達の前にやってくると、友奈は苦笑しながら「誰?」と首を傾げる。

 

「揃いも揃ってボーッとした顔してんのね? こんな連中が神樹様に選ばれた勇者ですって? はっ!」

 

夏凜は友奈達の姿を見ながら彼女達を鼻で笑い、そこへ丁度ロッソとブルも彼女達の元にやってきて2人は片膝を突きながら彼女達を見下ろす。

 

ちなみに、ロッソとブルが変身を解いていないのは夏凜が何者か分からない以上、そう易々と素性を明かす訳にはいかないからである。

 

最も、見たところ彼女も友奈達と同じ勇者であるのは間違いないようだが・・・・・・それでも下手に正体を明かすことはないだろう。

 

友奈達に正体を明かした時はあれはほぼ不可抗力だったので止む無しだったが。

 

『オイオイ、随分といきなり、ご大層な挨拶だな』

『俺、あの娘と仲良くなれる気がしないな。 なんか偉そう』

 

そしてどこか偉そうに、見下したような態度を見せる夏凜にインナースペース内で春木は苦笑し、逆に良はそんな夏凜に対して苦い顔を浮かべていた。

 

「アンタ達が噂のウルトラマンってやつね・・・・・・。 そんなデカい図体してる癖にあの程度の奴等に苦戦するなんて、思ったよりも大したことない連中なのね」

『はぁ!? なんだよその言い方!! 俺達だってあそこから逆転するところだったんだよ!!』

「弱い奴がよく言う言い分ね」

 

そんな夏凜の言い方にムカッと来たブルは拳を握りしめ、肩をワナワナと震わせるがブルの肩に手を乗せて落ち着くように言い聞かせるロッソ。

 

『落ち着け良。 俺達が未熟なのは本当のことだ。 だけど君も、もうちょっと言い方ってもんがあるだろ? そんなんじゃ友達無くすぞ?』

「いらないわよ、友達なんて!」

 

ロッソは自分達がまだまだ未熟な戦士であることを受け止めつつ、ブルを落ち着かせ、尚且つ夏凜の言い方を注意しつつ、そんなのでは友達できないと忠告するが、友達なんていらないと夏凜はそれを一蹴。

 

「っていうか、アンタ達何時までウルトラマンに変身してんのよ。 一応、アンタ等の正体は大赦の方で連絡行ってるから私に正体を隠す意味ないわよ?」

『あっ、やっぱり大赦は俺達の正体を知ってたか』

 

以前、大赦から預かったというクリスタルを風から渡されたことからも春木や良は大赦がウルトラマンの正体に薄々感づいているのではないかと思っていたが、どうやらやはり大赦の方で自分達のことは把握していたらしい。

 

ならばもう夏凜に正体を隠す必要もないなと思い、ロッソとブルは変身を解除して春木と良の姿に戻るが、良は未だに不機嫌そうな表情を浮かべていた。

 

「えっと、あの・・・・・・」

 

そこでオドオドとしつつ友奈が夏凜に話しかけるのだが・・・・・・。

 

「なによちんちくりん」

「ちん!?」

 

夏凜にちんちくりんと言われたことに少しショックを受ける友奈だったが、夏凜は特に気に留めることもなく、友奈達に自分の素性を明かす。

 

「私は三好 夏凜! 大赦から派遣された正真正銘、正式な勇者! つまりあなた達は用済み、ほい! お疲れ様でしたー!」

「「「「「「え、えええええ!!!!?」」」」」」

 

夏凜のその言葉に友奈、東郷、風、樹、春木、良は驚きの声をあげるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、友奈と東郷のいる教室にて。

 

「はい、良いですか? 今日から皆さんとクラスメイトになる・・・・・・三好 夏凜さんです」

 

そこではなんと昨日あのまま詳しいことも聞けず、言いたいことだけ言って帰って行ってしまった夏凜がクラスに転校してきて今は担任よる紹介が行われているところだった。

 

そのことに友奈と東郷はどこか唖然とした様子を見せており、担任からは両親の都合でこちらに転校して来たことを生徒達に伝えられる。

 

「三好さんはご両親の都合でこちらに引っ越して来たのよね?」

「はい」

「編入試験もほぼ満点だったんですよ?」

「いえ」

 

担任からの言葉に夏凜は素っ気なく返事をしつつ、担任に言われ、「三好 夏凜です。 よろしくお願いします」とだけ自己紹介を終えると東郷はこの状況をある程度理解したのか「成程」と呟いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、放課後には勇者部に春木達が集っており、そこにはより詳しい事情を聞く為、また本人自身も色々と説明しなければならないと思ったからか部室には夏凜も訪れていた。

 

「そう来たか」

 

またこの状況については風も何か納得しているようで夏凜は「転入生のフリなんてめんどくさい」と呟きつつ、その後どこか自信満々な様子でガッツポーズをする彼女。

 

「でも、私が来たからにはもう安心ね! 完全勝利よ!!」

「スゲー自信だな。 でもなんでそんな自信満々ならすぐに来てくれなかったんだよ? どの戦いも結構大変だったんだぞ。 君が来てくれたおかげか、昨日は比較的楽だったけど」

 

そんな夏凜の姿を見て、それだけ自信があるならなぜもっと早く来てくれなかったのかという疑問を春木は口にする。

 

実際、春木の言うように昨日の戦いが夏凜がいるおかげなのか今までと比べると比較的楽だったのは確か。

 

昨日戦ったマグラーは決して強い怪獣ではなく、なんだったらロッソかブル、1人でも余裕で倒せる程度の相手なのだが、それでも巨大な怪獣相手にたった1人で圧倒できる辺りを考えるに、それは夏凜の実力が決して口だけのものではないからだろうと春木は思った。

 

なのでもっと早く夏凜が来てくれていたらもう少し今までの戦いが楽になっていたのではないかと考え、同じことを東郷も考えていたようで彼女もそのことを夏凜に問いかけると、本人的には「自分だってもっと早く来たかった」という返答が返ってきた。

 

「私だってすぐ出撃したかったわよ? でも大赦は二重三重に万全を期しているの! 最強の勇者を完成させる為にね!」

「最強の勇者・・・・・・?」

 

なんでも夏凜が言うには大赦には友奈達先遣隊の戦闘データを得ることで完璧に調整された完成型勇者を作るという目的があったらしく、夏凜はそしてその完成型勇者というのが、自分なのだと言う。

 

「私の勇者システムは対バーテックス用に最新の改良が施されているわ! その上、あなた達トーシローとは違って戦闘の為の訓練を長年受けて来ている!!」

 

すると夏凜は近くに置いてあった箒を手に取ってかっこ良さげに構えるのだが、その際箒の後ろの部分が夏凜の背後にあった黒板に「バン!」と当たってしまい、大きな音を立てる。

 

「黒板に当たってますよ」

「ここ狭いんだから箒振り回すな危ないだろ~」

 

それに東郷がやんわりとツッコミ、春木が箒を振り回すなと注意すると、そんな夏凜を見て風はボソリ

と「躾がいのありそうな娘ね~」なんて呟いていた。

 

「なんですって!?」

 

ただそれにカチンと来たのか、夏凜は風を睨み付けるが、それを見た樹が慌てて2人を止めに入る。

 

「わわ! 喧嘩しないで!」

「フン、まあいいわ。 兎に角大船に乗ったつもりでいなさい!」

「そっか、よろしくね、夏凜ちゃん!」

 

椅子から立ち上がって夏凜に歩み寄り、改めてこれからよろしくと挨拶をする友奈。

 

「いきなり下の名前?」

 

そんな友奈に下の名前で呼ばれ、少し驚いた様子の夏凜。

 

それに友奈はもしかして下の名前で呼ばれるのは嫌だったのだろうかと思ったが、夏凜は「どうでも良い」と言って特に気にしないことに。

 

「名前なんて好きに呼べば良いわ!」

「なら良かったぁ~。 それじゃ夏凜ちゃん! ようこそ、勇者部へ!」

 

友奈はそう言いながら笑顔で夏凜の勇者部への入部を歓迎するのだが、それに対して夏凜は「はっ? 誰が?」と聞き返し、頭に疑問符を浮かべる。

 

「えっ? 夏凜ちゃん!」

 

そんな夏凜に友奈はまるで「何言ってるの?」とでも言わんばかりの顔浮かべ、彼女は勇者部の入部を歓迎していたのは夏凜のことであると教えるが、夏凜は別に勇者部に入ったつもりは無かったので、彼女は戸惑いつつも部員になるなんて話はしていないと友奈に伝える。

 

「部員になるなんて話、一言もしてないわよ!」

「えっ? 違うの?」

「違うわ! 私はあなた達を監視するためにここに来ただけよ!」

「えっ? もう来ないの?」

「また来るわよ、御役目だからね」

「じゃあ部員になっちゃった方が話が早いよね!」

 

徐々に徐々にと、友奈に話のペースを持って行かれる夏凜。

 

さらに友奈の部員になった方が手っ取り早いという意見にも東郷は「確かに」と同意し、夏凜も最初こそ勇者部に入ることを少し渋っているようだったが、合理的に考えて確かにその方が自分に取っては好都合かもしれないと思い、友奈達を監視しやすくなるだろうということから彼女は僅かに悩んだ後、「まぁいいわ」と部員になることを承諾した。

 

「その方があなた達を監視しやすいでしょうしね!」

「監視監視ってアンタね? 見張ってないとあたし達がサボるみたいな言い方やめてくれない?」

 

そんな時、やたらと口うるさく監視監視と言ってくる夏凜に風が文句を言うのだが、夏凜はそれを「フン」で鼻で笑って一蹴。

 

「偶然適当に選ばれたトーシロが大きな顔するんじゃないわよ!」

「ムッ」

「風先輩、でも実戦経験はこっちの方が上ですよ俺達、大きな顔してやりましょうよ。 ほら! ドヤァっと!!」

 

大きな顔するなと言われたので、だったら逆にデカい顔してやると言わんばかりに良はドヤ顔を決め、それにイラッとする夏凜と東郷。

 

((なんか無性に殴りたい、この顔))

 

これに関しては東郷も夏凜も全く同じことを考え、春木からも呆れた声で「腹立つからその顔やめろ」と言われ、友奈もちょっと引き気味なこともあり、すぐにドヤ顔をやめる良。

 

(友奈さんにちょっと引かれた・・・・・・)

「兎に角、大赦の御役目はね? おままごとじゃないのよ・・・・・・ぎあああああああ!!!!?」

 

その時、夏凜の精霊である義輝が頭を牛鬼にかじられていることに気づき、自分の精霊が食べられていることに絶叫。

 

すぐさま夏凜は牛鬼と義輝を引き離し、涙目の義輝を抱える。

 

「何してんのよこの腐れチクショー!!」

『外道め!』

「外道じゃないよ、牛鬼だよ! ちょっと食いしん坊くんなんだよね?」

 

ビーフジャーキーを牛鬼に与えながら友奈は牛鬼のことを夏凜に教えるが、夏凜は「じ、自分の精霊の躾もできないようじゃやっぱりトーシローね!!」と怒りながら文句を言い、東郷曰く、牛鬼にかじられてしまうからみんな精霊を出さないようにしているのだと言う。

 

「じゃあそいつを引っ込めなさいよ!」

 

だったら牛鬼を友奈が出さないようにすれば良いのではと夏凜が言うが、牛鬼はどうも友奈の意志に反して勝手に出て来るのだそうだ。

 

「はぁ? アンタの勇者システム壊れてるんじゃないの!?」

『外道め!』

「そう言えば、この子喋れるんだね!」

 

友奈は義輝の頭を撫でながら夏凜の精霊が喋っていることに興味を持ち、それに夏凜は胸を張ってどこか自慢げ。

 

「えぇ、私に相応しい強力な精霊よ!」

「あっ、でも東郷さんには3匹いるよ?」

 

友奈に話を振られて東郷はスマホを操作すると青坊主、刑部狸、不知火が出現。

 

「えっと、出ました!」

「っ、わ、私の精霊は1体で最強なのよ! 言ってやんなさい!」

『諸行無常~』

 

一瞬、東郷の精霊が3匹もいることに驚く夏凜だったが、夏凜は自分は義輝1体で最強だと張り合い、義輝にも何か言ってやれと言うのだが・・・・・・喋れる精霊と言っても言葉のレパートリー自体は少ないらしく、義輝はそれしか言えず、目を丸くする夏凜。

 

「しっかし、なんで東郷だけ精霊が3体もいるんだろうな」

「なんででしょうね?」

 

刑部狸の頭を撫でながら他のみんなは夏凜含めて1体だけなのにどうして東郷だけは精霊が3匹もいるのだろうかと疑問に思う春木。

 

「まぁ、もしかしたら適合率的なものが実は1番高かったからとかそういう理由なのかもしれないな? 実際東郷、強かったし」

 

刑部狸を東郷の頭に乗せて遊びながら後方支援タイプとは言え、初期メンバーの中でもかなり強かったことからもしかしたら適合率的なものが東郷は1番高かったのかもしれないと予想してみる春木。

 

「でもそういうのは友奈ちゃんの方が高そうですけどね」

「あっ、どうしよう、夏凜さん・・・・・・」

 

するとそこで樹が夏凜の名を呼び、夏凜は「今度は何よ!?」とまた何かトラブル的なものかと身構える。

 

どうにも樹はいつの間にか本人許可なく夏凜のことを机の上でタロットカードで占っていたらしく、しかもそれが不吉を示す死神のカードが出ていたそうで・・・・・・。

 

「夏凜さん、死神のカード・・・・・・」

「勝手に占って不吉なレッテル貼らないでくれる!?」

「不吉だ」

「不吉ですね」

「不吉だな~」

「不吉じゃない!!」

 

死神のカードを見つめながら東郷、風、春木が不吉さを感じ、またそんな夏凜を見て良はずっと夏凜のことは俺様の女性バージョンみたいな感じのキャラかと思っていたのだが・・・・・・

 

先ほどから友奈達に弄られまくってることから「もしかして本当は弄られキャラなのかな?」と思う良。

 

最も、だからと言って明らかにこちらのことを下に見ているかのような発言はあまり褒められたものではないので良としてはその辺はどうにかして欲しいと思うところではあるが。

 

「兎に角! これからのバーテックス退治は私の監視の下励むのよ!?」

「部長がいるのに?」

 

もう既にリーダー的存在がいるのにそれって必要なのだろうかとでも言いたげな様子で首を傾げる友奈。

 

そんな友奈に対し、夏凜は「部長よりも偉いのよ!」と返すが・・・・・・。

 

「ややこしいなぁ・・・・・・」

「えー、面倒くせぇ」

「ややこしくないわよ!! っていうか面倒くさいって何よ!?」

 

友奈はリーダーみたいなのが2人もいたらややこしいという感想を述べ、春木も友奈と同意見のようで面倒くさそうとどこか嫌そうな顔を浮かべながら彼は不満を口にする。

 

「まぁ、あなたが監視してようがしてまいが、俺達の・・・・・・少なくとも俺のやることは変わらない。 友奈さん達を手助けする為にバーテックス退治するのは当然だし、怪獣の対処もするし、勇者部の活動も今まで通りやるつもりだからな・・・・・・」

 

そこで良はキッパリと夏凜に対し、例え夏凜が自分達を監視していようがいまいが少なくとも自分はそんなのは関係なく何時も通り過ごすと言い放ち、そんな良の発言を受けて夏凜はキッと彼の顔を睨む。

 

「アンタね! さっきから・・・・・・っていうかずっと思ってたけど、ちょっと生意気なんじゃないの?」

「はぁ!? アンタに言われたくないな!! 人のこと言えるのか!!」

 

良と夏凜はお互いに睨み合って間に火花を散らすが、そこで春木が慌てて2人の肩を掴んで引き離し、仲裁に入る。

 

「お前等喧嘩すんなって! これから一緒に戦って、お互いの背中を預け合うことになるんだからもうちょっと仲良く・・・・・・」

「言っただろ、兄貴。 俺、この人と仲良くなれる気がしないって!」

「あたしもよ。 元より、アンタ達と馴れ合うつもりはないけど・・・・・・こいつとだけは絶対に、特に仲良くなれないわ!!」

 

春木が両腕で抑えられながらも、お互いに睨み合って威嚇し合う良と夏凜の2人。

 

そんな2人に呆れつつ、春木はどうすれば良いのだろうかと困惑するのだった。

 

「まぁ、取りあえず事情は分かったけど・・・・・・学校にいる限りは上級生の言うことを聞くものよ? 事情を隠すのも任務の中にあるでしょ?」

 

そこで風は夏凜に学校にいる間くらいは普通に学生らしくいこうという形でお互いに接するべきだと主張し、風のその言葉に夏凜も確かに一理あると感じたのか、夏凜は良を睨んで威嚇するのをやめ、風の提案を一度鼻で笑いつつも不本意ながら納得する。

 

「フン。 まぁいいわ。 残りのバーテックスも殲滅したら御役目は終わりなんだし、それまでの我慢ね・・・・・・」

「うん! 一緒に頑張ろうね!」

 

そんな夏凜にズイッと近寄りながら共に頑張ろうと声をかけ、彼女に微笑む友奈。

 

それに夏凜は僅かに戸惑い、照れ臭そうな顔となる。

 

「っ」

 

彼女はそんな自分の顔を見られないようにする為か、友奈達に今の自分の顔を見られないように腕組みをしながら後ろを向く。

 

「頑張るのは当然! 私の足を引っ張るんじゃないわよ!」

 

そんな友奈や夏凜のやり取りを見て、春木達は微笑ましさを感じ、良以外は思わず笑ってしまうのだった。

 

「・・・・・・ねぇ! 一緒にうどん屋さんいかない?」

 

すると、唐突に友奈が夏凜を一緒にうどん屋に行かないかと誘うのだが、彼女は「必要ない」と言って友奈の誘いを断ってしまう。

 

「なんか用事あるのか? これから一緒に戦うんだし、お互いの交流は大事だと思うんだけど・・・・・・」

「必要ないって言ってるでしょ? 言ったでしょ? バーテックスを全部倒すまでって」

 

夏凜はそう言うと春木の言葉も一蹴し、部室の出入り口の方へと歩いて行き、友奈の「もう帰るの?」という言葉も無視してそこから立ち去って行ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は結局友奈、東郷、春木、良、風、樹の6人でうどん屋のかめやに行くこととなり、何時ものように勇者部のメンバーはうどんを注文して食べていた。

 

「美味しいのに・・・・・・」

 

ただ、うどんを食べつつも友奈は夏凜が来なかったことを残念そうにしており、東郷も夏凜のことを「頑なな感じの人ですね」と風や春木に呟いていた。

 

「どこの世界でも、追加戦士ってのは大体あんな感じの奴多いよな」

「つまり最終的にあたし達にデレるって訳ね! ふふふ、ああいうお堅いタイプは張り合い甲斐があるわ!」

「張り合うの・・・・・・?」

 

春木は夏凜のことを追加戦士あるあるで例え、風は張り合いがあると評し、そんな風の発言にやんわりとツッコミを入れる樹。

 

「うーん」

 

そこで友奈が困り顔でどうすれば夏凜と仲良くなれるのだろうかと呟き、その呟きを聞いた良は「ちんちくりん」だとか言われ、自分達のことを「トーシロ」と呼んでちょっと下に見た発言をしたのに、友奈はよく夏凜と仲良くなりたいなんて言える彼女に感心していた。

 

「・・・・・・あんなこと言われて、よく仲良くなりたいなんて友奈さん言えますよね。でもまぁ、友奈さんのそういうところ俺は好きですけどね」

「ふぇ?」

 

何気なくボソッと呟いた良だったが、すぐさま自分の言葉の恥ずかしさに気付き、良は慌てて「あっ、いや、なんでもないです!」と誤魔化そうとするのだが、その前にすかさず良の顔に東郷のアイアンクローが繰り出される。

 

「ねえ? 今何か言ったかしら良くん?」

「痛い痛い痛い痛い!! 言ってません!! 何も言ってません!! とでも言うと思ったかぁ!!」

 

すると良も負けじと東郷の目元に向かってアイアンクローを繰り出し、お互いに目元を掴み合う2人。

 

「ぐぅ!? やるわね、良くん・・・・・・!!」

「俺もやられてばかりじゃないんでね・・・・・・!」

「なんの張り合いだよ」

「ってか他のお客さんの迷惑になるからさっさとやめなさーい。 店から出禁にされるわよ?」

 

風に注意され、渋々お互いの手を離す良と東郷。

 

最も、お互いに睨み合いだけはうどんを食べながらも続けていたが。

 

また先ほどの良の呟きは幸い、友奈にはよく聞こえていなかったようで、彼女は目を丸くして「どうしたの?」と首を傾げていた。

 

それはそれで聞こえていなかくて良かったと安心した良だったが、同時に聞こえていないのもいないので悲しいと思い、良は複雑な気持ちになってしまうのだった。

 

そして東郷は良の言葉が友奈の耳に入っていないことが分かると、ニコニコ笑顔で「なんでもないわ♪ 友奈ちゃん♪」と誤魔化したのだった。

 

「友奈さんと春木先輩のこととなるとホント怖いね、東郷先輩・・・・・・」

「そうね・・・・・・」

「えっ? 友奈はまだ分かるけどなんで俺も入るの?」

 

友奈や春木のこととなると本当に色々怖いと東郷に恐怖を覚える樹と風。

 

しかし、春木は東郷が友奈大好き人間なのは知っているので、嫉妬でああいう行動によく出るのは分かるのだが・・・・・・何故そこで自分の名前が出て来るのか分からず、春木は不思議に思う。

 

そんな春木に当然ながら風と樹は冷ややかな視線を送るのだった。

 

「まぁ、でもさ・・・・・・夏凜の奴が俺達のことをトーシロって呼ぶの、あながち間違ってないだろ? 良は実戦経験ならこっちが上だって言うけど、俺達がまだまだ未熟なのは確かだ。 特に、俺と良の2人はさ・・・・・・」

 

ガーゴルゴンの時でこそ、なるべく人目を避けて自分達を友奈達は援護してくれたが・・・・・・御役目を終えれば彼女達は勇者でなくなる可能性がある。

 

それに、友奈達と違い自分と良は現実の世界でも怪獣と戦わなくてはならない身。

 

友奈達の援護などがずっとあるとは限らない、何時か自分と良だけでこの世界を守らなくてはいけなくなるかもしれない。

 

だからこそ・・・・・・自分達はよりもっと頑張らないといけない、強くならないといけないと考え、春木は夏凜の言うことも最もだと思ったのだ。

 

「確かに、夏凜さんの言うことも一理あるかもだけどさ・・・・・・」

 

夏凜に噛みつくような態度こそ取ってはいたものの、実際のところ自分達がまだまだ未熟であることは良自身も痛感している。

 

自分が夏凜に対して噛みつくかのような態度を取っていたのも、彼女が自分達を下に見たような発言ばかりしていたからというよりもそこを指摘されてムキになっていたからなのかもしれないと良は考え、少しばかり今日の夏凜への態度を反省するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、大赦が用意してくれたマンションへと帰宅した夏凜はというと・・・・・・。

 

運動用の服に着替えてマンションの近くの海辺で木刀を2本手に持ち、日課の鍛錬を行いながら今日一日のことを頭の中で振り返っていた。

 

(・・・・・・下らない。 学校なんて別に期待していなかったけど想像以下ね)

 

その後は帰りにコンビニに寄って弁当を買って帰り、大赦への定時連絡としてメッセージを送る為に「讃州中学に着任。 滞りなし」という文章をスマホで打っていく。

 

その際、今日彼女が友奈達に抱いた印象「現勇者達は危機感の足りない者ばかりの印象。 危惧される」という文を書き上げ、夏凜は文字を打ち終えるとそのままメッセージを大赦に送信。

 

ちなみに春木と良に関しては「あんな巨人になれるからどれだけ凄い人達なのか期待したけど、期待外れ。 ただのバカ2人」という友奈達以上の酷評が大赦に送られていたりした。

 

それから夏凜はランニングマシンで一通り走り終え、買って来た弁当を温めて食し、風呂に入ってから寝るという彼女に取っては何時もの日常を今日は終えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日・・・・・・。

 

友奈達のクラスの女子達は今、水泳の授業をしているところであり、そこで夏凜は水泳選手並のタイムを叩きだし、他の生徒から驚かれ、感心の声が寄せられているところだった。

 

「すっごーい!! 三好さんこれ水泳選手並じゃない!?」

「・・・・・・鍛えてるから」

 

あっけらかんとした態度で特に鼻にかけることもなく「これくらい当然」とでも言いたげに夏凜がタイムを計っていた生徒にそう言葉を返すと、その生徒はどうやら水泳部の部員だったらしく、夏凜に「ウチの水泳部に来ない?」と勧誘を受ける。

 

まぁ、水泳選手並となれば当然水泳部からの勧誘は来るだろう。

 

「興味ない」

 

しかし、夏凜は言葉の通り興味なさげに勧誘を断り、プールサイドへと上がると他の生徒達と同じく驚き、感心している友奈が立っていた。

 

「凄いね夏凜ちゃん! みんなビックリしてるよ~! すっごいねーって!!」

「っ、結城 友奈・・・・・・。 良い? 勇者はね、すっごくないと世界を救えないのよ!! 勇者の戦闘力は勇者の基礎運動能力に応じて大きく左右されるの!! アンタも勇者なら自覚を持ちなさい!!」

 

スポーツ選手並の身体能力・・・・・・そんなの、勇者なら出来て当たり前、凄くて当たり前じゃないといけない、そうでないと世界を救うことなんてできないと夏凜は友奈に豪語し、夏凜は友奈も勇者なら自覚をもっと持つべきだと忠告する。

 

「先月勇者になったばかりだから・・・・・・」

 

そんな夏凜に対して友奈は苦笑するしかなく、そんな友奈に夏凜は呆れた視線を向ける。

 

「アンタ、よくバカだって言われるでしょ?」

「実はそうなんだよねー!」

 

「アハハハ」と苦笑いする友奈に、夏凜はさらに呆れた視線を向けるのだった。

 

「全く、そんなんでよく勇者に選ばれたわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから全ての授業を終え、放課後の勇者部へと集まった春木達。

 

そこには夏凜も部室に訪れており、今回は風達と「情報交換と共有」という名目でやってきていたのだ。

 

「仕方がないから情報交換と共有よ! 分かってる? アンタ達があんまりにも呑気だから今日も来てあげたのよ!」

「・・・・・・にぼし?」

 

尚、何故か夏凜はにぼしを食べながら話しており、なんでにぼし食べてるんだとでも言いたげな表情を浮かべ、不思議そうに首を傾げる風。

 

「何よ! ビタミン、ミネラル、カルシウム、タウリン、EPA、DHA!! にぼしは完全食よ!!」

「まぁいいけど・・・・・・」

 

別ににぼしを食べること自体なんの問題もないので風は特に気にしないことにしたのだが、夏凜は風がにぼしを物欲しそうに見ているとでも思ったのか「あげないわよ?」と言ってくるが、別に風はにぼしが欲しかった訳ではないので普通にいらないと返すのだった。

 

「あっ、じゃあ私のぼた餅と交換しましょ?」

 

するとどこからかタッパーに入れたぼた餅を東郷が取り出し、それを見た春木は東郷の持って来たぼた餅を見た瞬間「マジで!?」と目を輝かせる。

 

「さっき家庭科室の授業で作ってきたんですよ?」

 

どうやらこのぼた餅は家庭科の授業の一環として東郷が持って来たもののようで友奈は「東郷さんはお菓子作りの天才なんだよ!」とまるで自分のことのように自慢げに夏凜に話す。

 

「いかがですか?」

「い、いらないわよ!」

 

東郷は自分の作って来たぼたもちを夏凜に勧めるが、彼女はそれを断り、春木は「えー? 勿体ない」と残念そうな顔を浮かべる。

 

「東郷の作るお菓子ってマジで美味しいのに。 将来良いお嫁さんになりそうだよな、東郷って・・・・・・」

「そんな・・・・・・先輩のお嫁さんなんて照れちゃいますよ・・・・・・」

 

春木の「良いお嫁さん」発言に東郷は右手で頬を押さえながら嬉しそうに、尚且つ照れ臭そうに顔を赤らめ、そんな東郷を見てキョトンッと目を丸くする春木。

 

「東郷、別に俺のお嫁さんになって欲しいって言った訳じゃないんだけど・・・・・・」

「ふふ、ほんの冗談ですよ、先輩♪ あまりにも嬉しいことを言ってくれるものだから・・・・・・」

「っていうかイチャついてんじゃないわよそこの2人!!」

(あと、多分だけど東郷先輩の半分以上本心入ってるよね。 誤魔化しただけだよね)

 

夏凜からのツッコミが入り、先ほどの東郷の冗談は冗談ではなく、割と本気で言ってそうだと思う樹だった。

 

その後、いい加減話を推し進める為に部室の黒板に情報を少しでも分かりやすく整理するため、バーテックスの襲来周期を書き、その隣に「平均約二十日に一体(のはず)」という文字を風が書き上げる。

 

次に1体目襲来! 3体一気に襲来! と風が書き上げると、次にまた夏凜が5体目襲来!(安心しろ、バーテックスは私が倒した)という文字を書き上げ、最後に「あと7体!!」と文字を書くと、夏凜はチョークを置いて椅子に座りながらぼた餅を食べる一同の方へと顔を向ける。

 

「良い? バーテックスの出現は周期的なものと考えられていたけど、相当に乱れてる。 これは異常事態よ! それに帳尻を合わせるため、今後は相当な混戦が予想されるわ」

 

夏凜の説明を受け、自分が初陣した時バーテックスが3体もいたことから、「確かに」と納得する東郷。

 

「一ヶ月前も複数体出現したりしましたしね」

「私ならどんな自体にでも対処できるけど、あなた達は気をつけなさい? 命を落とすわよ!」

 

そこからさらに夏凜は勇者システムについての説明を行い、彼女が言うには戦闘経験値を溜めることで勇者はレベルが上がり、より強くなるシステム、「満開」なるものが存在するのだと友奈達に説明する。

 

「そうだったんだ~」

 

夏凜の話を聞いて友奈は「そんなのあるんだ」と驚いたようだったが、それは勇者アプリの説明に書いてあることだと東郷に教えられ、友奈は「そうなんだ!」と又もや驚きの声をあげる。

 

それに呆れる夏凜だが、取りあえず今は話を続けることに。

 

「満開を繰り返すことによってより強力になる! これが大赦の勇者システム!」

「へぇ~、すごーい」

 

友奈はメモ帳に今教えられたことを書き込み、東郷は夏凜に「三好さんは満開経験済みなんですか?」と尋ねるが彼女は気まずそうにそっぽを向きながらも応える。

 

「いや、まだ・・・・・・」

「なぁ~んだ! アンタもレベル1なんじゃあたし達と変わりないじゃない!」

「あれだけ大口叩いてたのに」

 

結局自分も友奈達と同じレベル1からのスタートなんじゃないかと風や良に指摘される夏凜。

 

「基礎戦闘力が桁違いに違うわよ! 一緒にしないで貰える!?」

 

しかし、夏凜はそもそもが違うと反論し、実際、昨日の戦いを思い返せば不意打ちとは言えバーテックスと怪獣に先制攻撃を喰らわせてダメージを与え、たった1人で怪獣を殲滅したことからも明らかに友奈達4人よりも基本的な戦闘力がズバ抜けているのが確かなのは間違いないだろう。

 

「そこはあたし達の努力次第ってことね?」

「じゃあじゃあ! これからは身体を鍛える為に朝練しましょうか! 運動部みたいに!」

 

そこで友奈が身体を鍛え、今よりも少しでも強くなるために朝練をしようかと提案し、それには樹や良も同意するように頷く。

 

「樹、アンタは絶対朝起きられないでしょ?」

「「アハハハ!」」

 

風からの指摘を受けて友奈と良は思わず笑ってしまうが・・・・・・。

 

「人のこと笑えるのかお前等~?」

「友奈ちゃんと良くんも起きられないでしょ?」

 

と今度は春木と東郷に全く人のこと笑えないだろと指摘され、「うっ」と苦笑する友奈と良。

 

そんな一同のあまりの緊張感の無いやり取りを見て「はぁ」と溜め息を吐き、ますます友奈達が勇者に選ばれた理由が分からなくなる夏凜だった。

 

「なんでこんな連中が神樹様の勇者に・・・・・・」

「成せば大抵なんとなる!」

 

すると不意に友奈が勇者部五箇条の1つを言うと、夏凜は首を傾げながら「何それ?」と尋ね、友奈は部室に張られた勇者部五箇条が書かれた紙を指差す。

 

「勇者部五箇条! 大丈夫だよ! みんなで力を合わせれば大抵なんとかなるよ!」

「なるべくとか、なんとかとか、アンタ達らしい見通しの甘いふわっとしたスローガンね。 全くもう、私の中で諦めがついたわ」

 

相変わらず友奈達に呆れた様子を見せる夏凜だが、もう自分がどうこう言っても友奈達は今まで通りのこの調子で過ごしそうなので、その辺のことをとやかく言うのをやめることにするのだった。

 

「いやぁ、あたし等はその~、現場主義なのよ!」

「本番に強いんだ。 俺達は!」

 

風は自分達は現場主義、良は本番に強いと主張するが、明らかに今思いついたもの感が凄く、夏凜からもそのことについてツッコミが入る。

 

「アンタ等それ今思いついたでしょ?」

「はいはい、考えすぎるとハゲるハゲる」

「ハゲる訳ないでしょ!?」

 

夏凜は自分の頭を抑えながらハゲる訳ないと風に言い返し、そんな2人のやり取りに苦笑する春木。

 

そんな時、春木は1つ気になったことがあり、それは夏凜なら何か知っているのではと思いあることを尋ねる。

 

「あっ、そうだ。 そう言えば夏凜はどうして樹海にも怪獣が現れるのかって理由知ってる?」

 

春木が気になったこと、それは自分達がバーテックスの話ばかりしていて全く話題になっていなかった怪獣のことであり、その怪獣達・・・・・・主に樹海の怪獣達について夏凜ならばもしや何か知っているのではないかと思い、春木は手を挙げて夏凜に怪獣のことについて尋ねてみたのだ。

 

「あぁ、それなら・・・・・・大赦務めの巫女が受け取った神託や、大赦の調べである程度は知ってるわ」

「マジか!」

 

夏凜が言うには今日はそれについても話すために勇者部に訪れたそうで彼女は大赦から聞いた樹海に現れた怪獣達のことについて先ずは春木達に教えて行く。

 

「なぜ怪獣が何時もバーテックスと一緒に樹海で現れるのか、まだ少し分からないところはある。 でも1つだけ分かっていることはあるわ。 樹海に現れる怪獣達は・・・・・・恐らくバーテックスが別の宇宙から連れて来た怪獣よ」

「「「「別の宇宙?」」」」

 

夏凜曰く、大赦に勤めている巫女が受け取った神樹からの神託・・・・・・。

 

それには樹海に現れた怪獣達がどこから現れたのかがあったそうで、怪獣達は何時もバーテックスに別の宇宙から連れて来られた存在なのだという。

 

しかし、それを聞いても夏凜の言う「別の宇宙」という中々聞き慣れない言葉を受けて首を傾げる春木、風、友奈、樹の4人。

 

最も良や東郷は夏凜の言う「別の宇宙」というのが何を指しているのか分かったらしく、特に良はどこか興奮気味に興味津々でズイッと夏凜に詰め寄って話しに食いついて来てそんな良に彼女も戸惑う。

 

「べ、別の宇宙ってまさか!! 平行世界ってことか!!?」

「平行世界ってなに?」

「ググれ脳筋!!」

 

春木が平行世界ってなんだと尋ねるが、説明が面倒くさかった良は自分で調べろと言葉を返し、言われた通り春木は不満げな顔を浮かべつつもスマホを取り出して言われた通り検索をかけてググる。

 

「その話が本当なら、平行世界は実在するということか! いや、神様が言ってる訳だから本当の話か! おおお、凄い!! 夢が広がる!!」

「ま、まぁ・・・・・・そういうことね。 ちなみにその際、これまで現れた怪獣達の名前も判明していたりするわ」

 

そう言うと夏凜はこれまで樹海に現れた怪獣達の名前を挙げていき、最初に現れたのがツインテール、リトマルスで次にガドン、そして昨日現れたのがマグラーだと友奈達に教えて行く。

 

また現実の世界で現れた怪獣達についても神樹が教えてくれたようで春木と良が初めて戦った怪獣がグルジオボーン、次に現実世界と樹海で戦った銀色の怪獣がガルバラード、最後にアイゼンテックの時に戦った怪獣がガーゴルゴンという名前であることを夏凜は春木達に教えるのだった。

 

「ついでに言っておくと、グルジオボーン、ガルバラード、ガーゴルゴンはこの世界に元からいた怪獣だそうよ」

「そいつ等はバーテックスとは特に関係のない怪獣達ってことか・・・・・・」

 

また夏凜が言うにはバーテックスと一緒に怪獣がやってくるのは神樹でも予想できなかったイレギュラーな事態だったようで最近になって改めて神樹からの神託で怪獣達もバーテックスを全て倒せば打ち止めにななり、バーテックスを全部倒したのに怪獣だけ現れ続ける・・・・・・。

 

なんて事態にだけはならないとのことだった。

 

「あー、そりゃ良かったわ。 ずっと気になってたのよねー。 これバーテックス全部倒しても怪獣は現れ続けるんじゃないかって不安だったのよ」

「でも、現実世界に現れる怪獣はバーテックスとは関係のない怪獣達なんだよね・・・・・・」

 

そう、樹の言う通り樹海に現れる怪獣達には限りがあるのかもしれないが、現実世界では怪獣達に限りがあるのかは全く分からない。

 

以前にも少しだけ友奈達は考えたことがあるのだが、バーテックスを全て撃退したら友奈達の御役目は終わり、勇者の力を失う可能性はある。

 

そうなった時、戦えるのは春木と良だけになってしまう。

 

それに友奈達は自分達がいなくても大丈夫だろうかという心配げな視線を春木と良に向けるが・・・・・・春木も良も「気にしなくて良い」と友奈達に言って来たのだ。

 

「大丈夫大丈夫! 成せば大抵なんとかなる! だろ?」

「でも・・・・・・」

「まぁ、でも念のためにあたしからも一応大赦に勇者の力を預けたままにしてくれって頼んでおくわ」

「私からも連絡しておくわ。 アンタ等2人とも戦い方がなってなくて不安で仕方がないもの。 有り難く思いなさい!」

 

そんな春木と良の2人を心配して、風や夏凜は一応大赦の方に御役目が終わっても勇者の力を持ったままでいさせてくれとかけ合ってみるとのことだった。

 

「別に俺達のことは気にしないで風先輩達は日常に戻ってくれてもいいんですけど」

「そういう訳にはいかないわよ。 自分達だけ何もしてない感凄くなりそうだし」

 

という理由で風は良の言葉を一蹴。

 

無論風は他のみんなに怪獣退治を強制するつもりはないのだが、全員降りるつもりはないようだった。

 

「ハァ、友奈達って結構頑固だよな。 まぁ、取りあえず樹海にどうして怪獣が現れるのかは分かったが・・・・・・現実世界に現れた怪獣達はなぜ現れたんだろうな」

 

一応、夏凜が説明してくれたおかげでなぜ樹海に怪獣が現れたのかは分かった。

 

だが、現実世界に現れた怪獣達、彼等が現れた理由は未だに分からず、その辺りのことは今のところ何も分からない状態だった。

 

「怪獣達が現れた理由なんてあるの? 怪獣って普通なんの前触れもなくどかーんっと出て来るイメージしかないんだけど」

 

そこで友奈が怪獣が現れるのに理由なんてあるのかと疑問を口にしてくるが、良としては怪獣が現れたのには何か理由があるように思えたのだ。

 

「俺、最近たまに思うんですよ、友奈さん。 テレビの中だけの存在だと思われていた怪獣が実際に現れるようになったのは、人間が怪獣の出現を望んだからじゃないかって。 人は怪物を想像しないでいられない、人はそれに強く憧れてきた。 だからいつの間にか怪獣は単に作り物の存在じゃなく、俺達の想像の中で現実化していったって・・・・・・」

「つまり、誰かが怪獣を呼び出してるってこと?」

 

良の話を聞いていた友奈は頭を抱えて「う~ん?」と唸りながらもつまり良が言いたいのは「怪獣は誰かが呼び出してるのかもしれない」ということなのだろうかと尋ねるが、良は「そういう訳ではないんですけど・・・・・・」とだけ応える。

 

「なんて言えば良いのか、誰かが怪獣を呼び出したとかではなく、もっと掻い摘んで言うと俺達人間が無意識の内に怪獣を生み出してしまったのかもしれないってことですね」

「えっ、そうなの!?」

「いや、ただの予想ですけどね。 ハッキリとしたことはまだ分かりませんよ、そりゃ」

 

良はこれはあくまでただの予想に過ぎず、未だに怪獣が現実世界に出現してくる理由は謎のままだと言うが、それでもここまで怪獣が出現した理由を想像できるのは流石は良だと春木や友奈は感心する。

 

「ハイハイ、怪獣がどうして現れるのか、それを考えていくのも悪くないけど時間も無いし、そろそろ難しい話はおしまいにして次の議題に行きましょ!」

 

怪獣が現れる理由を探していくのもそれはそれで楽しそうだが、時間も押しているからと風は議題を変え、ここからは勇者部としての活動を開始することに。

 

そこで樹は風の指示を受けて鞄から「子ども会のお手伝いのしおり」と書かれた紙を取り出し、一同へと配る。

 

「という訳で今週末は子ども会のレクリエーションをお手伝いします!」

「具体的には?」

「えーっと、折紙の折り方を教えてあげたり、一緒に絵を書いたり、やることは沢山あります!」

 

樹は今週末に行う予定の子ども会のレクリエーションについての説明を一同へと行い、それを受けて友奈は「わー! 楽しそう!」と今からワクワクした様子を見せる。

 

「夏凜にはそうねぇ? 暴れ足りない子のドッジボールの的になって貰おうかしら? 春木と一緒に」

「はぁ!?」

「俺も的かよ!?」

 

夏凜と春木は風の言葉に驚きの声をあげ、春木は渋々「まぁ、別に良いけど・・・・・・」と承諾するが、夏凜の方は「なんで私まで!」という感じでそもそもなんで自分も参加していることになっているのかと意義を唱える。

 

すると風は夏凜に昨日彼女が提出した入部届けの紙を彼女に見せつけてきた。

 

「昨日、入部したでしょ?」

「け、形式上・・・・・・」

「ここにいる以上部の方針に従って貰いますからね~?」

「そ、それも形式上でしょ!?」

 

確かに昨日、部活の入部の申請書を書き、職員室へと提出した。

 

しかし、夏凜としてはほぼほぼ不本意な形で勇者部に入部したので自分が子ども会に参加することに納得することが出来なかったのだ。

 

「それに、私のスケジュールを勝手に決めないで!」

「夏凜ちゃん日曜日用事あるの?」

「ニチアサ観たいとか?」

「あっ、それは確かに大事な用事だね!」

 

そこで友奈が夏凜に日曜は何か用事があるのかと尋ね、春木はそれがニチアサを観たいのではないかと予想。

 

そしてその予想に友奈はそれなら確かに大事な用事だと納得されるが・・・・・・。

 

「いや、別にニチアサ観たいとかじゃないから! そもそもあたし観てないし! そうじゃなくて! なんであたしが子供の相手なんかしないといけないのかって話で・・・・・・」

「えっ? いや?」

 

夏凜は自分がどうして子供の相手なんてしないといけないのか、そのことについて文句を言おうとしたのだが、友奈が今にも泣きそうな声で「いや?」なんて聞いてくるものだから、夏凜は「うっ」と罪悪感にに苛まれてしまい、仕方なく子ども会に参加することを承諾してしまうのだった。

 

「うぅ、分かったわ。 日曜日ね。 丁度その日だけ開いてるわ」

「良かった~!」

 

夏凜が参加してくれる意志を見せたことで、はしゃぐように喜ぶ友奈達。

 

そんな彼女等を見て夏凜はボソッと「緊張感のない奴等」と呟くのだった。

 

「・・・・・・んっ?」

 

その時、夏凜は窓の方に何か視線を感じ、そちらの方を見るのだが・・・・・・。

 

窓の外には特に何かいる様子はなく、彼女は不思議そうに首を傾げるのだった。

 

「あれ、おかしいわね。 確かに視線を感じたんだけど・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ~、危なかった。 危うく気付かれるところでした』

 

夏凜が感じた視線・・・・・・それは気のせいなどではなかった。

 

そこには愛染 アキラのドローン型の秘書AI、「ダーリン」が飛行しながら実は先ほどからずっと勇者部の様子をこっそりと伺っていたのだ。

 

そのため、夏凜の感じた視線は気のせいなどではなく、ダーリンは夏凜がこちらを向いた瞬間咄嗟に木の影に隠れた為、夏凜はその存在に気付けなかった。

 

またダーリンはリアルタイムで勇者部の部室での様子を撮影しながらその光景をアイゼンテックの社長室にいるアキラの持つノートパソコンに送っており、勇者部での春木達のやり取りを見てどこか不服そうな顔を浮かべていた。

 

っていうかこれ盗撮では・・・・・・。

 

「盗撮ではない!! 監視だ!! あの未熟なウルトラマン2人がしっかりとウルトラマンとしてやれているかどうか監視するためのな!! しかし全く、何時までもグダグダグダグダと!! 下らない会話ばかり繰り広げおって! 少しはウルトラマンとしての自覚を持たんかい!!」

 

アキラは画面越しに春木と良を指差しながら2人はウルトラマンとしての自覚が足りなさすぎると怒り、次にダーリンに夏凜の姿を映させると、アキラは腕を組み、「ふむ」と何か考え込む仕草を見せる。

 

「勇者部に来た新しい勇者か・・・・・・。 見たところ素直じゃなさそうな感じ・・・・・・。 『彼女達』で例えるなら誰のポジションが良いと思うダーリン!?」

『いや、私に聞かれても知りませんけど・・・・・・』

「『彼女達』と『彼』についての素晴らしさをあれだけ教えただろう!? いや、まぁそれは今は良い。 兎に角、あの兄弟はウルトラマンとしての自覚が足りなさすぎる! それを少しでも理解させる為にも・・・・・・」

 

アキラはそう言うとアイゼンテックの屋上へと出ると彼はどこからかルーブジャイロと酷似したアイテム、「AZジャイロ」と「牛」と書かれたクリスタルを取り出す。

 

「奴等は怪獣が何故現れるのかという話をしていたな。 ならばこいつの出番だ!」

『ゲロンガ!』

 

アキラはクリスタルをジャイロにセットし、3回トリガーを引くとそれを空に向けてかざす。

 

「せぇーの! ファイトだよ!! ゲロンガ!!」

 

するとジャイロからビルの外に向かって紫の光が放たれ、光は大柄な体格の怪獣、「牛鬼怪獣 ゲロンガ」となって街に出現し、地上に降り立ったのだ。

 

「ギイイアアアアア!!!!」

「わー!! 怪獣だぁ!!?」

「逃げろぉ!!」

 

ゲロンガの出現に人々は怯え、逃げだし、ゲロンガは雄叫びをあげながら太く長い尻尾を振るってビルを破壊し、さらに口から吐き出す火炎によって街を焼いてく。

 

「ギイイアアアアア!!!!」

 

それと同じ頃、そのように暴れるゲロンガの出現は勇者部の部室の窓からも遠目ながら確認することができ、春木と良はお互いに顔を見合わせる。

 

「また現実世界に怪獣が現れたか・・・・・・!」

「みんな! 行ってくる!」

「分かったわ。 あたし等も後からアンタ達の援護に向かう」

 

風の言葉に春木は頷くと、春木と良はルーブジャイロを同時に取り出す。

 

「「オレ色に染め上げろ!! ルーブ!!」」

 

最初に春木が空中に浮かんだホルダーを手に取り、そこから「ウルトラマンタロウ」の絵が描かれた火のクリスタルを取り出す。

 

「セレクト!! クリスタル!!」

 

タロウクリスタルの角を2つ立ててルーブジャイロの中央に春木はセット。

 

『ウルトラマンタロウ!』

「纏うは火!! 紅蓮の炎!!」

 

最後に春木はルーブジャイロのトリガーを3回引いて右腕を掲げる。

 

「はあああ、はあ!!」

『ウルトラマンロッソ! フレイム!!』

 

春木は炎に包まれ、赤い巨人「ウルトラマンロッソ フレイム」へと変身。

 

「セレクト!! クリスタル!!」

 

続けて今度は良がホルダーから「ウルトラマンギンガ」の描かれた水のクリスタルを取り出し、それをルーブジャイロにセットさせる。

 

『ウルトラマンギンガ!』

「纏うは水!! 紺碧の海!!」

 

また春木と同様に良もルーブクリスタルのトリガーを3回引き、彼は左腕を掲げる。

 

「はあああ、はあ!!」

『ウルトラマンブル! アクア!』

 

良は水に飲み込まれ、青い巨人「ウルトラマンブル アクア」へと変身を完了させるのだった。

 

 

 

 

 

 

『『タアアア!!!!』』

 

変身を完了し、ゲロンガの前に現れると同時にロッソとブルが同時に放った跳び蹴りがゲロンガに叩きこまれ、それによってゲロンガは吹っ飛び倒れ込む。

 

「ギイイイアアア!!!!?」

『おっしゃああ!! 気合いと根性で今回も勝つぞ!! 良!!』

『だから五月蠅いって・・・・・・。 だが、負けるつもりが無いのは俺も同じだよ、兄貴!』

 

ロッソとブルはファイティングポーズを構えながら再び起き上がったゲロンガに向かって走って行き、同時に起き上がったゲロンガもロッソとブルに向かって勢いをつけた突進を繰り出す。

 

ゲロンガの突進攻撃はそのままロッソとブルの2人を同時に弾き飛ばし、吹き飛ばされた2人は地面に叩きつけられてしまう。

 

『『グアアア!!?』』

「ギイイイアアアアア!!!!」

 

さらにゲロンガは勢いをなるべく殺さないようにしつつ旋回し、先ずは倒れ込んだロッソに向かって再び突進を繰り出すが・・・・・・。

 

『アクアジェットブラスト!!』

 

俯せに倒れながらも掌から水流を発射する「アクアジェットブラスト」をブルがゲロンガの顔目がけて放ち、それの直撃を受け、怯んだところを狙って起き上がったロッソの跳び蹴りがゲロンガに放たれるが、ゲロンガはロッソの足を掴んで受け止め、地面に叩き落とす。

 

『ガア!!?』

 

そこからゲロンガはその巨大な口を開けてロッソの肩に噛みつこうとするが、そこへ駆けつけて来たブルの拳がゲロンガの顔面に直撃し、ゲロンガを後退させて引き離すことに成功する。

 

『大丈夫か? 兄貴?』

『あぁ、助かった』

 

ブルはロッソに手を差し伸べ、ロッソはその手を掴んで立ち上がると2人は頭部の角に手を添えてそこからそれぞれの専用武器である「ルーブスラッガーロッソ」と「ルーブスラッガーブル」を取り出す。

 

『ルーブスラッガーロッソ!!』

『ルーブスラッガーブル!!』

 

ロッソとブルはルーブスラッガーを構えながらゲロンガに向かって駈け出し、対するゲロンガは口から火炎を吐き出して攻撃を繰り出してくる。

 

だが、それをブルが前に出てスラッガーブルを縦一閃に振るうとゲロンガの放った火炎を真っ二つに切り裂かれ、ブルの肩を踏み台に高くジャンプしたロッソは一気にゲロンガに詰めより、2本のスラッガーロッソをゲロンガに振るって身体を斬りつける。

 

『シェアアアア!!!!』

「ギイイアアアアア!!!!?」

 

さらに追撃しようとロッソはスラッガーロッソで再びゲロンガを斬りつけようとするが、ゲロンガは屈むことで攻撃を回避し、そこから尻尾を振るってロッソを叩きつけ、ブルのいるところまで吹き飛ばす。

 

『オアアア!!?』

『おっと!』

 

ブルはなんとか吹き飛んできたロッソを受け止めるが・・・・・・直後、ゲロンガはこちらに向かって飛びかかり、その巨体を生かした圧しかかり攻撃を繰り出して来たのだ。

 

『『ウワアアアアア!!!!?』』

 

圧しかかり攻撃を受け、ブルが1番真下、ロッソが真ん中、ゲロンガが1番上というサンドイッチのような構図となり、苦しむ2人のウルトラマン。

 

『お、重いぃ・・・・・・!! 背中と腹がくっつきそうだ・・・・・・!!』

『早く退けぇ・・・・・・兄貴ぃ! 俺が1番キツ・・・・・・はぁ、はぁ、息が、息がぁ・・・・・・!!』

 

ロッソは必死にもがきながらゲロンガの腹をバンバン叩くが、サンドイッチ状態にされた為かまるで力が入らず・・・・・・ブルは息が出来なくて今にも窒息死しそうだった。

 

『まず、このままじゃ・・・・・・ホントに潰され・・・・・・!』

 

そんな時、ゲロンガの頭の角に幾つもの銃弾が撃ち込まれ、それによって角の一部が欠けたゲロンガは驚き、思わずその場を飛び退く。

 

『グルアアアア!!!?』

『ゲホゲホッ・・・・・・死ぬかと思った・・・・・・!!』

『はぁ、はぁ、なんて重さだよ。 アイツ・・・・・・! って今の銃撃・・・・・・東郷か!』

 

ロッソは銃弾が飛んできた方向を見るとそこにはロッソの予想通り、ビルの屋上で勇者に変身し、狙撃銃を構えている東郷の姿があり、周りには同じように勇者に変身した友奈、風、樹、夏凜が立っていた。

 

「しっかし、夏凜、アンタも来るなんてなんだか意外だったわ。 アンタのことだから『現実世界の怪獣と戦うのは勇者の御役目に含まれてない』とか言うかと思ったのに」

「別に・・・・・・。 だって幾らなんでも流石にあんなの放っておけないでしょ?」

 

現実世界で怪獣と戦うことは神樹から託された御役目の中には含まれていないため、風はてっきり夏凜は一緒に来ないんじゃないかと思っていたが・・・・・・そこはやはり勇者に選ばれただけはあり、怪獣が暴れるのを黙って見過ごすなんて真似を夏凜は決してすることは出来なかったのだ。

 

「グルルルル・・・・・・!!」

 

またゲロンガは角が欠けながらも唸り声をあげてロッソとブルを睨み付け、またもや2人に対して突進攻撃を仕掛けて来る。

 

『その手は食うか!!』

 

しかし、ゲロンガの攻撃を見切ったロッソとブルはジャンプしてゲロンガの頭上を飛び越えることで攻撃を回避し、後ろに回り込むとインナースペース内の良がクリスタルホルダーから雪のクリスタルを取り出す。

 

『セレクト! クリスタル!』

 

良はそれをルーブジャイロにセット。

 

『雪女郎!』

『纏うは雪!! 凍てつく吹雪!!』

 

続けて良はルーブジャイロのトリガーを3回引き、左腕を掲げる。

 

『はあああ、はあ!!』

『ウルトラマンブル! ユキジョロウ!』

 

すると、ブルの青かった部分は白となり、カラータイマーはそのままであるが、胸部にはX字のような模様の入った「ウルトラマンブル ユキジョロウ」へとブルは姿を変える。

 

戦闘BGM「戦い 優勢」

 

「ギイイイアアアアア!!!!」

 

ゲロンガはロッソとブルに向かって口から火炎を吐き出し、それに対してブルは両手から放つ強力な冷気光線、「ブリザードシュート」を放ち、ゲロンガの炎を相殺。

 

しかし、それに怯まずゲロンガは得意攻撃である突進をロッソとブルに仕掛けるが・・・・・・直後、夏凜と風の放り投げてきた刀と大剣がゲロンガの右の巨大な牙に直撃するとそれがポッキリと折れ、ゲロンガは立ち止まって悲鳴をあげる。

 

「グルアアアアアア!!!!?」

「なんか、凄く痛がってる・・・・・・?」

「そっか、あの怪獣の弱点は牙なんだ!! 春木先輩!! 良くん!! その怪獣の弱点は牙です!!」

 

友奈がゲロンガの悲鳴を聞いてそのことに不思議がると、樹はゲロンガの弱点が牙であるとロッソとブルに教え、2人はそれに頷く。

 

『分かった! 牙だな!!』

『ウルトラマンロッソ! ダイテング!』

 

樹からゲロンガの弱点を教えられ、ロッソとブルは頷くとロッソは姿を「ダイテング」に変え、ルーブスラッガーロッソを再び構えると刀身が僅かに伸びて輝き、スラッガーロッソが強化される。

 

『おぉ、ダイテングのクリスタルを使うと、ルーブスラッガーが強化されるのか!!』

 

切れ味が強化されたスラッガーロッソを手に、ロッソはゲロンガに向かって駈け出すとすれ違いざまにゲロンガの残ったもう片方の牙を切り裂いて破壊。

 

「ギイイアアアアア!!!!!?」

 

それに怒ったゲロンガは口から炎を吐いてロッソに浴びせ、直撃を受けたロッソは身体宙から火花を散らして吹き飛ばされてしまい、ゲロンガは視線をブルの方に移すと突進を繰り出して来たが・・・・・・。

 

牙を両方とも折られて弱体化したせいか、先ほどまでのゲロンガは勢いは無くなっているようで僅かに動きが遅くなっていた。

 

そのため、その突進はブルにあっさりと受け止められ、膝蹴りを受けて怯むゲロンガ。

 

『デヤアアア!!!!』

 

さらにそこからロッソのドロップキックが直撃し、ゲロンガは大きく後退する。

 

『トドメだ!!』

 

ロッソはスラッガーロッソを頭部に仕舞い、光の刀「生大刀」を生成するとそれを構え、刀身にエネルギーをチャージしてから横一閃に敵を切り裂く「一閃緋那汰」をゲロンガに放つ。

 

『一閃緋那汰!!』

『アイスレイン!!』

 

同時にブルも氷柱を幾つか形成するとそれを相手に雨のように降り注がせる「アイスレイン」を放ち、2人の技を受けたゲロンガは火花を散らし、耐えきれずに爆発するのだった。

 

「グウウウ、ギイイアアアアアアア!!!!!?」

 

ゲロンガを倒すと、ロッソとブルは拳を上下にぶつけ合わせた後にハイタッチし、空へと飛び去って行くのだった。

 

「いやー、無事に怪獣を倒せたけど・・・・・・今回私達全然活躍できなかったね」

「ですね・・・・・・」

 

ロッソとブルが飛び去るのを見届け、友奈と樹は折角勇者に変身したのに活躍出来なかったことを嘆くが・・・・・・そこですかさず風がフォローに入る。

 

「なに言ってんのよ! 怪獣の弱点に気付いたのは友奈と樹! しっかりアンタ達も活躍してたわよ!」

「ですね」

 

風の言葉に東郷も笑みを浮かべて同意するのだった。

 

最も、夏凜だけは「まぁまぁね」とだそっぽを向きながら呟いていたが。

 

 

 

 

 

 

 

それから・・・・・・戦いを終えた一同は今日はもう時間もないのでまた後日詳しくレクリエーションの話をすることとなり、各自解散。

 

夏凜は家に帰宅すると、今日のことを振り返りながら大赦への定時連絡を行う。

 

『現勇者達を一から指導。 あまりの頼りなさに今日まで無事だったことが奇跡に思える。 そしてウルトラマンの2人もあれだけの力を持っていながら未熟さが全く拭えない。 ホントになぜ今まで無事だったのか不思議で仕方がない』

 

といった具合の文をメールで夏凜は大赦に送り、メールを送り終えた彼女は何時もの日課であるランニングマシンを使って走る。

 

(こんな非常時にレクリエーションなんて・・・・・・)

 

そんな風に、一通りの運動を終え、買って来たコンビニ弁当を食べ、彼女に取っては何時もやっていることを過ごすが・・・・・・その日、1つだけ何時もやってることと違うことがあった。

 

それは、「おりがみれんしゅうブック」と書かれた折紙セットが机の上に置かれていたこと。

 

彼女は日曜のレクリエーションに向けて折紙の練習をしていたのだ。

 

なんだかんだ言いつつも、やるからにはしっかりとやる夏凜なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日が経ち、レクリエーション当日の日曜日。

 

「来てあげたわよ!」

 

夏凜は勇者部に訪れたのだが、まだ部室には誰もいない。

 

「誰もいないの?」と首を傾げつつ、彼女はスマホの画面の時計を確認すると時刻はまだ「9時45分」。

 

集合時間は朝の10時であるため、まだ15分前なら少し早かっただろうかと思い、その場でジッと待機することに。

 

しかし・・・・・・。

 

10時になったにも関わらず、誰1人として夏凜以外に部室に訪れる者はおらず、それに彼女は「だらしない」と苦言を零す。

 

そこからさらに30分、友奈達が来るのを待っていたのだが・・・・・・一向に部室に誰1人として現れず、「もしかして・・・・・・」と夏凜は風に渡されたレクリエーションの紙を取り出して確認すると紙には「現地集合」と書かれていた。

 

つまり、間違えていたのは夏凜の方だったのである。

 

「現地・・・・・・しまった。 私が間違えた・・・・・・! えっと、電話・・・・・・しておいた方が良いわよね?」

 

一応、お互いに連絡先を交換していたので電話をかけようと思えばかけられるのだが、少し電話をかけることに戸惑う夏凜。

 

そんな時、夏凜の持つスマホから着信音が鳴り、それは友奈からの電話だった。

 

「うわ!? この番号、結城 友奈!? あっちからかかってきた!? えっ、えっと・・・・・・」

 

いきなり電話がかかってきたこともあり、夏凜は思わず間違えて通話ボタンではなくキャンセルボタンを押してしまう。

 

「き、切っちゃった。 か、かけ直した方が良いわよね・・・・・・? こういう時は、なんて言って・・・・・・」

 

夏凜はかけ直すべきだろうと考え、友奈に折り返し電話をしようとするが・・・・・・その時、彼女はふっと動きを止め、「なにをやってるの、私は・・・・・・」と呟くと、友奈に電話をかけようとするのをやめる。

 

「そうよ。 関係ない! 別に部活なんてハナから行きたかった訳じゃないし! そうだ、神樹様に選ばれた勇者が何を呑気に浮かれてるのよ!」

 

どこか言い訳がましいことを1人で言いながら、スマホの電源を切ると部室を後にするのだった。

 

「私は、あんな連中とは違う。 真に選ばれた勇者!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま彼女は集合場所の現地に向かうこともなく、夏凜は一度家に帰ると木刀を2本持って近くの海辺でそれを振るって鍛錬を行う。

 

(アイツ等は所詮試験部隊、私は違う。 私は、世界の未来を背負わされている。 期待されているのよ。 だから・・・・・・普通じゃなくて良いんだ・・・・・・!)

 

それからコンビニ弁当を買いに行き、家のマンションに帰ってランニングマシンで走っていると不意にインターホンが鳴り、彼女は「んっ?」と頭に疑問符を浮かべる。

 

すると、今度はインターホンが連続で鳴り響き、それに「うわぁ!?」と驚きの声をあげる夏凜。

 

「誰よ!!」

『うわああああ!!?』

 

それに何度も何度もピンポンピンポン鳴らしてんじゃないとでも言わんばかりに怒りながら木刀を持って扉を開けるとそこには春木、良、友奈、東郷、風、樹の勇者部のメンバー(あと友奈の頭に乗っかってる牛鬼)+偶然そこで会ったらしいヒナタがおり、春木達は木刀を持って夏凜が現れるものだからそのこに驚いて思わず悲鳴をあげるのだった。

 

「こ、この! 危ないだろうがこのサボり魔!!」

 

良はいきなり木刀持って現れるなんて危ないだろと夏凜に怒り、そんな良を春木は「まぁまぁ」とたしなめる。

 

「あれ? あんた達・・・・・・」

 

夏凜は春木達が家に来たことを不思議に思うが、風はそんな夏凜に構わずスマホの電話に出なかったことに対して文句を言ってくる。

 

「あ、あんたねぇ! 何度も電話したのになんで電源OFFにしてんのよ!?」

「えっ? そ、そんなことより何!?」

「何じゃないわよ、心配になって見に来たの!」

 

風の言葉を受けて、「心配?」と首を傾げる夏凜。

 

「良かった~、寝込んだりしてたんじゃないんだね~」

 

友奈は夏凜の元気そうな姿を見ると安堵したような表情を浮かべ、それに戸惑う夏凜。

 

「全く、休むなら休むと連絡を寄越してくださいよ」

 

良は呆れた視線を夏凜に向けながら休むなら休むと連絡しろと注意し、そこで今度はヒナタが夏凜に敬礼しながら挨拶する。

 

「どうも! あなたが勇者部に新しく入部した夏凜さんですね! 私、春にぃと良にぃの妹、南 ヒナタって言います!! これ、お近づきの印に・・・・・・ハイ、飴ちゃん♪」

 

にっこりと笑顔を浮かべながらヒナタはお近づきの印として飴玉を夏凜に手渡し、夏凜は戸惑いつつもそれを受け取る。

 

「それじゃ、そろそろ上がらせて貰うわよ~」

 

すると今度は風が強引に夏凜の部屋へと入っていき、それに続くように春木達も動揺する夏凜を余所に次々と彼女の部屋へと入り、「なに勝手に上がってんのよ!!」と文句を言うが、春木達を止められず、結局部屋に招き入れることに。

 

「はぁー、殺風景な部屋」

「全然サッパリ女性の部屋って感じしませんね。 でもスッキリしてて良いと思います!」

 

風とヒナタはそれぞれ夏凜の部屋の感想を述べ、それに夏凜は「どうだって良いでしょ!?」と風とヒナタの自分の部屋の感想に文句を言う。

 

「ってかヒナタだっけ? ちょっと言い方失礼じゃない!?」

「アイツちょっと口悪いからな。 気をつけろよ、夏凜」

「だが、そこが割と可愛かったりする」

 

春木はヒナタは毒舌キャラだから気をつけろと警告し、でもそこが可愛いと評する良。

 

それを受けて夏凜は「シスコンか」と冷ややかな視線を良へと送る。

 

「まぁいいや、取りあえず座って座って!」

「な、なに言ってんのよ!?」

 

まるで自分の部屋のように風がみんなに座るように言うと夏凜はなんで風が仕切ってるんだとツッコミを入れるが、すると今度は樹がランニングマシンに興味を持ち、それをさわさわと触る。

 

「これすごーい! プロのスポーツ選手みたい!」

「勝手に触んないでよ!!」

「わー!!」

 

すると今度は友奈が何かに驚いたような声をあげ、声のした方に顔を向けるとそこには冷蔵庫を開けている友奈の姿が。

 

「水しかない」

 

どうやら、冷蔵庫に水しかないことに驚いたようだった。

 

「勝手に開けないで!」

 

すると春木は夏凜が買って来たコンビニ弁当の存在に気付き、少々失礼だとは思いつつもゴミ箱の中をちょっとだけ確認。

 

「あー、夏凜、お前コンビニ弁当ばっかり食ってるのか? 栄養偏るし、身体に悪いんじゃないか?」

「アンタも勝手にゴミ箱の中見るなぁ!!?」

 

そこで風はコンビニで買ってきたお菓子を広げ、テーブルの上に置いていく。

 

「ねっ? やっぱり買って来て良かったでしょ?」

「なんなのよ・・・・・・いきなり来てなんなのよ!!」

 

勝手にずかずかと部屋に上がって来て、ランニングマシンは触るわ、冷蔵庫やゴミ箱の中身を見るわで好き勝手する友奈達を夏凜は怒鳴りあげるが、友奈は「あのね!」と言うと少し大きめの白くて四角い箱をどこからか取り出す。

 

「ハッピーバースデー!! 夏凜ちゃん♪」

 

その箱の蓋を開けると、そこには「お誕生日、おめでとう」と書かれたショートケーキがあり、それに「えっ?」と鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔を浮かべる夏凜。

 

「夏凜ちゃんお誕生日おめでとう!」

「おめでとう」

 

友奈と東郷が夏凜にお祝いの言葉を贈るが、夏凜は「どうして?」とイマイチ何が起こったのか分からないようで風は夏凜から預かっていた入部届けを取り出してそれを夏凜に見せる。

 

そこにはしっかりと自分の名前や住所、そして誕生日が書き込まれていたのだ。

 

だから友奈達は今日が夏凜の誕生日であることを知っていたのである。

 

「アンタ今日誕生日でしょ? ちゃんとここに書いてあるじゃない?」

「友奈ちゃんが見つけたんだよね?」

「えへへ、あっと思っちゃった。 だったら誕生日会しないとって!!」

 

夏凜以外の一同はパーティーグッズ用の三角帽子を被りながら樹が「これなら歓迎会も一緒にできるねって友奈さんが」と夏凜に教え、また東郷言うには本当は子供達と一緒に児童館でやる予定だったらしいことも教えた。

 

「驚かそうと思って黙ってたんだけど・・・・・・」

「でも、あなたが来なかったもんだから予定が狂った。 その辺はちゃんと反省してくださいね」

 

友奈はサプライズで誕生日兼歓迎会を夏凜に子供達と一緒にやるつもりだったことを彼女に伝え、良は来なかった件に関して反省するように注意を促す。

 

「そうそう。 当のアンタが来ないもんね。 焦るじゃないの!」

「家に迎えに行こうとも思ったんだけど・・・・・・子供達も激しく盛り上がっちゃって・・・・・・」

 

また風は夏凜の家に訪れるのに夕暮れ時というこんなにも遅い時間になってしまったのは子供達の相手をしていたからで、風は来るのが遅くなってしまったことを夏凜に謝罪する。

 

「結局この時間まで解放されなかったのよ。 ごめんね」

「・・・・・・」

「んっ? どうした?」

「夏凜ちゃん?」

 

先ほどからずっと黙っている夏凜を見て、彼女の様子がおかしいことに気づき頭に疑問符を浮かべる友奈と風。

 

「あれ? ひょっとして自分の誕生日も忘れてた?」

「この反応はそうだろうなぁ」

 

風は悪戯っ子のような笑みを浮かべながら誕生日を忘れていたのかと指摘し、春木も夏凜の唖然とした姿から反応的にも恐らくはそうなのだろうと感じた。

 

すると・・・・・・今まで黙っていた夏凜が口を開く。

 

「アホ、バカ、ボケ・・・・・・おたんこなす」

「はぁ!? いきなり罵声!?」

 

ようやく口を開いたかと言えば自分達に対しての暴言・・・・・・それに良は怒りそうになるが、春木に肩を掴まれて止められる。

 

「なによそれ!?」

 

ただ誕生日を祝いに来たのにこの言いようはないのではないかと風も文句を言うが・・・・・・。

 

「いやいや、夏凜の顔よく見てみ?」

 

春木は風と良にボソッと耳打ちし、2人はそれに首を傾げつつジッと夏凜の表情を見てみると・・・・・・。

 

「誕生会なんてやったことないからなんて言ったら良いか・・・・・・分かんないのよ・・・・・・」

 

そして良と風は夏凜の顔を集中してジーッと見てみると、彼女の頬は赤く染まっており、それを見て良と風は先ほどの夏凜の発言が照れ隠しだったのを理解した。

 

「なんだ、意外と可愛いところあるんじゃないですか」

「誰が可愛いよ!! うっさいわね!!」

 

良にそう言われ、夏凜は「うるさい」と返すものの、良はそんな夏凜を見てケラケラ笑うのだった。

 

「ってか、アンタまで私のこと祝いに来るのはちょっと意外だったわ」

 

夏凜は良を見ながらてっきり彼は自分のことを嫌っていると思っていたので、彼女は良が来たことを意外だったと呟く。

 

そんな良に夏凜はわざわざ自分の誕生日会兼歓迎会をしてくれるのかという疑問を投げかけ、良はコーラを飲みながらもその問いかけに応える。

 

「俺は夏凜さんと仲良くなれる気がしないと言っただけで、嫌いだとは言ってませんよ。 正直、あの時の援護とか助かりましたし、これからは一緒に戦って行く訳ですから多少お互いに交流しといた方が効率的でしょ、戦いとかで」

「おっ? ちょっと良が夏凜に対してデレたわよ!」

「なんの話してるのかよく分かりませんけど、男のツンデレは吐くほど気持ち悪いですよ、良にぃ」

「デレた訳じゃないです。 あと、誰が気持ち悪いだヒナタ!?」

 

風は良が夏凜に対して少しだけ心を開いたのを感じ、またそんな良を見て男のツンデレは気持ち悪いと評するヒナタ。

 

あれ・・・・・・無爪・・・・・・。

 

「いや、あの人のツンデレは可愛いのでセーフです。 主に良にぃがやると気持ち悪いってだけですよ。 あっ、でも吐くほどなのは良にぃだけかも」

「オイ!!」

 

良に対して毒舌全開のヒナタ。

 

またその時、友奈が夏凜の部屋のカレンダーを見て今日の日付に丸をつけていることに気づき、彼女は視線を夏凜に向けると、改めて祝いの言葉を贈るのだった。

 

「お誕生日おめでとう、夏凜ちゃん」

「っ~!」

 

それに夏凜は顔を真っ赤にし、その後はみんなでジュースで乾杯して誕生会を開始。

 

ちなみに牛鬼はヒナタがいるためテーブルの下に隠れてお菓子などを食べている。

 

「アハハハ!! 飲め飲め!」

「コーラで酔っ払うんじゃないわよ!」

 

コーラ飲んで酔っ払いみたいにする風にすかさずツッコミを入れる夏凜。

 

「こういうのは気分よ気分! 楽しんじゃえるのが女子力じゃない?」

「むしろ今のはおっさん臭かったから女子力低下してね?」

 

風はこういうノリの良さこそ女子力ってものだと夏凜に説明するが、むしろおっさんに見えるということで春木は逆に女子力下がっているのではないかと呟き、それを聞いた風は「あぁん?」と春木のことを睨み付ける。

 

「だぁれがおっさんよ!! まだまだ若い、ピチピチの中学生に向かって!!」

「その言い方もおっさん臭いぞ風!?」

「あっ、折紙! 練習してたんですか!?」

 

そんな時、樹はテレビの下の台の中に夏凜が折ったと思われる鶴の折紙があることに気づき、それを見た東郷も「凄い上手!」と彼女のことを褒めるが、それを受けた夏凜は慌ててテレビの前に素早く移動し、折紙を顔を真っ赤にして必死に隠す。

 

「だぁーーーー!!!!? みみみ、見るなぁ!!? ってん?」

「えっと、勇者部の予定と私達の遊びの予定♪」

 

すると夏凜はいつの間にか自分の部屋のカレンダーに友奈が勝手に日付に赤丸をつけながら予定を立てていることに気付き、すかさず夏凜は当然ながら「勝手に書き込まないで!!」と怒鳴りあげる。

 

「勇者部は土日に色々活動があるんだよ?」

「忙しくなるわよ!」

 

しかし、友奈や風にほぼ強引に予定を立てられ、夏凜はそれに対して抗議する。

 

「勝手に忙しくするな!!」

「そうだよ忙しいよ! 文化祭の演劇の練習とかもあるし!」

「えっ?」

「えっ?」

「演劇?」

 

友奈の演劇発言に樹や東郷、春木、良は頭に疑問符を浮かべ、春木達は以前文化祭について話した時のことを思い返す。

 

すると確かに以前の話し合いで一同は文化祭で勇者部は何をやるか考えてくることになってはいたが・・・・・・。

 

文化祭で演劇をやるなんて話、そもそも話題にすら出ておらず、樹は「何時決まったんですか?」と尋ね、「アレレ?」と友奈は頭を抱えて困惑した表情を浮かべる。

 

「もしかして私の中の勝手なアイディアを口走っちゃっただけかも・・・・・・」

「バカなの?」

 

どうやら演劇というのは友奈のただの記憶違いなだけだったようでそんな友奈を見てクスリと笑みを浮かべる良。

 

「今の困惑顔の友奈さん、可愛かったですよね」

「そうね、天使よね」

 

良はそのままボソッと小さな声で東郷に耳打ちすると、彼女もそれに同意するように頷き、ついでに今の姿をこっそりと誰にも気付かれないようにスマホの写真で撮影して隠し盗り。

 

この作品盗撮魔ばっか!!

 

「いいねぇ、演劇」

『えっ?』

 

そんな時、風が友奈の口走った演劇のアイディアを気に入ったようで、なんとそれを採用してしまったのだ。

 

「決まり! 今年の文化祭の出し物は演劇でいきましょ!」

「っていうか、私を話に巻き込まないでよ!?」

 

勝手に自分も話に巻き込もうとするなと訴える夏凜だが、風はそれを軽く流し、どうせ暇なのだろうと返される。

 

「良いじゃん、暇だったんでしょ?」

 

しかもやたらイケボな声で。

 

「やだ、この人イケボ」

 

そして風ってそんな声出せたのかと感心する春木だった。

 

「っ、忙しいわよ! トレーニングとか!!」

「1人で? 暗ッ!!」

「もうちょっと華やかな日常送りましょうよ、だから部屋が殺風景なんですよ夏凜さん!!」

「う、うるさい!! ってかヒナタ、私の部屋が殺風景なの関係ないでしょ!?」

 

そのまま主に風と夏凜の2人は口論に発展するが、その口論は微笑ましい内容なものだった為、特に誰か止める訳でもなく・・・・・・。

 

「良かったね、友奈ちゃん」

「うん」

 

そして、僅かかもしれないが、夏凜と仲良くなれたことを感じた友奈は東郷の言葉に頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、春木達は帰宅し、彼等が出したゴミをゴミ捨て場に置きに行って部屋に戻ると、スマホに「NARUKOに招待します」という件名が書かれたメッセージが届いていた。

 

「あれ?」

 

送られてきたメールの内容は、勇者部全員が登録しているSNSアプリのリンクであり、彼女は寝間切りに着替えてベッドに入りつつ、取りあえずNARUKOのページを開くとそこには風からのメッセージがあった。

 

『アンタも登録しておいてね。 今日みたいに連絡の行き違いがないように』

『これから仲良くしてくださいね。 よろしくお願いします』

『次こそはぼた餅食べてくださいね。 有無は言わせない』

 

風に続くように東郷と樹がメッセージを送り、それを見て夏凜は「ぼた餅って・・・・・・」とどれだけ東郷は自分にぼた餅食べさせたいのかと考える。

 

『ハッピーバースデー、夏凜ちゃん! 学校のことや部活のことで分からないことがあったらなんでも聞いて!』

『まぁ、とりまよろしく・・・・・・です』

『今度時間空いてる時で良いから俺や良にたまに稽古つけてくれよな!』

 

次に友奈、良、春木からメッセージが送られ、夏凜は溜め息を吐きつつも「了解」と返信する。

 

『わー返事が返ってきた』

『ふふふ、レスポンスいいじゃない』

『わーーい』

『わーーい』

『ぼた餅』

『気合い』

 

すると、こんな感じで友奈、風、また友奈、樹、東郷、春木という順で返信が返って来ると、夏凜はそれに戸惑いつつ照れ隠しをするかのように「うっさい!!」とメッセージを送るのだった。

 

『ぶはははは』

『ぼた餅』

『気合い』

『アンタ等さっきからなんなんだ・・・・・・』

 

今度は風、東郷、春木からの返事が来て良は先ほどから謎のぼた餅と気合い推しの東郷と春木にツッコミを入れるのだった。

 

「なんなのよ、もう・・・・・・んっ?」

 

そして最後に・・・・・・。

 

『これから全部が楽しくなるよ!』

 

という友奈のメッセージが届くと、それと同時に今日の誕生日会で盗った写真が送られて来るのだった。

 

「全部が楽しくなる・・・・・・か。 世界を救う勇者だって言ってるのに・・・・・・。 バカね」

 

言葉こそ友奈達に呆れたような発言ではあったものの・・・・・・その時の夏凜の表情はどこか満足そうに、笑っていたのだった。

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