この武闘派魔法使いに祝福を!   作:アスランLS

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みんちゃすが加入するイベント以外は、ほぼ原作通りです。


パーティー結成!③

【sideカズマ】

 

 めぐみんが涙目になるまで執拗に揺さぶってとりあえず溜飲が下がったのか、みんちゃすはようやくめぐみんの顔から手を放す。

「うぅ……そろそろ私の顔がひしゃげてしまいます……まったく、あなたの暴力的で喧嘩っ早い所は、里にいた頃からちっとも変わってませんね」

「いやオメーにだけは言われたくねーんだけど。……で?どういう了見で俺を巻き込んだんだ、事と次第によっては身も心も傷だらけにしてやるぞコノヤロー」

「う……すみません……ここで断られたらもう後が無いので……つい……」

「あのなー……俺とオメーはいずれ最強の座を巡って戦う運命にある、言わば終生のライバル同士だぞ? そんな俺達が馴れ合ってどうするんだ?」

 え、そんな関係なの君たち? ……ここまでの二人のやり取りを見る限り、言っちゃあ何だがめぐみんが勝てる見込み無くないか? 

「……それともめぐみん。そのことを考慮に入れた上で、オメーはこいつらのパーティーに入りてーのか?」

「……我が爆裂魔法は完全無欠最強無敵一騎当千にして超絶怒濤の究極奥義。……ですがそれと同時に、絶大なリスクを孕む諸刃の剣でもあります……。爆裂魔法を使いこなすには、助けてくれる仲間が必要不可欠。いつまでも孤高の魔法使いを気取っている訳にはいかないんです……パーティーメンバーがいなければ、私は……私の爆裂道は……」

 あ、やばい。めぐみん泣き出しそう。ついさっきまで追い出そうとしただけに罪悪感が凄い。

 みんちゃすも何やら思うところがあったのか、しばらく頭をガシガシと掻いてから、やがて諦めたように溜め息を吐いた。

「……仕方ねーな、今回だけだぞホント」

「っ、いいんですか!?」

「俺にここまでさせたんだ。『やっぱ他のパーティーに行きます』とかほざいたら、オメーの髪の毛を毛根ごと全部刈り取るから」 

「なんですかその悪魔も震えがるペナルティは!? ……しかし問題ありません! 我が爆裂魔法が、このパーティーを伝説へ導くと約束しようではありませんか!」

 …………おーい、なんか俺抜きでどんどん話を進めてるけど、最終的な決定権は俺にあるんだからな? 

「そんな訳でめぐみん共々よろしく頼むわ。つっても俺は色々と忙しいから、ちょくちょくクエストに付き添えないときもあるだろうけど……まあそこはまあ我慢してくれ」

「いやいやちょっと待て、俺はまだパーティー参加を許可した覚えは無いぞ。しかもそんな身勝手な条件を一方的に-」

「参考までに教えとくと、俺のレベルは38だ」

「これからよろしくな二人共!」

「現金過ぎやしませんか!?」

「あっさり手のひら返したわねこのヒキニート……」

 何事もメリット次第。人生はいつだって世知辛いものだ。

 あとヒキニート言うな駄女神。

 

 

 

 

 

「……はい、確かに。ジャイアントトードを三日以内に五匹討伐。クエストの完了を確認致しました。ご苦労様です」

 冒険者ギルドの受付に報告を終え、規定の報酬を貰う。

 アクアとめぐみんはそのままだと俺があらぬ誤解を受けかねないので、とっとと大衆浴場へ押し込んだ。

 みんちゃすは所属している組織とやらに、パーティーに加入したことを報告しに行った。……所属している組織って何だ? それも中二染みた設定なのか? 気になってしょうがないから今度詳しく聞いてみよう。

 仕留めたカエルの内一体は爆裂魔法で消滅したため、クエスト完了の報告はどうなるのかと思っていたが、冒険者カードには倒したモンスターの種類や討伐数が記録されていくらしい。

 俺は改めて自分のカードを見ると、そこにはレベル4と記されている。あのカエルは駆け出し冒険者にとっては経験値的に美味しいモンスターなのだそうだ。

 俺一人でカエルを四匹狩った訳だが、それだけで一気にレベルが4に上がった。低レベルな人間ほど成長が速いらしいが、悲しくなるからこれ以上は深く考えないでおこう。

「……しかし、本当にモンスターを倒すだけで、強くなるもんなんだなぁ……」

 受付のお姉さんは、最初の説明の時に言っていたことだが、この世のあらゆる生き物は魂を体の内に秘めていて、狩ると自動的にそれが吸収されてレベルが上がるらしい。

 ううむ、実にゲームみたいなシステムだな。

 よく見るとカードにはスキルポイントと書かれていて、そこに3と表示されている。これを使えば俺もスキルを覚えられるわけだ。

「ではジャイアントトード5匹の買い取りとクエストの達成報酬を合わせまして、十二万五千エリスとなります。ご確認くださいね」

 十二万五千……十二万五千か。

 あの巨大なカエルが移送費込みで一匹五千円程での買い取り。そしてクエストの報酬が十万円。

 アクアの話ではクエストは、大抵4~6人でパーティーを組んで行うものらしい。つまり一人当たりの取り分はだいたい二万八千円ってところか。

 

 ……割に合わねー。

 

 クエストが一日で済めば日当二万八千円。

 それだけだと一般人にしてはいい稼ぎに思えるかもしれないが、命懸けの仕事にしては割に合っていない気がする。ハッキリ言って元いた世界のブラック企業でも、裸足で逃げ出すであろう労働内容だ。

 事実、今日なんてみんちゃすが助けてくれなければ俺も食われて全滅していただろう。……考えただけでもゾッとする。

 一応ほかのクエストにも目を通すと、そこに並んでいたクエストは……。

 

『森に悪影響を与えるエギルの木の伐採、報酬は出来高制』

『迷子になったペットのホワイトウルフを探して欲しい』

『息子に剣術を教えて欲しい ※要、ルーンナイトかソードマスターの方に限る』

『魔法実験の練習台探してます ※要、強靭な体力か強い魔法抵抗力』

 

 ……この世界で生きていくのは甘くない。

 冒険開始二日目にして、早くも日本へ帰りたくなってきた。

「……すまない、ちょっといいだろうか……?」

 近くの椅子に座り軽いホームシックになっていると、背後からボソリと声がかけられた。

 異世界の現実を嫌と言うほど見せつけられ、なんだかぐったりしていた俺は虚ろな目で振り向いた。

「なんでしょ…………うか…………」

 そして俺は声の主を見て絶句した。

 

 女騎士。

 それも、とびきり美人の。

 

 パッと見た感じ、クールな印象を受けるその美女は、無表情にこちらを見ていた。

 身長は俺より若干高い。俺の身長が165センチだから、それより少し高いとなると170ぐらいだろうか。いなにも頑丈そうな金属鎧に身を包んだ、金髪をポニーテールにした碧眼の美女だった。

 鎧のせいでその体型は分からないが、その美女は何だかとても色気があった。クールな顔立ちなのに何だろう、被虐を煽ると言うか…………っと、いかんいかん、見惚れてどうする。

「あ、えーっと、何でしょうか?」

 同い年みたいなアクアや年下なめぐみん、同性のみんちゃすと違い、年上の美人相手という事で緊張して若干上擦った声になってしまう。

 長い引き篭もり生活の弊害だ……。

「募集の張り紙、見させて貰った。まだパーティーメンバーの募集はしているだろうか?」

 その女騎士が見せてきたのは一枚の紙。

 ……あ。そう言えばめぐみんをパーティーに入れてから、募集の紙をまだ剝がしていなかった。

「あー……まだパーティーメンバーは募集してますよ。と言っても、あまりオススメはしないですけど……」

「そうか、よかった……あなたのような者を、私は待ち望んでいたのだ。……ぜひ私を! ぜひ、この私をパーティーに!」

 やんわり断ろうとした俺の手を、突然、女騎士がガッと摑んだ。

 

 ……えっ。

 

「い、いやいや、ちょっ、待って待って、色々と問題があるパーティーなんですよ、三人いる仲間の内、一人はともかく残りの二人はポンコツだし、俺なんて最弱職で、さっきだって仲間二人が粘液まみれ-いだだだだっ!?」

 粘液まみれと言った瞬間に、俺の手を握る女騎士がその手に力を込めた。

「やはり、先ほどの粘液まみれの二人はあなたの仲間だったのか! 一体何があったらあんな目に……! わ、私も……! 私もあんな風に……!」

「……えっ!?」

 

 このお姉さんはいったい何を言ってるのだろう。 

 

「……いや違う! あんな年端もいかない二人の少女、それがあんな目に遭うだなんて騎士として見過ごせない。どうだろう、この私はクルセイダーというナイトの上級職だ。募集要項にも当てはまると思うのだが」

 なんだろう、この女騎士目がやばい。

落ち着いた雰囲気のお姉さんだと思っていたが……俺の危機感知センサーが反応している。多分こいつは、アクアやめぐみんに通じる何かがあるタイプだと。

 

 ……美人だが仕方ない。

 

「いやー、先ほど言いかけましたがオススメはしないですよ。仲間の一人は何の役に立つのか良く分からないですし、二人いる魔法使いのうち一人は優秀みたいですけど、もう一人は一日一発しか魔法が撃てないそうです。そして俺は最弱職。ほぼポンコツパーティーなんで、他の所をオススメしま……っ!?」

 さらに女騎士の手に力が込められる。

「なら尚更都合が良い! ……いや実は、ちょっと言い辛かったのだが、私は力と耐久力には自信があるのだが不器用で……。その……攻撃が全く当たらないのだ……」

 やっぱりこの女も職だけは立派なポンコツ族か……。

こいつをパーティーに加えたら、ただでさえ大きくなるであろう俺やみんちゃすへの負担がさらに倍増してしまうだろう。百歩譲って俺はともかく、いくら優秀だろうとはいえ見た目10歳くらいの子にそんな重荷を背負わせるのは、流石にアレだよな……。

「という訳で、上級職だが気を遣わなくていい。ガンガン前に出るので盾代わりにこき使って欲しい」

 女騎士が椅子に座る俺に、端整な顔をズイと寄せてくる。ちょちょちょ、顔が近い!?

俺は座っているため相手から見下ろされる体勢なのだが、女騎士のサラサラの金髪が俺の頰に当たってドキドキする。

 こんな所でも長期の引き篭もりによる弊害が……違う違う違ーう! 単に思春期の童貞には刺激が強過ぎて、ドギマギしているだけだ。

 落ち着け、色香に惑わされて選択を誤るな! 

「いや、女性が盾代わりだなんて……」

「望む所だ」

「いや、アレですよ。今日なんて仲間二人がカエルに捕食されて粘液まみれにされたんですよ!?」

「むしろ望む所だっ!」

「え?」

 

 …………ああ、ようやく理解した。

 

 頰を紅潮させて俺の手を強く握る女騎士……こいつも性能だけでなく、中身までダメな系だ。

 


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