この武闘派魔法使いに祝福を!   作:アスランLS

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ちょっと忙しくなるので、次の更新は一週間後です。


首無し騎士④

【sideカズマ】

 

「なぜ城に来ないのだ、この人でなしどもがああああああああっ!!」

 

街の正門に着いた俺達は開口一番、人じゃない奴に人でなし呼ばわりされた。

正門前にいたのは例の魔王軍幹部、上位アンデッドのデュラハン。

今日は先日と違って、背後に強そうなアンデットモンスターを沢山引き連れている。

デュラハンの心の底からの叫びをみんちゃすは鼻で笑いつつも、読書の邪魔をされて不機嫌だったからか、視線だけで人を殺せそうな目つきでデュラハンを睨んだ。

「あ‘’ー?変態似非騎士腐れ外道ゾンビ野郎にんなこと言われる筋合いは()ーんだよ」

「ちょっと待て!?なんだその早口言葉みたいな不名誉な呼び名は!?」

デュラハンの抗議は華麗に無視して、みんちゃすはなおも続ける。

「つーかよくも俺の読書タイムを邪魔してくれやがったなテメー。ちょうどアンサーが魔王に必殺技を放つシーンだったのに、臨場感ぶち壊しじゃねーかコノヤロー。俺様の楽しみを邪魔してくれたツケ、テメーの命で償ってもらおうか」

「えぇっ!?」

「やめてやれよ……流石に気の毒になってきた」

まさに横暴かつ理不尽そのものなみんちゃすの言い分に、怒りを忘れて思わず面食らうベルディア。流石に見てられないのでみんちゃすを宥めつつ、俺はデュラハンに問いかけた。

「ええっと……。なぜ城に来ないって、なんで行かなきゃいけないんだよ?もう爆裂魔法を撃ち込んでもいないのに」

「……爆裂魔法を撃ち込んでもいないだと?何を抜かすか白々しいっ!」

俺の言葉に怒ったデュラハンが、思わず左手に抱えていた頭を地面に叩き付け、スーパーボールのように跳ね返ってきたところを慌てて脇に抱え直した。

「そこの頭のおかしい紅魔の娘が、あれからも毎日欠かさず通っておるわ!しかもあれ以降はそっちのヤクザ魔法使いも、やたらと炎の斬撃をぶち込んでくるしな!」

「……え?」

俺はそれを聞き、となりのちびっ子魔法使い達を見る。さるとめぐみんはふいっと目を逸らし、みんちゃすは頭を掻きながら舌を出すテヘペロ顔になる。

「………お前、行ったのか。あれからまた爆破しに毎日足しげく通ってたのか!?……しかもみんちゃす、お前まで便乗して行ったのか!?」

「ひたたたたた、いた、痛いです!違うのです、聞いてくださいカズマ!今までならば、何もない荒野に魔法を放つだけで我慢出来ていたのですが、その……城への魔法攻撃の魅力を覚えて以来、大きくて硬いモノじゃないと我慢できない体に……」

「もじもじしながらとんでもないこと口走んな!?」

「痛ててててて……いやいやカズマよー。あの(物理的に)頭の足りてねード腐れ騎士のヤロー、前回あれだけ俺達に上等かましたんだぜ?ストレスでハゲるくらいには精神的に追い込んでやらなきゃ俺の気が晴れねーよ」

「なんでお前そんなえげつないことを澄んだ目で言えるの!?」

俺が二人の頬を引っ張ってると、デュラハンが言葉を続けた。

「この俺が頭にきているのは何も城への攻撃の件だけではない!貴様らには仲間を助けようという気は無いのか!?仲間を庇って呪いを受けた、騎士の鏡のようなあのクルセイダーを見捨てるなど…………!」

 デュラハンがそこまで言いかけた時、重い鎧をガチャガチャ言わせながら、ようやく遅れてやって来たダクネスが俺達の隣にそっと立つ。

日頃からみんちゃすにボロクソ言われてる反動で、アンデットからとはいえ騎士の鑑などと誉められて嬉しいのか、赤い顔で照れているダクネスと目があった。

 

「……や、やあ……」

「………あ、あれえぇぇえええっ!?」

 

それを見たデュラハンが素っ頓狂な声を上げた。兜の所為でその表情は見えないが、多分驚愕していることだろう。

「なになに?もしかしてあのデュラハン、私達が呪いを解く為に城に来るはずだって思って、ずっと城で私達を待ち続けてたの?プークスクス!うけるんですけど!ちょーうけるんですけど!」

「あんな呪いテメーが帰った後に、アクアがアッサリと解いちまったってのになー。城に閉じこもって俺達が乗り込んでくるのを、今か今かと待っていたテメーの姿は実にお笑いだったぜひゃははははははははは!」

デュラハンを指差して、それはもう心底楽しそうに嘲笑う煽りコンビ。そのムカつく面ときたら、つくづくどっちが闇陣営かわかったもんじゃない。

相変わらず表情は見えないが、プルプルと肩を震わせるデュラハンの様子から、きっと怒り狂ってることだろう。

しかし、アクアが呪いを解いてしまった以上は、そんな危ない所にわざわざ行く理由が無いのも事実だ。

「……おい貴様ら。俺がその気になれば、この街の冒険者を一人残らず切り捨てて、街の住人を皆殺しにする事だって出来るのだ。いつまでも見逃して貰えると思うなよ!疲れを知らぬこの俺の不死の体。ひよっ子どもはもとより、たとえ『赤碧の魔闘士』であろうとも討ち取ることは叶わんと知れ!」

煽りコンビの神経を逆撫でする挑発に流石に頭にきたのか、デュラハンが剣呑な空気を滲ませる。

「見逃してあげる理由が無いのはこっちの方よ!今回は逃がさないわよ。アンデッドのクセに、こんなに注目集めて生意気よ! 消えて無くなんなさいっ、『ターンアンデッド』!」

しかし先手を打ったのはアクア。右手を突き出しそう叫ぶと白い光が放たれる。しかしデュラハンはまるで、そんな物は脅威に値しないとでも言うかの様に、その攻撃を避けようともしない。

 

「プリースト対策も無しに戦場に立つとでも思っているのか?残念だが俺を筆頭にこのアンデットナイトの軍団は、魔王様の加護により神聖魔法に対して強い抵抗を-ぎゃああああああああああああ!?」

 

 魔法を受けたデュラハンは、光を浴びた部分から煙を吹き上げさせ、乗っていた顔の無い馬はあっさり昇天してしまった。

自信たっぷりだったデュラハンはしばらく地面を転げ回ってから、息絶え絶えに立ち上がる。体のあちこちから黒い煙の様な物を立ち上らせ、ふらつきながらも巨大な剣を引き抜いた。

「ね、ねえカズマ!あのデュラハンアンデッドのくせに、私の神聖魔法がまったく効いてないわ!?」

いや、だいぶ効いてた様に見えたんだが。ぎゃーって叫んでたし。 

「ほほーう……」

みんちゃすはみんちゃすで、また悪どい笑みを浮かべてるし……。

「ク、ククク……。説明は最後まで聞くものだ。この俺はベルディア。10人いる魔王軍幹部の一角たにして魔王様の盾、デュラハンのベルディアだ!魔王様からの特別な加護を受けたこの鎧と、そして魔王軍一と称される俺の鉄壁の防御力により、そこら辺のプリーストのターンアンデッドなど全く効かぬ!……効かぬのだが…………。な、なあお前。お前は今何レベルなのだ?本当に駆け出しか?行動原理が意味不明で知られている『赤碧の魔闘士』はともかく、本来この街は駆け出しが集まる所だろう?」

言いながらデュラハンは手の上の、アクアを見ている顔を傾けた。……疑問を表す仕草だろうか。

「……まあいい。本来は、この街周辺に巨大な力が落ちて来ただのとウチの変態キチガイ研究者がしつこいから調査に来たのだが……」

仲間に大して随分酷い言いようだな……。

「…………面倒だ、いっそこの街ごと無くしてしまえばいいか」

みんちゃす並に理不尽な事を言い出したベルディアは左手に自らの首を抱え、空いた右手を高く掲げた。

「わざわざこの俺が相手をしてやるまでもない。……お前達!この俺をコケにしたこの連中に、地獄というものを見せてやるがいい!」

「あっ!あいつ、アクアの魔法が意外に聴いてビビったんだぜきっと!自分だけ安全な所に逃げて、部下を使って襲うつもりだ!」

「ちちち、違うわ!最初からそのつもりだわ!」

「騎士を自称するくせにとんだヘタレだなー。このことを『白騎士』が聞いたら怒り狂-」

「おぼろろろろろろろっ!?」

デュラハンが突然吐いたあああ!?

……というか首と胃繋がってない筈なのに、どこからひっぱって来たんだあの吐瀉物は……?

「き、貴様!?世にも(おっそ)ろしいワードを唐突に口に出すな!トラウマがフィードバックして走馬灯が見えたではないか!」 

そう言えばみんちゃすの母親は過去に、魔王軍幹部の大半を恐怖で引き篭りにした武勇伝があるんだっけ……あの反応からして、ベルディアもその内の一人だったのだろう。

「……だいたい、魔王の幹部がそんなヘタレな訳がなかろう!いきなりボスが戦ってどうする、まずは雑魚を片付けてからボスの前に立つ。これはかの勇者アンサーの時代から受け継がれてきた伝統と……」

 

「アクア、一応もう一回浄化魔法」

「『セイクリッド・ターンアンデット』!」

「ひあああああああああー!」

 

ベルディアが言い切る前に、みんちゃすに指示されたアクアに魔法をかけられ悲鳴を上げた。

ベルディアの足元には白い魔方陣が浮かび上がり、そこから天に向かって突き上げる様な光が立ち上っていた。

ベルディアは鎧のあちこちから黒い煙を吐き出しながら、再び地面をゴロゴロと転げ回る。……きっちり吐瀉物は避けているけど、アンデットなのに意外と綺麗好きなのか?

みんちゃすが実に愉快そうにその様を眺める傍ら、アクアが慌てた様子で俺を見る。

「ど、どうしようカズマ!?やっぱりおかしいわ!あいつ、私の魔法がちっとも効かないの!」

ひあーって言ってたし、凄く効いてる気がするが……いや、仮にも女神のターンアンデットを喰らって消滅してないので、しっかりプリーストの対策をしているというのは本当なんだろう。

「こ、この……セリフはちゃんと最後まで-」

 

「悪いアクア。さっき目にゴミが入ってよく見てなかったから、もう一回頼む」

「わかったわ、『セイクリッド・ターンアンデット』!」

「うぎゃあああああああああ!?」

 

しかし流石に魔王軍幹部も、サディストへの対策はしてこなかったらしい。

三度(みたび)地面を不様に転げ回るベルディアをとても楽しそうに眺めた後、みんちゃすはまたアクアに振り向く。

「あ、悪いアクア。ちょっと立ち眩みしてそれどころじゃなかった。念のためもう一度-」

 

「いい加減にしろおおおおおおお!?」

 

あちこち黒い煙を吹きながらも、ベルディアは立ち上がり絶叫する。そして右手を掲げ、

「ええい、もういい!おい、お前ら!街の連中を……皆殺しにせよ!」




ちなみにこの回でのみんちゃすの心境……


みんちゃす(あーあ、もう来ちまったよ……開発中の技はまだ隙がでけーし、よほど弱ってねーと当たらねーだろーな。せっかく練っていた戦術プランが白紙になっちまったな―。仕方ねー、こいつをぶっ倒す方法を考えるとするか。……今から)

THE☆行き当たりばったり人間。
総合的な実力ではみんちゃすよりまだベルディアが上のため、実を言うと割とピンチな状況です。

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