イナズマイレブン!新たなる守護者   作:ハチミツりんご

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遅れて申し訳ない……ちまちま更新は続けます……


夢語る弱者

 

 

「______ダブルショットV3ッ!!」

 

 

 

強くボールを踏み付けると、赤と青の2種に分裂。強い回転によって上昇した2つのボールに合わせ、萌黄は後ろを向きつつ、身体を宙に投げ出すように反転。逆立ちのような状態で右脚と左脚、両脚で片方ずつボールをシュートする。

 

分かれ、威力を持った赤青のボールが引き合わされるように元の一つに統合。2つに内包されていたエネルギーが掛け合わさり、速度そのものを上昇させてゴールへと迫っていった。

 

 

 

「キャプチャーストリングV2ッ!………キャッ!?」

 

 

しかし。そう簡単には行かせない。

 

 

十指から煌めきを放つ極細の糸を呼び出すと、それを瞬く間に紡ぎ合わせ、編んでいく。本来ならば10本の糸による搦め手で相手を止めるブロック技だが、今回は違う。シュートを止めるため、後ろに控える者への負担を少しでも和らげる為に。まるであやとりの様に、何度も何度も手元で編み続け、真正面からブロックを掛けた。

 

しかし相手は格上、しかも県予選覇者のレギュラーメンバー。距離を取れば取るほど威力が増幅するロングシュートの性質を持つダブルショットを、中盤の位置から放たれたら今の神楽中守備陣に止める術はない。

 

 

 

「______香沙薙君っ!!」

 

「オラッ……ヨォ!!」

 

 

 

そんなことは分かっている。ならば出来る限りの選択肢を取るのみだ。

 

 

秋雨のブロックによって多少威力と勢いが弱まったダブルショット。そこに合図を受けた長身のDF………香沙薙が、下から上へ蹴り上げるようにしてブロックを掛けた。

 

 

 

「うァっ!!」

 

 

いくら弱まっており、身体能力の高い香沙薙とはいえ。昨年の県予選を制した陽花戸のレギュラーの放つシュートを止められる奇跡はありえない。当然ながら弾き飛ばされる彼ではあったが、そのシュートの軌道をずらす事には成功した。

 

 

 

 

「熱血……パンチィッ!!!」

 

 

 

普段ならば真正面から止めに入るゴールキーパーの森崎だが、今回は違う。秋雨からの指示を受けて、普段よりも一歩前に出ながら、真正面ではなく下からアッパーカットのようにして殴りつける。

 

圧倒的に威力の足りない森崎の熱血パンチでは、そのまま決められるのが関の山……だがしかし。下から殴りつけられたボールは僅かに軌道をズラし、ゴールバーに直撃。ネットを揺らすことなく、弾かれて前へと転がっていった。

 

 

 

 

「ウッソーンッ!?」

 

「止めるんじゃなくて、少しずつズラしてゴールバーにぶち当てたのか!!中々、味な真似してくれんじゃあねぇか!!」

 

 

 

秋雨の必殺技である『キャプチャーストリング』でズラされないように細心の注意を払ったつもりで放った、萌黄のダブルショット。本来ならば今の神楽中に凌げるような威力ではなく、決められて当然の高威力シュート。防げたのは、DF二人の活躍のお陰だ。

 

 

しかし、陸井が素早くこぼれ球を拾うと、ボールを思いっきり踏み抜く。地面に亀裂が走り、数多の破片がボールへと集結。一度体を回しながら、ダイレクト気味にボールを打ち抜いた。

 

 

 

 

「っ!止める!!熱血パンチィ!!」

 

 

地面を抉りながら猛進するそのシュートに、キーパーの森崎は臆さず真正面から殴り掛かる。熱を持ち、最下級ながらも必殺技に位置するその拳。しかし、陸井の………陽花戸中の現10番を背負う男のシュートに対抗するものとしては、あまりに貧弱。

 

 

 

「がっ……はっ……!!」

 

「森崎君!」

 

「堅固!!」

 

 

ミシリ、と嫌な音を立てながら森崎の拳は弾かれ、突き進んできたボールが彼の腹に直撃。そのまま森崎ごとゴールへと叩き込まれ、彼の肺の中の空気が全て吐き出される。

 

そんな彼を心配した秋風や塵山が駆け寄ってくる。右の手首を握りしめ震えているその姿を見て、塵山がハッと気がついた。

 

 

 

「……アナタ、腕痛めたんですか!?」

 

「ち、がう……!!まだ、まだぁ……!!俺ァ元気なんだよっ!!」

 

 

キーパーにとって、腕は生命線。実際森崎の腕には骨にヒビこそ入っていないものの酷く捻っており、これ以上シュートを受けたら危険なのは目に見えている。そんな森崎を心配して塵山が声を掛けるが、彼は笑って、震えながら、ふらつきながらも立ち上がってみせる。

 

 

 

「エースの人に……一本止めるっつったからな………!!ここでやめたら、絶対ダメなんだ!!」

 

「それで無理して壊れたら元も子も無いよ!!森崎くん、折角サッカー部作ったのに……サッカー、出来なくなるかもしれないよ!?」

 

 

 

秋風の言葉は正しい。この場はきっと引くのが正しいのだ。そもそも創部したての神楽中が、立向居率いる陽花戸に勝てる見込みはゼロ。どんなに頑張ってボールを運んだとしても、立向居勇気という男がいる限り点は取れない。世界の強豪達と競い合い、伝説のキーパー『円堂 守』の後継者と呼ばれる彼は、超一流に位置するFWしか勝負の舞台にすら立てないのだ。

 

 

ならば辞めるべき。燈咲の質問に答え、こうやって試合に参加したが。それでも、目の前で幼なじみが潰れるのを見過ごしたくない。そう思い秋風は声を掛けたが、森崎は首を振る。

 

 

 

「……ここで、逃げたら……追い付けない」

 

 

「追いつけない?」

 

 

 

 

フラフラになりながら森崎が呟いた言葉を聞き返す。すると彼はぐわっと顔を上げ、闘志に満ちた顔で、大声でこう言ってのけた。

 

 

 

 

「______俺はっ!!円堂さんに憧れて、サッカー始めたっ!!!」

 

 

 

 

「あの人とは、同じ舞台で戦えることは無いけど!!円堂さんと一緒に戦った人達とは、今年だったら戦える!!」

 

 

 

「だから逃げないっ!!逃げたら一生追い付けないっ!!!」

 

 

 

 

______俺は『立向居 勇気(世代最強)』超えて、【代表の一番(憧れの番号)】背負うんだよっ!!!

 

 

 

心の底からの、彼の叫び。シン……と静まり返ったグラウンドだったが、傍から眺めていた誰かがぶふっ、と吹き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギャハハハハハハハハッ!!!ばっ、バッカじゃねぇのあいつ!?お前が代表とか無理に決まってんだろ!!!』

 

『立場弁えろっての!!こんな試合でボロ雑巾になってる奴が、立向居勇気を超えるぅ!?無理無理無理無理!!』

 

 

 

一斉に、試合を観戦していた神楽中の生徒達が笑い出す。

 

 

無謀。蛮勇。夢から醒められない生粋の馬鹿。今の日本サッカー界において、代表の一番を背負うことがどれだけ大変かも分からずにほざく愚か者。先程のシュートで既に20点目の失点だ、そんなことしてる奴が代表だなんて、逆立ちしても無理だろう。

 

 

そう爆笑していた観客達。しかし、不意に響いたガァンッ!!!という巨大な音にビクリと身体を震わせた。

 

 

 

 

「______いいじゃねぇか、そんくらい言う奴じゃねぇと張り合いねぇ」

 

 

いつの間にか、置いてあった予備のボールをゴールポストに向けて全力で蹴りつけて笑う陸井。この行為が意味するところは二つ。

 

 

一つは、眺めているだけの観客達が夢を語る男を笑うことへの怒り。

 

 

 

そして、二つ目は______

 

 

 

 

「こんなんでぶっ倒れるタマじゃねぇだろ、オレンジバンダナ」

 

「ハンっ……!!あったり前だろ……!!あと、俺は森崎だ!森崎、堅固……!!」

 

「おうよ、堅固。俺は栄作だ、陸井栄作」

 

 

 

互いに、名を告げる。まだ彼らの勝負はついていない。手が震え、足が震え、目の焦点すらおぼつない極限の状態でも、森崎はニヤリと笑って陸井へと言葉を投げる。

 

 

 

「ウッス……栄作さん……!!もう疲れたとか、言わねぇっすよね……!!」

 

「ったりめぇだろ!!てめぇこそ、ぶっ倒れて逃げんじゃねぇぞ」

 

「誰がんな事するかよ……バーッカ……!!」

 

 

 

舌を出して挑発する森崎。スポーツマンシップに則った行為とは言い難いが、今はその負けん気が陸井には心地良い。こんな状態になってまで夢を語り、心の折れない森崎は至極面白い。こんなヤツに手加減は、それこそ失礼だ。全力をもって応えるのが礼儀だろう。

 

 

 

 

______その後も、試合は続けられた。

 

 

 

「ほらほら兎ちゃん!次はどんな手で来るのかな!?」

 

「っくぅ……面倒くさい……っ!!」

 

 

チームの要、心臓部を担う司令塔の燈咲がどうにかして敵の司令塔の萌黄を躱そうと四苦八苦。先を読まれ、手の内を潰され、素の実力も相手が上。味方の実力も大半が初心者ゆえカバーは期待できない状況下で、ギリギリでも保っていられる燈咲の実力はやはり頭抜けている。

 

 

 

 

「燈咲さん下ろして!!」

 

「っ!塵山君!!」

 

 

咄嗟に後ろから掛かった声に、奪われる寸前のボールを出す。受け取った塵山は、パスコースを探るもののほとんど無い。

 

 

 

「灰飛ォォォォォォォォォォォォっ!!!上っ!!ボール上げろぉ!!!」

 

 

 

そんな塵山にかかる大声。このバカでかい声量、キーパーである森崎以外ならば、今のチームで一人しかいない。上を見上げると、見知った姿の男が………自分と同じビブスを身につけた、深緑の髪をポニーテールにした男が、空へと舞い上がっていた。

 

 

 

「頼みますよ、ザック!!!」

 

「っしゃァ!!」

 

 

もうそこにしかパスコースは無い。無謀だとわかってはいながら、塵山はチームで二人しかいない必殺シュートの持ち主であり、最高火力を担う男にボールを託した。

 

 

 

 

「キャプテンやってる友達がよォ……あんなこと叫んだんならっ!!やる気出さなきゃ、ガチでやんなきゃ男が廃るだろっ!!」

 

 

鈍い紅色の、流動性のあるエネルギー。それを脚に纏い、何度も回転しながら上昇。極限まで、威力を高める。

 

 

 

「儂もなぁ!!豪炎寺さんに憧れてストライカー目指してんだ!!魔王様がいるこの一年!!逃すなんざァ勿体ねぇ!!」

 

 

 

もっと、もっとだ。もっと上げろ、もっと熱くなれ。滾れ、ただひたすらにこの一撃に全てを乗せろ。

 

 

 

アイアントルネード______改ッ!!

 

 

「っ!一段階、進化した!!」

 

 

 

全力を持ってボールを撃ち抜く、彼の利き足。今までで最高、練習していた時も、必死になって磨いていた時よりも強い。この土壇場で限界を超えて見せた、刃金斬九郎という男の最強の一撃。

 

 

 

「ぶち抜けやァ!!」

 

 

間違いなく、一番重い。きっと並のキーパーが相手だったなら、この一点が決まりチームに流れをもたらすのだろう。

 

 

だが、しかし。現実というものは、時に空想よりも残酷に蝕むものだ。

 

 

刃金の人生最高の一撃。うち下ろされたそのシュートを前に、その男は真っ直ぐ拳を振り上げて______

 

 

 

 

「______はァっ!!!」

 

 

 

______そのまま振り下ろし、()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「………良いシュートだ。チームメイトを思う心も、この土壇場で限界を超えるその精神力も………きっと君は、良いストライカーになれる」

 

 

 

チームメイトの叫びを聴き、奮起することが出来るメンタル。折れることなく、自分に任せろと豪語する自信。そして確かなキック力。まだまだ荒削りながら、きっと刃金は将来成長していって、素晴らしいストライカーになれるのだろう。

 

 

 

 

「でもね______ゴールは、渡せない」

 

 

 

うっすらと微笑みながら、刃金の最強のシュートを必殺技無しに止めてみせたこの男。世代最強、伝説の後継者。陽花戸キャプテン、立向居は、一瞬の油断も無く。彼の持てる全力を持って、神楽中に立ち塞がっていた。

 

 

 

「太明さんっ!」

 

 

ボールをとめた立向居はそれを拾うと、勢いよく味方にパス。ボールを受けた守備的MFの太明は、そのままダイレクトでパスを回した。

 

 

 

「茉莉しゃ〜ん!!」

 

「オッケー!!楽野!!」

 

「陸井センパイッ!!」

 

 

 

素早いパス回しで一気にエースへとボールを繋いだ陽花戸。邪魔をしようにも、殆どが初心者、かつ運動経験すら無い人達も含まれている神楽中サッカー部。既に多くのメンバーがスタミナを切らしており、陸井の妨害に間に合う者がいない。

 

 

 

 

「ハッハァ!!行くぞ堅固ォ!!」

 

「来いよ……っ!!次こそ止めてやらァ!!」

 

 

 

ボロボロになりながらも、未だに闘志を滾らせる森崎。そんな彼に笑いながら、陸井は全身にエネルギーを纏う。

 

 

 

「っらァ!!!」

 

 

 

全身に張り巡らせたエネルギーを解放し、地面を蹴り抜く。巨大な亀裂の走った地面から抉られたような石柱が隆起。砕け、石塊へと変化していくと、それがボールに集結。

 

もはや岩というより岩石。巨大な石球と化したボール。それを身体を翻しながら飛び上がって、オーバーヘッドで蹴り抜いた。

 

 

 

 

「グラウンドインパクトV3ッ!!」

 

 

 

数多の石礫と共に蹴り砕かれた、一点集中のエネルギー。全国区のストライカーが打ち出す渾身のシュートは、選手たちだけでなく周りで見ている観客達にまでその暴風が届く。明らかなオーバーキル。今度こそ、あのキーパーが潰れるのではないかと観客全員が思った。

 

 

 

「______んだらぁ!!!」

 

 

 

でも、彼は諦めない。

 

 

爆裂パンチは何度やっても使えず、利き手を負傷したことでもはや熱血パンチすら使用は不可能だ。ならば彼に打つ手はない。止める手段はない。何も出来ない。

 

 

しかし、何も出来ない程度で諦めるようでは、到底立向居を超えるなんて不可能だ。何も出来ない?そうじゃない、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

必殺技も使えぬ彼は、全身に力を込める。そして雄叫びを上げながら、陸井のグラウンドインパクトに向かって顔面から突っ込んだ。

 

 

 

「はぁ!?」

 

「アイツ、あれに顔面から突っ込みやがったァ!!?」

 

「んぎ……ぎぃ……!!」

 

 

まさかの暴挙。自分からあの威力のシュートに突撃していくなんて正気の沙汰じゃない。自分の体を痛め付けるだけの意味の無い行為、そんなことをしても点を決められることには変わりないのに。

 

 

しかし、陸井には見えていた。全身に力を込め突撃し、たった今己のシュートと拮抗している彼の全身から、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()』。

 

 

 

「なんだ……?」

 

「どわぁぁぁぁっ!?」

 

 

 

陸井が疑問を覚えるより早く、森崎が吹っ飛ばされた。顔面にボールが衝突し、鼻血を吹き出しながら吹き飛んでいく。どうにか頑張りによってシュートコースが上にズレはしたが、それでもゴールポストには当たらないコースだ。これで、21点目が決まる………そう思った時だった。

 

 

 

 

 

 

「おっりゃァァァァァァァァっ!!」

「はァァァァァァァァァっ!!」

 

 

「っ!香沙薙君、秋宮君っ!!」

 

 

 

間一髪。森崎のその突撃を、無駄にしなかった。

 

 

近くにいた香沙薙と、一気に走って戻ってきていた秋宮。今試合に出ているメンバーで唯一の二年生男子コンビ、そして随一のパワーの持ち主たちだ。

 

当然この2人でも、陸井のシュートを弾くことなんて出来ない。しかし、僅かにシュートをズラす程度なら、森崎の顔面ブロックが入ったものならば可能だった。

 

 

香沙薙が真正面から蹴りつけている所に、秋宮が下からパワーを加える。それによって徐々にズレたシュートコースは、ギリギリゴールバーに当たって弾かれた。

 

 

 

「っしゃあ!!」

 

「弾いたっ!!」

 

 

「すっ、げぇ……2人、とも……!!」

 

 

 

死屍累々の森崎が、自分に代わりゴールを守ってくれた先輩達へと感謝を述べる。どうにかして弾いてみせたことに香沙薙と秋宮がガッツポーズを取るが、次の瞬間それは驚愕に変わることとなった。

 

 

ボールはゴールバーに当たった。しかもキッカーは陸井、森崎の顔面ブロックと二年生二人のキックブロックが入ったとは言え、その威力は推して知るべし。弾かれたボールは、当然ならが勢いよく飛んでいった。その先にいたのは______

 

 

 

 

 

「っ!!薫先輩っ!!」

 

「姉さん、危ないっ!!」

 

 

「……へ?」

 

 

 

 

神楽中ベンチ。厳密には、森崎の為に救急箱を取ろうとしていたサッカー部のマネージャーにして試合に出ている塵山の姉、薫。彼女に向かって、極大の威力を内包したボールが勢いよく迫っていた。

 

 

咄嗟に近くにいた陽花戸の選手……文月が駆け寄るが間に合わない。薫は足を怪我しており、咄嗟に避けるのも難しい。来るであろう衝撃に、彼女がギュッ、と強く目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「______大丈夫やで」

 

 

 

瞬間。彼女が感じたのは強い衝撃ではなく。少し冷たく……しかし心地よい風だった。

 

 

 

「はァァァァァァっ!!!」

 

 

 

何かを蹴りつけるような衝撃音。エネルギーとエネルギーのぶつかり合いによって生じる強い風。その音と風は、ダァン!!と打ち出すような音を最後にどちらも感じなくなった。

 

 

 

恐る恐る、薫が目を開く。

 

 

 

彼女の目の前に立っていたのは、一人の女生徒の後ろ姿。紫色がかった銀色の綺麗な髪、少し癖のある可愛らしいセミロングヘア。少し小柄で可愛らしく見えるのに、不思議ととても大きく頼もしく見える、ちぐはぐな背中。

 

 

 

 

「______っ!お前っ……!!」

 

 

陸井が驚きを隠せない様子で目を見開く。しかし、蹴り返されたボールを受けた彼は、あのシュートを蹴り返せるのは彼女しかいないと。目の前に立つ人物が幻でもなんでもないと、教えられている。

 

 

 

「………?アレって、誰……?」

 

 

 

陽花戸のメンバーは困惑していた。全くもって見覚えのない女子生徒が、エースである陸井のシュートを蹴り返して見せたのだから。

 

 

 

 

「なんで先輩がこんなところに……?」

 

 

 

神楽中の面々は首を傾げる。なんで彼女がここにいるのだろう。生徒会としてサッカー部に協力してくれてはいたが、今のプレーはどういう事だと。

 

 

 

 

「全くもう…………決めるのが遅いの悪い癖ですね。副会長」

 

 

 

秋雨は笑う。自分が救い出したかった彼女が。いくら尽力しても救い出せなかった彼女が、彼の手によって決意を胸にした事実が嬉しくて。

 

 

 

 

「………はっ、はは……やっと、来たんすね………!!」

 

 

 

森崎は、歓喜する。あの日、1本見ただけのシュート。絶対に凄い人だと、サッカーが大好きな人だと。そう思ったから、きっと来てくれると信じていた。だからここにいてくれる事実が、たまらなく心が奮い立つ。

 

 

 

「ちょいちょーい!!偶然とはいえ女の子怪我させかけるなんてアカンやろ!!うちが蹴り返さへんかったらどないしとんねん!」

 

 

 

呆れた様子を見せながらいつものように軽い口調で話し掛ける。しかしその目は以前の様な逃げる目ではない。現実を、トラウマを、大嫌いになりかけた大好きなものから、目を逸らさないようにしっかりと見据えながら______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ…………栄作?」

 

 

 

______【支倉 静穂】が、今一度コート上に舞い降りた。

 

 

 

 

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