えー、まず皆さんに謝らなければならないことがあります。自分は送られてきた各選手のデータのコピーを取っているんですが・・・それが消えてしまいました。全部。
それだけならもう一回コピーすればいいんですが・・・ここで、以前にアカウントロックにあってしまった人のキャラである、『黒牙龍斗』君と『神奈崎切那』ちゃんのデータも消えました。
神奈崎ちゃんに関しては、作者さんと個人的に仲が良く、連絡を取り合っていたので再び送って貰ったのですが・・・黒牙くんの作者さんとは連絡しておらず、データを復旧することが出来なくなりました。
このままだと、黒牙くんというより、黒牙の姿を借りた自分のオリキャラみたいな扱いになりそうで・・・ちょっと個人的にそれは避けたいんですよね。せっかく送ってもらったキャラなのに・・・
なので、大変申し訳ないんですが・・・黒牙くんのデータが無い以上、彼をチームから外すことになりそうです。もし黒牙くんの作者さんがこの作品を見てくれた場合、マジでごめんなさい。完全に自分が悪いです。
そしてもう1つ、黒牙くんの離脱に伴ってチームに空きが出てしまうので・・・新メンバー募集しようかな、と。
活動報告に詳しいことを載せておきますので、もし参加していただけるなら嬉しいです。一度主人公チームである神楽中にキャラを送った方でも、再び送って頂いて大丈夫です。以上、ハチミツりんごからの謝罪的ななにかでした。
「アイアントルネードッ!!」
「熱血パンチィ!!・・・ぽぎゃっ!?」
「おっ、まーた森崎が吹っ飛んだ」
「いつもの光景ですね〜」
「それがいつもの光景ってのも問題な気もするがな・・・」
今日も今日とて吹き飛ぶ森崎。刃金から放たれる鈍い赤色の一撃を受け止めるにはあまりにも貧弱な熱血の拳。といってもソレしか出来ないので、森崎は何度でも拳にその熱意を込めて殴りつけ、吹き飛んでいく。
もはやそれもいつもの光景と、人鳥は持ってきておいた水筒のドリンクを飲みながら眺めている。先日入部したばかりの2年生のうち、香沙薙は早々に吹き飛ぶ森崎に慣れたようだが、秋宮はボールと共にゴールネットに叩きつけられる森崎を見て落ち着かない様子。心配なのだろうか。
「イリュージョン………ボールッ!!」
「・・・うん、フォームに関してはもう大丈夫そうだね。後は、ボールを踏みつける時にかける回転と、軌道を複雑にする事の2つを重点的に意識しながら続けよう。回転を強くすればボールスピードは速くなるけど、軌道が単純だと見切られちゃうから、複雑な軌道を描ける様になってからスピードの向上に努めていこっか。塵山君は元々ある程度のテクニックがあるみたいだから、近いうちに必殺技として形になると思うよ」
「そうですね・・・ありがとうございます、紫藤君」
「気にしないで。頼られるのは、結構好きだし」
なお、その場にいない4人のうち、塵山は紫藤にドリブル技の指導を。
「フッ!!・・・うーん、ダメだなぁ・・・」
「踏み込みが甘いですね。元々のスピードが高いから一応形にはなっていますが、正直実戦で使えるかと言われれば微妙なレベルです。秋風君のスピードなら、もっとこの技を使いこなせると思うんですが・・・」
「ドリブル技の方は結構手応えあるし、こっちに時間割くべきかな?DF志望だし、ブロック技使えた方がいいよね?」
「そうですね・・・風丸さんみたいなDFを目指すんでしたっけ?」
「そうだよ!森崎くんから貸してもらった雷門の試合映像みて、かっこいいなぁって!同じスピードを生かす形だったから参考にしやすいし・・・あっ!あと、DFになろうと思ったのは帝国の五条さんのプレーを見たからなんだ!」
「五条さんって、今年の帝大付属のレギュラーの?まぁたしかに、洗練されてますからね、あの人のプレーは・・・基本に忠実ながら、DFとしての能力が全て高い次元でまとまっている選手です。参考にするにはうってつけですね」
秋風は燈咲の元でブロック技の指導をそれぞれ受けていた。塵山の方は難航しているようだが、秋風は初歩的ながら二つの必殺技を同時進行で学んでいるようだ。
そんな中で、一旦休憩を取るために森崎と刃金が人鳥達の方へとやってくる。
「だぁ〜〜・・・止めれる気配がしねぇよ。でもやっぱすげぇな、ザックのアイアントルネードは!!」
「儂もこの3年でようやく編み出した技だからな!そう簡単に止められはせんぞ!!」
「堅固、ザック、お疲れ〜」
人鳥からの労いに、おーうと二人揃って軽く答える。そんな彼らに笑いながら香沙薙が話し掛け、後ろから秋宮も会話に加わる。
「おーうお疲れさん。にしても森崎、物の見事に吹っ飛んでたなぁ」
「うっす翔さん、カゲ先輩!!まぁ今は吹き飛ばされてますけど、次はこうはいかないっすよ!!」
「いいシュートだったな、刃金」
「儂の代名詞みたいな技だからな!!そうそう負けるわけにゃぁいかんですよ!!」
豪快に笑う刃金。現状このチームで最も高い得点力を持つであろうこの男は、そうそう負けてやるつもりは無いようだ。
・・・と言っても、高い得点能力を持つ代わりにドリブルやパス能力は素人に毛が生えた程度のものであり、正直キック力を除いたFWとしての総合力はガチのド素人である人鳥といい勝負。ドリブルやパスの能力は、近いうちに人鳥の方が高くなるのではないだろうか?
まぁしかしこれは仕方ない。完璧な選手なんて存在しない。人は何かしら欠点たり得るものを持っていてこそ、なのである。
例えば刃金の憧れである炎のエースストライカー、【
日本のトップ選手である豪炎寺でも全てが一人でこなせる訳では無い。むしろ仲間たちと足りないものを補い合ってこそ、真のサッカープレイヤーであろう。
「にしても堅固、部員のあてがあるってホントなのかぁ?」
そんな時、ふと思い出したかのように刃金が森崎に声を掛ける。
「ん?おう!バッチリだぜ!!」
「えっ、堅固誰か誘えたの!?」
「いや、俺じゃなくてお世話になった先輩が話してくれてるんだ!さっき連絡があって、大丈夫だったっつってたけど・・・あっ!」
人鳥が驚いたように声を上げる。それもそのはず、この学校に森崎が知っている先輩なんていないのだ。小学校の部活には入ってなかったから先輩との絡みなんてなかった、と森崎自身が言っていたことである。
まぁ森崎が言っている先輩とはお察しの通り、昨日仲良くなった天文学部の星舟である。彼女の連絡では、授業が終わってからグラウンドに来るとの事だった故、視線を上げて辺りを見渡す。すると、ちょうどタイミング良く星舟を見つけた。隣には2人の女子生徒ーーーリボンの色から考えて2年生ーーーを連れている。
「それでね、みんなで話して・・・あっ!!森崎くーん!!」
隣に立つ少女達と話をしていた星舟が、森崎達に気がついて笑顔で大きく手を振る。手の挙動と合わせて豊満な星胸がその存在を強調するかのように揺れ、
「乃愛せんぱーい!!昨日ぶりっすー!!!」
そんな意味の分からない攻防には目もくれず、森崎は星舟に駆け寄る。
「どうでした?仲直り、出来ましたか?」
「はいっ!!森崎君の言う通り、心を込めて謝ってきました!そしたらみんな、ゴメンって言ってくれて・・・!」
若干涙目になりながら話す星舟。どうやら、かつての天文学部の仲間達とはしっかり和解できたらしい。そんな星舟の姿を見て、「ホントですか!?良かったぁ!!」と、我がことのように喜ぶ森崎。
ちなみに天文学部の面々が辞めた理由は、偶然にも各メンバーにストレスが溜まることが度重なって起こった故に強く当たってしまい、引くに引けなくなった・・・らしい。なお、一番最後に星舟に暴言を吐いた結衣という女子は、星舟から謝られた途端ギャン泣きして土下座したとかなんとか。
なお森崎が星舟と話している時、他のメンバーはというと。
「あ、廊下とかでよく見る先輩だ!カゲ先輩の知り合いとかだったりするの?」
「ん?あぁまぁ、あのクリーム色の髪の女子と、隣にいる青髪の女子はクラスメイトだ。ただ、黒髪の方は・・・何度か廊下で見かけたくらいだな」
人鳥と秋宮は2人で普通に話しており、秋宮はやってきたクラスメイトを見ながら何故あの二人がサッカー部に?と首をかしげていた。
そしてその秋宮の足元に拘束されている変態どーーーゲフンゲフン。自分に素直な師弟コンビ、香沙薙と刃金はというと・・・
「「な……何ィィィィィーーーッ!?!?」」
どこぞの奇妙な冒険をしていそうなタッチの絵になって驚いていた。が、すぐに秋宮から「うるさい」と言われ再び地面に沈む。
「何すんだカゲェ!!!」
「いや、普通にうるさいだろう。静かにしろ」
「なぁに言ってるんすかカゲさん!?堅固が星舟先輩とあんなに仲良さげなんですよ!?気になるのが男ってもんでしょう!?なぁペンギン!?」
「まぁ気にはなるけど、仲良さそうだし別にいいんじゃない?」
ギャーギャー騒ぐ2人に呆れ顔の人鳥。上に乗る秋宮は二人を抑える両手の力をぎりぎりと強めて強制的に静かにさせようとするが、この2人、なまじ身体能力と筋力が高いおかげか中々しぶとい。
「ちょっと、何があったの?」
「どうかしましたか?」
その声を聞いて、近くで練習していた紫藤と塵山が様子を見にやってくる。離れたところで練習していた秋風と燈咲も、なんだなんだとこちらに近付いてきていた。
「灰飛ォ!!幻斗ォ!!聞いてくれよ!!堅固が美人の先輩を3人も連れてきた!!!ズルい!!儂も向こう行きたい!!」
「うん、取り敢えずザックはそのまま沈んでたらいいんじゃないかな」
「幻斗が辛辣っ!?」
またか、といった呆れ顔で刃金の懇願を突き放す紫藤。刃金が紫藤を連れてきたからか、はたまた刃金が暴走しかけても常識ある彼が止められるからか。割と遠慮のない友人関係になっていた。
「堅固が先輩連れてきたって、彼は知り合いがいるなんて一言も言ってませんでしたよ?」
「でも連れてきてるよ?ほら、あっち」
首を傾げる塵山に、人鳥が先程森崎が走っていった方向を指さす。見れば、森崎が先導して3人をこちらに連れてきていた。
「ん?おっ、おーい!!さっき言ってた先輩達連れてきたぜー!!」
3人と話していた森崎だったが、ふとこちらに視線を向ける塵山達の姿を見て、笑顔で手を振る。本当に連れていたことに僅かばかり驚愕しつつ、塵山が言葉を返そうとした時だった。
3人のうち、2人は以前刃金や香沙薙の騒動があった時にいた2人だ。そして、最後の一人。
艶やかな黒髪を後ろで一つにまとめたポニーテールの髪型。クリクリと大きな黒い瞳に加え、若干幼く見える顔立ちをしているが、胸につけたリボンの色から森崎達の一個上、2年生であることが伺える。なにより目を引くのは、首に大切そうに巻いた水色のストールだろう。全体的に、隣に立つ星舟や秋雨が『綺麗』だとすれば二人よりも『可愛い』に近い少女だ。
「美人だ・・・そしてなにより、デカいっ!!」
「あぁ、星舟さんにゃあ及ばねぇが・・・並の学校なら、間違いなくトップを張れるだけのデカさだぜッ!!」
なお変態共は別のところに注目していたが、すぐさま秋宮に押さえつけられ燈咲から追撃のラビットキックが飛んでくる。
「ちょっ、なんでここに・・・っ!?」
そんな彼らをしり目に、塵山は大きく目を見開き、驚愕を露わにする。そして相手の黒髪女子の方は、塵山の姿を見つけると同じく目を見開き、しかし喜色に満ちた表情を浮かべながら小走りで駆け寄る。そしてーーー
「灰飛ぉ〜〜〜〜!!!!」
「わぷっ!?」
ーーーそのまま勢い良く抱き着いた。しかも手で頭を抑えるようにしているため、必然その豊満なバストに埋め込まれる塵山。
「「貴様もか塵山ァァァァァァァァ!!!」」
当然コイツらが黙っている訳もなく、血涙を流しそうな鬼気迫る顔でうらやまけしからん状態の塵山を睨み付ける。
が、すぐさま香沙薙はその表情を引っ込め、疑問を持ったように首を傾げ始める。
「・・・ん?塵山?」
「なんだ香沙薙、どうかしたのか?」
「いや、あの子別クラだけど・・・水色のストールつけた黒髪ポニテ美人・・・確か、
んー?と首を捻る香沙薙。そんな彼の様子を見た黒髪女子は、塵山を抱き締めたまま、はい!と花が咲くような笑顔でこう言った。
「初めまして!!私は、【
「・・・あ」
「あ?」
『姉ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!??』
まさかの黒髪女子こと塵山姉、薫の登場に、ただ叫ぶしか出来ない一同であった。
「いやー、まさか灰飛のお姉さんだったとはなぁ!ビックリしたぜ、言ってくれればよかったのに!」
ドリンクを飲みながら笑う森崎。その隣で、灰飛は苦笑しながら塩分タブレットを口に含み、舌の上で転がしながら流した汗の分を補給する。
「いや、僕を驚きましたよ。まさか堅固が連れてきた先輩達の中に、姉さんが混じってるとは・・・」
灰飛からしても、姉の薫がやってくるのは予想外だった様子。しかし、実は薫は既に何度か森崎達サッカー部の練習を影ながら覗いていたのだ。弟が馴染めているのか、楽しく出来ているのか心配だったらしい。ブラコンである。
「でも薫先輩、怪我してんだろ?大丈夫なのか?」
「あぁ、まぁ・・・怪我した時は歩くのにも苦労するくらいでしたけど、徐々に直っては来てるみたいで。激しい運動はお医者さんからストップが掛かってますけど、マネージャー兼コーチとして参加するなら平気だと思います」
森崎が心配そうに言うと、灰飛は恐らく大丈夫だろう、と言葉を投げる。
灰飛の姉、塵山薫は、少し前に大きな怪我を負った。外的な要因があった訳ではなく、真面目で努力家な薫の頑張り過ぎによる疲労が原因だろう、と言われたとの事。直っては来ているが、試合に出て走るなどは未だに難しいようだ。
それ故に、星舟と秋雨は薫をチームのマネージャー、としてコーチとして手助けしてもらおうと誘った。薫は幼い頃からのサッカー経験者であり、灰飛曰く『スタミナはほんとにダメダメだけど身体能力と技術は充分』との事なので、その技術力を生かして初心者軍団を指導を受け持って貰えれば、それだけで燈咲と紫藤の特訓の時間が増えるというものだ。
「それに、身内の僕が言うのもなんですが、姉さんは気が利く人ですので。マネージャーとして動いてくれれば、練習時間を増やせるようになりますし」
「そっか!いやぁ、でも薫先輩ってFWだったんだろ!?シュート受けてみてぇなぁ!!」
目を爛々と輝かせて、どれだけの知識と指導力があるのか、燈咲と確認し合っている薫を見る。しかし、灰飛は言葉を紡がない。仮にも自分の姉は長年サッカーを続け、スタミナこそないものの高い実力を持つFW。
対して、この友人はなんというか・・・やる気と熱意は素晴らしいが、サッカー選手としては3流にすら到達していない、というのが正直なところだ。仮に勝負したとしても、拮抗することすらなく森崎が負けるのが容易に想像つく。が、わざわざそんなことを口に出す必要は無い。灰飛は自分の心の中にソレをしまい込んだ。
「森崎くーん!」
と、そんな2人の元へやって来る人物が2人。先程、薫と共にやってきた2年生、星舟と秋雨だ。
「あ!乃愛先輩と・・・えーっと・・・」
「あぁ、そう言えば、まだ自己紹介していませんでしたね。初めまして、私は秋雨。【
「うっす、アル先輩!!よろしくです!!」
軽く頭を下げて自己紹介する秋雨だったが、いきなりあだ名で呼ばれたことに少々面食らう。それに、そのあだ名が同じ生徒会の先輩、支倉や、隣に立つ親友、星舟からの呼ばれ方と同じだった為に余計驚きだ。
「アルって・・・乃愛から聞いたんですか?」
「え?ううん、私は言ってないよ?」
「?なんとなく、有華先輩よりもアル先輩の方が呼びやすいんで!ダメでした?」
「いえ、大丈夫ですよ。乃愛や支倉先輩と同じ呼び方でしたので、少し驚いただけなので」
「秋雨先輩、支倉先輩と知り合いなんですか?」
「えぇ、私は生徒会の会計なのでーーー」
そんな他愛ない話を続ける4人。と、そこへ新たにやってきたのは、先程まで2人で話していた薫と燈咲の2人だ。知識面の確認や指導方針の話し合いを終えたらしい。
「兎月!薫先輩!もう話し終わったのか?」
「はい、薫先輩と色々確認しましたが・・・やっと、やっっと紫藤君以外にまともな指導が出来る人が・・・っ!!」
「えっと、その・・・いつもごめん」
感慨深そうに、言外に『助かった』と言わんばかりにそう言う燈咲。そりゃ全国大会で優勝しようとしているのに、チーム内でリトル経験者が2人だけの現状、しかもどっちもMFだったのだ。FWの指導者、しかもマネージャーも兼任してくれるとなれば、嬉しさもひとしおだろう。
そんな中、薫は森崎をじっと見る。それに気がついた森崎がどしたんすか?と聞くと、満面の笑みで薫が話し掛けてくる。
「森崎くんだよね?私、灰飛のお姉ちゃんの薫です!!いつも灰飛と仲良くしてくれてありがとう!!」
「ちょっ、姉さんやめてくださいよ!!」
「こちらこそっすよ!!灰飛めっちゃ良い奴で、部活でも授業でも助かってて!!」
「堅固まで・・・はァ〜・・・ったく・・・」
キャイキャイと話し始める姉と友人の姿に、思わず顔を赤くする灰飛。額に手を置いてため息をつきながら俯く彼の様子を、星舟達はあらあらと微笑ましげに見つめていた。
「そういえば、秋雨先輩のポジションは決まってたりしますか?」
「DFですよ。練習に付き合わせてきたバカがFWだったので、必然そうなりまして。一応、シュートブロックも出来るブロック技も使えますし」
「・・・よかった・・・まともな・・・まともなDFが・・・!!」
「・・・苦労してそうですね」
「そりゃもう・・・えぇ・・・」
掠れた笑みを浮かべる燈咲に密かに合掌を送る秋雨。ふと隣で話を聞いていた星舟が2人に尋ねるように話しかける。
「あのー、私ってどこのポジションやった方がいいのかなぁ・・・?」
「・・・えっ!?乃愛先輩、サッカー部入るんすか!?」
星舟の言葉に驚いた森崎。確かに星舟が入ってくれれば試合に出れる部員は11人、試合がギリギリ出来るようになる。しかし、星舟は天文学部の部長のはずだ。
「はい!色々考えてみて、サッカー部に入部させてもらうことにしました!」
「えっ、でも、天文学部は?前の人たちの仲良くなったなら、活動も増えるだろうし、乃愛先輩に負担掛かるんじゃ・・・?」
心配そうに尋ねる森崎だったが、星舟は大丈夫です!と笑顔で言う。天文学部のメンバーとは仲直りし、また入部することにはなっている。が、それぞれに用事がある為、そこまで活動回数が多くなる訳では無いとのこと。
それに、と言いながら、星舟はしゃがんで森崎の手を取る。
「森崎くんのお陰で、みんなと仲直りが出来たんです」
「いや、俺は特に何も・・・」
「いいえ。あのままだったら、ずっと疎遠だったと思うんです。そうならなかったのは、森崎君の力なんですよ?
ーーーそんな君に、私は恩を返したい。もし迷惑じゃなければ、貴方の夢に、微力ながらお力添えさせて下さい」
やんわりと微笑む星舟の決意は堅い。森崎からしたら少し相談に乗って自分の意見を言っただけ。しかし、星舟は事実その言葉に救われたのだ。だから、次は自分が恩人に報いる番だと、そう言った。
「迷惑なんてそんなことないじゃないっすかぁ!!!!乃愛先輩が入部してくれるとか、めっちゃありがたいっす!!っしゃあ!!これで11人!!試合メンバー揃ったァ!!!!」
やったぜーーー!!!と大声で叫ぶ森崎。1から部活を作り始め、そしてマネージャー含めて11人の仲間を集めることが出来た。これでようやく、フットボールフロンティアに出場する最低条件が整った。あくまで最低条件だが、それでもここまできたことの喜びは大きい。
「いやー、これで練習試合が出来れば最高なのになぁ・・・」
「確かに、実戦形式での練習はしたいですが・・・新設の神楽中サッカー部の申し出を受けてくれる学校なんて・・・」
練習試合がしたい、と欲を出した森崎に、現実的に無理だろうとため息をつく燈咲。
「練習試合・・・心当たりありますよ」
しかし、そこに救世主が現れた。少し考えてから、なんてことないようにそう言う秋雨に、1年生3人がグリンっ!と首をそちらに向けた。
「マジで!?マジすかアル先輩!?」
「マジですよ。一応申請しときましょうか?受けるかは向こう次第ですが、多分受けてくれると思います。県内にある学校ですし、そう遠くないうちに組めるかと」
「ありがたいですね・・・フットボールフロンティアまであまり時間がありませんし、試合が出来るなら・・・!!」
「レベルアップも捗りそうですね!」
「アル先輩!!ど、どこの学校なんすか!?」
森崎が気になるのか、相手の学校名を知りたがる。そんな彼女は、少し考えてから、相手の学校名を口にしたーーー
〜〜〜side???〜〜〜
「伝来宝刀……改ッ!!!」
己が利き足に力を込める。全身からかき集めたエネルギーが利き足に一点集中、黄色に輝く巨大な刀の形に具現化すると、それをボールめがけて一気に振り下ろす。
地面を抉りながら、ゴールを切り裂かんと迫る一刀。しかし、ゴール前に立つ彼はーーーオレンジ色の法被のようなユニフォームに身を包んだ男は、高揚こそあれど焦りは一切無かった。
「・・・フッ!!!」
右の手を開き、飛んできた黄金色の一刀を真正面から受け止めようとする。並の選手ならば、愚策だと失笑されるような行為。しかし、彼に限ってはそうではない。
そのままボールを掴むと、力を逃がすように地面にボールを叩きつけ、上から片手で抑え込む。しばらくはその手を弾いてゴールに向かわんとしていたボールだったが、次第にその力に押さえつけられ、回転を完全に殺されてその勢いを止める。
「・・・うんっ!!威力が日に日に上がってるね、立花君!だけどシュートのキレがイマイチだがら、次はそこを意識してやろうか!」
「・・・了解しました」
笑顔を浮かべながら良かった部分と直すべき箇所をしていくキーパーの男。シュートを打った立花という男が頷きながら後ろに下がっていく。
「よし!次行こうか!誰が打つ?」
「はいはーい!!私!次は私がやるよたっちむー!!」
「分かった!いつでもいいよ、萌黄さん!!」
萌黄、と呼ばれた少女が元気よく手を上げると、それを見たキーパーはグローブをはめた両手を鳴らし、シュートを促す。それを聞いた萌黄は、ボールを持って一歩前へ。手に持ったボールを足元に置くと、油断なくキーパーの方を向いて構える。
「いっくよー!!」
そう言うと、萌黄は左足でボールを強く踏みつける。すると、ボールが分かれるようにして二つに分裂。赤と青、それぞれのボールがスピンしながら上昇するのに合わせて、萌黄は身体を反転させつつ逆立ちのような体勢になるように軽く跳躍。左右それぞれの足で二つのボールを同時にシュートする。
「ダブルショット…V3ッ!!!」
シュートされた赤と青のボールが1つに戻る事によって、単純計算2つ分のエネルギーを内包した強力なシュートへと変貌を遂げる。しかも既に二度の進化を経ており、その威力は県内でも上位に位置するだろう。
「はァっ!!!」
しかし、相手が悪かった。先ほどと同じように上から片手で押さえつけ、地面に削るようにして叩きつける。
「っ!!」
しかし、途中でもう片方の手も添え、両手を使って押さえつける。しばらくはキーパーに抗うように暴れていた萌黄のダブルショットだったが、次第にその色を失っていき、完全にその勢いを鎮火させる。
「ぅあっちゃー・・・必殺技すら無しかぁ。V3まで進化させたし行けるかと思ったのになぁ〜」
「いや、ダブルショットはロングシュートしてこそ真価を発揮するシュートだからね。この距離じゃ、本来の威力を発揮できなくても仕方ないよ。それに、いいシュートだったよ!」
「たは〜!!フォローを忘れない精神!!さっすがたっちむー!!かっこいぃ!!やばすぎい!!拝み倒したいぃ〜!!」
「あ、あはは・・・」
はぁはァと若干興奮した様子で言葉を投げてくる萌黄に思わず後ずさるキーパーの少年。と、そんな萌黄の深緑色の三つ編みを後ろからガっ!と掴みかかる女が一人。
「ムキュッ!?」
「う〜る〜か〜・・・?今、練習の真っ最中なんですけどねぇ〜・・・!?」
ぴきぴきと額に青筋を浮かべながら目が笑っていないこの少女、文月。チーム内でも屈指の常識人にして、胃痛役だ。
「げっ、茉莉!や、やだナー、たっちむーとのコミュニケーションも立派な練習の一環・・・」
「問答無用。アンタはこっちでドリブル練!!!」
「みゃァァァァァ!?そんな茉莉、殺生な!!せめて陸井との絡みまでは〜!!」
アホかっ!!!と叫ばれながらズルズル引きずられていく萌黄。このチームではよく見かける光景であるが、未だにチームメイト達からはため息が漏れ出るのはご愛嬌だ。
「いや〜、萌黄先輩は懲りないねぇ!ただでさえ普段から問題視されてるのに直さないとか相当だよねぇ」
「・・・楽野さん、先輩に対してその言い草はどうかと思いますよ」
そんな彼女の姿を見ながら肩を竦めて笑う2年生、楽野。その隣で苦言をこぼす同じく2年生、王野の2人。レギュラーチームでもお互いが唯一の同学年ということもあり、比較的よく見るコンビだ。
「冗談冗談!親愛の証だっての、相変わらず真面目だよねぇ、剣一くんはさ。あ、キャプテン!次いい?」
「いいよ!いつも通り、同時に?」
「そーですよ〜。僕一人じゃ、キャプテンに必殺技使わせるなんて夢のまた夢だしねぇ」
さらりと自虐を交えながらシュート体勢に入る楽野。彼の前方、キーパーとの間には、既に王野がスタンバイしている。
「んじゃいきますよ・・・っと!!」
冷静にゴールを見つめる楽野は、左足首でボールを軽く蹴り上げ浮かせる。そして目を閉じ意識を集中させながら手を軽く振ると、空中でボールが黒の部分をそれぞれ赤、青、黄色、緑、紫に塗り替えた、5色のボールへと変化する。ゆっくり、相手を惑わせるように楽野の周りを舞う5つのボールを、楽野はそれぞれに力を込めて連続でシュートする。
「マキシマムサーカスッ!!」
ボールが合体、分離を繰り返し、相手を嘲笑うかのように変幻自在に変化していく特殊なシュート。そのボールがひとつにまとまった時、王野が動いた。
ボールがひとつにまとまった瞬間、王野は踏み込みを強くし一気に加速。瞬時にボールに肉薄すると、空間に魔法陣のような模様を描きながらボールをキックする。
「いきますっ!オーディンソード……改ッ!!」
軍神の名を冠したその一撃。イタリアの白い流星と呼ばれたFW、【フィディオ・アルデナ】が生み出したその技は、剣のようなエネルギーとともにボールがゴールを切り裂かんと向かっていく。
二つのシュートが混ざり合い、禍々しい色へと変貌したその剣撃を前にしても、キーパーは揺るがない。両手を左右に広げ、ゆっくりと頭上へと持ち上げていく。その際、あまり早く持ち上げているようにも見えないにも関わらず、彼の手がブレ、残像が微かに垣間見得る。
「ムゲン・ザ・ハンド………G5ッ!!!」
頭上で両手を合わせた瞬間、彼の背後に無数の手が出現。ゴッドハンドよりも細く、しかして内包するパワーは一本一本が匹敵ーーー否、上回るだろう。憧れの人から託され、そして見事ものにした、ある種彼を彼たらしめる技。千手観音の如きその手が、迫り来る一撃を受け止めんと殺到する。
「(・・・掛かった!!)」
しかし、彼がこの技を使用するのは楽野もよく知っている。それゆえにゴールを奪う為、彼はマキシマムサーカスを撃つ際にちょっとした細工をしておいた。
キーパーの彼が止めようとしていたそのボール。ムゲン・ザ・ハンドの手が目前まで迫った時、ボールが『分裂』した。
「っ!?あれは・・・!?」
シュートチェインした王野が驚きを露わにする。それもそのはず、楽野は王野にこのことを伝えていなかった。
全国でもトップクラスの実力を持ち、日本代表『イナズマジャパン』にも選ばれた彼を躱すためには、バカ正直に真正面から行くのは愚策だ。それが出来るのは、それこそ一流のFWのみ。そして、楽野は自分にその力がないことをよく知っていた。
「(剣一くんには悪いけど、俺起点のシュートじゃ威力が足りなさ過ぎる。だけど意表を突けたっ!!これならーーー)」
楽野がそう思った瞬間。
「ーーー読めてたよ!!」
ボールに迫っていた手とは別。キーパーの背後から現れた、新たな5本の手。それらが、5つに分裂したボールをそれぞれがっちりと掴む。ギュルギュルと回転を続けるが、次第に摩擦によって煙を上げながら、そのパワーを削り取られてしまう。
「だーーっ!!また止められた!!剣一くんのチェイン込みなら行けると思ったのに!!」
「分裂させる前にブレてるから、そこから予想出来たんだ。発想自体は凄くいいから、後はタイミングとボールの軌道修正がメインかな。王野くんはしっかり足を振り抜けてたけど、キックをもう少し早く!楽野くんのタイミングと微妙に合ってないから力が伝わり切ってないよ!だけど、その前の踏み込みはすごく良くなってる!このまま磨いていこう!」
「「ハイッ!!」」
「よし!それじゃあ、次はミニゲーム行こうか!チーム分けは昨日のまま、キーパーは前後半で交代してやろう!!」
キーパーの指示に各々が返事すると、彼は自身のタオルやドリンクの置いてある方へと足を向けようとコートの外に出る。
「・・・えいっ」
「うわっ!?」
そんな時、首筋に冷たい感触が走る。急なことに驚き、素早く後ろを振り向くと、そこにはぽやぽやとした笑みを浮かべた赤髪で二つ結びの少女が。大きく丸い黄色の瞳と、ほおの辺りにそばかすのある素朴な女の子で、このチームのメンバーの一人だ。
「えへへ〜、イタズラ成功ば〜い・・・」
「た、太明さんか!びっくりした・・・」
ごめんなしゃいなぁ、とユルユルとした雰囲気を醸し出す彼女は【
「タオルと飲み物持ってきたったい。キャプテン最近頑張っとるけど、手ば冷やさんと大変ばい?」
「あぁ、ごめんわざわざ!ありがとう、太明さん」
「よかよぉ〜・・・キャプテンが怪我でんしたらみんな心配するけんね〜」
太明から受け取ったドリンクを飲んで、手にはめたグローブを取り外して右手に氷嚢を当てる。細かい傷が目立ち、かなりゴツゴツとした手だ。それだけキャプテンたる彼が努力を続けていた証左でもある。
「おぉい、勇気!!」
「?燈吾。どうかした?」
そこに現れた、長身の男子生徒。鋭い目付きに、青みがかった黒の短髪。額に紺色を基調に白い和柄が入っている手拭いを巻いている彼の名は【
「いやよぉ、栄作のやつ知らねぇか?シュートのコツでも聞こうと思ったんだが、見当たんねぇんだよなぁ」
「栄作?そういや練習中に見ないと思ったら・・・」
「陸井くんなら、さっき職員室の方に〜・・・あっ、おったよ〜」
ふらりと太明が指さした先を見ると、確かにその先には木倉の目的とした人物がこちらに向かって走ってきていた。
グレーの髪に、鋭い獰猛な目付きをした大男。DFとして日々鍛えている木倉とそう変わらない体格の彼こそ、この学校ーーー陽花戸中サッカー部のエースストライカー、【
しかし、その表情は何処と無く焦っているような、喜色が滲んでいるような。とにかく悪い表情では無い。そんな彼は駆け寄ってくると、すぐさまキャプテンの彼に話し掛ける。
「立向居!!!」
「うぉっ!?ど、どうしたんだよ栄作、そんなに慌てて」
「わりぃ立向居!!ただ、頼みがあんだよ!!」
「頼み?」
「そう!!今度、練習試合組みてぇんだ!!!」
練習試合。陸井からの提案は、彼としては珍しいことだった。今までチームの得点源として活躍していた彼だが、特定の学校と試合したいなどと言い出したのはこれが初。そのことに少なからず驚きが混じる。
「おいおい栄作よぉ、この時期に練習試合だぁ?そりゃいいがよ、何処とだよ?こう言っちゃなんだが、全国で当たるようなとこに手の内晒すのはやべぇし、県内でうちと練習試合して手応えあんのなんて、千羽山くれぇなもんだろ?その千羽山ともこの間やったしよぉ〜」
「相手はーーー『神楽中』だ」
神楽中、と口にした陸井。しかし、木倉と太明にはピンと来ない学校名だ。唯一、かろうじてキャプテンの彼だけ覚えがあった。
「神楽って・・・確か栄作の前の学校だろ?2年くらい前まで在籍してた・・・あそこ、サッカー部無いって自分で言ってたじゃないか」
「おいおい、新設のサッカー部だと?この時期に練習試合するようなとこじゃねぇだろ」
「それは、そうなんだが・・・!!」
木倉からそう言われてもなお食い下がろうとする陸井。ここまで試合したいほどの相手なのだろうか、と木倉と太明は首を傾げるが、キャプテンの彼は頷きながら陸井の肩に手を置く。
「・・・よしっ!試合やろうか!その神楽中と!」
「っ!?マジか!?マジでいいのか!?」
「うん。詳しい日程は追って決めるとして、練習試合自体は大丈夫だよ」
「さ、サンキュー立向居!!ちょっと待っててくれ、すぐ向こうにも言ってくる!!」
キャプテンからの許可を得た陸井は、急いで職員室の方に走って戻っていく。
「おいおい勇気、良いのかよ。お前の判断なら文句はねぇけどよ〜・・・意味あんのか?」
「意味の無い試合なんてないよ、燈吾。未知数の相手だ、油断してたらこっちが負けるかもしれないし、学べるところも多いと思う」
「キャプテンの決定なら、ボクは従うば〜い・・・」
「あはは、ありがとう」
笑いながら礼を言った彼は、何故か分からないが、不思議と胸の内が高揚していることに気がつく。
「ーーー神楽中、か。どんな選手がいるんだろう。楽しみだな・・・」
そう言ってキャプテンの彼ーーー『伝説の後継者』たる男。イナズマジャパンのGK、【