結城友奈は勇者である R/Bの章   作:ベンジャー

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第8話 『1つの戦いが終わり』

大赦が管理する病院にて。

 

そこでは先日のバーテックスやデーモンギラレスの戦いで傷を負った勇者達と春木、良の怪我の治療が行われており、風と夏凜、春木、良の4人は現在は病院の共用スペースに設置されたテレビのニュースを観ているところだった。

 

『昨日起こった、工事中の高架道路が落下した事故に関する続報です』

「これって・・・・・・多分、いやきっとこの前の樹海での戦いでの影響・・・・・・だろうな」

「このニュースを観た感じ、人的な被害は無かったようで良かった。 あれはかなりギリギリの戦いだったからな・・・・・・。 現実世界における怪獣の脅威はまだ完全に拭いされていないけど、これで少しは肩の荷が降りる・・・・・・」

 

ニュースを観ながら春木は先日の戦いで起こった樹海での戦いでの影響によって工事中の建物が崩壊こそしたものの、人的被害自体は無かったことにほっと安堵し、良の方もまだ現実世界における怪獣の問題は何も片づいてはいないものの、一先ずはこれでバーテックスや樹海に現れる怪獣は全て倒したことになるので、少しは気が楽になったと楽観的なことを呟く。

 

「おいおい、俺達はまだ気ぃ抜けねえぞ! しばらく友奈達は変身出来ないかもしれないんだ! だから怪獣が現れたらその時は俺達だけで戦い抜かないといけないかもしれないんだ、まだまだ肩の荷なんて降りねえんだからしっかりと気合い入れろ!!」

 

現在友奈、東郷、風、樹、夏凜の5人が所持していた勇者アプリの入ったスマホはメンテナンスの為に大赦が一旦預かることとなっており、そのスマホも何時帰って来るのか、怪獣が何時出現するかも分からない以上、まだまだ気を抜くことなんて出来ないと春木は言い放ち、そんな楽観的なことを言う良に対して春木は彼の背中を強くバンッと叩くとそれに良は「いっ!!?」と声をあげながらジッと自分の背中を叩いてきた春木を睨み付けた。

 

「アンタ等もアタシ達と同じぐらいボロボロの癖に、相変わらず元気ねぇ・・・・・・」

 

そんな南兄弟の何時も通りなやり取りを風は見つめながら、彼女は思わず苦笑してしまうのだった。

 

すると、そこへ診察を終えた友奈が共有スペースにやってくると良は「友奈さん!!」と彼女の名を呼びながら座っていた椅子から立ち上がって駆け寄ると、彼は友奈に対してどこも身体に異常なところは無かったかと心配げな様子を見せる。

 

「良くん! うん、平気だよ! 強いて言うならバッチリ血を抜かれたってだけ・・・・・・って、風先輩その目は!?」

 

そこで友奈は風が左目に眼帯をしていることに気づき、一体その目はどうしたのだろうかと疑問に思うと、風は「ふっふっふ」と不敵な笑い声をあげながら椅子から立ち上がるとバシッとかっこ良さげなポーズを友奈に見せつけるように唐突に決める。

 

「この目が気になるか? これは先の暗黒戦争で戦った際・・・・・・「左目の視力が落ちてるんだって」」

 

ポーズを決めながら厨二病全開な説明をし出そうとする風の言葉を遮りながら、夏凜はただ単に左目の視力が落ちてしまっているだけだと彼女は友奈に説明し、そして言葉を夏凜に遮られた風は折角ノリノリで喋っていたのにと彼女は夏凜にクレームを入れるのだった。

 

「ちょっとちょっと~! 折角魔王との戦いで名誉の傷を負ったニヒルな勇者って設定で語ってるのに~!!」

「ってかそれただの厨二病でしょ。 イタタタ」

「可哀想に・・・・・・前々からその節はあるような気はしてたけど」

 

そんな厨二な設定の解説を入れる風に、春木と良の2人はヒソヒソと「うわぁ」とでも言いたげな会話を繰り広げるのだが、風の耳には思いっきり2人の会話が聞こえており、誰が厨二病だと彼女は反論。

 

「だぁれが厨二病よ!? というか春木!! 前々からってどういう意味よ!?」

「・・・・・・視力が、落ちてる・・・・・・?」

「んっ? そうね?」

 

そこで友奈が風の視力が落ちてるとは一体どういうことなのかと疑問に思い、まさかバーテックス、もしくはあのデーモンギラレスという怪獣が風に対して何かされたのではないかと心配するのだが、風が言うには別にバーテックスにも怪獣にも何されておらず、理由は別にあるとのことだった。

 

「戦いの疲労によるものだろうって。 勇者になると、凄く体力を消耗するらしいから! この目も療養したら治るってさ!」

「そうなんですか・・・・・・!」

「まぁ、あれだけの戦いをすれば当然そうなるのかもしれませんね・・・・・・」

 

特に問題がある訳ではないと風から聞いて友奈はほっと一安心し、良も確かに勇者の切り札とも言える満開まで使用したあれだけの戦いを経ればこうなってしまうのも仕方が無いのかもしれないと思うのであった。

 

「そうなんですか・・・・・・」

「なんたってアタシ達、一気に7体+ラスボスみたいな怪獣纏めて倒しちゃったんだからね!! 身体も疲れちゃうのよ!」

 

するとそこへ友奈と風がそのように話していると、そこに検査を終えたらしい樹と、東郷の2人が共有スペースへとやってきたのだ。

 

「あっ、東郷さん! 樹ちゃん!!」

「私達も検査終わりました」

「樹ぃ~? 注射されて泣かなかった?」

 

東郷が樹共々病院での身体の検査が終了したことを報告すると風はからかうように樹に注射されて泣かなかったかと冗談半分で問いかけたのだが、問いかけられた樹は一瞬困ったかのような表情を見せた後、無言で彼女は首を横に振ったのだ。

 

「んっ? どうしたの?」

「樹ちゃん、声が出ないみたいです。 勇者システムの長時間使用による疲労が原因で・・・・・・すぐに治るだろうとのことですが」

 

なぜか喋らない樹に友奈や風、春木や良に夏凜が疑問に思っているとどうにも話すことができないらしい樹の代わりに東郷がどうして樹が言葉を発しないのかを一同へと説明を行い、風は「アタシの目と同じね・・・・・・」と不思議そうな顔を浮かべながら呟き、左手で自分の左目をそっと押さえた。

 

「・・・・・・」

 

またそんな東郷の話を聞いて、良は怪訝そうな顔を浮かべており、そんな良の様子に気付いた春木は「どうかしたのか?」と首を傾げながら東郷の話に思うところがあるのだろうかと彼は問いかけたのだ。

 

「樹さんは声、風先輩は左目の視力が、医者の話じゃ勇者システムの長時間使用によってそれらの機能を一時的に失ったらしいが・・・・・・何か引っかかるな」

「何かってなんだよ?」

「分からん。 だが、身体の機能の一部が失われたのはどうにも単なる偶然のように思えない気がして・・・・・・」

 

顎に手を乗せながら、勇者システムを長時間使用したことへのデメリットとして風の左目の視力、樹の声帯が一時的に失われているらしいのだが、それらのことに関して良はどうにも頭のどこかで何かがつっかえているかのような感覚を拭い去ることが出来ず、そのつっかえているものが何なのか、必死に考えを巡らせるのだが・・・・・・。

 

(なんだ? 何が引っかかる? 樹さんや風先輩の声帯や視力は本当に勇者システムによる長時間使用が原因なのか? 医者はその内元に戻ると言っているらしいが・・・・・・)

「えっと、きっとすぐに治るよ! お医者さんだってそう言ってたんだし!」

 

しかし、そこで良の発言でみんなが僅かに不安そうな表情になったのを見た友奈がそんなみんなの不安を払拭するかのように医者もすぐに治ると言っていたのだからきっとすぐに治ると言い放つと、風もそれに同意するように頷く。

 

「えぇ、そうね!」

「全くもう、ダメだよ、良くん! みんなが不安になるようなこと言っちゃ?」

「えっ・・・・・・」

 

そう言いながら友奈はぷくっと頬を僅かに膨らませながら良の鼻の先をツンッと右の人差し指で軽く突くと、良は顔を真っ赤にしながら「す、すいません友奈さん!!」と頭を下げて謝った後、彼は友奈の小突いた鼻の先を右手で抑える。

 

(一瞬だったけど、友奈さんの人差し指めっちゃ柔らかかった・・・・・・。 後、頬を膨らませてるの凄く可愛いか・・・・・・って痛い痛い痛い痛い!!」

 

気付けばいつの間にか自分の後ろに回り込んでいた東郷がニッコニッコ笑顔で良の尻を捻るように抓っている姿があり、それに良は涙目になって必死に東郷の手をどうにか振り払いつつ、彼女を強く睨み付けるのであった。

 

「友奈ちゃんに鼻ツンして貰えるとか羨ましい、羨ましい、羨ましい・・・・・・!!」

「アンタなら頼めば友奈さんやってくれると思いますけど!?」

「そういうのじゃない、そういうのじゃないのよ・・・・・・! 友奈ちゃんが自発的にやってくれないと・・・・・・!」

 

一応尻抓りをやめた東郷であったが、彼女は友奈に鼻ツンして貰った良に対して嫉妬の視線をジィィィッと向け、良はそんなに友奈にやって欲しいのならきっと断らないだろうから頼んでやって貰えば良いだろと提案するのだが、友奈が自発的にやってくれるのが良いのだと言い、東郷と良の2人はしばらくの間お互いに睨み合いを続けるのだった。

 

「アイツ等なんやかんやで仲良いよな」

 

東郷も良も友奈には聞こえないように会話をしていた為、話題の中心でもある友奈の耳には2人の声は届いてはいなかった為、友奈は2人が一体先ほどからなんの話をしているのだろうかと首を傾げており、彼女は春木に2人は一体何を話しているのだろうかと尋ねると、春木は内心「お前のことだよ」と内心思いながら苦笑しつつ、彼女の疑問に応える。

 

「東郷さんと良くんはさっきからコソコソなんの話をしてるの?」

「同じ好きなもののことで盛り上がってんだよ」

「ふーん・・・・・・そうなんだ・・・・・・。 あっ! それよりもさ、私達バーテックスや樹海の怪獣ぜーんぶやっつけたんだよ! お祝いしないと!!」

 

そう言いながら友奈は思い出したかのように「じゃじゃーん!!」と売店で買ってきたらしいお菓子やジュースをどこからか取り出して机の上へと広げ、みんなで仲良くお祝いしようと一同へと呼びかける。

 

「随分買ったわね」

「お祝いは豪勢にやらないと!」

 

結構な量のお菓子が並んだことで夏凜は少しばかり驚き、まだ現実世界における怪獣の脅威自体は完全に拭いされてはいないとはいえ、それでも1つの区切りとして自分達なりに盛大に盛り上がりたいということで勇者部一同は友奈の提案に賛同し、こうして讃州中学の勇者部の面々はバーテックス及びに怪獣との戦いの勝利を祝うこととに。

 

そこから友奈はそれぞれのメンバーにジュースを手渡していき、全員飲み物が渡ると彼女は一旦咳払いした後、風に乾杯の一言を頼む。

 

「それでは、勇者部部長から乾杯の一言!」

「えっ!? あ、アタシ!? え、えっと・・・・・・本日はお日柄も良く・・・・・・!!」

「真面目か!?」

 

唐突に友奈に話を振られたことで特に何も考えて無かった風はお堅くぎこちない口調となってしまい、それにすかさず夏凜からのツッコミを彼女は受け、そんな漫才のようなやり取りをする風と夏凜に一同は思わず笑ってしまうのだった。

 

「あはは、堅苦しいのは抜きで!」

「それじゃ・・・・・・! みんな良くやったー!! 勇者部大勝利を祝ってかんぱーい!!」

『かんぱーい!!』

 

友奈に何時も通り風らしく振る舞えば良いと言われたことで、彼女は勇者部の勝利を祝う一声をあげるとそれを合図に勇者部の一同はジュースを掲げて乾杯し、一斉に口の中に飲み物を流し込むのであった。

 

「・・・・・・っ!?」

 

しかし、その際友奈だけはジュースを飲んだ瞬間、何かを驚いたかのような表情を見せるのだが、すぐに彼女は何事も無かったかのようにジュースを飲み続けるのだが・・・・・・。

 

「「・・・・・・」」

 

そんな彼女の不自然な様子に、東郷と良は真っ先に気付き、一体どうしたのだろうかと2人は心の中で首を傾げるのだった。

 

「そうだ! 春木と良以外のみんなに渡したいものがあるんだった!!」

 

そんな時、風がどこからか取り出したダンボールをテーブルの上に置くとその中にあったスマホを友奈、樹、東郷、夏凜にそれぞれ手渡し、夏凜はこのスマホは何なのだろうかと尋ねると以前使用していたスマホは先ほども述べたように大赦が回収してメンテを行っている為、その代わりのスマホを大赦が用意してくれたのだという。

 

「新しい携帯! 前に使ってたのは回収されたでしょ?」

「はい、この病院に来た時に」

「あっちの携帯はメンテナンスとかで戻ってくるのに時間がかかるからしばらくその携帯を使って」

 

新しいスマホを渡されたことで友奈は「わぁ、新品だー!!」と喜びを露わにし、東郷は早速新しく支給されたスマホを弄ってみると彼女はこのスマホには勇者に変身するための勇者アプリが入っていないことに気がつき、風が言うにはこのスマホにはあのアプリを使うことは出来ないとのことだった。

 

「あー、あのSNSアプリは使えなくなってるの。 あれ勇者専用のだから」

「そう、そのことについても、ちゃんと話し合わないとな・・・・・・。 大赦からは何も聞いてないのか風?」

 

それはここにいる全員が以前からも少々疑問に思っていた「樹海での戦いが終わったら、勇者である5人はこれからどうするのか?」という問題。

 

春木はそのことについて何か大赦から聞かされていないかと風に尋ねるのだが、現状大赦からは何も聞かされておらず、彼女は春木の質問に対して首を横に振ることしかできなかった。

 

そもそも、友奈、東郷、風、樹、夏凜の5人に与えられた勇者としての本来の神樹からの御役目は「13体のバーテックスの撃退」であり、その中には「怪獣退治」なんてものは含まれていない。

 

樹海にバーテックスと共に現れる怪獣なら兎も角、現実世界に現れる怪獣の対処までは本来勇者の御役目として彼女等には与えられてはいないのだ。

 

それに勇者やバーテックス、樹海の存在は世間的にはその存在を秘密にしなければならない。

 

「だから、大赦としては現実世界で私達が怪獣と戦うことは避けて欲しいと思ってるんじゃないかしらね」

「だとしたら、牛鬼は・・・・・・」

 

そしてこれらのことを踏まえて、夏凜は自分の考えを口にすると友奈達は少しばかりどこか残念そうな顔を見せ、もう勇者になれないのならば牛鬼を呼び出したりすることは出来ないのかと風に彼女は尋ねると、やはりというべきか勇者アプリが使えないのならば精霊も呼び出すことは出来ないとのことだった。

 

「ごめん、アプリが使えないからもう精霊は呼び出せないんだ・・・・・・」

「そう、ですか。 ちゃんとお別れしたかったなぁー・・・・・・」

 

牛鬼ともう会えないかもしれないと思うと、友奈はしっかりとお別れが出来なかったことに寂しげに呟き、そんな友奈の肩にポンポンッと春木が励ますように右手を乗せる。

 

「取りあえず、俺達としても友奈達が戦わなくて済むなら、俺達も賛成。 なっ? 良?」

「あぁ。 怪獣が出たら、これからは俺と、兄貴と2人だけでもなんとか戦っていきます」

((なんか、こいつ等だけだと不安・・・・・・))

 

春木は友奈達にこれ以上の負担をかけさせたくないという考えからそう言い放ち、それに良は同意するように頷くのだが・・・・・・。

 

風や夏凜としては「このバカ兄弟2人だけで大丈夫だろうか?」という不安を拭うことができず、2人は疑うような眼差しを春木と良の2人に向け、そんな夏凜と風の視線に気付いた春木は「大丈夫だって!!」と胸を張って問題無いと主張。

 

「それに、つい先日強化フォームも手に入れたしな」

 

そう言いながら良は前回の戦いで手に入れた「輝クリスタル」を使用するのに必要な「影」と書かれたクリスタルを取り出して見せながら、彼は春木の言葉を補足する。

 

「慢心してんじゃないわよ。 そういうところが不安だって言ってんの!」

 

しかし、影のクリスタルを自慢げに見せる良の腕を風は軽く小突き、慢心は禁物だと良は注意を受けてしまうのであった。

 

「怪獣とまともに戦えるのは、ウルトラマンだけですからね・・・・・・。 でも、無茶だけは、しないでくださいね・・・・・・春木先輩」

 

春木の服の袖をキュッと握りしめながら、東郷は無茶だけはしないでくれと頼むと、春木は「あぁ、分かってるよ」と東郷に笑いかけながら返事を返して彼女の頭をワシャワシャと撫でるのだった。

 

「もう、髪が乱れてしまいます、先輩・・・・・・」

「あはは、悪い悪い」

「良くんもだよ!」

 

友奈が良の両手を握りしめながら、良も無茶はしないでくれと言うと、手を握られたことにドギマギしながらも彼は「は、はい勿論・・・・・・」と返事を返した。

 

「アタシ等なに見せられてんのこれ?」

『イチャついてるね、4人とも』

 

そんな春木、東郷、良、友奈の4人のやり取りを見て風は居心地の悪さを感じ、樹はメモ帳に書いた文字を風に見せるのであった。

 

「・・・・・・」

 

一方で、夏凜は先ほどから何かを考え込んで思い悩んでいるかのような表情を浮かべており、そんな彼女の様子に、誰も気付くことはなかったのだった。

 

(もし、もう勇者になれないんだとしたら、私はこれからどうすれば・・・・・・良いのかしら・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

「退院は明後日だって! 早く学校に戻りたいなぁ~。 病院にいるのって退屈ぅ~」

「ふふ、私は検査にもう少し長い時間がかかるみたい」

 

その後、バーテックスを全て撃退したお祝いを終えた友奈は東郷の車椅子を押しながら2人はそんな会話を繰り広げており、友奈は東郷が自分と同じタイミングで退院できないことを聞くと彼女は少しばかり残念そうに呟く。

 

「そっか・・・・・・。 一緒に退院出来たら良かったのに・・・・・・」

「・・・・・・友奈ちゃん」

 

すると、少しだけ2人の間に沈黙があった後、不意に東郷が神妙な様子で友奈の名を呼ぶと名前を呼ばれた友奈は「んっ?」と不思議そうに首を傾げる。

 

「・・・・・・身体、どこかおかしいところ・・・・・・あるよね?」

「へっ・・・・・・?」

「さっき談話室でジュース飲んでた時、友奈ちゃんの様子・・・・・・変だったから」

 

東郷からのその指摘に友奈は一瞬驚いた顔をしたものの、すぐさま彼女は「あはは」と苦笑いを浮かべつつ、東郷相手にその洞察力の高さもあって誤魔化しは効かないだろうと考えてか、友奈は特に嘘をつくような真似もせず、正直に彼女の問いかけに応える。

 

「東郷さん鋭いなぁ。 でも、大したことじゃないから」

「・・・・・・話して」

 

東郷にやんわりとではあるが催促されたこともあり、彼女は正直に先ほどジュースやお菓子を食べても、なんの味もしなかったことを東郷へと話したのだ。

 

「味、感じなかったんだ。 ジュース飲んでも、お菓子食べても」

「・・・・・・」

「多分大丈夫だよ! ほら、風先輩と同じだよ! すぐに治るって! でも、お菓子の味が分からないなんて、人生の半分が損だぁ~」

 

今の友奈の位置からでは東郷の表情は分からないものの、きっと東郷は自分に対して心配げな顔をしているのだろうと考えた友奈はこのぐらいすぐに治るのだからなんでもないとジョークを交えながら笑い飛ばすのだが、東郷の表情は友奈の様子通り、心配げな表情をしたままだった。

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

その夜、東郷は自分の病室で友奈、風、樹の3人が身体のどこかに異常が見受けられたことから彼女は「もしかして自分の身体にもどこかおかしいところがあるのではないか?」と考え、東郷はその確認の一環としてイヤホンで「夢飛行」という曲を聴いているところだった。

 

「・・・・・・」

 

だが、そこで何か違和感を感じた東郷は左の耳のみにイヤホンをつけて音楽を聴いてみると、左の耳からはなんの音も耳に入って来ないことに気付く。

 

「っ・・・・・・!」

 

それは左側だけのイヤホンが壊れている訳では無い。

 

壊れていないのは右側の耳でも音楽を聴いたので壊れていないのは実証済み。

 

そして東郷は自分の身体にも異常があったことから「やはり」とでも言いたげな表情を浮かべるのであった。

 

 

 

 

それから3日後、東郷を除く勇者部のメンバーが無事に退院し、今日から一同はまた学校に通うこととなり、放課後には以前と同じように勇者部のメンバーは何時も通り部室に集まることに。

 

「あ゛ぁ゛~」

 

部室では既に風と樹、春木と良が集まっており、風は部室に設置してある扇風機の前で声を発しながら涼んでいるところだった。

 

「結城 友奈、来ましたー!!」

 

そこへ丁度友奈が部室へと入って来ると風は友奈の方に振り返りながら「お疲れー!」と挨拶を交わすのだが、そんな時、友奈は風が左目に黒い眼帯をしていることに気づき、彼女は「あれ?」と首を傾げる。

 

「風先輩、眼帯が・・・・・・」

「どうよこれ!?」

 

友奈が自分が眼帯をしていることに気付くと、風は「ふっふーん!」とドヤッとした顔を浮かべながらこの眼帯どうだろうかと彼女に感想を聞くと友奈は興奮した様子で感想を述べる。

 

「超かっこいいですぅ!!」

「かっこ・・・・・・良いのか?」

「やっぱり厨二病じゃないですか、風先輩。 きっとその内邪眼がどうとか言い出すぞ」

 

友奈は風の眼帯をお気に召したようだったが、春木は「あれかっこいいか?」と頭に疑問符を浮かべ、良はやはり厨二病になりかけているじゃないかと少々風に対して心配げな視線を送ると、風はそんな2人に対して「誰が厨二病じゃい!!」と反論。

 

「厨二病じゃないわよ! イケてると思ったからつけてんの! って、あれ? そう言えば夏凜はー?」

「あれ? 来てないんですか?」

 

そこで風は春木や良に文句を垂れつつ、夏凜は友奈と同じクラスメイトだったことから、てっきり一緒に来るものだと思っていたようで友奈に彼女の行方を尋ねるのだが、友奈も夏凜は先に部室に来ているものだと思っていたようで彼女も夏凜が今どこにいるのかは知らないらしい。

 

「むむ? サボりか? 後で罰として腕立て伏せ1,000回とかやらせよう!」

「それ罰になってます?」

「夏凜ちゃんだったら本当に出来ちゃいそう・・・・・・」

「否定出来ない・・・・・・!」

 

風は夏凜からなんの連絡も貰っていないことから今日はサボりだろうかと疑い、彼女はそのペナルティとして1,000回の腕立て伏せを後で命じてやろうと考案するが、彼女の運動神経の高さを知っている者達からすれば夏凜は「何時もやってることよ」とか言いながら涼しい顔してやり切りそうだと良も友奈も風もその光景を簡単に想像できてしまった。

 

「サプリを決めながら、『朝飯前よ!!』って言って・・・・・・」

 

すると樹が持って来ていたスケッチブックに何かを書き込んでそれを風達に見せると、そこには「かりんさん、何か用事があったんでしょうか?」と書き込まれた文字があり、それに風も「そうかもね」と彼女の意見に同意するのだった。

 

「そのスケッチブックは?」

 

そんな樹の持つスケッチブックを見て友奈が不思議がると、どうやら樹は今、声が出ない為、声が出るまでの間の応急処置としてしばらくはこうして会話することにしたのだという。

 

「声が戻るまでの、応急処置。 その内治るから、少し我慢ねー。 さて、それじゃ今日の活動だけど、5人しかいないのよねー。 衣装のこと話したかったんだけど」

「「衣装・・・・・・?」」

 

話を切り替えて、風は今日の活動内容について話し合おうとするのだが、友奈と春木は「なんのことだ?」とでも言いたげな表情を見せ、首を傾げる2人。

 

「文化祭の衣装のことよ?」

「あっ、そうでした!!」

「そう言えば第1話でそんなこと言ってたな!?」

『メタ発言やめてください、春木先輩』

 

風に教えられて文化祭で演劇やりたいみたいなことを言っていたのを友奈と春木は思い出し、メタなことを言い出した春木にはすかさず樹がスケッチブックでツッコミを苦笑しながら入れるのだった。

 

「勇者の活動が一大事だったから、忘れてたでしょ?」

「それ+ウルトラマンのことでも色々あったしなぁ・・・・・・」

「あははは・・・・・・」

 

勇者とウルトラマン、その両方のことでここ最近勇者部はゴタゴタしていたので友奈も春木もすっかり文化祭のことを忘れてしまっており、風に指摘されて2人は少しばかり申し訳無さそうな表情を浮かべるのだった。

 

「まぁでも、これはちょっと出来れば全員揃ってからの方が演劇の話し合いしたいし・・・・・・」

 

風としては出来れば今日は全員揃ってから文化祭で行う演劇の話し合いをしたかったようなのだが、東郷は未だに入院中、夏凜も不在であるため、彼女は今日の活動をどうしようかと両腕を組みながら考えているとそこで樹がスケッチブックに「他の部活の手伝いは?」と書き込んで尋ねると風は「何かあったかな?」と思いながら自分のスマホを確認。

 

「そうそう、剣道部から練習に付き合って欲しいって依頼があったのよねー。 ってそれ夏凜をご指名か」

「夏凜先輩なら確かに剣道部は適任ですね」

「でも今夏凜いないしなー。 俺も運動には自信あるけど剣道は全然やったことないから代わりを務められそうにもないなぁ」

 

勇者部の他の部活の依頼内容を聞き、良は確かに夏凜なら剣の扱いに慣れているであろうことから適任だろうと納得するが・・・・・・。

 

今夏凜は不在状態な上、体力に関しては夏凜にも負けておらず、よく運動部の助っ人に駆り出されることの多い春木も、剣道に関しては全然やったことがないということで彼女の代わりを務めるには役不足感否めないことから「どうしようか」と悩むが、取りあえずは夏凜が戻ってくるまでの間「保留」ということになるのだった。

 

「他には・・・・・・そうだ! ホームページの更新は!?」

「私達が入院している間、ホームページの更新止まってましたからね。 あっ、でも~東郷さんがいないと更新のやり方が分からないです・・・・・・」

「更新ぐらいなら俺が・・・・・・。 一応、俺もホームページの制作には携わっているので。 と言っても東郷先輩ほどでないにしてもすぐに終わってしまうと思いますが」

 

良は自分もホームページの制作には関わっているので更新のやり方は分かるという理由で右手を挙手し、それに対して風は「じゃあ任せた!!」と言うと良は頷いてパソコンの前に座り、早速ホームページの更新を行うのことに。

 

「あとは、猫の飼い主になってくれる人は見つかって無いし・・・・・・」

『ホームページの更新終わったらやることないね』

 

風は他にも何かやること無かったかと考えるが、ホームページの更新以外にやれることは特に無く、そのことを樹が指摘するとそれに風は「確かに・・・・・・」と小さく呟いた。

 

「仕方無い。 ダラダラしよう!!」

「そうですねぇ・・・・・・」

「良いんか? それで?」

 

結局、ホームページの更新もすぐに終わってしまったこともあり、もう特にやることが無くなってしまった勇者部は今日はダラダラして過ごそうと風は決め、友奈もそれには同意するのだが、春木はそれで良いのかと思わずツッコんでしまうのであった。

 

「・・・・・・俺は良と一緒にちょっと走り込みに行ってくるよ」

「はぁ!? なんで俺まで!?」

 

今日の勇者部の活動は「部室でダラダラしよう」ということに決まったのだが、春木はそれならば今日はやることないのであれば自分と良は外に走り込みに行ってくると言いだし、それに当然ながら良は「なぜ自分まで」と反発。

 

「言っただろ? これからは俺達だけで戦わないといけないかもしれないんだ。 それなら、少しでも鍛えておく必要があると思わないか? 特に良、お前体力あんまり無いんだし」

「ぐっ、確かに兄貴の言い分は正しい、最もだ。 でもな、今外は結構な猛暑だぞ!? せめてやるなら夜にしてくれ! 熱中症や日射病にでもなったら元も子もないだろ!! 怖いんだからな熱中症や日射病は!!?」

 

病院でも言っていたように、友奈達はもう勇者になれない可能性がある。

 

そのため、春木は今後自分達2人だけで戦わなければならないかもしれないのだ。

 

だから春木は少しでも自分達を鍛え上げておくべきではないだろうかと言うのだが、外はそこそこな暑さであり、春木の言いたいことは分かるが、こんな状態で走り込みなんてすれば日射病になってしまうのではないかと良は反論。

 

そうなれば元も子も無いと言われ、それを受けた春木は「それも、そうか・・・・・・」と窓の外を眺めながら納得し、良も「夜ならやってもいい」ということで2人は今日の夜から走り込みを開始することを約束し、結局春木と良も部室でダラダラと今日は過ごすことに決めたのだった。

 

「絶対だぞ! 今日の夜絶対走り込みやるんだぞ!! 約束だからな!?」

「うるさいな!? ちゃんと約束は守るって」

「・・・・・・ごめんね、良くん、春木先輩」

 

そんな時、友奈が申し訳無さそうに春木や良に謝罪の言葉を不意に投げかけ、それに対して春木はキョトンとした表情を浮かべると良も同じく不思議そうに首を傾げる。

 

「いやいや、なんで友奈さんが謝るんですか」

「だって、私達がもう勇者になれないのだとしたら、今までみたいに2人の力になれないかもしれないし・・・・・・」

「そうね、これからは2人だけに負担をかけることになるかもね・・・・・・」

 

友奈に続くように、風や樹もどこか申し訳無さそうな表情を浮かべると、春木は良と肩を組みながら「心配すんな!!」とガッツポーズを見せる。

 

「これも言っただろ? 『友奈達が戦わなくて済むなら、俺達も賛成』だって」

「兄貴の言う通り、後のことは俺達に任せて下さい!」

 

病院の時よりも、どこか自信ありげにそう言い放つ春木と良。

 

けれども、2人はこう言ってくれるものの友奈達はどこか後ろめたさを感じずにはいられないようだった。

 

「だから、みんな気にすんなって! それより、今日は部室でダラダラするんだろ? 俺達も夜の走り込みに備えて鋭気を養う為にも今はしっかり休んでダラダラするぞー!」

 

春木はそう言いながら、椅子に座って台の上にグデーッと身体を長く伸ばしながらだらしない様子を見せると、それを見た他の勇者部員達はクスリと笑ってしまった。

 

「分かった。 アタシは春木達の言葉を信じるわ」

 

そんな春木の姿を見て、風は多少の不安や、未だに申し訳無さを感じるものの取りあえず今は春木達の言葉を信じることにし、それに友奈や樹も同意するように頷く。

 

「ですねー。 でも、私達に何か手伝えることがあるなら、春木先輩も良くんも言ってね?」

「あぁ、勿論です」

 

友奈にそう言われて、良が応えるとそのまま一同は風が最初に提案した通り、今日は全員でグデーッと台の上に突っ伏しながらダラダラと過ごすことを決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で、春木達は机の突っ伏し、今日はグータラ過ごすことになったのだったが・・・・・・。

 

「急に熱くなってきましたねー」

「もう夏休み前だしねー」

 

扇風機が1台風を自分達に送って来てくれているとは言え、部室にはクーラーなんて物は無い為、時間が経つに連れて一同は徐々に部室も暑くなっていくのを感じ始めていた。

 

「熱波襲来・・・・・・ソドムでも来てるんじゃないのか?」

「ソドムってなんだよ?」

「『火の神の怒りを鎮め、人々を噴火から救う』って言い伝えられている守り神のことだよ」

 

良と春木がそんな会話を2人でしていると、今度は樹がスケッチブックに文字を書き込み、「とけてドロドロになりそう」という文字を見せるとそれに風も「まったくねー」と同意して頷く。

 

「全員いないとなんだかやる気出ませんねぇ」

「足りない・・・・・・。 何か足りない・・・・・・!」

「何かってなによ?」

 

ぐーたらしつつ、風が今日は何かが足りないと言い始め、春木は部員が全員揃っていないこと以外で何が足りないと言うのかと風に尋ねると、彼女は少し何が足りないのか考え込んだ後、その足りないものがなんなのかが分かったようで不意に椅子から立ち上がる。

 

「東郷のお菓子が足りない!!」

「はっ・・・・・・! それだ!!」

 

東郷はよくほぼ毎日のように手作りのお菓子を自分達に振る舞ってくれていたことから、風はそれが今の勇者部には足りないのだと言い放ち、それに春木も「コクコクコク!」と激しく首を縦に振りながら同意するように頷く。

 

「俺も東郷のお菓子を定期的に食べないと気合いと根性が微妙に入らないんだよなぁ。 もしかしたら俺は東郷に完全に胃袋掴まれたかもしれん」

「それ東郷先輩が聞いたら滅茶苦茶嬉しがるな・・・・・・兄貴」

『というか先ず食べ物なの?』

 

そのように東郷の手作りお菓子に飢える風と春木を見て樹がすかさずスケッチブックに書いた文字でそんな2人にツッコミを入れるのだった。

 

(東郷さんのお菓子・・・・・・。 今は味分からないんだ。 早く治らないかなぁ・・・・・・)

 

尚、春木や風の話を聞いていた友奈も自分もこの2人と同じように東郷の手作りお菓子をまた食べたいと思う彼女であったが、今は何を食べても飲んでも味覚を感じない身体になってしまっている為、彼女は早く再び味覚を取り戻したいと心の中で願うのであった。

 

 

 

*

 

 

 

その日の夕方、東郷の入院している病院にて。

 

東郷が病室でノートパソコンを弄っていると、友奈と春木、そして良の3人が彼女のお見舞いへとやってきたのだ。

 

「東郷さん!! お見舞いに来たよー!」

「あっ、友奈ちゃんに春木先輩! それと・・・・・・良くんもか」

「友奈さんと兄貴が来たらめっちゃ嬉しそうな顔したのに、俺の顔を見たら露骨に俺にだけ嫌そうな顔しましたね、東郷先輩」

 

自分の病室に入ってきた友奈と春木の顔を見てパアッと一瞬明るい表情を見せながらとても嬉しそうにする東郷であったが、自分にとって色んな意味でライバルとも言える良まで来たことに彼女は露骨に残念そうな表情となるのだが、それに良は自分も同じ立場ならきっと東郷に対して同じ反応をするだろうし、東郷の反応が予想通りだったこともあって特に何か文句を言ったりもせず、ただ彼は苦笑いを浮かべるだけであった。

 

「別に、嫌そうな顔なんてしてないわよ私は? 良くんがいなければ『両手に花状態だ! やったぁ!!』とか全然思ってないわ」

「おもっくそ思ってるじゃないですか! 完全に俺のこと邪魔者扱いしてるじゃないですか!」

「お前等一体なんの話してんだ」

 

相変わらず口喧嘩をする東郷と良に春木は呆れ気味に「どうどう」と2人を落ち着かせる。

 

「んっ? あれ? 東郷さん、パソコンなんて弄って何してたの?」

 

するとそこで友奈が東郷がノートパソコンを開いて何か作業をしていた様子に気付くと、彼女はそれが気になったのか「何してたの?」と尋ねると、東郷は「ちょっと調べ物」とだけ応えた。

 

「なになに!? 何を調べてたの!?」

「大したことじゃないから・・・・・・」

「いいじゃん! 教えてよ~!」

 

友奈は東郷の言う調べ物について興味を持つと、彼女は両手をワキワキさせながら東郷の言う調べ物というのがなんなのかと問いかけ、そんな友奈に東郷が「しょうがないなぁ」とでも言いたげに思わず苦笑すると彼女はなんの調べ物をしていたのかを観念して友奈に教えるのだった。

 

「調べてたのは、私達が暮らすこの国の特殊性。 及び正しいあり方を神世紀以前からの国家に比較考察して、現在の現在の護国思想の源流を大和神話の関連性に求める事の有意義! そして私達が今後担う時代のあり方を・・・・・・!」

「ごめんなさい! 私が悪かったです! 頭が追いつかない・・・・・・!」

 

しかし、その内容は友奈には到底理解できるものではなかった為に、彼女は無理に聞き出してしまったことを申し訳ないと頭を下げて謝罪し、彼女の隣にいた春木も東郷が何を言っているのか分からずちんぷんかんぷんで混乱して頭からプスプスと湯気が出ていた。

 

流石に良だけは東郷が何を言いたかったのかは理解できているようだったが。

 

「それより、来てくれてありがとう」

「私も東郷さんと話したかったし! っていうか、東郷さんがいないと学校の楽しさが当社比3割減だよー!」

「ふふ、随分減っちゃうんだね!」

 

東郷がいないと学校での楽しさがかなり減ってしまうと嘆く友奈に、東郷は思わず笑ってしまい、それに春木も友奈の言葉に同意するように自分を指差しながら「俺も俺も」とアピールする。

 

「俺も、東郷がいないとなーんか物足りない感じがしてな」

「春木先輩にもそんな風に言って貰えるなんて、嬉しいです。 私・・・・・・」

「おう、だから早く元気になって退院してくれよなー!!」

 

春木は東郷の頭をくしゃくしゃと撫でると彼女は「やめてください、髪が乱れてしまいます」と言いながらも嫌そうな表情はせず、むしろ逆に嬉しそうな顔を浮かべるのであった。

 

「こんなこと、東郷先輩に言うのは癪だが、俺もあなたがいないと張り合いが無いが感じがするんですよね・・・・・・」

「あら、良くんが私にそんなこと言うなんて珍しいわね・・・・・・」

 

まさか自分にとってのライバルであるはずの良にまで自分がいなくてそんな風に言われてしまった東郷は、そのことに少し驚いた様子を見せるのだった。

 

そんな風に、春木達は少しの間みんなで談笑をしていたのだが、ふっと東郷が神妙な顔つきとなると、春木や良の顔を見ながら彼女は自分も左耳が聞こえなくなったことを打ち明けるべきか少しばかり悩んだ後、ずっと隠していてもしょうがないと彼女は判断し、友奈ともそのことで話し合いたかったことや、良の意見も聞きたかったことから東郷は友奈、春木、良の3人に自分も左耳の聴力を現在失っていることを打ち明けたのだ。

 

「・・・・・・そっか、東郷さんは左耳が聞こえなくなってるんだ・・・・・・」

「うん・・・・・・」

「ってことは、まさか友奈さんと夏凜先輩も・・・・・・!?」

 

それを受けて友奈は少しばかり驚いたような表情を見せ、また東郷の話を聞いた良は風や樹に続いて東郷までもが身体の機能の一部が停止していることから、夏凜や友奈の身体にも何か異常が起こっているのではないかと考え、良は心配げな視線を友奈に送るのだが・・・・・・。

 

「へっ!? あっ、いやぁ・・・・・・私は全然大したことないし・・・・・・あはは・・・・・・」

 

春木や良に心配をかけまいとしているのだろうか、友奈は自分も味覚が無くなっているというのに、彼女はそれを隠すかのように笑って誤魔化そうとするのだが、目が泳いでいたことから友奈が嘘をついているのは一目瞭然で良は勿論、それは春木にだってバレバレだった。

 

「嘘が下手だな、友奈。 今のお前が嘘ついてんの、俺にだって分かるぞ?」

「友奈さん! あなたも、自分の身体のどこかに異常がでてるんじゃないんですか・・・・・・? 正直に答えてください!!」

 

良は睨み付けるようにジッと友奈の顔を見つめると、友奈はバツが悪そうな顔を浮かべつつ、彼女は「こくんっ」と首を縦に振ったのだ。

 

「実を言うとね、私は味覚が無くなってたんだ。 みんなに、心配かけたくなかったんだけど・・・・・・バレちゃった・・・・・・」

 

苦笑しつつ頬をポリポリと搔きながら遂に観念した友奈は自分は味覚が無くなるという異常が出ていることを春木と良にも正直に応え、話した。

 

「でも、きっと大丈夫! すぐ治るよ! 目いっぱい戦ったし!!」

「そうね。 友奈ちゃんの言う通りかも。 身体がちょっと悲鳴あげてるのかな?」

「だ、だよな! 医者も治るって言ってたんだろ? 気合いと根性がありゃきっともっと早く治るから2人とも頑張れよ!」

 

だが、友奈はきっとすぐに治ってくれると信じ、それに東郷もあれだけ激しい戦いをしたのだからきっとそうなのだろうと同意し、春木も少しばかり動揺していたものの彼もまたきっとすぐに治ると信じる姿勢を見せるのだが・・・・・・。

 

良だけは怪訝な表情を浮かべたままであり、彼は何か考え込んでいるようだった。

 

(確かに、先日の戦いはこれまでで1番ハードでキツい戦いだった。 身体に何かしらのダメージが来るのも当然だとは思うが・・・・・・本当にそれだけなのか? もっと何か、明確な理由が・・・・・・)

「あっ、もうこんな時間! そろそろ帰らないと・・・・・・」

 

そこで友奈が時計を見て流石にもう帰らないといけないと言うと、春木や良も今日から走り込みをやる予定なのもあり、3人は東郷に別れの挨拶を済ませ、病室を後にするのであった。

 

「明日もまた来るね!」

「早く元気になれよ、東郷!」

「ではまた・・・・・・」

「うん、待ってる!」

 

 

 

 

 

 

それから・・・・・・春木達3人が帰ったことを確認した東郷は、閉じていたパソコンを再び開くと、画面には彼女が作ったらしい表のようなものが作成されており、表には春木と良以外の勇者部のメンバーの名前と、これまで確認された自分達の身体の異常が書き込まれていた。

 

「・・・・・・」

 

そこで東郷は自分のスマホを取り出して風へと電話をかけるとすぐに風が通話に出ると彼女は野太い声で「私だ」と応えるのだが、東郷はそんな風を無視して話を進める。

 

「あの、伺いたいことがあるんですが・・・・・・」

『スルーされたぁ・・・・・・。 でもまあいいわ。 なに?』

 

無視をされたことに軽くショックを受けたものの、東郷の声色から真面目な話だということをすぐに察知することが出来たからか、持ち直した風は東郷は何を自分に聞きたいのかと、自分に応えられることなら言ってくれと返事を返したのだ。

 

「満開の後遺症とか。 そういうのって風先輩は何か聞いていますか?」

『満開の後遺症? なにそれ?』

「実は・・・・・・」

 

そこから東郷は風に勝手に言ってしまうことは友奈に申し訳無いと思いつつも、左目の視力を失っている風や声が出なくなってしまっている樹と同じように、友奈は味覚が失われていることを、自分も左耳の聴力が無くなって自分達にも身体に異常が出ていることを纏めて風へと東郷は報告。

 

『あっ、ちょっと待って』

 

その報告を受けた風は樹に話を聞かれるのは直感的にマズいかもしれないと感じ取ったからか、彼女は一旦外に出ると風は改めて東郷の言う満開の後遺症についての説明を求める。

 

『友奈は味覚が無くなって、東郷は左耳が聞こえない。 満開を起こした者は全員・・・・・・? 友奈、言ってくれたら良かったのに』

「友奈ちゃんの性格です。 みんなに心配かけないよう言い出せなかったんだと思います」

『・・・・・・あの娘らしいね・・・・・・』

 

身体に異常を来たしている者の中で、東郷はこれまで確認された身体に異常が出ている者の共通点は、夏凜だけが特にこれといったおかしな様子がなかったことから全員「満開」をした者だけに限定されているのではないかと考え、風は何か大赦から何か事情を聞いていたりしないかと尋ねたのだ。

 

「風先輩は、大赦から何か聞いてないですか?」

『うん。 何も・・・・・・』

「大赦の方々も知らなかったんでしょうか?」

「そうだろうね・・・・・・。 ごめん、こんなことになって・・・・・・」

 

自分が戦いに巻き込んでしまった結果・・・・・・そう考えてしまった風は東郷に電話越しながら彼女に対して深く謝罪し、謝るが東郷は風が悪い訳では無いと責めたりなどしなかった。

 

「風先輩が悪いんじゃありません。 それに身体の調子だって・・・・・・きっとすぐに治りますよ」

『・・・・・・そうだよね。 病院の先生もそう言ってたし!』

 

半ば自分に言い聞かせてるような部分もあるものの、兎に角きっとその内全員治ると信じ、取りあえず今は大赦からの返答を待つことに。

 

「兎に角、大赦からの返答待ちですね」

『うん』

「ありがとうございます、それではまた」

 

これ以上、特に風から聞きたいことは無かった為、東郷は自分の質問に色々と応えてくれた風にお礼を述べた後、通話を切るのだった。

 

 

 

 

 

「満開の後遺症・・・・・・。 何よ、それ・・・・・・」

 

そして・・・・・・東郷との通話を切った後、風はスマホを力強く握りしめながら・・・・・・彼女は自分の家の前で静かにそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

その頃、今日部活に訪れなかった夏凜はというと・・・・・・。

 

夕暮れ時に、家の近くの砂浜で彼女は何時も通り、木刀を2つ持ちながらそれを振るって鍛錬を行っていたのだが・・・・・・。

 

不意に、夏凜は動きを止めると、そのまま木刀を投げ捨てながら砂浜に倒れ込み、彼女はどこか虚無感に包まれたかのような表情を浮かべながら赤く染まった空を見上げた。

 

「・・・・・・戦い、終わっちゃった・・・・・・」

 

怪獣への対処など、大赦が今後どういった対応を取るかは不明だが、もし・・・・・・このまま勇者としての御役目が終わったのだとしたら・・・・・・。

 

戦う為に自分はここへ来たのに、それなのにこれから自分は何をしていけば良いのか、それが分からず、部活に顔を出す気にもなれなかった彼女は今日一日、ずっとそんなことを考えながら過ごしていた。

 

「私、これからどうすれば・・・・・・」

 

そんな時、夏凜の持っていたスマホからメッセージ音が聞こえ、彼女は上半身だけを起き上がらせてスマホを取り出すと、メッセージ画面を開くと連絡してきたのは風からだった。

 

『バーテックスとの戦いの後、身体におかしなところない?』

 

てっきり部活をサボったことをとやかく言われるのかと思ったが、メッセージにはそういった夏凜が予想していたのとは全く別の文章が書かれており、夏凜はそれを不思議に思いながらも「ないわよ。 なんかあったの?」と返事を返す。

 

『満開を起こした人は、身体のどこかがおかしくなってる』

「それって、私以外の全員・・・・・・!? じゃあ、友奈や・・・・・・東郷も・・・・・・!」

 

返事を返すと、即座に風からの返信が行われ、その文を見て驚きの様子を見せる夏凜。

 

「・・・・・・私だけ、私だけ傷を負ってない・・・・・・。 これじゃ、1番役に立ってないみたいじゃない・・・・・・!!」

 

それを受けて、右腕で顔を覆いながら悔しげにそう静かに夏凜はその場で呟くのだった・・・・・・。

 

「私は、戦う為にここに来たのに・・・・・・」

 

 

 

 

 

同じ頃、ヒナタが同級生の友人2人と仲良く学校から帰宅している時のこと。

 

「それでですね! 春にぃが木から降りられなくなった猫さんを助けようと木に登った結果、木が折れて下にいた良にぃを下敷きにしちゃった訳なんですよ!! それで打ち所が悪かったのか入院する羽目になったみたいなんです」

 

ヒナタは友人2人に春木と良の2人が入院する羽目になってしまった時のことを話していたらしく、そんなヒナタの話を聞いていた彼女の友人Aは「それで猫ちゃんどうなったの?」と尋ねると、なんでもヒナタは「ちゃんと無事でした!!」と元気よく解答するのだった。

 

どうやら、春木と良は自分達が入院することになった原因を誤魔化す為に、春木も良も家族に嘘をついてしまうことを心苦しく思いつつも「猫を助けようとして怪我した」という風に、あの2人はヒナタとウシオには説明したらしい。

 

「そっかぁー。 猫ちゃん無事で良かったねー。 ヒナタちゃんのお兄さん達も無事で良かった!」

「まぁ、あのストレートバカ兄貴と頭の良いバカ兄貴もあんまり危ないことしないで欲しいんですけどね、私としては」

 

なんて、話を友人Bとしていたそんな時のことである。

 

「グルアアアアアア!!!!!」

「「「!!!?」」」

 

ヒナタ達の目の前に、突如として唐突に巨大な怪物が現れたのは。

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を遡り、アイゼンテックの社長室にて。

 

「ほう、ほうほうほう。 危機感を持って今日から身体を鍛え始めようと言う志は大変立派だ! だがしかぁーっし!! お前等の場合それをやるのが遅すぎるんだよ全く!! テストもう既に最終段階に入っているというのに・・・・・・」

 

社長室に椅子に座りながら、そんなことを大声で怒鳴るように叫ぶアキラ。

 

どうやら彼は今日も今日とて勇者部の部室を盗撮・・・・・・もとい監視していたらしく、どうやらアキラは春木と良のウルトラマンとしての自覚の無さに呆れているようだった。

 

「あの兄弟以外の、勇者部だったか? アイツ等もアイツ等でだっらしない顔しやがって・・・・・・。 初めて会った時はあの方々のような素晴らしいものを持っていると思っていたのだが・・・・・・。 あちらも私の見込み違いだったか?」

 

さらには春木や良だけではなく、何やら他の勇者部のメンバーにもどこか呆れているような節を見せながらアキラはAZジャイロと「艦」と書かれたルーブクリスタルを取り出し、彼はジャイロの中央にクリスタルをセット。

 

『バキシムデストロイヤー!』

「それではそろそろ、最終テストと行こうか! さぁ、ファイトだよ!! バキシムデストロイヤー!!」

 

そして、ジャイロの中央から紫の光が放たれて社長室の窓をすり抜けると光は芋虫のような姿をした怪獣のような姿に変化し、さらに両足と背中に何かの装備品らしきものと、右腕に軍艦の主砲のようなものが装着された「一角超獣 バキシムデストロイヤー」となって実体化し、街に出現したのだ。

 

「ギシャアアアアア!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「怪獣!?」

「やっぱり、まだ現実世界には現れるか・・・・・・! 友奈、お前は早く安全なところに! あいつは俺達が! 行くぞ良!」

「あぁ!」

 

春木や良が友奈と共に帰路について歩いていると、突如としてバキシムが出現した為、2人は互いに頷き合い、今は勇者になれない友奈には安全なところに避難するように言った後、春木と良の2人は急いでバキシムのいる場所まで駆け出す。

 

「あっ! 春木先輩! 良くん・・・・・・!」

 

走る春木と良の背中を見つめながら、友奈は自分の持つスマホの画面を見つめるが・・・・・・やはり画面の中を幾ら探しても勇者アプリは見つからず、今は春木達の力になれない自分に、彼女はもどかしさを感じるのであった。

 

「また、怪獣が・・・・・・」

 

そしてそれは夏凜も同じであり、彼女はバキシムが街で暴れる様子を海辺からただ見つめるしか無く、彼女は拳を強く握りしめることしかできなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、行くぞ良!」

「あぁ、準備はいつでもできてる!!」

 

バキシムデストロイヤーの近くまで春木と良が辿り着くと、彼等は周りに人がいないことを確認しつつ、2人は同時にルーブジャイロを取り出す。

 

「「オレ色に染め上げろ!! ルーブ!!」」

 

最初に春木が空中に浮かんだホルダーを手に取り、そこから「ウルトラマンティガ」の絵が描かれた風のクリスタルを取り出す。

 

「セレクト!! クリスタル!!」

 

ティガクリスタルの角を2つ立ててルーブジャイロの中央に春木はセット。

 

『ウルトラマンティガ!』

「纏うは風!! 紫電の疾風!!」

 

最後に春木はルーブジャイロのトリガーを3回引いて右腕を掲げる。

 

「はあああ、はあ!!」

『ウルトラマンロッソ! ウインド!!』

 

春木は紫の風に包まれ、紫色の巨人「ウルトラマンロッソ ウインド」へと変身。

 

「セレクト!! クリスタル!!」

 

続けて今度は良がホルダーから「輪」と書かれたワニュウドウクリスタルを取り出し、それをルーブジャイロにセット。

 

『ワニュウドウ!』

「纏うは輪!! 特攻の火車!!」

 

また春木と同様に良もルーブクリスタルのトリガーを3回引き、彼は左腕を掲げる。

 

「はあああ、はあ!!」

『ウルトラマンブル! ワニュウドウ!』

 

すると良は眩い光に飲み込まれ、オレンジ色のカラーリングが身体に配色され、両腕に小型化したような「神屋楯比売」が両腕に装着された「ウルトラマンブル ワニュウドウ」へと変身を完了させるのだった。

 

変身を完了させたロッソとブルは暴れるバキシムの前に立ち塞がると、ロッソは専用武器である「ルーブスラッガーロッソ」を頭部から取り出し、先ずはロッソがウインドの力で自身の動きを加速し、一気にバキシムに詰め寄り、攻撃を仕掛ける。

 

『シェア!!』

 

バキシムに詰め寄ったロッソは2本のスラッガーロッソで目にも止まらぬ速さでバキシムを斬りつけまくるのだが、バキシムは多少後退したりはするものの、ダメージをあまり受けている様子は無く、それでもロッソがもう1発斬撃を喰らわせようと右手に持つスラッガーロッソを振るうのだが・・・・・・。

 

バキシムはそれを左手で掴んで受け止めると、右腕に装着された主砲をロッソの胸部に突きつけると強力な砲弾を零距離発射。

 

『ウアアアア!!!!?』

『兄貴!!』

 

吹き飛ばされ、地面を転がるロッソに駆け寄りつつ、今度は自分がとブルは両腕に装着された小型化された神屋楯比売を回転鋸の如く回転させながらバキシムの身体を何度も斬りつけ、バキシムは身体から火花を散らすのだが、それでもバキシムはブルの攻撃を受けながらも左手によるアッパーカットをブルに喰らわせ、殴り飛ばしてしまう。

 

『ガアア!!?』

 

そのままバキシムは口を大きく開けながらブルの右肩に噛みつこうとするのだが、そこでロッソの跳び蹴りがバキシムの頭部に炸裂し、それによってバキシムをブルから引き離すことに成功。

 

『なんだアイツ!? まるで痛みを感じてないみたいに・・・・・・!』

『中々厄介な怪獣みたいだな・・・・・・!』

 

尚、この戦いの様子をダーリンを通して社長室から観ていたアキラはというと・・・・・・。

 

「怪獣じゃない。 バキシムデストロイヤーは超獣だ」

 

ロッソとブルの会話を聞きながら、そんなことを呟いていたのだった。

 

そして場所を戻し、バキシムは両膝に装着された装備から魚雷のようなものを2発地面に撃ち込むと、魚雷は地面に潜り、ロッソとブルの足下にまで来ると爆発。

 

『『ウアアアアア!!!!?』』

 

足下が爆発された衝撃でロッソとブルの2人は空中へと投げ出され、そのまま地面に強く叩きつけられて倒れ込んだのだ。

 

「なにやってんのよ、アイツ等・・・・・・!!」

 

そのようにバキシムに苦戦するロッソとブルの2人に、夏凜は戦いの光景を見つめながらもっとしっかりと戦えと思いながらも今の何も出来ない自分への苛立ちから彼女はギュッとスマホを握りしめるのだった。

 

(これじゃ、本当に私はなんの為に・・・・・・!!)

 

そして、片膝を突きながらも、バキシム対峙するロッソとブルはというと・・・・・・。

 

『クソ! こんな調子じゃ、不甲斐ないって、怒られそうだよなぁ。 夏凜先輩辺りに俺達』

『だな。 これぐらい、楽勝で逆転しないと後で風とかにも色々とドヤされそうだし、もうちょい気合い入れんぞ、良!!』

『あぁ!!』

 

戦闘BGM「ウルトラマンロッソ ウインド」

 

そうやって自分達を鼓舞させつつ、ロッソとブルは再び立ち上がり、ブルはロッソにバキシムの動きを止めてくれと頼むと、それにロッソは快く頷いて承諾し、風のエネルギーを両掌に集め、竜巻をパンチで発射する「ストームフリッカー」を連続でバキシムに向けて放つ。

 

『ストームフリッカー!!』

 

それに対し、真っ直ぐロッソとブルに立ち向かおうと駆け出していたバキシムはロッソの技を喰らったことで動きが鈍り、それによってバキシムは動きを止められ、大きな隙が生まれてしまう。

 

『合体技だ! 兄貴!! 俺の方にもストームフリッカーを!!』

『よし!!』

 

ブルに言われた通り、ロッソはブルにストームフリッカーを連続で放つとブルはそれらを全て両腕の神屋楯比売でそれを受け止めると、神屋楯比売に風が纏わり、ブルは風を纏った両腕の神屋楯比売を高速回転させながら鋸状の巨大な風のカッター、2人の合体技「サイクロンカッター」を2つバキシムへと投げつける。

 

『喰らえ!!』

『『サイクロンカッター!!!!』』

「ギシャアアアアア!!!!?」

 

サイクロンカッターはバキシムの身体を切り刻み、バキシムは身体中から火花を散らしながら片膝をがっくりと突く。

 

『今だ!! セレクト! クリスタル!!』

 

するとインナースペース内の良は5つの精霊クリスタルを融合させ、「輝クリスタル」に変化させると彼を手に取り、ルーブジャイロの中央にセット。

 

『輝クリスタル!!』

『纏うは輝!! 不屈の意志!!』

 

そこからジャイロの左右にあるトリガーを3回引き、良は左腕を掲げる。

 

『はああ、はあ!!』

『ウルトラマンブル!! ブレイバー!!』

 

すると、ブルの姿がオレンジから金色の姿へと変わった「ウルトラマンブル ブレイバー」に変わると、良の右腕にもルーブレスレットが装着され、良は左手をルーブスレットに添えて、ルーブレスレットをルーブランスに変化させる。

 

『ルーブランス!!』

「グルアアアア!!!!」

 

ブルがルーブランスを構えると同時に、バキシムが立ち上がるとバキシムは頭部から放つミサイルを連続で発射。

 

だが、ブルはルーブランスでミサイルを全て切り裂いて弾き飛ばすと、そのままバキシムとの距離を一気に詰め、ルーブランスをバキシムに振りかざす。

 

『オリャアア!!』

「ギシャアア!!」

 

それをバキシムは真剣白刃取りの要領で受け止めたのだが、そこで再びスラッガーブルを手に持ったロッソに横腹をバキシムは斬りつけられ、それによって身体のバランスが崩れたバキシムは防御の姿勢が崩れてしまい、そのままブルの振るうルーブスラッガーによる攻撃を受けてしまったのだ。

 

「グルアアア!!?」

『ジュアア!!』

 

さらに下からルーブランスを振り上げることでブルはバキシムは空中へと叩き上げ、その間に良はルーブランスに水のクリスタルをセットする。

 

『ウルトラマンギンガ!』

『アクアランス!!』

 

それによってルーブランスは水の力を纏った「アクアランス」に変化させると、ブルの周囲に水の球体が3つ浮かび上がり、その球体とはアクアランスから放たれる強烈な水の力が宿った光線「アクアランスシュート」を空中へと投げ飛ばされたバキシムへと放つ。

 

『アクアランスシュート!!』

『グルアアアアア!!!!?』

 

直撃を受けたバキシムは身体中から火花を散らしながら地上へと落下するのだが、バキシムはすぐさま起き上がり、足部に装着された装備から魚雷を発射しようとするのだが・・・・・・。

 

『させるか! ハリケーンバレット!!』

 

超高速で投球した光球弾が、相手の少し前で炸裂し、竜巻状の破壊エネルギーとなって相手を切り裂く「ハリケーンバレット」をロッソはバキシムへと繰り出し、その技を受けてバキシムが怯むと今度はインナースペース内の春木が輝クリスタルを手に取る。

 

『輝クリスタル!!』

『纏うは輝!! 不屈の意志!!』

 

そこからジャイロの左右にあるトリガーを3回引き、春木は右腕を掲げる。

 

『はああ、はあ!!』

『ウルトラマンロッソ!! ブレイバー!!』

『ルーブランス!!』

 

ロッソは「ブレイバー」へと姿を変え、ブルは基本形態である青い姿の「アクア」に姿を変えると、ロッソはそのまま真っ直ぐバキシムに向かって駈け出すと、両手に出現させたルーブランスを使い、何度も「突き」による攻撃を連続でバキシムに炸裂させる。

 

「ガアアア!!?」

 

そしてインナースペース内の春木がルーブランスの中央部分に火のクリスタルをセットするとルーブランスは炎の力を宿した「フレイムランス」に変化。

 

『ウルトラマンタロウ!』

『フレイムランス!!』

 

そこからさらに炎そのものとなったロッソが4つの炎の槍に姿が変わると、それらが一斉に敵を貫く「フレイムランスシュート」が放たれ、それらはバキシムへと全て直撃。

 

『フレイムランスシュート!!』

「グアアアアア!!!!?」

 

続けざまに、ルーブスラッガーブルを取り出したブルは、インナースペース内で良が以前風に渡された「刃」のクリスタルをスラッガーブルにセットし、ブルは水の力を宿した巨大な光刃「ワイドショットスラッガー」を放つ。

 

『ウルトラセブン!』

『ワイドショットスラッガー!!』

「グルアアアア!!!!?」

 

そしてロッソ、ブルの必殺技を立て続けに受けたことにより、遂にバキシムの肉体は耐えきることが出来ず、倒れ込み、爆発四散するのであった。

 

『っしゃ、なんとか勝てたな。 兄貴』

『あぁ、この調子でこれからは俺達だけでも戦えるように頑張っていこうぜ、良!』

 

ロッソが腕を前に出すと、ブルもコンッと軽く自分の腕をロッソの腕にぶつけ、これからも来るであろう戦いに2人は気合いを入れるのだった。

 

そしてロッソとブルはそのまま飛び去ろうとするのだが・・・・・・。

 

「ウルトラマンさーん!! ありがとうー!!」

「わぁー!! かっこいい~!!」

 

そんな時、ヒナタと彼女の友人2人の黄色い歓声がロッソとブルの耳に入り、ロッソとブルの2人は互いに顔を見合わせ、少しばかり困惑してしまう。

 

『あれ? ヒナタ・・・・・・に、その友達か?』

『アハハハハ!! そんなカッコイイだなんて、照れるなぁ~!』

 

ヒナタ達が自分達に黄色い声をあげてくれることにロッソは照れくさそうに後頭部をポリポリ搔くとブルはそんなロッソに「なに照れてんだよ」と呆れたような視線を送る。

 

「すいませーん!! 一緒に写真撮って貰ってもいいですかぁ!?」

『えっ!? 写真!?』

『オイどうするよ良!? 俺、髪型とか変じゃない?』

『気にするところそこなのか!? というか、写真はちょっと・・・・・・情報漏洩とかの心配が・・・・・・』

 

なんてロッソとブルが話し合っている間にヒナタはスマホのカメラを起動させてしまい、それに気付いたロッソとブルは慌ててピースサインを作ってポーズを決めながらヒナタ達3人と写真を撮って貰うのだった。

 

 

 

 

 

「なんだよこいつ等ぁ~!! 戦いが終わったら何時までもその辺にいるな!! 原点10だな!! それでもお前等ウルトラマンか!? ああん!!?」

 

アイゼンテックの社長室で、ロッソとブルの戦いの一部始終を見ていたアキラは苛立つように1人でそう怒鳴ると彼は「よし」と小さく呟きながらアイゼンテックの地下室へと向かった。

 

その地下に存在する、とある薄暗い部屋にアキラはやってくると、そこには頭に怪しげな機械をつけられた多くの人々が存在しており、彼等は全員、どこか生気を感じられない表情をしていた。

 

「やはり、なるしかないか。 私が・・・・・・私自身が・・・・・・!!」

 

アキラは力強くそう言い放つと、中央にあったレバーのような装置を引き下げ、機械を装着した人々から何かのエネルギーのようなものが台の上に設置された5つのクリスタルに注がれ、その中央に置かれてある「剣」と書かれたルーブクリスタルの錆が徐々に剥がれ落ちてゆく。

 

そして、錆が剥がれる度に人々からは苦痛に満ちた声が溢れ出すのだがアキラは装置の起動を止めるようなことはせず、構わず続ける。

 

「お、おぉ~!! 遂にこの時がきたかぁ・・・・・・!」

 

さらに次の瞬間、アキラの目の前に、光の粒子のようなものが集い、それが1つの何かの形になろうとしたのだが・・・・・・。

 

しかし、それが完全な形になるには機械のパワーが足りなかったらしく、その「何か」は再び粒子となって飛び散ってしまったのだ。

 

「あ、あれ!? 機械のパワーが足りなかったのか!? へい、ダーリン! もっと機械のパワーをあげるんだ!!」

 

このことにアキラは困惑するが、すぐさま彼はダーリンに機械のパワーをあげるように命令を下す。

 

『これ以上被験者達に負担をかけるのは危険です』

 

だが、ダーリンはこれ以上機械のパワーをあげればここにいる人々の命が危ないことをアキラに告げるのだが、アキラはそれでも構わないと冷酷に告げ、ダーリンにパワーをあげるように再度命令。

 

「構わん! 良いからやれ!!」

『ラジャ!』

「それじゃ皆さん!! ギリギリまで頑張って!! ギリギリまで踏ん張って!! さあ、やり遂げようよ、最後まで!! ファイトだよ~!! 絆の力、お借りしますよ~!!」

 

やがて再びアキラの目の前に光の粒子が集まると、今度こそそれは徐々に形となっていき、アキラはそれを見つめながら不敵な笑みを浮かべる。

 

『エネルギー充填、120%!』

「今度こそ間違い無い! 今こそ、熱い胸できっと未来を切り開く時!! 世界中は誰を待っている!? 世界中は誰を信じる!? そう、この私! 愛染 アキラだ!!」

 

 

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