Undertale─サンズ戦以降─   作:ごくごく普通の怪人

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サンズ戦─────驚くなって言っただろ?

「だって......戦いっぱなしで、俺はもうヘトヘトだよ」

 

*ほんとうの バトルが はじまった。

 

見れば、サンズは額から汗を垂らし、動きも若干だが鈍くなっている。

 

─────────────────好機だ。

 

「これ以上やるつもりなら......俺は、『スペシャルこうげき』を使わなきゃいけなくなる」

 

言いながら、上から骨を落としてくる。

左右に反復して避けると、僕はなぜか”枠”の隅にいた。

サンズがなにかしたのか?

分からないが、とにかく攻撃を避けなければ。

避けて避けて、そしてサンズが疲弊し切ったところで─────────────────殺す。

 

サンズの攻撃は、オメガフラウィーと戦った時の「セーブ&ロード」に似ていた。

同じ位置に何度も瞬間的に戻され、違う攻撃が攻撃途中の状態から襲ってくる。

 

サンズはこの世界の裏に気づいている。

ならば、セーブ&ロードも出来るんじゃないだろうか?

 

ニンゲンのようにケツイを持っていないからリセットまでは出来なかったとしても、データを保存して、ロードすることなら、出来るんじゃないのか?

いつも「近道」と称して明らかに道のない所や別の方向に連れていかれていたが.........もしかするとこれが関係しているのではないか?

いや、まさかな。

 

サンズは笑って、無言のまま攻撃してきた。

 

もしもの可能性を重ね合わせて、全攻撃を回避した。

心做しか、最初の時よりも......躱しやすくなっている気がした。

 

「そう......俺の『スペシャルこうげき』。何処かで聞いた事あるか?......覚悟しなよ。次の攻撃の後で、『はつどう』するから」

 

怪しい笑みを浮かべて、サンズは左手を空に翳す。

重力攻撃の構えだ。

 

枠の壁に叩きつけられる僕のタマシイを死に物狂いで壁から離し、迫り来る骨を避ける。避けて、避けて、避けて、避けて.........。

 

────────────────しぶといな。

 

「はぁ、しょうがないな。じゃ、行くぞ?この攻撃を乗り切ったら、俺の『スペシャルこうげき』が炸裂するからな」

 

言葉が聞こえると同時に、僕は背後から迫ってきた骨を睨む。

右に避け、左に避け、右に避けを繰り返したあとで、枠の形が変わっていることに気づく。

なんだか、横に長くなっていないか?

 

サンズの笑みは深くなる。

 

長くなった枠の左端に僕を押し付け、今度は超高速で右端へと叩きつける。

途中には無数の骨の障害がある。全て回避は出来ない。数発はくらった。だが、それまで。

 

壁にぶつかると、避難した。重力操作の予兆があったからだ。予想通り、僕のいた場所には骨が突き出していた。

 

と、枠の長さが元に戻る。

攻撃は終わりかと思ったが、またセーブ&ロードがはじまった。

重力操作から逃げ切り、休息すらできず、枠の周囲を回るようにビームが縦横無尽に駆け巡る。

ぐるぐると回るビームを中心近くで、移動距離を短くしてなんとか躱す。少し掠るが、最初の時ほどのダメージは受けなかった。

サンズは確実に、疲れている。

 

 

僕の体が4つの壁全てにランダムにぶつけられる。重力操作。躱すことの出来ない攻撃で僅かなダメージを蓄積する。

だが、僕のLOVEがゼロに届く前に、サンズが負けた。

動きが鈍くなった。

 

素早く動かしていた腕も次第にゆっくりになり、そして......僕のタマシイは静かに床へ。

 

「ハァ......ハァ.........仕方ないな......」

 

サンズの動きは遅く、何かを悟ったように落ち着いている。

 

「......それじゃあ......ほんとにスペシャルこうげきをお見舞するからな。かぐごはいいか?...........驚くなよ」

 

さっきから見えていた骨がいつの間にか消え失せ、攻撃の兆候が見えない。

わけも分からず、僕は混乱してタマシイを動かす。

 

「......どうだ?驚くなって言っただろ?」

 

黙想し、行動の読めなかったサンズが急に目を見開いた。

 

「そう、スペシャルこうげきなんて、ないんだ。いくら待っても、何も起こらないよ。.........へへ......、驚くわけ、ないよな?」

 

騙して悪いな、と詫びるように言う。

反省せず悪びれる少年のように、ヘラヘラと.........それでも必死に、抵抗した結果だ。

 

「お前を倒すなんて、俺には無理なんだ。...お前のターンになったら、いつかは殺される」

 

間違いない。

万が一に死んでも、僕にはセーブ&ロードの力がある。

一つ前のセーブポイントから、またサンズと...戦うことが、出来る。

 

その度にサンズは疲れ、燃え尽きて、こうして......必死に食い止めようとするのだろう。

 

「それで、思いついたんだよ...............お前のターンにならなきゃいい、って。だから、」

 

......お前が諦めるまで、俺のターンを続けることにした。

 

サンズは笑って、そう言ってのけた。

元々そういうつもりだったのか、はたまた...言った通り、今思いついたのか。

どちらにせよ、サンズのターンが終わらない限り、僕のターンは来ない。

戦いの仕組みそのものを武器にするなんて、流石はサンズ、と言ったところ...か。

 

「ここで2人、永久に戦い続けることになってもな。分かったか?」

 

お前に勝つことなんて無理なんだ、だから諦めろ。このデータを、もうロードするな。

サンズはそう言いたいのだろう。

だが、それで本当に...この世界のサンズは救われるのか?

既にセーブポイントは変わっている。バピルスも、トリエルも、アンダインも、もう助けることは無理だ。

 

「ここにいても、タイクツするだけだ。っていうかもう、タイクツしてきたんじゃないか?」

 

道化師のような笑みを深め、僕に額を押し当てる。

 

「タイクツしたらお前は『やめる』だろ?」

 

至近距離にいた彼は、サッと距離を取り直す。

いくら向こうのターンとはいえ、戦いが終わったわけでは、まだ無い。

 

「知ってるよ、お前みたいな奴のことは」

 

しばらくして、サンズはまた語り出した。

 

「”ケツイが固い”って言うんだろ?......何があっても、絶対に諦めようとしないんだ。頑張ったところで、いい事なんて1つもないのにさ。どれだけハッキリ言ってやっても、やめようとしない」

 

みんなを救ったのがケツイの力なら、みんなを殺したのもまた、ケツイの力だ。

力は、使いようによっては......最大の凶器になる。

 

「良いか悪いか、なんて関係ないんだよな?」

 

「...」

 

「『できる』ってだけで、やろうとするんだ」

 

「...」

 

「そう、『できる』ってだけで.........やらずにはいられないんだ」

 

それが、僕ら”プレイヤー”の性なのだ。

ゲームには、何かしら......絶対にクリア出来る抜け道が存在する、と。

 

「だけど、今度こそ......本当に終わりだぜ。これ以上は何も無い。だから俺から言えることは一つだけ───」

 

「─」

 

「───お前のそのつよい『ケツイ』で、すっぱり...諦めることだ」

 

「──」

 

「そして......ふぁぁぁ、何か別のことでもするんだな.........」

 

「───」

 

「────」

 

「─────」

 

「──────」

 

どれくらいの時間が、経っただろうか。

サンズの瞼は閉じ、心地の良さそうな寝息が聞こえてくる。

どうにかして、ここから脱出しなければいけない。

 

タマシイをやたらめったらに動かしていると、不意に枠がズレた。

 

─────────────────これは......。

 

左方向に押し続けると、枠はどんどん移動していく。端っこまで来ると、今度は下に動くようになった。

 

できる所まで。行ける所まで。

 

そうして、僕のタマシイは「こうげき」スロットに重なり、眠っているサンズを切り捨てて─────

 

「おおっと、そうは問屋が───」

 

もう一度、切り掛かる。

 

 

『9999999』

 

 

一撃目は避けたサンズでも、2擊目が避けられる訳では無い。

だとしても、今の攻撃は.........どこから?

 

切り口からは赤い液体が漏れ出し、倒れ込んだサンズは黙り込む。

 

その色は、いつかに見た...サンズの持ったケチャップのようで。懐かしくて、でも、何故か憎くて。

 

切り口を見下ろし、僕を見て、もう一度切り口を睨んで......。

 

「ハハ......どうやらここまでみたいだな」

 

それは、サンズがここまでという意味なのか。あるいは、僕がここまでなのか。真意は判らない。判っては行けない気がした。

 

「.........。......いいか?俺は止めたからな?」

 

サンズは立ち上がる。

傷を押さえていた手を翻し、またおどけた表情を取り戻す。

 

「んじゃ、グリルビーズにでも行くかな。...............パピルス、お前も腹、減ってるか?」

 

居ないはずのパピルス、その声も......一緒に聞こえた気がして。

 

 

 

サンズの去った回廊に、最後のレベルアップ───20LVになった音だけが、無情に響いていた。

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