イナズマイレブン!新たなる守護者   作:ハチミツりんご

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・・・今回全く話が進展してません。完全なギャグ回です。そしてスローダンサーさん、鏡面ライダーさんごめんなさい()


部室でのひととき

 

「結局誰も集まらなかったなぁ~」

 

「想像以上に手応えありませんでしたからね・・・」

 

 

 

部室の中で椅子に腰掛けながらため息をつく森崎に、塵山が口元に手を当てながら同意する。

 

結局あの後勧誘を続け、その後の休み時間や昼休みも総動員して声を掛けたものの手ごたえは一切無し。話を聞いてくれる人は数名いたが、日本一、更には世界一を目指すという目標を聞くと早々に立ち去ってしまう。どうにもこの学校の生徒達は、殆どが『部活動は楽しむためにやるもの』という考えのようだ。

 

 

 

「本気でやった方が楽しいと思うんだけどなぁ・・・」

 

「それも人それぞれって事じゃない?きつい練習するくらいなら、のんびり仲間内で楽しむ程度の方がいいって人も多いと思うよ?」

 

「神楽中は部活動が盛んじゃないからねぇ。この辺りでサッカーやろうと思うなら、やっぱり陽花戸中にいくだろうし」

 

 

紫藤と人鳥の考察は的を射ている。この学校にある部活は、野球部やバスケ部などの運動部から、文芸部、天文学部といった文化部など結構幅が広い。ただどれも生徒や教師の趣味の範疇を出ておらず、作るだけ作って碌に活動もしていない、というのも珍しくない。恐らくだが、この学校で真面目に活動をしているのは唯一『天文学部』のみだろう。

 

・・・もっとも、その天文学部も現在は部員は1人しかいないのだが。

 

 

 

「陽花戸中かぁ・・・立向居さん、生で見てみてぇなぁ・・・!!」

 

「アハハ・・・森崎君、去年からそれ言ってるよね・・・」

 

「あれ?確か堅固って、円堂さんに憧れてるんじゃないっけ?」

 

 

 

目を輝かせながらそう言う森崎。変わらない友人の様子に、秋風が思わず苦笑する。そんな中、ふと疑問に思ったのか人鳥がポツリと呟く。憧れの円堂ではなく、立向居に会いたいと言っている森崎を不思議に思ったのだろう。

 

 

「陽花戸中のキャプテン、立向居さんのプレーは、円堂さんによく似ているんですよ。立向居さんは円堂さんに憧れてGKになった程ですし、ある意味当然かもしれませんけどね」

 

「【伝説のゴールキーパー】、円堂守の魂を受け継ぐ者・・・【伝説の後継者】って言われるくらいだからねぇ」

 

 

 

燈咲と紫藤、サッカー事情に詳しい2人がそう解説すると、ほぇー、と感心したような声を上げる人鳥。秋風と並んで初心者の人鳥は、あまり詳しい事は把握していない。特に今の世の中、選手の名前などは大々的に報じられるが、各選手の細かいプレースタイルまでは報じられないのだ。されたとしても、日本トップレベルに位置する選手達のみだろう。

 

 

 

「立向居さんはほんっとすげぇんだよ!!2年前のFFIでのアルゼンチン戦も凄かったけど、やっぱ俺は去年の雷門中との試合だな!!」

 

「フットボールフロンティア本戦、第2回戦!!凄い試合だったよね・・・!僕、会場まで見に行ったよ!」

 

「なぬ!?幻斗おま、お前ズルいぞ!!?」

 

 

 

ふふん、と得意顔の紫藤に、森崎が羨ましそうな眼差しをむける。その横で、どんな試合だったの?と人鳥が塵山に尋ねる。

 

 

 

「たしか・・・延長までもつれ込んだキーパー戦だったと思います。最後の最後、延長後半が終わってPK戦になるか、というところで雷門中が一点をもぎ取ったはず・・・」

 

「塵山君の言う通り、フットボールフロンティアの歴史に残る名勝負でした。私もフロンティアスタジアムで実際に見ましたけど・・・時間を忘れるくらい熱中しました」

 

 

 

塵山が思い出すようにして呟くと、それに付け加えるように燈咲が話に加わる。

 

全国大会2回戦第三試合。前大会王者、雷門中と、当時急成長を遂げていた陽花戸中の戦い。共に日本代表、イナズマジャパンのキーパーである両チームのキーパー対決が注目を集めた試合だった。

 

 

「たしか前評判では、雷門中が圧勝すると言われていたんです。確かに立向居勇気は日本でも指折りの名キーパーですが、それ以外のメンバーが大きく劣る、と言われていて・・・」

 

「陽花戸中が劣ってるというより、雷門中がやば過ぎた、と言った方が正しいとは思いますけどね。

 

攻撃陣は、エースストライカーの『豪炎寺修也』に加えて『染岡竜吾』に『宇都宮虎丸』。

中盤にはゲームメイカーの『鬼道有人』に、代表候補にも選ばれた『松野空介』。

DFには『風丸一郎太』に『壁山塀吾郎』に『栗松鉄平』・・・代表的な選手だけでも役者が揃い過ぎてます」

 

 

 

1年前の雷門中には、一之瀬一哉と土門飛鳥の2人を除き、前大会を制覇したメンバーが揃い踏み。さらにそこに、日本代表に選ばれた宇都宮虎丸、惜しくも代表落ちしたもののその実力は全国でも屈指の闇のストライカー、闇野カゲトも在籍していた。全国でもここまで選手層が厚いチームは、ここ以外ではせいぜい帝国学園がいいところ、といったほどに選手が充実し過ぎていた。

 

 

対する陽花戸中は、立向居こそ強力なものの他のメンバーは大したことが無い、というのが世間からの見解だった。全国大会1回戦の対漫遊寺中は、上手く相手の守備の要である『木暮夕弥』を押さえ込み、その隙にシュートチェインを重ねて一点を奪い、それを守り抜いて勝ち上がった、という消極的な戦い方も、その意見に拍車をかけたのかもしれない。

 

 

 

「ですがその試合では、陽花戸中はチーム一丸となったプレーで何度も雷門中を脅かしました。特にその試合で出場していたFWの一人がフィールドを走り回って、攻守を繋げて・・・まぁ一番活躍していたのはやっぱり立向居さんでしたけどね」

 

「ほんっとすげぇんだよ立向居さん!!!豪炎寺さんの【マキシマムファイア】や虎丸さんの【グラディウスアーチ】、他にも【プライムレジェンド】に【タイガーストーム】、【ドラゴンスレイヤー】・・・【ジェットストリーム】まで止めたんだぜ!!」

 

 

 

雷門中の誇る、必殺技の数々をシュートブロックすら無しに、己の力のみで止め続けた立向居。だが最後には、この試合まで鬼道が隠し球として温存しておいたマックス、半田両名との連携技、【ビッグバン】から、【マキシマムファイア】、【ドラゴンスレイヤー】の連続チェインによって突破され、2回戦敗退のなったのだが。

 

 

 

「凄いね・・・あの立向居さんから点を奪うなんて、やっぱり雷門中は別格だね」

 

「・・・逆に言えば、その別格の雷門中がそこまでしてやっと倒せる相手と地区予選で当たるということなんですけどね」

 

 

 

塵山がポツリと呟いた言葉を受け、人鳥と秋風の初心者コンビはヒェッ…と震え、燈咲と紫藤の経験者組は悩ましげな表情を浮かべる。実際、未だ部員勧誘に悩んでいる自分達が立向居率いる陽花戸中に勝とうとするのは無謀もいいところだ。それをこの2人はよく理解している。

 

 

 

 

 

「・・・まぁでもさ!!そんなに凄い人達と戦えるんだぜ!?そういうの、やっぱワクワクするだろ!!もちろん勝ちに行く!!でも、気負うよりも楽しんでいこーぜ!!」

 

 

だが、そんな中で森崎は笑顔だった。その笑顔は、チームメイトを安心させるために取り繕ったようなものではなく、本心から立向居勇気との対戦を楽しみにしている、といった顔つき。

 

日本一を目指している、と言う彼にとって、立向居はもちろん大きな障害となる。しかし、憧れの円堂守がすでに卒業しているため、森崎が対決することが出来るのは立向居のみーーーそれも、今年が最後だ。ある意味彼が今年のフットボールフロンティアでの優勝を目指しているのも、立向居や壁山、木暮に吹雪アツヤなどの面々と戦えるのは今年だけ、というのが大きいと言えるのかもしれない。

 

 

 

「・・・まぁ、それもそうだね!」

 

「壁山さんや栗松さん、少林寺さんに宍戸さんのいる雷門中と戦えるのは今年だけ・・・確かに、楽しんだ方がいいかも」

 

「陸上の時も、気負ってる時に限ってミスしたりするもんね」

 

「やるなら徹底的に・・・ですが、怪我をしては本末転倒です。ちょうどいいバランスを見極めないといけません」

 

 

 

人鳥、紫藤、秋風、燈咲の4人は森崎の言葉を受け、肩を少し下ろす。気負っていた様子だったが、彼の様子を受けてその気負っていたものが降りたのだろう。

 

 

「・・・そんなんじゃ、いつまでのあの人には追いつけない・・・」

 

「ん?灰飛、どした?」

 

「!・・・いえ、なんでもありません。堅固の言う通り、気負わず楽しんだ方が良いプレーができるかもしれませんね」

 

 

 

だが、そんな中で一人、塵山だけが暗い顔のまま。ボソりとそんな事を呟いたが、森崎から声を掛けられるとすぐに元の塵山の様子に戻る。声が小さかったことも相まって、その場にいた面々が塵山の様子に気がつくことは無かった。

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ?てかザックの奴はどこいったんだ?」

 

「刃金君なら、そこにいるよ?」

 

 

 

秋風が指差す先には、部室の壁に備え付けてある窓から外を眺める刃金の姿が。窓の縁に両肘を立て、両手を組んでその手の甲に顎を乗せる、というポーズでじっと外を眺めている。

 

 

 

 

 

その様子はまるで数多の修羅場を潜り抜けてきた歴戦の傭兵、一挙一動を見逃さんとする老練の指揮官、僅かな所作から才ある者を見抜く凄腕のスカウトーーーとにかくそれだけの『凄み』が、今の彼にはあった!!

 

 

 

 

「な、なんだアレ・・・!?あんなに真剣なザックは初めて見たぞ・・・!?」

 

「アレがザック・・・!?」

 

「授業中に堂々と早弁をする刃金君が・・・!?」

 

「いびきがうるさ過ぎてうちのクラスまで響き渡る刃金君ですか・・・!?」

 

「昼休みに食べ物を求めて購買に突撃するその姿から、入学して約一週間で全校生徒から大食いモンスター弐号機の異名で呼ばれるザックですか・・・!?」

 

「いや刃金君の印象どうなってんのさ!?てか弐号機!?壱号機がいるのこの学校!?」

 

 

 

森崎が驚愕を露わにすると共に、人鳥、秋風、燈咲、塵山が言った刃金へと印象に思わず紫藤が突っ込む。ちなみに、森崎達が所属するC組は、刃金と秋風が所属するA組とはB組を挟んですぐだ。逆に紫藤がいるF組はA組とは真反対にある為、刃金のいびきも響いてこなかったのだろう。

 

 

 

「てかなんで外見てんだ?なんか今あってたっけ?」

 

「確か、2年生の体育じゃないですか?僕ら1年生は今日、5限目で終わりですけど、上級生は6限目もありますし」

 

「なぬ!?2年生の体育ならサッカーだ!!」

 

「え、なんで知って・・・もしかして堅固、やけに窓の方気にする日があるなと思ったら外のサッカー見てたんですか・・・?」

 

 

 

ウッソだろお前、と言いたげに呆れた塵山の言葉に、自信満々におうさぁ!!と答えるアホの森崎。事実彼は外から聞こえてくるボールを蹴る音を聞いて、今の上級生達の体育がサッカーであることを把握している。授業内容は把握していない癖に。呆れた男である。

 

 

 

「でもなんでザックが2年生のサッカーみてるのさ?知り合いいるとか言ってたっけ?」

 

 

 

人鳥の疑問に、その場にいる6人全員が知らない、と首を傾げる。刃金は兄弟がいる、といった話もしていないし、誰か親しい人がこの学校に通っているという話も聞いたことは無い。もしかしたら聞いていないだけでいるのかも知れないが、それなら何故眺めるだけで声を掛けないのだろうか、という疑問が残る。それに、知り合いの体育をみるような目はしていない。もっとこう、獲物を狙う鷹のような目をしているのだ。

 

そんな中、森崎が一つの可能性に辿り着く。

 

 

 

 

「・・・っ!?まさかザックの奴、2年生のサッカーをみて戦力になる人を探して・・・!?」

 

「そうか!!燈咲さんや紫藤君みたいにリトルでの経験は無いけど、刃金君も三年間サッカーをしてきてる!!体育とはいえ、プレーをみれば才能がある人が分かるのかも!!」

 

「僕や紅葉が勧誘してた時と違ってサッカーしてる状態だし、ザックはあの時外にいなかった!!その可能性はあるかも!!」

 

「まさかザックが、チームの為を思ってそこまで・・・!!」

 

 

 

森崎の予想に同意する様に秋風や人鳥、塵山が言葉を発する。未だ出会って短いが、おちゃらけることも多いものの情に厚く、友達思いで、やるべき事はきっちりこなす刃金に対する信頼感が成した友情。それが垣間見得る瞬間であった。

 

 

 

「・・・なーんか嫌な予感がするの僕だけ?」

 

「奇遇ですね紫藤君、私もなんだか嫌な予感が・・・」

 

 

 

 

そんな中で紫藤と燈咲の2人だけが違和感を覚えていた。そんな二人に気がつくことなく、森崎は刃金へと声を掛ける。

 

 

 

「おーいザック、何見てんだ・・・?」

 

「・・・堅固か」

 

 

話しかけてきた森崎に視線だけを投げる刃金。その真剣な眼差しに思わず森崎も一歩後ずさる。これは期待が出来るかもしれない、と息を呑む森崎に、刃金があれを見ろ、と言わんばかりに親指をくいっと窓の外へ向ける。

 

 

森崎が刃金の指差す方向をじっと見ると、その先に居たのは、筋骨隆々の大男。

 

 

 

 

「ぃよっしゃぁ!!!!バットはどこっスか!!!!ソニックライジングでもマリンボールでもクレッセントムーンでもスタードライブでもあばたボールでもなんでも打ち返してやるッスよォ!!」

 

「ギータ!!これサッカー!!サッカーだから!!This is soccer!!OK!?」

 

「おーけー!!んで、ディスイズサッカーってどんなサッカーっスか!!?」

 

「だめだこいつ」

 

 

 

 

体操服に『柳田』と書かれたゼッケンをつけているその大男は、中学生どころか成人男性と言ってもいい程の恵まれた体格の持ち主だった。入念に体を動かし、心身を温めて試合に備える様子はどう考えてもスポーツ経験者のそれであり、何を言っているかは聞こえないが気合十分といった様子で同じチームのクラスメイトを鼓舞しているように見える。

 

 

 

 

「おぉ・・・!!なんか即戦力っぽい雰囲気・・・!!」

 

 

 

その雰囲気に感嘆する森崎だったが、それを見た刃金がため息をつきながら頭を振る。

 

 

 

「違う。もっと先の、木の影だ」

 

「木の影?」

 

 

 

刃金から言われて木の方に視線を投げると、そこにいたのは二人の女子生徒。

 

 

片方は、『秋雨』と書かれたゼッケンのついた体育服を着た、青色の髪をポニーテールに纏めた、どこかクールな雰囲気のする女の子。スラリとした肢体で、タオルで汗を拭いながらもうひとつのタオルをもう1人の女子生徒に手渡している。

 

もう片方は、同じく体操服を着て、『星舟』と書かれている、クリーム色のふわりとした髪が穏やかさを思わせる女子。木に寄りかかって休む彼女は、膝を抱えて体育座りのような体勢で、ふにゃりとして笑顔でもう1人からタオルを受け取っている。

 

 

 

どちらも先程の柳田という男子生徒に比べれば、スポーツ経験者のようなーーー悪くいえば戦力になりそうな雰囲気は全くしない。

 

 

 

 

「あの先輩方?割と廊下とかで見かける人達だけど・・・」

 

「分からないのか堅固?お前にはあの素晴らしさが・・・」

 

「す、素晴らしさ?」

 

 

 

刃金のいう素晴らしさ、の意味が理解出来ず、頭に疑問符を浮かべる。後ろにいる塵山、人鳥、秋風も「ん?」と言いたげな表情に変わり、燈咲と紫藤は察したような顔つきでため息をつく。

 

 

 

 

 

「お前には見えないのか堅固!!あの・・・・あの・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星舟先輩の素晴らしきお胸が!!!!!」

 

 

 

ずがぁん!!!と雷が落ちるような迫力で刃金は言い切った!!!彼が見ていたのは戦力になる人では無い!!体育座りすることによって、ふとももの辺りでふにゅんと形を変化させている星舟の柔らかそうな2つのお餅に全神経を注ぎ込んでいたのだっ!!!!

 

 

 

 

「ザックお前ぇ!?!?信じた俺の気持ち返せ!?」

 

「やっぱりザックはザックか・・・」

 

「解散、かいさーん!!」

 

「どう、どう!!!落ち着いて下さいね燈咲さん!!!」

 

「なんですか塵山君私がそんなに怒ってるように見えますか見えませんよね?」

 

「怒ってない人はそんな矢継ぎ早に言葉を述べませんよ!?」

 

「・・・え、燈咲さんって怒ると怖いタイプなの?」

 

「ザックが一撃で沈みます」

 

「なにそれこわい」

 

 

 

やっぱり変わってなかった女好きの様子に呆れ返る一同。約一名が暴走しかけているが、それは塵山に任せよう。頑張れ塵山、刃金の運命は君の手に託された!

 

 

 

そんなふざけている時。

 

 

 

 

 

「ふっ・・・お前、なかなかいい筋してるじゃねぇか」

 

「っ!?誰だ!!」

 

 

 

ばっ!!と窓の方を振り向き、身を乗り出す刃金。そして彼の視界に映ったのは、部室の壁にもたれかかり、体育服のポケットに両手を突っ込み、キメ顔で立っている、背の高い金髪でチャラそうな外見の男。

 

 

 

「・・・誰だあんた。儂とは初対面のはずだが?」

 

「まぁそう言うなよ。俺は香沙薙。【香沙薙(かざなぎ) (しょう)】だ。お前の一個上だよ。刃金、だっけ?成程、膝を抱えていることによって潰れたように変形している巨乳・・・なかなかいい着眼点だ」

 

 

 

右手だけポケットから出して軽く挨拶した香沙薙。突然現れた彼に警戒を強める刃金だったが、香沙薙はそんな事は関係無い、とばかりに先程の刃金の着眼点を褒める。

 

 

 

「だが・・・甘い。まだまだひよっこだな」

 

「なに・・・?いきなり出てきたあんたにそんなこと言われる筋合いはないと思うんだが?」

 

「じゃあ逆に聞くが、お前には見えないのか?」

 

「・・・何がだ」

 

 

 

挑発するような香沙薙の言動に警戒心を強めながらも、香沙薙の言うことが読み取れずに聞き返す刃金。しかし刃金の中には、相手に対する不思議な親近感があった。何故ならーーー

 

 

 

 

「お前には、まだみえていないようだな。あの・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

体育座りと体育服のズボン、そしてふとももが生み出す絶対領域に・・・!!!」

 

 

 

ーーーこの男もまた、変態だったから。

 

 

香沙薙に言われ、はっ!!と気づいた刃金はすぐさま視線を星舟に投げる。

 

そこにあったのは、少し大きめのズボンによって見えそうで見えないチラリズム、そして星舟の健康的なふとももと、この暑さによって流れる一筋の汗が醸し出すエロテッシュ!!!その破壊力はかつて刃金が見た豪炎寺のシュートの次・・・いや、匹敵するかもしれないレベルの重さ!!

 

 

 

「そんな・・・儂は、あんな素晴らしいものを見逃して、上辺だけで判断していたのか・・・!!」

 

 

ガクッと膝をつく刃金。しかし、それよりも早く刃金の身体を支える人物が1人。ふと刃金が顔を上げると、倒れないように刃金の腕を掴んだ香沙薙が、そこにいた。

 

 

 

「刃金。確かにお前は詰めが甘かった。だがな、1年生でその観察眼は見事なもんだ。それにお前には未来がある。・・・これから、学べばいいんだ」

 

「っ!!・・・師匠!!!!」

 

 

 

互いに手を取り合う刃金と香沙薙。今ここに、男同士の奇妙な友情が結ばれた・・・!!!

 

 

 

 

「・・・ナニコレ」

 

 

そして森崎達は、そのアホすぎる会話内容に比例しない壮大な雰囲気に圧倒されていた・・・!!!

 

 

 

「師匠!!これから、あなたの元で学ばせて下さい!!」

 

「ハッハッハ!!いいだろう刃金、ついてこい!!星舟さんはガードが甘いからまだまだ俺たちに眼福を提供してぶべらぁ!!?」

 

「ししょオゴォ!!???」

 

 

 

肩を組み、星舟の方を見ようとした瞬間。鼻を伸ばしていた香沙薙と刃金の顔面に向けて、超高速で飛来する物体が飛んで来ていた。視認した時にはもう遅く、香沙薙、そして刃金の順に顔面を強打。二人揃って地面へと倒れ伏した。

 

 

 

 

「・・・え、ほんとになにこれ」

 

 

困惑しっぱなしの、森崎達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルちゃん?いきなりどうしたの?」

 

「乃愛のことを覗いてる虫がいたので、つい」

 

「ふぇぇ!?虫!?アルちゃん取ってぇ!!?」

 

「・・・乃愛、言葉の綾ですから。ほんとに虫はいませんからね?」

 

 

 

なおこちらは至極平和だった模様。知らぬが仏というものである。

 


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