地上最強の生物のラクーン観光記   作:ケプラー星人

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随分お待たせしました。何とか近場で終わらせたいと思います。


超ッッッ!

 

 気付いた時にはU.U.Sやネメシスの一体はその場には居なかった。宴も闌、兵が夢の跡。ラクーンシティが誇る時計台が破壊されたその場に居るのは地上最強の生物、ジル・バレンタイン、カルロス・オリヴェイラ、そしてコロラド州にある核廃棄物隔離施設内地下に存在する岩塩層から発見された原人だけだった。

「な、なんだか知らんが助かった、ありがとう」

 カルロスの礼にも何ら反応を示さない勇次郎はジルに視線を向けている。

「そいつ、感染してるぜ」

 カルロスは目の前の屈強過ぎる男の言葉を上手く飲み込めなかったが、ジルが突然地面に膝を付くとその真意が理解出来た。

「ジル!」

 ジルの顔面は蒼白で至るところに青黒い筋が浮かび上がっている。呼吸も荒い。このパンデミック下ではそれは感染を意味していた。

「不味い……早く手を打たないと。近くに病院がある、そこへジルを運ぼう」

 カルロスに先導され、一行は足を進める。勇次郎は振り返って顔が吹き飛んだ巨大化したリサ・トレヴァーを眺める。

 これで終わりではない、勇次郎の頭の中に巡るこの考えは自信でも無く、経験から来るものでも無い。戦闘をこよなく愛する者特有の直感である。

 

 ラクーンシティ唯一の総合病院の中は例によって荒らされていた。市が誇る外観も設備も滅茶苦茶に破壊されていた。近くにある事務室のベッドにジルを寝かせるとカルロスはホールに居る勇次郎に告げる。

「俺はワクチンを手に入れる。この病院内にあるという情報は手に入れた。あんたはここを確保してくれ」

 カルロスがその場を立ち去ると、勇次郎は笑みを浮かべる。そもそもこの男に安全確保の為の行動等必要無い。

 

 そうッッッ! ここに居る超雌ッッッ! コロラド州にある核廃棄物隔離施設内地下に存在する岩塩層から発見された巨大なホミニン──ピクルと同種の原人ッッッ! 

 恐らくピクルと同じく数多くの恐竜を葬って来たであろう最強の原人がここにッッッ! 地上最強の生物の目の前に居るッッッ! 

 夜の病院、最強が二人

 

 勝負以外に何も始まる訳は無かった。まず超雌が仕掛ける、一般人の背丈程あろうかと思われる極太の脚から上段前蹴りが放たれるッッッ! 

 

 が勇次郎は予測していたが如くしゃがみ、超雌の足元を薙ぎ払う。130キロ超はあるであろう重巨体が軽く宙に浮く。その状況下では地上最強の生物のアッパーが超雌の顎にクリーンヒットするのは必然だった。

 原人の身体が二回転、三回転、四回転と何重もの回転を重ねながら勢い良く地面に落下する。常人がその光景を見たのなら、間違い無くまず立ち上がれないと判断するだろう。

 が超雌は着地とほぼ同時に地面を蹴り、勇次郎に近付く。たった一蹴りの力で十メートル以上離れていた勇次郎の眼前に移動すると拳を振り上げる。拳は宙を切るものの地上最強の生物の頬は鮮血で真っ赤に染まった。勇次郎が満足げな表情を見せたのも束の間、前蹴りが勇次郎を襲う。その速度、威力共に人智を遥かに超えたものだ。勇次郎は瞬間的に超雌の反対側壁に叩きつけられた。彼には珍しく口からの吐血を見る。

 

「喰うだけの事ならば幾らでも手段はあったものの、態々恐竜を捕食するという一見すると愚行、が愚行にあらず」

 勇次郎は前に出る。大概の敵を数発で仕留めて来た超雌にとってそれは喜び以外の何物でも無い。彼女の居た時代には決して居なかったタイプの敵、存在し得なかった敵、いや友。超雌は狂喜の微笑みを浮かべた。

 

 打! 

 

 超雌のパンチを勇次郎は全身に血管を浮かべ上がらせながら受け止める。ギシギシと肉と肉が擦れ合う音がホール内に響く。暫くは均衡を保っていたものの原人が徐々に握り拳を前に押し出している。G3との正面切っての殴りあいすら制した範馬勇次郎が力負けをする。その事実に勇次郎は嬉しさが五臓六腑に込み上げて来る。だからこそそれは姿を表した。

 

 鬼の貌ッッッ! 

 

 背の肉は打撃に最も重要な筋肉。度重なる戦闘によって浮かんだ鬼の形相から生じる攻撃は全てを葬り去る。

「!」

 原人の腕が少しずつ後ろに押される。如何なる恐竜に対しても力負けする事など無かった原人は今、初めて敗北を味わう。しかしそれで気落ちする種族ではなかった。勇次郎の手を振りほどき、バックスッテプで後退し、仕切り直しを図る。 

 

 超雄と超雌、両名が筋肉を最大限まで隆起し、最大限の幸福を得ようとする。そんな肉の宮達にゾンビ達の襲来など蚊がやって来る様なものだった。病院はゾンビや寄生体、ハンターで溢れかえっていた。

 

 

 が一行は一向に先に進まなかった、いや進めなかった。

 

「ッッッ~~~…………」

 

 勇次郎と原人の動きは最早生物の眼球で追える速度を凌駕していた。それはtウイルスの感染者も例外ではない。

 ここに入ったら死ぬ。その事実は知能を無くしても理解出来る程に皮膚感覚で敏感に感じる事が出来る。

「キェェェェェェェェ」

 意気がったハンターが一匹、ホールの中に入って行ったがあっという間に肉塊にされた。まるでホール全域に一撃必殺の攻撃の膜が張っているかの様だ。

 

(こ、これじゃマシンガンの方がマシでぇ~~~)

 

 そんなゾンビの悲痛な叫びを他所に超雄と超雌の移動速度と攻撃速度は更に加速していく。原人は地面を蹴り、天井へと激突する瞬間、天井を蹴り、勇次郎へと向かう。上下運動の加速が付いた巨体を受け止める気は流石の勇次郎も無かったが、避ける余裕も無かった。

 

「ッッッチャリァァァァァァァ!」

 

 鬼の打撃と原人落下タックルの相殺により両者は吹き飛ぶ。そこにカルロスが帰還した。

 

「おいおい、何だこりゃ?」

 カルロスはふと窓に目をやるとゾンビ達に包囲されている事に気付く。思わず叫ばずには居られなかった。

「おい、来るぞ!」

 

 しかしそんなカルロスの懸念とは裏腹にゾンビ達は病院を後にする。彼ら彼女らは知ってしまったのだ。自分達が何万居ても到底敵わない『暴』がこの世には在るのだと……

 

「何だ? 奴ら去って行く。まあ、いい。早くジルにワクチンを打たないと」

 

 事務室の中にカルロスが入って行くと両者は臨戦体制を解く。満足感を満たすのは今ではない。時期が直ぐ側まで来ている。超雄と超雌の期待感と予言は外れてはいなかった。

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