イナズマイレブン!新たなる守護者   作:ハチミツりんご

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いざ!試合に向けて特訓だ!

 

 

ヅカヅカヅカ、と荒い足音を立てながら廊下を早歩きで進んでいく女子生徒が一人。彼女は通い慣れた部屋ーーー生徒会室の前に着くと、バァン!!と荒く音を立てながらその部屋の扉を開く。

 

 

 

 

「アルちゃん!!!!!」

 

 

 

怒気の混じった叫び声を上げ、目的の人物を睨み付ける。彼女の視線の先にいるのは、同じ生徒会のメンバーにして後輩。先日、友人達と共に新設されたばかりのサッカー部に入部した会計の秋雨だ。

 

 

 

「………おや、支倉副会長。そんなに顔を歪めてどうしました?しわが増えますよ」

 

「今は冗談なんかいらんわ!!!どういう事や!?勝手に他校に練習試合取り付けるなんて!!!」

 

 

 

支倉の怒りの原因は秋雨の独断による他校への練習試合の取り付け。どの部活においても、他校への練習試合、もしくは神楽中に招く場合でも生徒会を通さなければならない。とどのつまり、副会長である支倉には全ての部活の練習試合を含めた予定が入ってくる事になる。

 

それなのに、サッカー部の練習試合に関しては彼女の耳に入っていない。つまり秋雨が支倉を通さずに会長や相手校、先生方に練習試合の話を持ちかけ、組んだ事になるのだ。

 

 

 

 

「おや?先生方にも会長にも許可は取りましたが。支倉先輩の耳に入っていなかったとは、気が付きませんでした」

 

「嘘はいらん!!!」

 

 

 

ダンっ!!と机を乱雑に叩く支倉。普段の彼女ならば絶対にしないであろう所作。仮にほかの生徒会メンバーがいれば驚いていただろうが、この場にいるのは幸い二人だけだ。

 

支倉の怒りを受けても飄々としたその雰囲気を崩さない秋雨。支倉は睨みを強くしながら、彼女に向かい再び声を掛ける。

 

 

 

「どういうつもりや……!?練習試合組んだことに関しては水に流してもええ。でも、よりによって陽花戸!?去年の福岡予選の優勝校!!キャプテンはあの立向居やぞ!?」

 

「…だからいいんじゃないですか。練習試合を受けた事にみんな困惑していましたが、喜んでいる子もいますよ。森崎君とか」

 

 

 

秋雨が組んだ練習試合の相手校ーーー陽花戸中学校。2年前までは典型的な弱小校だったが、雷門中の奮闘を見て自分たちも、と奮起した、ある種よくある学校。

 

 

しかし、この陽花戸における、ほかの学校との最大の相違点ーーーそれは現キャプテン、『立向居勇気』の存在。

 

何度も反復したとはいえ、映像のみで円堂の代名詞たる技【ゴッドハンド】をマスターした逸材。イナズマキャラバンに乗り、ジェネシスとの戦いで円堂に代わりGKを務めたこの男は、その年のイナズマジャパン、そして翌年にも選ばれた、文字通り『現世代最強キーパー』。

 

 

そんな立向居がキャプテンとなった陽花戸中は、その圧倒的実力を持つGKの存在によって県下でも敵無しの強豪へと変わっていた。確かに、ほかの選手も立向居レベルかと言われればNO!と言わざるを得ない。しかし、この福岡においては有数の選手達が集まっているのは事実だ。

 

 

 

「そんな強豪と、森崎君達が試合なんて絶対にあかん!!勝てるわけが無い!!………何かを得られる確率よりも、大切なものを失うリスクの方が高すぎる……!!」

 

 

 

歯を食いしばるように、それこそ自分のことかのように言う支倉。しかし秋雨は冷静に、支倉の目を見て言い放った。

 

 

 

「……………支倉先輩。自分で言いましたよね?『自分が邪魔したらいけない』と………。そんな貴方が、何故ここまで関わろうとするのですか?」

 

「っ!!それは………!!」

 

「それに、貴方は森崎君達を心配していますが……それは本当でしょう。ただ、それ以外にありますよね?

 

 

ーーー『陸井栄作』。支倉先輩のかつての相棒にして、2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……見られたくないのでしょう?そんな彼に、今の自分を」

 

「違うっ!!!!」

 

 

 

冷徹なまでの秋雨からの追求を遮るように声を上げる。しかし、動揺から視線が揺れ動き、大きく肩で息をするその様子は、誰が見ても秋雨の言葉を暗に肯定しているようにしか見えなかった。

 

 

 

「違う違う違う違う違う……!!うちはこれでいい!!これがよかった!!自分が望んで、サッカーを辞めた!!」

 

 

 

頭を抱えながら何度も違うと叫ぶ支倉。自分に言い聞かせるように何度も、何度も、何度も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『サッカー?しかも全国?・・・あなた、バカじゃないの?』

 

 

「違うっ………!」

 

 

『一緒に全国目指そうってお前……頭おかしいのか?初心者がより集まって勝てるわけないだろ』

 

 

「違う違うっ………!!!」

 

 

『ねぇ知ってる?うちでサッカー部作って全国とか言ってる奴が……あぁほら、あの子。サッカーやってたのかなんだか知らないけど、現実見えてないわよね』

 

 

「違う違う違うっ………!!!!」

 

 

『ねぇあんた。もうさ、その勧誘やめてくんない?集まる訳ないでしょ?はっきり言ってーーー』

 

 

「うちは自分で決めた…!!自分で選んだんや……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ーーーキモいんだけど』

 

 

 

「自分の意思でっ!!!!サッカーを辞めたんや!!!!」

 

 

 

血走った目で、大粒を涙を流し、声を震わせながら叫ぶ支倉。その姿は痛々しく、近寄り難くーーーとても、寂しそうだった。

 

 

 

「………それでは、私はここで。失礼します」

 

 

 

そんな支倉を見た秋雨は、表情を変えないまま生徒会室から出ていく。

 

 

「違う………違う……!自分で、自分で決めた……!!あの子らは関係無い、うちは、自分で……!!」

 

 

 

広い生徒会室の中で、両肩を抱いて震え、小さくうずくまった支倉だけがポツリと残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ゴメンなさい。だけど、こうでもしないと、あなたを救えない」

 

 

表情を変えないまま、震え、血が滲むほどに拳を握り締めた秋雨が一人歩く。

 

 

 

「でも、私じゃこんなことしか出来ない。あなたを、本当の意味で救えるのは………きっと………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はァァ〜〜〜・・・・・」

 

「随分長いため息するね、燈咲さん」

 

 

グラウンド上でパス練をしながら大きくため息をつく燈咲に、相手を務める紫藤が思わず声を掛ける。そんな彼に向かって、燈咲はどんよりとした表情で答える。

 

 

 

「そりゃそうですよ………初試合の相手が、よりにもよって立向居さんだなんて………どうやって勝ち筋見つければいいんですかぁ………」

 

「あぁ、まぁ………うん。正直打つ手無いよね」

 

 

この場において・・・というよりも、このサッカー部において、今の燈咲の感情が最も理解出来るのは紫藤だろう。ただでさえ初心者だらけのサッカー部。そんな自分たちが練習試合で戦うのが、あの立向居勇気率いる陽花戸なのだ。ため息つくなという方が無理である。

 

 

 

「まぁでもほら。強豪相手に色々試してみようよ。ぶっつけ本番で大会に挑むより、ここで確認出来るのはいい事だしさ」

 

「まぁ……それはそうですが……」

 

「それにほら」

 

 

 

紫藤が片側のゴールを指を指す。そこにいるのは、一年生で完全初心者の人鳥と2年生で同じく完全初心者の星舟。その横に作戦ボードを持って立っているのは、先日マネージャーとして加入した薫だ。

 

 

 

「まず、試合中の基本的な動きから解説していくね。初心者がやりがちなのは、ボールを見すぎたり、追いかけ過ぎたりして自分のポジションから離れちゃう事!確かにボールを見たり、位置を把握するのはとっても大事だけど、チームメイトがいるからね!自分の役割をしっかりやるのが第一歩かな」

 

「なるほど……ボールを持ったりしてない時の動きが大切なんだね」

 

「そうだよ!持った時より、持ってない時の方がずっとずーっと時間長いからね!」

 

「ハイ!薫ちゃん先輩!ペンギンはどうやったら出せますか!?」

 

「ペンギンはいっぱい練習したらきっと出せるよ!!」

 

「頑張る!!」

 

 

 

 

「………塵山先輩の加入のお陰で、攻撃陣にも具体的な指導が出来るようになったし。それに今は生徒会でいないけど、秋雨先輩がDF陣のまとめ役をしてくれるから、正直かなり改善はしてるでしょ?」

 

「確かにそうですが………まぁ最初から諦めるのもアレですし、勝てる努力をしましょうか。せめてあと一人、強力なストライカーがいればいいんですけどね。私が攻めるにはリスクが高いですし、刃金くんの他にもう一人シュート技を扱える人が現れれば………」

 

 

 

あと一人。現状では燈咲、刃金の2名しかシュート技は使えない。しかも刃金はお世辞にもシュート火力以外の面が優れているとは言いがたく、総合力に優れたFWがチームに入れば安定感がさらに増すのは間違いない。

 

 

なお当の刃金だが、胸部装甲の分厚い二人の先輩に挟まれる形で練習をしている人鳥を見ながら「ペンギンばっかりずるいぞ!!儂もアッチがいい!!」と駄々をこねながら森崎相手にアイアントルネードをぶちかましていた。森崎、熱血パンチで対抗するも、あえなく吹き飛ばされる事に。

 

 

そして香沙薙、秋宮、秋風の3人は、比較的基礎の身体能力が高い上に各々のチームでの役割もハッキリしているため、塵山弟こと灰飛がそれぞれに軽く指導し、個人練習でそれを反復する、というのを繰り返していた。

 

 

 

それぞれが確実にレベルアップを重ねる中、燈咲と紫藤、2人の懸念はやはりこの男。キャプテンを務める森崎の存在だった。

 

 

 

「森崎君、未だに爆裂パンチの糸口も掴めてないみたいですね」

 

「うーん……一緒に雷門の試合とか見て、考察したりアドバイスしたりしてるし、堅固自身もかなり意識して使うようにはしてるんだけどね………」

 

 

 

正直キーパーがこのままでは、フットボールフロンティアで勝つのすら難しいだろう、と心の中で思う2人。

 

 

 

「………幸い、立向居さんのプレーは森崎くんが理想としてる円堂さんのプレーにとても近いですので、練習試合でなにか掴んでくれることを祈るしか無いですね」

 

「堅固はやる気凄いんだけどね。もし練習試合でも進展が無かったら、色んな技片っ端から試すのも手かな。プレッシャーパンチとかなら使えそうなもんだけど」

 

「それ、殆ど熱血パンチと変わりませんよね…?」

 

 

そんなことを話し合う2人。実際、爆裂パンチを覚えられないのなら得意とする技を総当たりで探すしかない。さすがにこのまま熱血パンチで大会に殴りこまれても困るのはチーム全体だ。

 

 

 

「おーい!!兎月、幻斗!!ちょっといいかー!?」

 

 

そんな2人の元へ、悩みのタネである森崎が近付いてきた。

 

 

 

「森崎君。どうしました?」

 

「ずっとアイアントルネード使ってたから、ザックが休憩入ってさ。ペンギンは向こうで薫先輩の指導受けてるし、灰飛達も似たような感じだし。2人は話してたみたいだからさ!よけりゃシュート打ってくれねぇかな?」

 

「燈咲さんはシュート技あるからいいとして…僕も?」

 

「おう!色んな人のシュート受けるのは参考になるだろうし!!それに、幻斗はテクニックとかボールコントロールとか凄いからさ!ザックとは違うシュートを受けれそうだ!」

 

「…まぁ、堅固がそう言うならやるけどさ。あんまり期待しないでよね?」

 

 

ありがとうな!と言いながらゴールの方へと向かっていく森崎。そんな彼の後ろ姿を見ながら、2人は目を合わせる。

 

 

 

「……まぁ、なんとかなるんじゃない?」

 

「…そうですね。逐一問題点を指摘して、改善するのに協力しましょうか」

 

 

 

 

そう言って、森崎のキーパー練に付き合うふたり。しかし、この日も特に爆裂パンチの糸口を掴むことは出来ず。いたずらに日にちだけが過ぎていったーーー。

 

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