この武闘派魔法使いに祝福を!   作:アスランLS

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その頃のダストパーティー②

ダスト「うわっ、爆音を聞きつけて初心者殺しが!?」
ダクネス「望むところだ!我が一刀を受けろ!」
ダスト「おおっ、こいつは頼もし……あのー、全然当たってないんですけど」 
めぐみん「ダクネスの攻撃が当たるわけないじゃないですか、不器用ですもの」
ダスト「」




ダスト「なんか攻撃されてるのに喜んでるし、どうなってるんだよあいつは!?」
アクア「ここで女神降臨!ここで私があいつを倒して、カズマに私の有り難みをわからせ-ひぎゃあああ誰かたすけてええええ!」
ダスト「なんなんだよお前らはああああ!?ちっとも使えねえじゃねえかあああああ!」




赤碧VS塵滅

【sideみんちゃす】

 

「死ねやこのクソガキがァァアアア!」

「テメーが死ね狂犬騎士ィィイイイ!」 

 

乱れ飛ぶ火花。

吹き飛ぶ暴風。

『ちゅーれんぽーと』と『タイラント』の激突……最上級冒険者同士による剣戟の応酬は、周囲にいるモンスターが例外無く怯えて逃げ出す程の轟音を撒き散らす。

未だ刃は掠りもしていないにもかかわらず、苛烈を極める鋼の嵐の余波だけで傷ついていくお互いの身体。ローブは切り裂かれライトアーマーは砕け、肌はズタズタに切り裂かれていく。

俺とサリナスの総合的な身体能力はほぼ互角。俺は魔法で肉体を強化しているが、奴も奴で俺より洗練された闘気術で肉体を強化している。

故に出来たのがこの拮抗状態。

流石は王国最強の騎士団『ロイヤルナイツ』の第三席、その実力はララティーナなどとは比べ物にならない。

『ちゅーれんぽーと』を握る腕が軋む。

体中が激痛で悲鳴を上げる。

それでも俺の心はこれ以上無く高揚していた。

 

 

これだ……!これこそ俺の求めているものだ!

 

 

別にララティーナような被虐趣味に目覚めたわけではない。これこそが俺の覇道……己と互角、もしくはそれ以上の強者との生存競争。ほんの一瞬気を抜けば喰われるであろう、全てを賭けたギリギリの攻防。

最強になることのみを追い求める俺にとって真に己を満たしてくれるのは、やはり戦いのみなのだ。

 

「オラァッ!」

「っ!?」

 

しばらく続いた拮抗状態がサリナスによってようやく破れる。サリナスが勝利を目指す以上、奴からアクションを起こすのは必然だった。そもそも純粋な力比べではサリナスが遥かに上。それでも剣戟が拮抗していたのは、俺が『虎狼輪廻流』による受け流しで真っ向からの激突を避けていたからだ。拮抗状態が続けば生命力を浪費し続けるサリナスが次第に不利になるため、俺からすればわざわざ破る必要はない。

しかしサリナスは激しい攻防の末『虎狼輪廻流』の太刀筋を読みきり、とうとう『ちゅーれんぽーと』と『タイラント』がまともにぶつかり合う。

当然俺はパワー負けし撥ね飛ばされかけるが、『エアウォーク』を発動しつつ自ら先んじて後ろへと吹き飛ぶことで衝撃を激減させる。

「流氷一閃!」

後ろへと跳躍しながら『ちゅーれんぽーと』を納刀し、そしてそれと同時に『雪月華』を抜刀し居合を繰り出す。

精霊結晶で作られた刀は冷気を生み出し、放たれた氷の斬撃がサリナスへと襲いかかる。が、

「マヌケが!俺に魔法なんざ効かねえよ!」

サリナスは左手に携えた銀の盾でそれを受け止めると、氷の斬撃はそっくりそのまま俺へと返ってくる。

聖盾イージス。伝説の武具とまで称されるそれはアークプリーストの『リフレクト』のように、受けた魔法を反射する無敵の盾だ。

「煉獄一閃!」

だがそんなことは当然織り込み済み。再び『ちゅーれんぽーと』を抜刀し居合を放つ。炎の斬撃が襲いくる冷気と相殺し、跡形もなく消し去った。

「ぶっ潰れろ!」

間髪入れずにサリナスは距離を詰め、俺に向かって『タイラント』を薙ぎ払う。おそらくは『虎狼輪廻流』でも受け流しきれないであろう、会心のタイミングで放たれたその一撃を俺は、

 

 

 

 

 

予測通りとばかりに、紅蓮の闘気(クリムゾン・オーラ)を纏いつつ生身で受け止めた。

 

「-なっ……!?」

「残念だが……闘気を使えるのがそっちだけだと思ったら大間違いだマヌケが」

そりゃあこいつを纏ってもサリナスの馬鹿力による薙ぎ払いは、下手したら冬将軍に斬られたときより痛いが……死ななきゃ安い代償だ。

慌てて体勢を立て直そうとするサリナスだが……もう遅い。俺は炎を纏った『ちゅーれんぽーと』と、冷気を帯びた『雪月華』の二振りで、

 

「氷炎十字斬!」

「っっぅっ!?」

 

サリナスを十字に切り裂いた。

こいつもダスティネス家の人間だ、アホみたいに頑丈だから死にはしない。……とはいえ、しばらく動けない程度には負傷しただろうな。つまりは、

 

 

 

「今回は俺の勝ちだ、お疲れさん」

「クソ……が……っ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【sideカズマ】

 

『塵滅』のサリナスとかいう、騎士らしさの欠片もないヤンキーみたいな奴との邂逅後、俺達はおとなしく街へと帰還することに。大人しく従うのは少し癪だが、あいつの言う通り俺達じゃワイバーンなんてどうしようもないしな。

そして街へ帰る途中で何故か怪我だらけのみんちゃすと合流し(本人曰く、大量発生したワイバーンを試し斬りがてら何体か狩った後、とあるバカ野郎と遭遇してそのまま喧嘩したそうだが…………まさかな……)、冒険者ギルドの前についた頃には既に日が暮れていた。

「つ、着いたあああああっ! 今日はなんか、大冒険した気分だよ!」

 確かにな。ゴブリンを狩るだけのお手軽なクエストの筈が、初心者殺しだのワイバーンだのと遭遇した挙げ句、(外見と強さだけは)物語の英雄みたいな奴とも鉢合わせるといった、イベント盛りだくさんの一日になるとは……。

 ……でもまぁ、普段あいつらが引き起こすどうしようもないハプニングと違って、こういうハプニングならそう悪くはないな。

 俺達は笑いながらギルドのドアを開け…………

 

「ぐずっ……ふぐっ……ひぐう……っ。あっ……、ガ、ガズマあああっ……みんぢゃずうううっ……」

 

 ……俺はそっとドアを閉めた。なんかギャン泣きしてる青い髪の女がいたような気がするが、きっと気のせいだろう。気のせいであってくれ頼むから。

「おいっ! 気持ちは心底よーく分かるが、ドアを閉めないでくれよっ!」

 閉められたドアを開け、半泣きで食って掛かってきたのは今朝俺に絡んできたあの男。

 名をダストとか言った、アクア達のパーティの新しいリーダーさんだ。

 ダストは背中にめぐみんを背負い、アクアは白目をむいて気絶したダクネスを背負って泣いていた。なんというか、まあ……普段俺がいるポジションにダストがいるだけの、至極日常的な光景だ。

「……何があったかは大体分かるから聞かなくて良いよな?」

「良くねえよ!? 聞いてくれよ頼むから! 街を出てすぐ、まず各自どんなスキルが使えるのかを聞いたんだ。で、爆裂魔法が使えるって言うもんだから、そりゃすげーって褒めたんだよ。そしたら、我が力を見せてやろうとか言い出してよ、全魔力を込めた爆裂魔法とやらを、いきなり何も無い草原で意味も無くぶっ放して……」

 そりゃそうだろ。爆裂魔法を誉めたりすれば、このロリッ娘は増長してバカなことをやるに決まってるだろうが。

「おいチンピラ、紅茶」

「はいただ今! ……それでだな、初心者殺しだよっ! 爆発の轟音を聞きつけたのか初心者殺しが来たんだが、肝心の魔法使いはぶっ倒れてるわ、逃げようって言ってんのに何故かクルセイダーは鎧も着てないくせに突っ込んでいったんだよ!」

 そりゃそうだろ。強そうなモンスターが現れたら、この変態騎士は興奮してバカなことをするに決まってるだろうが。

「それで、挙句の果てにアークプリーストの姉ちゃんが……」 

 そりゃそうだろ。この駄女神はバカなことをするに決まってるだろうが。

「おい皆、初心者殺しの報告はこいつ等がしてくれたみたいだし、まずはのんびり飯でも食おうぜ。新しいパーティ結成に乾杯しよう!」

「「「おおおおおっ!!」」」

 これ以上聞く必要ないと判断した俺の言葉に、テイラーとキース、リーンの三人が喜びの声を上げる。

「待ってくれ! 謝るから! 土下座でも何でもするから、俺を元のパーティに帰してくれぇっ!」

「茶葉使いすぎなんだよ、テメーは紅茶も満足に淹れられねーのか!」

「熱ぅぅぁあああああっ!?」

 また頭から紅茶をぶっかけられているダストに、俺は心底同情すると。

「これから、新しいパーティで頑張ってくれ。あ、みんちゃすはこっちで引き取るから」

「俺が悪かったからっ!! 今朝の事は謝るから許してくださいっ!!」

 

 ……まあ、本気でパーティー変更できるとは思ってないけどな。少なくとも、やたらと身内に甘いみんちゃすが、アイツらを切り捨てる訳ないだろうし。

 

 

 

 

【sideサリナス】

 

「痛ぅっ……っっ!……あんの化物チビが……!」

 先ほどの戦闘で受けた火傷と凍傷と裂傷の手当てをしながら、その原因となった不愉快なガキの顔を思い出して毒づく。

 本当に今日は厄日かなんかか……? 

「このダメージじゃ、今日のところは引き返すしかねぇな……くそったれが」

 こんなザマをあの愚図に見せるなんざ、俺のプライドが許せねぇしな。それに…………忌々しいがあのガキが側についている以上何が起きようがどうとでもなるだろうしな。




【キャラ紹介】

ダスティネス・フォード・サリナス
年齢:22歳
職:クルセイダー
レベル:58
通り名:『塵滅』
所属:『ロイヤルナイツ』第三席
趣味:バイオリン、ピアノ、ガーデニング
特技:裁縫、お菓子作り
スキル:クルセイダースキル全般
装備・持ち物:巨剣『タイラント』、聖盾『イージス』、ライトアーマー

王国の懐刀ダスティネス家の長男にして、21歳の若さで国王直属騎士団『ロイヤルナイツ』の三席を任される凄腕騎士。苛烈なまでの剣で相対した敵を容赦なく葬っていくことから、魔王軍には『塵滅』の二つ名で恐れられている。
極めて高いプライドと触れるもの全て切り裂く刃の如き乱暴な言動のせいで、民衆や大半の貴族からの人望は薄く、ダクネスとの仲も決して良好とは言えない険悪な関係。しかし王家や信頼は篤く、みんちゃすも彼のことを『騎士』として認めているなど、実力者からは支持される傾向にある。ダクネスとは違う意味で致命的に不器用な男。
殺伐とした性格に反して趣味・特技がとても乙女チックなことを密かに気にしている。

 
『ステータス』
攻撃力 ★★★★★★★
耐久力 ★★★★★★★
耐魔法 ★★★
素早さ ★★★★
器用さ ★★★★
知力  ★★★
魔力  ★
幸運  ★★★★
スキル ★★★★★★★ 
自尊心 ★★★★★★★  

清々しいまでの脳筋アタッカー。
ダスティネス家特有の頑強さと、身の丈程の大剣を片手で振り回せる怪力が強み。ダクネスと違い魔法への耐性はレベルにしては低めだが、魔法を跳ね返す神器イージスでそれを補っている。 
これに闘気による強化が上乗せされるので、攻撃面では冬将軍にも匹敵する。

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