名無しの英雄~パラオ艦隊戦記~   作:レイキャシール

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この作品を、「艦これ」と艦娘を愛する人々に捧ぐ・・・・・・



第一章・泊地海域編
プロローグ


 

「転属、でありますか?」

「そうだ」

 

 日本のどこかにある、海軍軍令部。自分―東郷徹心は、目の前に居る司令長官から、転属の命令を直々に伝えられていた。

 

「軍令部は、近い内に制海権確保のための大規模作戦を計画している。その前線基地の指揮官に、貴官を任命しようと言うのだ。恐らく、深海棲艦を大東亜共栄海域から一掃しようと言う腹づもりだろう」

 

『深海棲艦』。

 それが今、自分たち大日本帝国海軍連合艦隊が。否、世界中の海軍が戦っている敵の名だ。

 先の大東亜戦争の最中のこと。後にそう呼ばれる謎の敵が現れたことで、枢軸国と連合国は合同してこれの対処に追われることになる。こうなる前までの一時期は、『米国の新型爆弾が帝都に投下されるのでは!?』とも言われていたが、幸か不幸か、深海棲艦の出現によってそれは回避されたらしい。

 その深海棲艦だが、とにかく厄介極まりない敵だった。

 まず大きさだが、現状確認されている最大級のものでも等身大の人間くらい。駆逐艦級の小さいものに至っては大型犬程度しかないのだ。そのくせ、撃ってくる武器は実寸大の軍艦と殆ど変わらない威力なのだから尚更質が悪い。

 我が国が誇る弩級戦艦である大和や武蔵、「ビッグ7」の一角と言われた長門や陸奥までも歯が立たず、尽くが沈められるか、そのまま永久の入渠。欧米風に言うならドック入りを余儀なくされている。

 風の便りじゃ、独逸では正規空母グラーフ・ツェッペリンが。米国ではサウスダコタ級を始め、各国で戦闘艦艇の多くが被害を受けているらしい。

 もはやなすすべもないかと思われていた人類の未来だったが、希望はまだ残されていた。

 

『女の子らしき人影が、深海棲艦と戦っていた』

 

 この目撃情報が、全ての始まりだった。

 場所が南半球最大の難所とも呼ばれる喜望峰付近だったため、当初は『幽霊か何かを見間違えたのではないか?』と言われていたが、世界各地の様々な海で目撃されるようになってからは徐々に信憑性も増していった。

 そして遂に、その『女の子』が我々の前に姿を現したのだ。

 事のあらましは今から数年ほど前のこと。英吉利と仏蘭西の国境に当たるドーバー海峡沖にて、商船が深海棲艦の襲撃に遭った時のことだった。

護衛に付いていた駆逐艦が次々と沈められ、もはや絶体絶命と思われたその時、それは現れた。

 それは海面を滑るようにして移動し、腕に装備していた主砲らしきもので深海棲艦を尽く撃退したのだ。撃ち漏らした連中も、太ももの魚雷らしきもので吹き飛ばしたという。

 

「A級駆逐艦第三番艦の、アケロンです」

 

 その『女の子』を乗船させて乗組員が事情を聞いたところ、彼女はこう名乗ったという。調べたところ、同名の駆逐艦は確かに存在したが、記録の上では第二次大戦中に機雷に接触して沈没したものだったのだ。

 念のため、証言も取られたが、何れも記録の上ではアケロンの取った経歴と一致している。ついでに言うなら、当時の艦長の女性の趣味まで。

 だが、問題はそこではない。『深海棲艦に対抗し、勝つことが出来る存在』が遂に現れたのだ。このことは、英国海軍省を経て同外務省。そして国連理事会にも知らせられ、各国を良い意味で震撼させる。

 

「イギリスにいたというなら、他にも居るのではないか?」

 

 どこの誰が言い出したか、今となっては判らないが、これを切欠に世界中のありとあらゆる海。それも、過去に海戦があった、もしくは軍艦が沈没した、或いはその両方に当てはまる海域が徹底的に調べられることになる。

 その結果、(過去に沈められた記憶付きとは言え)多くの『女の子』が発見されたのだ。殆どは駆逐艦や巡洋艦だったが、ミッドウェー島沖や真珠湾などでは空母や戦艦型の『女の子』が発見されている。

 彼女たちの火力と装甲は深海棲艦に負けず劣らず、それをもって懸命に戦ってくれたお陰で、人類は一先ずの平穏を得ている。

 軍艦の能力と女性の容姿。これら相反する二つの特徴から、いつしか『女の子』達はこう呼ばれるようになる。

 

 

『Fleet Girls』。『艦娘(かんむす)』と・・・・・・。

 

 

 以上が、自分が士官学校で習った、艦娘に関する歴史だ。その特性故に、彼女たちは海軍の管轄となっていることが多い。米国では海兵隊も一枚噛んでいるらしいが。

 

「了解いたしました。粉骨砕身の言をもって、任務を全ういたします」

「引き受けてくれるか。感謝する」

 

 閑話休題。自分は、この転属命令を二つ返事で了承した。軍人である以上、上からの命令には従うだけ。それが理不尽なものでないなら尚更だ。

 

「それで、場所はどこですか? 最前線となると、千島列島周辺か、東南亜細亜でしょうか?」

「うむ。正式な通達は後日、書面で行うが、とりあえず先に教えておこうか。行き先は・・・・・・」

 

 この時、自分は未だ知らなかった。

 

「パラオ泊地だ」

「・・・・・・はい?」

 

この選択が、後に自分の運命を変えるものだったと言うことを。

 




「あのー、ここに御用でしょうか?」

「あなたで司令官は六人目だよ」

「あぁぁあああああああ、くそぁっ!!」


次回、「着任」。ここは、明日への分かれ道。続く先は、わからない。
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