この武闘派魔法使いに祝福を!   作:アスランLS

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これまで投稿した文章の修正作業と平行して書き上げたので、今回は少し短めです。


魔剣の勇者①

【sideみんちゃす】

 

「でーがらーしーめーがみーがー……運ばれてーくーよー……きーっとこーのーまーまー……売られていーくよー……がーんばーれーわーたーしー……」

「……お、おいアクア、もう街中なんだからその歌は止めてくれ。ボロボロのオリに入って膝抱えた女を運んでる時点で、ただでさえ街の住人の注目集めてるんだからな? ……とういうかいい加減出てこいよ」

「嫌。この中こそが私の聖域よ。外の世界は怖いからしばらく出ないわ」

 クエストを終えて街に帰って来た俺達は、すっかり檻の中に引き籠ってしまったアクアを馬に引かせながら、やたらと注目を集めつつギルドへと向かっていた。

 なんつーか、奴隷商人みたいな気分になってくるな……? 結構強い気配の奴がこっちに来る。

「め、女神様っ!? 女神様じゃないですかっ! 何してるんですかそんなとこで!」

 そいつはそんな事を叫んで、檻に引き籠っているアクアに駆け寄り鉄格子を掴む。

 そしてそいつアダマンタイトでできた鉄格子を力づくで捻じ曲げ、中のアクアに手を差し伸べた。んー……俺やラムダに匹敵する腕力だが……興味が湧かねーな。

 唖然(あぜん)としているカズマとめぐみんやを尻目に、その見知らぬ男は同じく唖然としているアクアの手を……、

「……おい、私の仲間に馴れ馴れしく触るな。貴様、何者だ? 知り合いにしては、アクアがお前に反応していないのだが」

 手を取ろうとしたその男にララティーナが詰め寄った。こいつにしては珍しくまともな騎士に見えるが……

「……ちゃんとクルセイダーできるなら、普段からそうしろや」

 思わず漏れた俺の呟きにカズマも同意するように大きく頷く。

 男はララティーナを一瞥すると、ため息を吐きながら首を振る。いかにも自分は厄介事に巻き込まれたくは無いのだけど仕方ない、といった感じで。

 男のその態度に、普段はあまり表情をあらわにしないララティーナが明らかにイラッとした。随分と運がいいなこいつ、俺やめぐみんにその反応を向けてたら命は無かったろうに。

 きな臭い雰囲気になってきたのを察し、カズマはこの期に及んでも膝を抱えてオリから出ようとしないアクアに何かを耳打ちした。

 カズマの囁き掛けにアクアは一瞬だけなに言ってんの? という表情を浮かべ……

「……そう、そうよ! そう言えば女神よ私は! それで? 女神の私にこの状況をどうにかして欲しい訳ね? しょうがないわね!」

 アクアがようやくオリから出てきた。

 さっきまで鬱状態だったのに、女神がどうとか耳打ちされただけであっという間にいつものアクアに戻ったなー……。

 もぞもぞとオリから出てきたアクアは、その男に対して首を傾げた。

 

「……あんた誰?」

 

 知り合いじゃねーのかよ。

 それともアクアが忘れてるだけか? こいつ、信じられないっと表情になってるし。

「僕です、御剣響夜(みつるぎきょうや)ですよ! あなたから魔剣グラムを頂いた御剣響夜です!」

 …………なるほど、こいつに興味が湧かねー理由がハッキリした。

 ……アホらし。後はカズマ達に任せて俺は読書でもしてるか。

 

 

 

 

【sideカズマ】

 

「…………?」

 ミツルギとやらの言葉にアクアが尚も首を傾げているが、俺はピンと来た。

 アニメや漫画の主要キャラみたいな名前だがその日本人名からして、俺より先にアクアに強力な装備を貰ってここに送られた奴なのだろう。

 見るからに高そうな鎧を身に付け、腰には黒鞘に入った剣を下げていた。そして後ろには槍を持った戦士風の美少女と、革鎧を着て腰にダガーをぶら下げた美少女を引き連れている。

 ミツルギと名乗ったそいつは一言で言ってしまえば、少年漫画の主人公っぽいイケメン野郎だった。

「……ああっ! いたわね、そういえばそんな人も! ごめんね、すっかり忘れてたわ。だって結構な数の人を送ったし、忘れてたってしょうがないわよね!」

 ようやく思い出したらしいアクア。若干表情を引きつらせながらも、ミツルギはアクアに笑いかけた。

「ええっと……お久しぶりですアクア様。あなたに選ばれた勇者として、日々頑張ってますよ。職業はソードマスター。レベルは37にまで上がりました」

 みんちゃすとほぼ同じレベルか、かなり強いみたいだなこいつ。そんな奴が現れたんだから、またウチの戦闘狂が…………あれ? 

 みんちゃすは興味無しと言わんばかりに『精霊の王アンサー・中章』という小説を熟読している。珍しく全然食い付いてないな……? 

「……ところで、アクア様はなぜここに? というか、どうしてオリの中に閉じ込められていたんですか?」

 ミツルギは、チラチラと俺を見ながら言ってくる。

 さっきの台詞からしてこいつは、いい加減なアクアのことだから、お前は選ばれた者にして勇者だとか、そんな適当な事を言われてここに送り込まれたのだろう。

 というか、ミツルギには俺がアクアをオリに閉じ込めてた様に映ったのか? 

 ……いや、普通はそう取るな。疑うとしたら女性陣やまだ子供のみんちゃすではなく、まずは俺からだろうし。

 本人がオリの中から出たがらないんですと言っても、きっとこいつは信じてくれないだろうな。俺だって第三者の立場だったら、そんな奇特な女神の存在なんか信じないだろうし……。 

 とりあえず自分と一緒にアクアがこの世界に来る事になった経緯や、今までの出来事をミツルギに説明すると……。

「……バカな。君は一体何考えているんですか!? 女神様をこの世界に引き込んで!? しかも、今回のクエストではオリに閉じ込めて湖に放り込んだ!?」

 俺はいきり立ったミツルギに、胸ぐらを掴まれていた。それをアクアが慌てて止める。

「ちょちょ、ちょっと!? いや別に、ここに一緒に連れてこられた事は、もう気にしていないんだけどもね? それに魔王を倒せば帰れるんだし! ……今日のクエストだって、怖かったけど結果的には誰も怪我せず無事完了した訳だし。しかも、クエスト報酬30万よ30万! それを全部くれるって言うのよ!」

 そんなアクアの言葉に、ミツルギは憐憫(れんびん)の眼差しでアクアを見る。

「……こんな男にどう丸め込まれたのかは知りませんが、今のあなたの扱いは不当ですよ。そんな目に遭って、たった30万……? あなたは女神ですよ? それがこんな……。ちなみに、今はどこに寝泊りしているんです?」

 こんな往来で女神とか言うなよと言いたかったが、ミツルギが今にもキレそうな感じなので黙っておく。

 ……というか初対面で言いたい放題だなこの野郎。アクアの事をロクに知らない癖に。

「え、えっと、カズマと一緒に、馬小屋で寝泊りしてるけど……」

「は!?」

 俺の胸ぐらを掴む手に力が入った。

 ちょ、暴力反対! 

 そのミツルギの腕を、ダクネスが横から掴む。

「おい、いい加減その手を放せ。さっきから何なんだお前は。カズマとは初対面の様だが、礼儀知らずにも程があるだろう」

 バカなことを口走る時以外は基本物静かなダクネスが、珍しく怒っていた。

 見ればめぐみんまでもが新調した杖を構え、今にも爆裂魔法の詠唱を……って、それは俺まで仲良くあぼんだからやめろ! 

「…………あ、そろそろ終わった?」

 ちなみにみんちゃすは本に栞を挟みながらそんなことを訪ねてくる。少しマイペース過ぎやしませんかね君。

 ミツルギは手を放すと、興味深そうに三人を観察する。

「……クルセイダーに、アークウィザードが二人? 君はパーティメンバーには恵まれてるんだね……それなら尚更だよ。こんなに優秀そうな人達が仲間なのに君はアクア様を馬小屋なんかに寝泊りさせて、恥ずかしいとは思わないのか? さっきの話じゃ就いている職業も、最弱職の冒険者らしいじゃないか」

 こいつの言い分だけ聞いていると、自分が凄く恵まれた環境にいるかの様に思えてくるが……

「なあなあ、冒険者が馬小屋で寝泊りなんて基本だろ? こいつ、なんでこんなに怒ってるんだ?」

「あれよ、彼には異世界への移住特典で魔剣をあげたから、そのおかげで最初から高難易度のクエストをバンバンこなしたりして、今までお金に困らなかったんだと思うわ。……まあ能力か装備を与えられた人間なんて、大体がそんな感じよ」

 アクアの返事を聞いて、俺は何だか無性に腹が立ってきた。

 タダで貰った強力な装備で何の苦労もしないでこの世界で生きてきたような温室育ちの奴に、なぜ一からこつこつ頑張ってきた俺が上から目線で説教されなきゃいけないんだ。

 そんな俺の怒りも知らず、ミツルギが同情でもするかの様に、アクアやダクネス、めぐみんやみんちゃすに対して憐れみの混じった表情で笑いかけた。

「君達。こんなひどい奴についてきたせいで、今まで随分と苦労したみたいだね。これからは僕と一緒に来るといい。もちろん馬小屋なんかで寝かせないし、高級な装備品も買い揃えてあげよう。パーティの構成的にもバランス取れていていいじゃないか。ソードマスターの僕に、僕の仲間の戦士と、クルセイダーのあなた。僕の仲間の盗賊と、二人のアークウィザード……そしてアクア様。まるであつらえたみたいにピッタリなパーティ構成じゃないか!」

 おっと、俺が入っていませんが。いや、もちろんこの男のパーティに入りたいとも思わないが。

 身勝手なミツルギの提案に、俺の仲間の四人はひそひそと囁き出した。

 性格的は自己中勇者様な感じのミツルギだが、待遇としては悪くは無い提案だ。ソロでも十分強いみんちゃす辺りは間違いなく乗らないだろうが、もしかしたら他の三人なら心も動くかも。そうしたら俺も問題児共の尻拭いから解放されて気楽に……と、少し期待しながら背後の会話に聞き耳を立てると……。

「ちょっと、ヤバいんですけど。勝手に話進めるしナルシストも入ってる系で、怖いんですけど」

「どうしよう……攻めるより受けるのが好きな私だが、あいつだけは何だか無性に殴りたい」

「この上無く痛々しいなー……サボテンを友達と言い張るぼっちよりも痛々しいなー……」

「ゆんゆんが聞いたら泣き崩れますよ……それはともかく撃っていいですか? あの苦労知らずの、スカしたエリート顔に、爆裂魔法、撃ってもいいですか?」

 ……大不評だなミツルギさん。

 と、アクアが俺の服の裾を引っ張った。

「ねえカズマ。もうギルドに行こう? 私が魔剣をあげておいてなんだけど、あの人には関わらない方がいい気がするわ」

 呪われた装備×3を擦り付けられず少し残念だが、ここはアクアの言う通りに立ち去るべきか。

「えーと、俺の仲間は満場一致であなたのパーティには行きたくないみたいです。俺達はクエストの完了報告があるから、これで……」

「まあ待てカズマ、そう結論を急ぐなよ」

 そんな俺を引き留めたのは、ミツルギではなく何故かみんちゃす。その両目は光り輝き、表情は邪悪な笑みに染まっている。

 ……あ、みんちゃすの奴実はかなり怒ってるな。ミツルギを地獄に叩き落とす気満々だ。 

 最近わかったことだが、みんちゃすは意外と仲間想いである。多分ミツルギが俺のことを散々貶したことに相当イラついたのだろう。

 御愁傷様……腹の立つ奴ではあったが、せめてしばらくの間は覚えておいてやろう。

 




ミツルギさん、登場して早々みんちゃすの機嫌を損ねるという痛恨のミス!
次回は確実にロクな目に逢いません。
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