この武闘派魔法使いに祝福を!   作:アスランLS

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原作通り過ぎて警告喰らいました。
お騒がせして申し訳ありません。

どう改編しようか悩んだのですがいまいち案が出なかったので……思いきってカズマの冒険はばっさりカットしました。


『塵滅』のサリナス

【sideカズマ】

 

 突如因縁をつけてきたチンピラ冒険者ダストの提案により一時的にパーティーを変更した俺は、異世界に来て初めて真っ当な冒険をしていた。

 受けたクエストこそゴブリン討伐と大した内容では無かったが、道中で初心者殺しと呼ばれる黒いサーベルタイガーみたいなモンスターとニアミスしたり、討伐対象のゴブリンが予想以上の大群だったりとハプニングも盛り沢山であった。しかし俺の機転と最弱職であるが故の痒いところに手が届くスキルを駆使して、見事クエストを達成したのであった。そしてアクセルの街へ帰還中、再び初心者殺しと遭遇し、あわや絶対絶命かと思われた俺達だったが、再び俺の機転によってどうにか逃げきることができた。

 

「おい、何だよさっきのあれは! カズマ、何しやがったんだよっ! ぶははははっ!」

 テイラーが背中をバシバシ叩いてくるが、その乱暴な痛みが心地いい。

「何ってそりゃお前、俺の伝家の宝刀クリエイトアースとウインドブレスの目潰しコンボに決まってるじゃねーか。俺は冒険者だぞ、スキルポイント高くて初級魔法ぐらいしか取れねえ! わははははっ!!」

「こんな冒険者が居てたまるかよっ! うひゃひゃひゃっ! は、腹いてえっ! 生きてるよ、俺達初心者殺しに出会って生きてるよっ!」

「有り得ないよー! この人有り得ないよ、色々とー! 一体どんな知力してんのさ! ねえカズマ、冒険者カードちょっと見せてよ!」

 俺は言われるままに、リーンにカードを差し出した。

「あ……、あれっ? 知力は平均よりちょっと高いくらいだね。他のステータスも……、って、高っ!? この人幸運、超高いっ!!」

「ほう、どれどれ-うおっ、なんじゃこりゃ!?」

「お、おい、今回こんなに都合良くクエストが上手くいったのは、カズマの幸運のおかげじゃねえか? おい、お前ら拝んどけ拝んどけ! ご利益があるかもしれねーぞ?」

 

 それは無い。断言できる。

 

 本当に運がいいなら、そもそもパーティメンバーにあんな曰く付き物件共が集まってくるはずがないしな。

「まあ何はともあれこれで一件落着だな! 初心者殺しの脅威まで退けたんだ、もう怖いものなんて何もねーよ!」

 ……何か嫌な予感しかしないんだが。

「おいやめろキース。そんなフラグになりそうな台詞を口に出すなよ」

「? フラグ……ってなんだよカズマ?」

「そういう台詞を言うとその直後にだな、とんでもなく恐ろしいモンスターが出てきたりするんだよこれが」

「おいおい冗談きついぜ。ここは駆け出しの街だぜ? 初心者殺しでも大概だってのに、そんなヤバイ奴がそうホイホイと-」

 

 

 グォォォォォオオオオオオオオ!!! 

 

 

「「「「…………」」」」

 キースの台詞は言い切る前に耳をつんざく唸り声に遮られた。俺達は真顔になり声のした方、上空への恐る恐る目をやると、初心者殺しが可愛く見える化け物がそこにいた。

 爬虫類のような頭、蝙蝠のような形状の大きな翼、猛禽類のような鋭い爪のついた脚、人体など簡単に噛み千切れるであろう牙、そして何より恐ろしいのはその大きさ。

 

 どうみてもドラゴンです、フラグの回収本当にありがとうございました。

 

「わ、わわわワイバーン……!」

 軽く現実逃避しかけたが、聞こえてきたテイラーの震え声で正気に戻る。

 ワイバーン……ゲーマーたる俺は勿論知っている。どのゲームでもドラゴンの劣化版みたいな扱いに甘んじてる可哀想なモンスターだ。

 が、劣化版とは言えこいつも立派なドラゴンであることに変わりはなく、まず間違っても序盤に出てくることはあり得ない。

「に、逃げなきゃ……」

「どうやってこんな奴から逃げ切れって言うんだよ!? ……おしまいだ、俺達全員おしまいだあひゃひゃひゃひゃ……」

 血の気の引いた顔で腰を抜かすリーンや精神崩壊したキースの反応からも、この状況がいかに絶望的かを物語っていた。

 くっ、かくなる上はもう一度俺の目潰しコンボで……って空飛んでる奴に届くかこんなもん!? マズい、本当に打つ手無-ってこっち来たあああああ! 

 俺達目掛けて急降下してくるワイバーン。逃げようにも俺含めて全員震えて動けないし、仮に動けたとしても逃げきれる訳がねぇ! 

「「「「もうだめだあああああ!!!」」」」

 まさに絶対絶命……四人仲良くエリス様の下へ直行確定と思われたその時、

 

 

「死ね」

 突如現れた金髪の騎士が、ワイバーンを一刀のもとに斬り伏せた。

 

「「「「…………え?」」」」

 九死に一生を得た俺達だが、あまりに唐突な展開に二の句を継げないでいた。

 身長は多分190近くとかなりの長身。全方位にハリネズミのように逆立った金色の髪に青色の鋭い瞳。顔立ち自体はケチの付けようも無いほど整っているが、どういうわけか不機嫌そうに眉間に皺が寄っている。おそらくは《クルセイダー》だろうが防具はライトアーマーとやや軽装で、左手には白銀に輝く頑強そうな盾を、右手には身の丈ほどの巨大な剣を携えている。

 さっきワイバーンを瞬殺したことといい、駆け出し冒険者の俺でもわかる……こいつ、みんちゃすに匹敵する化け物だ。

 その騎士は俺達の方には目もくれず、明後日の方向へと歩きだした。

「あ、あの!」

 リーンに呼び止められると、その騎士は不機嫌そうな顔のままこちらに振り向く。

「あ”ぁ? なんか用かよてめえ」

 が、ガラ悪っ!? 『THE・騎士』みたいな格好してんのになんだよそのドスの効いた声!? 

「あの、えっと……助けてくれてありがとうございました」

「あぁ? てめえらなんぞ助けたつもりはねぇよ。……どういう訳かこの近辺でワイバーンがウロチョロしてやがんだ、おとなしく街に引き込もって震えてろ三下」

 口も悪っ!? マジで騎士らしさの欠片もねーよこの人! 

「な、なんだとこのや……っ!?」

 三下呼ばわりされいきり立つキースだったが、騎士の放った殺気に気圧されて閉口する。

「……ハッ、やっぱ雑魚じゃねぇか。俺は忙しいんだ、余計な手間取らせんじゃねぇよ」

 嘲るように鼻で笑いながらそう吐き捨てると、その騎士はもうこちらを見向きもせず移動する。

「あれが……ベルセルグ最大戦力にして国王直属の七人の騎士『ロイヤルナイツ』第三席、ダスティネス・フォード・サリナス」

 騎士が去り、ふとテイラーがそんなことを呟いた。ロイヤルなんたらが何かは知らないが、名実ともにとんでもなく強い奴ってのはわかった。

 

「またの名を……『塵滅』のサリナス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【sideサリナス】

 

「これで三匹目……チッ、うじゃうじゃと沸いて出やがってトカゲもどきが」

 ワイバーンを盛大に斬り殺しつつも、内に溜まる苛立ちは消えない。

 クソが……今日は厄日かなんかか? あの愚図の妹がまだ懲りずに冒険者なんぞやってると風の噂で聞いたんで、この俺直々に引導を渡しに言ってやろうと、この雑魚の掃き溜めくんだりまでわざわざ来たってのに……なんだってワイバーンの大量発生なんて異常事態に巻き込まれてんだ俺は? 

 放置しようにもここら一帯は駆け出し冒険者の街のすぐ近く。あの街の雑魚共なんざ一方的に狩られるだろうし……俺も一端の騎士、あの街が落とされることの意味をわからないわけじゃない……が、それでも不満を抱かずにはいられない。ああイラつくイラつく……だいたいなんでこのトカゲもどき共は群れてやがんだよ、もどきとは言えドラゴンだろうがてめえらは。ドラゴンは誇り高いんじゃねえのかよクソが。

 

「随分と苛立ってるみてーじゃねーか騎士様よー」

「あ”ぁ? ……てめえは……!」

 

 神経を逆撫でするほどムカつく能天気な声のする方に殺気を剥き出しにしながら振り向くと、声に負けず劣らずムカつく面が視界に入った。

 左右で色の違う目に黒い髪をし、二振りの剣を腰に差した異色の《アークウィザード》。あの『白騎士』の息子であり、業腹ながら俺の従兄弟にあたる紅魔族……『赤碧の魔闘士』みんちゃすが向こうから歩いてきた。

「……なんでてめえがこんなとこにいやがる」

「その台詞そっくりそのまま返してーんだが。ここは駆け出しの街付近だぞ? 弱者嫌いのオメーが来るところじゃねーだろ。……それとも、またララティーナにちょっかいでもかけにきたか?」

「殺されてえのかてめえ。俺は大量発生したトカゲもどき共を狩るのに忙しいんだ。さっさと消えねえと消し炭にすんぞコラ」

「あー? ……ああ、そのことなら問題ねーぞ、あっちのワイバーンは全部俺が片付けといたからよ。……これで暇になっただろ? 久しぶりに喧嘩でもしようや、なあ? 

 

 

 

 

 

サリーちゃんよ」

決めた、絶対ブチ殺す。




その頃のダストパーティー①

ダスト「爆裂魔法使えるのか?すげー」
めぐみん「そうでしょうそうでしょう!ではその凄さを是非ご堪能あれ!エクスプロージョン!」
ダスト「うぉお!?なんて威力だ!……ん?なんで倒れてんの君?」
めぐみん「魔力を使い果たしました」
ダスト「」

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