地上最強の生物のラクーン観光記   作:ケプラー星人

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二対一ッッッ!

 

 研究所は桁ましい警報が鳴り響いていた。先程の激闘のせいか、誰が操作したせいか、研究所内の爆破装置が作動している。あと僅かの時間を迎えると研究所は跡形もなく、吹き飛ぶ。勇次郎、レオン、クレア、シェリーはアネットが所持していたマスターカードキーをブレスレットに嵌め込んで研究所の中央エレベーターに乗り込む。研究所が崩壊していく様が見える。諸常無常、最強の生物を生み出す最新の研究をしていた研究所は因果応報という言葉に相応しい結末を迎えつつあった。

 

「勇次郎、エイダは裏切った。警察署でも俺達と遭遇していたが、俺達の入手したGウイルスを見た途端、奪い去ろうとした。最後は色々あって空中通路から落下した、あれでは助からないだろう……」

 

 

「そうか……ところでクレア、父親はどうしている?」

 

「急にどうしたの? 勇次郎」

 

 忘却の彼方にあった記憶、強敵達と闘った事で復活した記憶、昔の強敵の現在を勇次郎は知りたかった。

 

「父は亡くなったわ。私が11歳の時に、病気で……」

 

「そうか……」

 

 エレベーターは停止する。目的地に着いたからだ。着いた先のモニター室の奥には扉がある。三人は先を急ぐ、しかしオーガは立ち止まり、呟く。

 

「惜しいッ」

 

「どうしたの?」

 

「フン、何でもない」

 

 研究所内全体に爆破までの猶予を伝えるアナウンスが流れる。残り時間はあと10分。あと僅かで研究所は瓦礫の山となる、その事実が四人の足を早める。階段を降り、近くの扉を開け、部屋の中にある小さいエレベーターに乗り、下に降りる。修羅場をくぐった四人は慎重かつ素早く動く。下の階には植物と人間が融合したかの様な怪人が待ち受けていたが、勇次郎に瞬く間に手刀で微塵にされた。現在、地球上で一番危険な地帯であるラクーンシティであるがレオン、クレア、シェリーにとってはある意味、一番安全な地帯にもなっていた。四人は先へ進み、再び梯子を降りる。

 開かない扉は例の如く粉々になる、その瞬間、背後から巨人が迫ってくるのが見えた。ラクーン警察署で拳を交えたあの巨人である。

 

「くっ……あいつか、散々俺達をつけ狙ってきやがって……」

 

 

「お前らも奴と対峙したか」

 

 

「ああ、あのしつこさはギネスブックもんだ」

 

 四人、特にシェリーの足より素早い巨人の移動速度が一行に追い付く要因となった。勇次郎は振り返り、臨戦体勢を取る。

 

「いいぜ、来なッ!」

 

 勇次郎と暴君の闘いが始まるか否かという瞬間、通路内で爆発が起こる。床が底抜け、巨人は大火炎と爆発と共に飲み込まれる。レオンとクレアが居た床も人間では到底立つ事が出来ない角度に変化していた。勇次郎が手を差し伸べようとしたのも遅し、二人に下に落下する。

 

「チッ! しかし奴らなら生き延びるだろう。ついてこいッ!」

 

 最後の通路を抜けた先にあったのは列車の先端を乗せた巨大なターンテーブルだった。恐らく今回の様な爆破装置の作動時用の脱出経路だろう。勇次郎とシェリーは列車に乗り込む。勇次郎は列車の操縦席の床に落ちていたプラグを拾うとシェリーに命令を下す。

 

「お前は此処に居ろ。何があっても外に出るな」

 

 頷く少女を後にし、勇次郎はターンテーブルの操縦室に入る。目に付いたのはミニガンと呼ばれるガトリングガンだが、この男にとっては無用の長物であった。地上最強の生物以上の兵器など存在しない―自他共に認める事実だ。プラグを差し込み口に挿入すると警報が鳴る。動力を得たターンテーブルは拘束具を解除され、動き出す。ターンテーブルに乗った勇次郎は感じる。狂気か、殺気か、破壊衝動か。周囲を漂うただ為らぬ『それ』はオーガをも周囲を確認させるに至らせた。

 

 

 ガシャン! 

 

 四度、『神』は鬼の前に現れる。何度敗北しても、何度殺害されてもその度に進化する。史上最強の生物兵器と化した史上最悪のウイルスの製作者は胚の生殖と敵の排除以外の目的は有しない。

 

「エフッ、エフッ。死ねないというのもなかなかどうして……」

 

 Gの躯は第三形態から一回りも巨大化していた。上半身、特に両腕が肥大化し、下半身とのバランスは悪化したもののまるで野生の獣の様に四足歩行するには適している。実際、今、列車の上で獣如き構えを見せている。今までと比較にならない程の狂気の雄叫びを上げ、標的を滅ぼさんとしていた。

 

 

 ガシャン! 

 

 勇次郎が目の前の敵と四度の楽しみを開始しようと構えた瞬間、二回目の激しい金属音がターンテーブル内に轟く。勇次郎が目にした姿はあの暴君―巨人の姿だった。しかし右腕はまるで剣の様な爪が生え、上半身のコートが破損している。炎を纏った巨人は雄叫びを上げる。暴君の叫びと神の叫び、その筆舌につくしがたい共鳴は地上最強の生物の幸悦を極限まで高めた。

 

 

 

 神と化した研究者は敵を八つ裂きにする為、飛び掛かる。しかし敵は姿を消す。勇次郎は目にも止まらない早さで暴君に近付き、ハイキックを喰らわす。しかし暴君は怯まず、右腕で突きを敵に目掛ける。攻撃を避けた勇次郎にGの連撃が迫る! ターンテーブルと列車が攻撃の度に削られる! その消し飛ぶ量は生物が作り出す量ではなかった。神の連撃に応答するかの様に暴君も爪をこれでもかと言わんばかりに振り回す。流石のオーガも列車の上に飛び乗り、退避する。人を思うがままに改造するというアンブレラの狂気は地上最強の生物の本能まで揺さぶる快挙を成し遂げる。

 

 二体の攻撃の嵐が止むと勇次郎は下に降り立つ。鬼の最初の標的はGだった。胸部に無数に発生した目玉を世界最速の技、ジャブで一つずつ破壊した。来ると理解していても必ず当たる、どんな人間でも、いや如何なる生物でも必ず喰らう技を勇次郎が放つ。回避出来る理由はなかった。時間にして二秒―全ての弱点を潰されたGは黄色い液体を垂れ流した。

 

 復活

 

 あからさまな弱点であろう無数の目玉は瞬時に甦る。無限の進化を促すウイルスは度重なる激闘の末、此処までの回復領域に辿り着く。

 

 暴君の突きが勇次郎の背後から迫るが振り向きもしないまま、オーガは足払いをする。巨人の爪がGに突き刺さるとその反動を利用してソバットを繰り出し、勇次郎の腹部にクリーンヒットする。Gは暴れ出し、暴君は振り落とされる。タイラントが立ち上がった瞬間、オーガは敵二体同時にラリアットを喰らわす! 体重差など無いが如く、Gとタイラントは吹き飛ばされる。壁にぶつかり、更なるダメージを負った。

 

 Gは二足歩行を止め、四足歩行に移行する。距離が離れた敵、獣如く体勢、結論は一つ。凄まじい猛スピードで鬼に突っ込む、まるで重戦車の突撃の様な攻撃にも勇次郎は避ける様子は微塵もなかった。

 

「グオオオオォォォォォォォォォォォォォ!」

 

 この状況以上にがっぷり四つと呼ぶに相応しい状況はない。神の突進を受け止めた鬼、人間を超越せし二者の筋力は拮抗する。二者の筋肉に走るエッジは尋常ではない程の筋肉活動を意味していた。

 

 しかし拮抗は終了する。合気に近い技を使用し、Gを後方に投げ飛ばす! 再び背後を襲うとしたタイラントの企みは失敗に終わった。

 

 

「俺に技を使わせるとはッッッ! 褒めてやるッッッ!」

 

 

 

 二体同時の攻撃も臆する事はない。

 

 強者は我慢する事はない。真に強ければ己を曲げる事はしない。

 

 見失ってはいけない、己の意思を突き通す事。己の我儘を押し通す事、それが、それこそが強さの最小単位ッ! 

 

 

 鬼は鬼以外の地球上に存在する全ての生物が絶望する状況下でも我儘を押し通す。オーガの一撃は二体の二撃を真っ向から突き通す! 生物という形態を取る存在ならば絶命は間逃れないであろう神と暴君の一撃をオーガは一回のパンチで吹き飛ばした。

 

 

 

 断! 

 

 

 Gの左腕とタイラントの右腕は跡形も無く消滅した。武器は無くなり、相手は地上最強の生物、普通ならばここで試合終了である。しかし再び同時にオーガに襲い掛かる! 寸分の狂いもないタイミング、寸分の狂いもない速度、神と暴君は完全に波長を合わせていた。本来ならば二体とも遭遇した瞬間、殺し合う様な解り合えない存在であろう。しかし地上最強の生物の前ではそれは命取りになる事は知性を失った今でも理解出来ていた。

 

 隻腕という名のオリジナル――――――そして人間を超越した味方

 

 

 不完全に見えて最強の存在の前にも渡り合える状況ッッッ! 

 

 狂気、狂喜、強気

 

 二体の溢れんばかりの感情を乗せた連撃が勇次郎を際まで追い詰めた。

 

 が連撃は終結した。勇次郎は両手で神と暴君の攻撃を受け止める。勇次郎の腕の筋肉の張りが極限を迎える。最早有機物の限界を超えた筋力を発した筋肉は二体の隻腕を捻り、一つの捻りにする。二体は擬似的に融合する、身動きは出来ない。

 

「仕舞いだぜ」

 

 勇次郎はタイラントを掴み、無理矢理Gに押し付ける。肉が、骨が互いの肉と骨と徐々に混じり合う。抵抗するだけの力は二体にはもうなかった。

 

 赤き血と黄色い血、大量に流れる血は川の様に流れ、止まらない。肉と肉が融合する、骨と骨が連結する、内臓と内臓が一つになる。地上最強の力は怪物と怪物を力付くで一つの塊にした。最早悲鳴も、断末魔もない。神と暴君は鬼の前に肉塊と化し、屍となった。しかし狂気は一帯からは失われてはいなかった。

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