この武闘派魔法使いに祝福を!   作:アスランLS

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規約違反対策と、あと早くバニルさん出したいので、ダスティネス家編はカットします。


六鬼衆③

【sideみんちゃす】

 

「……まあ確かに驚きましたが、ダクネスはダクネスです。超硬いクルセイダーで大事な仲間、貴族がどうとかなんて些細なことですよ」 

 何気ないめぐみんの言葉に、ララティーナは安心したように微笑む。

「…………ん。これからも、よろしく頼む」

 二人が改めて友情を確かめ合っていると、アクアが見合い写真の修復作業を一時中断し、

「……ねえねえ、私もビックリすること言っていい? こないだは二人とも信じなかったけど、私……実は、本当に女神なのよ!」

「「ソウナンダ、スゴイネー」」

「信じてよぉぉおおお!?」

 なんというか、ララティーナがあれこれ懸念していたのがアホらしくなるほどの、いつものやり取りだな……

 

 ……! 左腕の疼き……リュウガ、か。

 

「じゃあこれ持って、ダクネスのパパを説得しないとね。はいカズマ、どう? 完璧でしょ」

 アクアが修復の終わった見合い写真を嬉々として見せびらかす傍ら、俺は左腕に巻いた包帯をほどき浮かび上がった『桐鳳凰』のマークに指を添え、交信してきたリュウガからメッセージを受け取る。

 

 ………………マジかよ。

 

 ついこの前はデストロイヤー、さらにそのちょっと前は魔王軍。そういうのはただでさえ駆け出しの街とは無縁だってのに、舌の根も渇かない内に今度はまたそんな大物が……ここまでくると何者かの策略ではないかと勘繰っちまうな。

 ……まあいい、今の俺達にとってはある意味都合の良い。とりあえず一度月代邸に戻ってリュウガ達と作戦を練って、それから-

 

「これだああああああああっ!」

「うぉおぉっ!?」

「「「ああああああああ!?」」」

 

 思考に没頭していたら突然カズマが見合い写真を引き裂きながら絶叫した。

「……いきなりうるせーんだよ死ね!」

「ぶべらっっっ!?」

 別にビビったわけではないが、なんとかく苛ついたのでカズマをビンタ(弱)で沈めておく。……いや違うから、ちっともビビってないから。急に大声出されて多少驚いただけだから、ほんとほんと。

 

 

 

 

 

「見合いを受けろとはどういうことだ!?」

「このまま、ダクネスが冒険者を辞めちゃっても良いんですか!?」

 無惨になった見合い写真を握り締めながら涙ぐむアクアを俺が慰める中、すごい剣幕で詰め寄るダクネスとめぐみんだが、カズマは痛そうに頬をさすりながらも落ち着き払って二人を制す。

「今回の見合いを断ったところで、ダクネスの親父さんはすぐに次の話を持ってくるだけだろ」

「む……」

「確かに……」

「だったら見合いを受けた上で、ダクネスの家の名が傷つかない程度に、そいつをぶっ壊してしまえばいい」

 ふーん、つまり相手の方から断らせるよう誘導するってことか。そうなりゃイグニスのおっさんも、次の見合いの相手は慎重に吟味しないといけなくなる。中々上手い手段だがなんかひっかか…………ああなるほど、そういうことか。

「そ、それだカズマっ! それで行こう! 上手くいけば、もう見合い話が持ち上がる度に一々父を張り倒しに行かなくて済む!」

 息子があんなんだったり娘がこんなんだったり、つくづくおっさんも災難だな……ついでに妹もああだしな。

「なるほど、それは良いわね! てっきり、『使えないクルセイダーが嫁に行けば少しは楽になるぜヒャッハー!』みたいに考えてるのかと思ったわ!」

 アクアの言葉にビクリとするカズマ……ああやっぱそういう魂胆かい。

「チ、チガウヨ? ダクネスミタイナユウシュウナクルセイダーヲ、イマサラテバナセルワケナイジャナイカ……」

 誤魔化すの下手っ!? なんでカタコト!? 

 三人に非難するような目で詰め寄られて、しどろもどろになるカズマ。……まあこういったケースでのカズマの作戦は大抵予想外のアクシデントで失敗するし、別に放っておいていいだろ。

「じゃあ俺は用事があるんでこの辺で。お見合いぶち壊し計画が上手くいくよう俺も祈ってるぜ」

「待て」

 踵を返し颯爽と立ち去ろうとした俺を、後ろからララティーナが肩を掴んで引き留める。

「あー? なんだよララ……うくくっ……ララティー、くははっ……ナ」

「その名前を呼ぶなわざとらしく笑いを堪えるな! 私の冒険者生命がかかってるのにどこへ行くつもりだ? 用事とは何だ? ……お前まさか、面倒だからと適当に理由をでっち上げて逃げようとしてるんじゃないだろうな?」

「面倒なのは否定しねーけどよ、用事ってのはガチだよ。一旦クリアカンへ帰還するよう『月代組』から連絡が来たんだよ。……こいつを通してな」

 俺が左腕に浮かび上がった『桐鳳凰』のマークを見せると、ララティーナは眉を吊り上げる。

「……そういえばカズマの裁判の件でうやむやになったままだったな。みんちゃす、なぜ『月代組』などに加わった? ダスティネス家の者が王家と敵対関係にある勢力に与する……その意味をわかっているのか?」

 ……ちょっとイラっとしたので、ララティーナの腕を強引に振り払う。

「知るかよそんなもんどうでもいい。まあ確かに? 俺は『白騎士』アステリアの息子だぜ? だけどな、俺はダスティネス家のみんちゃすじゃねー……紅魔族のみんちゃすなんだよ。オメーの家には何の縁もゆかりも義理もねーし、オメーらが没落しようが取り潰されようが知ったことじゃねーよ」

 そう言って俺は『テレポート』を唱え、何やらまだ喚いているララティーナを無視して屋敷を出た。……貴族の分際でこの俺の生き方に指図するなんざ五千年早いんだよボケが。

 

 

 

 

 

【sideリュウガ】

 

「……確認しとくが本当なんだよな? 仮面の悪魔がアクセル近辺にいるってのはよ」

「ああ。『キールのダンジョン』及びその付近にて、仮面の悪魔が関係していると思われるモンスターが多数目撃されているらしい」

 月代邸『上弦の間』にて、つい先程俺の部下よりもたらされた情報の詳細をみんちゃすへ伝える。ちなみに前回と違って今この場所には俺とみんちゃすの二人だけ。マルチェロは多忙のため欠席、ラムダは合コンのため欠席、絢音はついさっきみんちゃすが来たときにいつものやり取り(みんちゃすに性的暴行を働こうとして返り討ち)をした際、頭の打ち所が悪く気絶してしまったため欠席、ケティは音信不通……なんともまあいつも通りまとまりがない。むしろ前回のように全員揃う方が珍しいくらいだ。

「ほほうそれはそれは……カズマを無罪にする証拠を血眼になって探してる俺達にとっちゃ、何とも都合のいい話じゃねーか」

「だな。目撃された幹部がハンスやシルビアなら話は別だったが……相手がバニルなら俺達も遠慮なく手を貸すことができる」

 みんちゃすのパーティーメンバーが魔王軍の手先でないことを証明するには、魔王軍幹部を討伐してしまうのが一番手っ取り早い。しかし冒険者として活動しているみんちゃすならともかく他の六鬼衆……特に月代組若頭である俺は、魔王軍幹部の討伐には安易に力を貸すことができない。

 何故ならそれは「月代組」の「魔王軍」への明確な敵対行為に該当してしまうからだ。魔王軍と全面戦争になってしまえば、勝とうが負けようが壊滅的な被害は避けようがない。そうなれば我々と因縁のあるあの宰相は嬉々としてクリアカンへ侵攻を開始するだろう。よって本来なら魔王軍幹部討伐へ協力など絶対にしてはいけない。

 ……が、相手がかの仮面の悪魔なら話は別だ。奴がなんちゃって幹部なのは意外と周知の事実であるし、方々から恨みを買っているおかげで奴を討っても魔王軍への敵対行為かバニル個人への怨恨か判別できない。

「よし、そうとわかりゃさっそく戦闘の準備だ。アヤネはその内起きるとして、ケティとマルチェロは参加できそうにねーよな。……ところで、ラムダの奴はいつ帰ってくるんだ?」

「情報は印を通して伝えてあるので、夕方頃には帰ってくる筈だ」

「となると決戦は夜だな。じゃあ作戦とかその他諸々は任せた、俺はカズマ達にこのこと知らせくるぜ」

「あ、おいみんちゃす……随分とせわしない奴だなアイツも」

 いや、それだけそのカズマというパーティーメンバーが大事なのだろうな。健気なことだ。

「……やはりアイツは、ヤクザと関わりなんて持つべきじゃなかったのかもしれないな」 

 もう何十回目かもわからない疑念と後悔が再び顔を出す。

 仁義だ何だの掲げたところで俺達はあくまで裏の住人、悪側の人間だ。口に出すのも憚れるエグいことも色々とやってきたし、これからもそういう機会はまだまだあるだろう。……ここは陽の当たる世界を生きられる人間が、わざわざ踏み込むような所ではない。

 生まれたときから道が決まっていた俺や絢音、ラムダはともかく……みんちゃすやケティは表の世界でも凄腕冒険者として輝かしい未来を享受できた筈である。

 六鬼衆に空きがあり、なおかつあの二人にそれに見合う実力があったからといって、果たして安易に加入を認めて良かったのだろうか? 

「……ははっ、オジキに聞かれたらぶん殴られるだろうな」

 いつから人の生き方にケチをつけられるほど偉くなったんだか。アイツらが自ら選んだ道なんだ、それを尊重してやるのが兄弟ってものだろう。

「さて、それじゃあ絢音が寝ている間に今夜の作戦でも考え-」

「う、ううん……ハッ、みんちゃすさんは!? 私のみんちゃすさんはどこ-ふぎゃっ!?」

 絢音が起きた瞬間、俺は刀の柄の先端で絢音の側頭部を強打して再度気絶させた。

 このやかましい馬鹿娘が起きてちゃ、ろくに作戦もまとまりやしないだろうからな。




六鬼衆にのみ刻まれる花札の絵柄を模したタトゥーは、携帯電話のように連絡を取り合うことができる特別な術式が組み込まれています(制作者キャロル)。
なお、本人の要望によりみんちゃすのだけ使用の歳に腕が疼く仕様となっています。どうしても「左腕が疼く……!」ってやりたかったんでしょうね。実に健全な紅魔族です。

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