地上最強の生物のラクーン観光記   作:ケプラー星人

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乱舞ッッッ!

 

 

 勇次郎は笑みを浮かべる。

 

 神──────と化したウィリアム博士を始めとしたラクーンシティに跋扈する怪物達は別にしても自分に、地上最強の生物である自分にこれ程までの高圧的態度を取れる事自体、稀中の稀であり称賛に値する。塔の上に居る男から感じ取れる自信、そして自らの強さに対しての確信。勇次郎は喜びを隠せなかった。

 

「何処の誰かは知らんが跳ねっ返りとは即ち鮮度。その活きの良さを堪能させて貰う」

 

「ユージロー・ハンマ。貴様には私の覇道の糧になって貰うのだから名乗ってやろう」

 

 金髪オールバックの男は優に高さ30メートルはあろうかという塔の頂上からジャンプする。普通に考えれば見投げにしか見えない行為である。芝生や地面は粉々になりながらもしかし男は何事も無く着地する。勇次郎は思わすヒューと口笛を吹いた。

 

「私の名はアルバートウェスカー。ユージロー・ハンマ、お前の類い稀なる細胞を頂く。私の野望の為にな。一緒に来て貰おうか」

「エフ、エフ、エフ……世を知らぬとは中々どうして」

「ふむ、やはり交渉は通じぬか……ならば力づくで来て貰うしかないな」

 

 自信しか見えない自己紹介も束の間、ウェスカーは目にも止まらぬ高速移動を開始する。その表現は決して比喩ではなく人の眼には写らず、人の動体視力では姿を捕らえる事は不可能である。ただ透明な何かが見えるだけだ。

「フンッ!」

 ウェスカーが繰り出した手刀は地上最強の生物の頬を掠める。と同時に宙に鮮血が舞う。カウンターで放たれた勇次郎のハイキックはスウェーバックで回避された。すさかず勇次郎はハイキックで浮いた足を急激に地面に落とすが地面が抉れただけだった。瞬時に数メートル離れたウェスカーは手で埃を払う。

 

「こんなもんのか、ユージロー・ハンマ」

「少しは楽しめそうか」

 勇次郎が動きだそうとしたその時、後方で爆発音が鳴り響いた。その衝撃はこの公園中央広場を少なからず揺らす。

「なんだ?」

 

 ウェスカーの言葉に被せる様に今度は中央広場に数発のロケット弾が撃ち込まれる。二人いや、二匹の超獣の遊び場は炎に包まれた。

 

 勇次郎は後ろを振り返る。どんな小さな気配でも地上最強の生物は察する事が出来る。そこに居たのは傷だらけの女性と迷彩服を着た男性、そして人間とは思えない程の筋肉量、筋密量を持った女性? の姿だった。傷だらけの女性と迷彩服の男性はハンドガンとアサルトライフルを高台に向かって放っている。高台に居たのは皮膚の爛れた大男だった。片手にロケットランチャーを装備しており、銃弾をモノともせず標的を仕留めるべくロケット弾を放つ。ターゲットはあの三人、いや行動を見るにあの特殊なハンドガンを持っている女性の様だ。

 

「ジル、生きていたか。そしてネメシス……噂には聞いていたが本当に製造していたとはな。まあ、いい。ついでにNe-aも頂くとしよう」

 

 宝が増え、喜びを隠せないウェスカーに無数の銃弾が降り注ぐ。しかし超人に傷はなく、漆黒のコートに数ヶ所の穴が空いただけだった。

 

「スペクター、あれがアルバートウェスカーか?」

「そうだ、HQの情報通り。があそこまでの身体能力を備えているとは聞いてはないな」

「まあ、出来る限りのサブミッションだ。なるべく仕留めようじゃないか」

 

「U.U.Sか。アンブレラに私の裏切りがばれた様だな」

 ウェスカーにU.U.Sと呼ばれた集団は標的を蜂の巣にしまいと銃を構えた瞬間! 

「散れ!」

 

 一人の隊員が叫ぶと爆発が起きる。二体目の巨人がロケット弾を放ったのだ、二体目の後ろに三体目もいる。U.U.Sは一斉射撃で応戦する。

 

「フン、ネメシスは数体製造に成功していたか。まあ、いい。私は」

 ウェスカーのセリフを遮るハイキックが顔面を直撃せんと迫る! この一撃はなんとかガードするが、追撃のボディブローはクリーンヒットする。ウェスカーの口から血が流れ落ちる。

「随分、散漫だな」

「チッ」

 

 勇次郎は瞬時に距離を詰めた。このスピードは自らの行動も含め、かつて体験した事のないものだった。だからこそ勇次郎の抜き手はウェスカーの脇に突き刺さる。がウェスカーが放ったカウンターの抜き手も勇次郎の身体に有効打撃として刻まれる。

 

 投げ

 

 主に打撃を好む勇次郎にしては珍しい攻撃方法である。足払いをするでもなく、ただ力まかせにウェスカーを投げつける。地面に叩きつけられたウェスカーの受け身は地上最強の生物が繰り出す投げ速度前には意味をなさなかった。

「どうした? 間合いだぜ?」

「!」

 

 殺気を感じた勇次郎はウェスカーへの追撃を直ぐ様中止し、素早くしゃがむ。ネメシスのロケットランチャーによる横薙ぎは空を切った。とウェスカーはネメシスの足を薙ぐ。軽く宙を舞ったネメシスの脚を掴む。ネメシスをその中肉に見合わぬ超腕力で自身の周りを三周回した。

「フン!」

 弾丸に勝るとも劣らない速度てネメシスの体が勇次郎に目掛け、飛ぶ。彼は避ける気は毛頭も無い。

 

 粉砕

 

 背中に鬼の顔を浮かべた勇次郎が繰り出した拳はネメシスの醜悪な顔面を粉々にした。それだけではない、シーソーの如く、今度はウェスカーに目掛けてネメシスの体が飛んで来る。彼はすんでの所で回避する。

「フフ、確かに予想以上だ。私の想像は稚拙であったと言わざるを得ない。ユージロー・ハンマ、益々お前の細胞を欲しくなったぞ」

「フッ……夢は叶わぬから夢なのだ」

「スタァァァァァァァァァズ!」

 

 もう一体のネメシスがウェスカーに触手を放つ。足に絡めついた触手は標的の素早い動きを奪う。

「ウェスカーァァァ。カルロス、アイツごと怪物を撃って!」

「あ、ああ」

 

 ジルとカルロスは二つのターゲットに向かい、乱射撃を行う。ネメシスは二人の動きを止めようと反転するが的確にウィークポイントである顔に銃弾がめり込む為、前進すら出来ない。

「ジル、ちょうど良い。ここで葬ってやる」

 ウェスカーはまたネメシスを持ち上げると盾とした。銃撃を防ぎながらジル達に接近する。

「フン」

 ネメシスをカルロスに投げつけるとカルロスはギリギリで回避する。ウェスカーはソバットをジルに放つ。ガードするも遠くに吹き飛ばされた。

「こんなものでは済まさん。更なる地獄を見せて……」

 その刹那、ウェスカーの顔面は大きく歪み、体は吹き飛ばされる。

「あ、あなた……」

 ネメシスすら捕食する超雌の飛び蹴り、まともに食らえばこうなるのは必然的だ。超雌は興奮が覚めぬのか、ただ鳴く。

「グルルルルルルルルルルルルルッ」

 超雌と超雄、引かれ合うのは世の理であった。彼女は勇次郎に向かい翔んだ。

「だ、駄目よ! その人は味方! (たぶん……)」

 

 ジルの声も虚しく、超雌の蹴りは勇次郎の身体に接触する、ガード越しにもダメージを与える蹴りの余波で勇次郎は数メートル飛ばされる。

「エフッ、エフッ、エフッ」

「今夜はなんという夜だ」

 余韻に浸るのも束の間、勇次郎は後ろ回し蹴りを放つ。真後ろに居たウェスカーは高速スウェーバックをまたもや披露する。その不利な体勢から放たれたアッパーカットは勇次郎のズボンを切り裂く。

「ベクター!」

 

 U.U.S隊員達からベクターと呼ばれた隊員は超雄二匹の懐に飛び込む。回し斬りで両雄の腹を浅く切ると素早く場から抜け出す。ハンドガンによる銃撃は回避された。

「流石。二人ともマスターが言っていた通り、化け物だ」

「なんだ?」

 この場で戦闘を繰り広げていた全員がその異変に気付いた。時計塔が徐々に崩れ去っていく。それは見る見る、巨大化、肥大化していった。

 

「リサ・トレヴァー……」

 

 勇次郎によって時計塔に埋められていたリサ・トレヴァーの身体は巨大化していく。推定5メートル以上ッッッ! 先程とはうって変わってその動きも激しくかつ俊敏なものに変化している。

「なんだ? あれは? 撃て、撃てぇぇぇぇ」

 ジル、カルロス、U.U.S勢揃いの一斉射撃もまるで効いている様子はない。ウェスカーは何か納得した表情だ。

「フッ、リサ・トレヴァー。ここまでだったか。ユージロー・ハンマ、今回はここまでにしといてやろう。さらばだ」

 

 勇次郎にそう告げるとウェスカーは人間ではまず跳べない飛躍でその場を後にした。超雄を逃がしたといっても勇次郎の満足感は消えなかった。

「エフッ、エフッ。怪獣退治と洒落込むか」

 

 

 勇次郎はハンドポケット状態で巨大化したリサ・トレヴァーに向かっていく。ジルにはそれが自殺行為に見えた。

「止めなさい、死ぬわよ!」

 がその言葉を無下にする一撃がリサ・トレヴァーの弁慶の泣き所に入った。

「あの子、どこまで無茶苦茶するつもりなの?」

 

 超雌の空気を読まない素晴らしき一撃に答える蹴りを勇次郎も反対側の泣き所に入れる。リサ・トレヴァーは悲鳴を上げながらダウンする、その際、ネメシスの一体が下敷きになった。あれでは助からないだろう。

 

 超雌は巨大化した怪物の頭にかぶりつく。強力な顎の力はリサのキテレツなマスクを引き剥がすには十分だ。連鎖する様に勇次郎が傷口に下段正拳突きを叩き込む。リサはたまらず暴れ、二人を地面に落とす。立ち上がると敵を威嚇する為か雄叫びを上げる。不死身の自分をこれ以上傷付ける事は許さないという意思表示でもあった。

 今まで暴れに暴れた超雌が突然黙る。見てはいけないもの、自分の生きてきたあの強烈な時代にも居なかった怪物がそこに居たからだ。

「ベクター見て」

「ああ、フォーアイズ……」

「鬼が……」

「鬼が……」

 

「鬼が哭いているッッッ!」

 

 生物としての範馬勇次郎最強の技、いや形態。生物の頂点かつ特異点。ヒッティングマッスルを極限まで鍛えた結果、背中に鬼の形相を浮かべた先にある領域──────最強の存在である鬼を泣かせるという暴挙かつ快挙。

 筋肉の極限から離れた拳二撃はリサ・トレヴァーの足を粉砕し、継ぎ接ぎの人面マスクごと怪物の頭を吹き飛ばした。口が開けっ放しにならなかった者は誰も居なかった。

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