調子に乗って書きまくったら、またも分割が必要な分量に・・・。合わせてどうぞ。
(2015年1月6日追記。本文の脱落があったので、その分を付け足しております。申し訳ありません)
★☆☆★
「提督。今、よろしいでしょうか?」
「ああ、構わない」
「では、失礼します」
ある日の昼下がり。昼食を済ませ、食後の緑茶を飲みながら簡単な書類のチェックをしていた時の事だった。数度のノックと共に、扶桑が電文の書かれた便箋を手に執務室へと入ってきた。
「先ほど、ラバウル基地から届いたものです」
「ああ、見せてくれ」
彼女から渡された便箋を開いて、中身に目を通す。
どうやら先方は、こちらがル級を撃ち漏らしたと誤解しているらしいが、深海棲艦である以上、個体数はそれなりにいると考えるのがしかるべきだろう。
「やれやれ・・・・・・」
「内容は、何と・・・・・・?」
「・・・・・・一昨日、トラック泊地が深海棲艦の攻撃を受けた」
「トラックが・・・・・・!?」
「ああ。幸い撃退には成功したそうだが、司令部はこれを敵の第一陣と見ているらしい。場合によっては、こちらにも出撃命令があるかも知れない。念のため、艦隊に待機命令を出しておくから、他の皆にも伝えてくれ」
「わかりました」
状況を報せる電文が届いたと言うことは、そう遠くない内にここにも出撃命令が下されるだろう。そのためにもまずは、千歳達を組み込んだ戦術理論の構築が必要になってくる。
水上機母艦としてだけでなく、千歳型は最終的には航空母艦としても運用が行われているため、これまでとは違った考えが求められるだろう。
どのような作戦になるか判らないが、今は出来ることから片付けていくしか無い。
――――――
事態が急変したのは、自分がその電報を受け取ってから更に数日後の早朝のことだった。
寝室のハンモックの上で、未だまどろみの世界を彷徨っていたところを長良の大声で叩き起こされたのだ。
「司令官大変です!!」
「どうした、騒々しい・・・・・・。まだ起床時刻には早いぞ・・・・・・」
「港に、船が来ているんです!」
「船? パラオは島国だから、漁船の一隻や二隻くらいは普通に見られると思うのだが・・・・・・」
「そうじゃなくて、軍艦です! 見たことも無いようなのが入港してきたんですよ!!」
「見たことも無いような・・・・・・?」
そう言われて、窓から港の方を見てみる。すると確かに、軍艦らしき輪郭の船が誘導に従って後退しながら進入してきていた。
あの艦に揚げられているのは旭日旗と大将旗。どこぞの拠点司令官がここへ来ているのだろう。
「長良、秘書艦として一緒に来てくれ。他の艦娘も、戦闘装束に着替えて港に集合するよう伝えろ」
「わかりました!!」
どうやら、自分の思っている以上の厄介ごとが起きていそうだ・・・・・・。
☆★★☆
連合艦隊ラバウル基地駐留艦隊の司令艦である、護衛戦艦『
先頭を行く老年の男性士官が、恐らくこの中では最先任なのだろうか、大将の階級章を身に付けていた。年かさはそろそろ六十歳に届こうといった所か、髪も殆ど真っ白。にこやかな恵比寿顔をしており、人の良さがうかがい知れる。
「こうして面と向かい合うのは初めてだったかな、東郷中佐。既に名前は知っていると思うが、ラバウル基地司令官の
「こちらこそ初めまして、占部閣下。艦隊司令官の東郷です。こっちは、秘書艦の長良です」
「よ、よろしくお願いします!」
「ん、よろしくな、お嬢さん。さて・・・・・・」
老士官、もとい占部大将は先ほどまで浮かべていた恵比寿顔を引っ込ませたかと思うと、途端に真剣な目つきになって話し始めた。
「今回こうして儂がここまで出向いた理由、当ててみぃ」
「少々踏み込んだ言い方になりますが、よろしいですか?」
「構わんよ。芝富の若造から聞いておる、必要とあらば陛下にもずけずけと言いそうな男だと言うことも」
「ありがとうございます。では、伺いますが、トラックの戦況が悪くなってきているのですね?」
「うむ。悔しいが、貴官の言うとおりじゃ。こちらから増援も送ってはいるが、それにも限界がある。そこで、貴官のパラオ艦隊にも協力して欲しい」
彼からの問いに、徹心は極めて簡潔に、かつ直接的に答える。
「すまんが、長良くんを下がらせてもらえるかの? 少々話しにくい内容なのでな」
「判りました。それでしたら、会議室までご案内しましょうか?」
「そうしてくれるかの? そっちがあるなら好都合じゃて」
「はっ!」
――――――
「トラックを、放棄するのですか!?」
「何もそうは言っておらん。一時的に司令部機能と直掩艦隊をラバウルに移し、しかる後に奪還作戦を行う手はずになっておる。
貴官も知っている通り、トラック泊地は戦略上の要衝でもある。みすみす手放す訳にはいかんよ。それに、貴官は兵学校本科を主席で卒業しており、特に艦隊戦略に関しては他者の追随を許さんほどだと聞いている。判らない話ではないだろう?」
場所を会議室に移し、占部らラバウル基地の要員から改めて告げられた内容に徹心は衝撃を受けた。確かに、戦略として見るならば、防衛が不可能であれば一時的に放棄し、戦力の再編を済ませてから奪い返すのが常道だろう。
だが、戦術としてはどうだろうか。取り残される艦娘と妖精達、そして何より人間の兵達はどうなるのか。艦隊を実際に指揮、運用するようになってから、徹心はこのことを肌で学びつつあったのだ。
「一応お聞きしますが、なぜ我々を? 地理的にもラバウルから直接艦隊を向かわせた方が早いと思うのですが」
「理由かね? そんなものは決まっておる」
それらを踏まえて問いかける徹心に対し、占部は当然のように言ってのける。種々の理由はあるだろうが、それら総てを集約して、ただ一言だけ発したのだ。
「懲罰艦隊に、拒否権があるとでも言うのかね?」
「なっ・・・・・・!!」
――――――
「ふっざけんじゃないわよッ!!」
昼頃。占部らがラバウルへ帰った後、徹心はこのことを麾下の艦娘達に包み隠さず話した。先ほどの台詞は、それを聞いた霞の激昂の声だ。
「あたし達に、同胞を見捨てろって事よね!? ちゃんちゃらおかしいわ!」
「ブローハ・・・・・・。こう言う立場と言うことは理解してはいたけど、いざ直面してみると反吐が出る・・・・・・」
「提督、何とかならないんですか!?」
「むぅ・・・・・・」
五月雨にそう言われ、しばし考え込む彼。正直な所、彼自身も含むところがあり、艦娘を指揮している身としては腹に据えかねていたのだ。
「とにかく、だ。作戦内容を説明する。今回艦隊に与えられた任務は、トラック艦隊の母艦である護衛艦『
そう言って徹心は、机の上にトラック諸島周辺の海図を広げ、戦力単位を示す駒を置いて説明を始めた。
「敵艦隊は現在、トラック泊地の司令部が置かれている春島の湾外に展開し、反包囲体勢となっている事が先の戦闘で確認されている。現状では湾内から脱出する場合、敵艦隊の十字砲火地点を通過する必要がある。
なので、少しでも安全を確保するために敵艦隊を背後から強襲、包囲網に穴を空ける。その後、そこから湾内へと突入し防衛目標と合流する」
「ちょっと待って。敵がどの程度かも判らないのに正面から叩く気? 自殺行為だわ!」
「慌てるな、続きがある」
徹心が出した策は実に単純明快なもので、一見すると霞の言うとおり無謀にも思える。だが、徹心はそれを遮ってさらに話を続けた。
「先ほど説明した強襲作戦だが、これは陽動だ。決して完全撃破する必要は無い。続いて別働隊は、トラック艦隊の残存戦力を指揮下に編入し、防衛目標と共に脱出する。これなら、最低限の被害で事が済む」
「それって・・・・・・!」
「ああ。黒金だけでない、トラック所属の艦娘達も『防衛目標』の範疇だ」
彼の提示した作戦の骨子は、ラバウルからは目標に指定されていないトラック所属の艦娘達だったのだ。彼女らの中には、パラオ艦隊にはいない艦種の者もいるだろう。徹心はそう踏んでこの策を提示したのである。
「良い案ではあるんだけど、厳しそうね」
「でも時間も限られている以上は、やるっきゃねえだろ」
「はぁ~・・・・・・。また実戦か・・・・・」
「質問は・・・・・・無いようだな。では、直ちに用意するぞ。摩耶の言うとおり、我々には時間が限られている」
「『はいっ!!』」
――――――
長距離行軍用の増槽の艤装への取り付けなど、諸々の準備を終えた艦隊がパラオを発ったのは、トラック泊地司令部の救出命令を受けた翌朝の午前五時頃。
最大巡航速で飛ばして到着した彼女らと、トラック泊地を包囲していた深海棲艦隊との間に先端が開かれたのはそのさらに翌日の昼前のことであった。
扶桑と千歳から発進した瑞雲隊が制空権を確保するべく、深海艦載機との壮絶な巴戦を繰り広げ、その下を足柄率いる前衛艦隊が駆け抜けていく。
「撃ち方、始めぇっ!!」
その彼女の号令一下、主砲を一斉に放つパラオの艦娘達。最初の撃ち合いで、何隻かは被弾するものの、それ以上の数の深海棲艦に手傷を負わせていく。
「かんたいそうきかん、ふそうよりれんらく! 『我が方被害甚大につき、制空劣勢なり』、です!!」
「了解。さて・・・・・・是非も無しね、突っ込むわよ!!」
「今回の一番槍は、私が貰います!!」
「おっ! アタシも鳥海に負けてられねぇな!!」
「ったく、バカばっかりね・・・・・・」
「それに付き合う霞さんも、大概だと思いますよ?」
「初霜って、意外と毒吐き屋なのね・・・・・・」
いつの間にやら毒されつつある自分に若干辟易しながらも、霞は目の前に映る敵艦隊を見据える。
「まあ、こう言うのも悪くないわね・・・・・・!!」
――――――
「始まったみたいね。お姉達、大丈夫かな・・・・・・?」
戦端が既に開かれていた事は、現在戦闘中の艦隊とは相対位置で真逆の場にいた別働隊も知るところであった。
「大丈夫、心配は必要ない」
「でも、提督。お姉と私は・・・・・・」
「二人が艦として辿ってきた経歴はもちろん知っている。それに、千歳も『大丈夫』と言っいたんだ、信じることも姉妹艦の役割じゃないか?」
「・・・・・・わかったわよ。お姉を信じるわ」
「そうしてくれると助かる。では、こちらも始めるとしようか。千代田は瑞雲隊を出せ。準備ができ次第、順次発進。水雷戦隊は突破口を開け」
「了解! 千代田艦載機、発艦開始!!」
「良し来た! 任せておいて、司令官!!」
徹心の号令一下、千代田もまた瑞雲隊を発進させ長良率いる水雷戦隊が、彼の乗る指揮船と共に前進を開始する。
この別働隊に帯同しているのは、千代田と長良を除けば長月と響、五月雨の三人だけ。もし、こちらの意図が深海棲艦に見抜かれればひとたまりも無い。そのためにも、足自慢である長良と、高い索敵能力を持つ千代田の二人が抜擢されたのだ。
「各艦、両弦最大戦速! 一気に駆け抜けるよ!!」
「はい! 響も、大丈夫?」
「ダー。問題ない、着いてきているよ」
「旧式だからといって心配する必要はない。私もいるぞ」
「・・・・・・!? 千代田艦載機、針路上に敵艦発見!」
千代田と指揮船を中心にして、外周に他の艦を配置する陣形―輪形陣を取りながら真っ直ぐに突き進む別働隊の前に、敵の水雷戦隊が立ちふさがる。彼らが戦術という物を理解しているのかは謎だが、現実に邪魔をしに来たのだ。千代田からの報告を聞いた徹心は、極めて簡潔に指示を飛ばす。
「各艦は二列複縦陣に切り替え。牽制射を行いつつ、針路を維持しろ。無理に沈める必要はない」
「『了解っ!!』」
その指示を受け、隊列を組み替えつつ主砲を放つ長良達。千代田もまた、自衛用にと艤装に備え付けられた12.7サンチ連装高角砲で応戦する。
形としては反航戦の形だが、今回パラオ側は足の遅い指揮船を伴っているため、必然的に敵の攻撃も何発かはそれの周辺に着弾する。
指揮船と言っても、実態は全長にして10米足らずの小舟に過ぎない。それがほとんど命中しない近弾とは言え、実寸大の巡洋艦に匹敵する砲撃が降り注ぐのだ。当然、着弾時の衝撃と水しぶきが容赦なく襲い掛かり、船体がまるで木の葉のように揺れる。
常人であれば、あっという間に船酔いで立つこともままならなくなるような状況下にあっても、徹心は実に屈強だった。いや、本音を言ってしまえば彼でさえも今にも目を回しかねない状態なのだ。それを理性と精神力と使命感で強引に押さえつけていると言える状態だが、それでも耐えていた。
「司令官、大丈夫!?」
「問題ない・・・・・・! 前進を続けろ!!」
しかし、遂にル級の主砲が砲撃の中に混じり始め、時折ヌ級搭載の艦載機が爆弾を落とそうと雲霞のごとく飛び込んで来た。それらを巧みな操船で躱していた徹心。だが・・・・・・
「うわぁっ!!」
「提督!?」
ここへ来て、転蛇する瞬間に軽巡の主砲が至近で炸裂。命中した衝撃で遂に指揮船が横転し、彼は海へ投げ出されてしまう。
「提督!!」
「くっ、邪魔をするなぁっ!!」
それにいち早く気づいた長月と五月雨が救助しようとするが、他の深海棲艦に妨害されて近づけないでいる。
辛うじて海面から顔を出した徹心だが、彼の視界には真っ直ぐに自身へと向かってくるイ級の姿が。彼が覚悟を決めた、その時だった。
「目標、右弦敵艦! 撃ち方始め!!」
「『了解っ!!』」
トラック泊地から出撃してきたのか、彼ら以外の艦娘達がイ級を攻撃したのだ。眼前の獲物しか目に入っていなかったイ級は、哀れに吹き飛ばされて水没していく。
白と水色のセーラー服のような戦闘装束をまとった巡洋艦娘の指揮に従い、麾下と思われる駆逐艦娘達が攻撃を加えていく。そして程なくして、パラオ艦隊を攻撃していた敵は蜘蛛の子を散らすように引いていった。
それに関係があるかは不明だが、扶桑率いる本隊も敵艦隊を撃破してそちらへと合流してきた。
「助かった、貴艦は命の恩人だ」
「失礼ですが、貴方は?」
「来て早々だが、話は後だ。自分は東郷徹心、貴艦隊を救出に来た。詳しくは、陸の方で話させて貰っても良いだろうか?」
「救出に・・・・・・? わかりました。司令部にご案内します」
少々不格好ではあるが、その巡洋艦娘にロープで曳航されながら徹心は自己紹介する。しかし、本来なら救援が来たことに大なり小なり喜ぶ筈なのに、彼女の表情がほんの一瞬ではあったが曇ったことが徹心には気がかりでならなかった。
★☆☆★
自分たちが案内されたのは、本来の司令部ではなく、工廠内に設けられた仮設司令部だった。そこでは、トラック所属の整備員や妖精らが破損した艦娘達の艤装の修復に奔走し、生き残りと思われる数少ない士官らも作戦会議に忙殺されている。
「では、こちらでお待ちください」
「ああ」
巡洋艦娘にそう言われ、自分はその場で応答を待つ。
撃退出来たとは言え、敵がいつまた進行してくるか判らないので、扶桑らには哨戒も兼ねて残敵の掃討を行わせている。そのことを含めて、今先任の士官に報告しているのだろう。
待っている間、工廠の中をぐるりと見渡す。医療施設も破壊されてしまったのか、何人ものけが人が今も痛みに呻いており、中には生きているんだか死んでいるんだか判らない者もいる。
それ以上に痛々しいのは艦娘達だ。五体満足なのはまだ良い方で、殆どは腕か足が欠損しており、戦闘に耐えられる状態では無い。中には下半身が丸々吹き飛ばされ、生命活動がやっとの状態の者もいた。なまじ、艦娘達が見た目麗しい、もしくは可愛らしい女性の姿を取っているだけに、余計に凄惨さが増して見えてしまう。
「お待たせしました。野島大尉、この方が救出部隊の司令官です」
「初めまして中佐、野島です。ご足労をおかけします」
「東郷です。大尉、まずは現在の状況を詳しく教えて頂けますか?」
「はい、実は・・・・・・」
ここで彼女が話を取り付けたのか、中年の士官とようやく話をすることができた。聞くところによれば、第一次攻撃の際に泊地司令官の真藤少将と“黒金”艦長の礒田中佐を始め、幹部士官の殆どは戦死。あるいは重傷を負っており、大尉ら護衛艦の乗組員を除けば、殆どは訓練中の士官候補か、非戦闘要員しか残っていないと言う。
「一応、最先任は私なのですが、なにぶん艦娘の指揮は素人でして、どうにも上手く行きません。これでは、戦死された真藤閣下に申し分が立ちません・・・・・・」
「そうですか・・・・・・。わかりました、自分に任せてください」
「助かります。つきましては独断ではありますが、泊地所属の艦娘を使ってやってください。古鷹君も、それで良いですね?」
「了解しました。中佐、よろしくお願いしますね」
「ああ、よろしく頼む」
自分をここへと案内してくれた巡洋艦娘―古鷹によると、現在戦闘に耐えられる艦娘は、駆逐隊が一個、四隻。軽巡が一隻、重巡が一隻だけ。
それ以外は中破、あるいは大破してしまっており、既に何隻かは本人からの申し出で雷撃介錯したという。
「・・・・・・貴方が救援部隊の指揮官かしら?」
不意に、一人の艦娘が自分に話しかけてくる。
紺色の髪を頭の左右で束ね、つり上がった目尻からは勝ち気そうな印象が感じられる。
服装は長良や名取と同じ、臙脂色のスカーフを巻いたセーラー服に、柿色のスカート。胸の所に菊花紋章を模ったバッジを付けていることから、巡洋艦以上であることが判る。
「五十鈴です。第四戦隊の旗艦兼、水雷戦隊旗艦よ」
「ああ。パラオ泊地艦隊司令官の、東郷だ。よろしく頼む」
「パラオから、か・・・・・・」
そう名乗った艦娘―五十鈴の目は、どことなく諦観の念が感じられた。
「散々毛嫌いしていたのに、危なくなると救出部隊がどこからでも喜んで受け入れる。現金な事よね。貴方も見たでしょう? まともに戦える艦娘は、それこそ両手で数えられる程度。むしろ、雷撃介錯させられる連中の方が少ないのが奇跡的だわ」
彼女の心情はうれしさ半分、諦め半分と言った所か。だが、それでも洋上戦闘ができる貴重な一人だ。酷かもしれないが、やってもらうしかない。
「そうか・・・・・・。辛かっただろうな」
「辛いなんて物じゃ無いわよ。中には発狂するのもいたし、私自身も味方を介錯したりしたわ。あの戦争の記憶なんて、大なり小なり思い出したくないもの・・・・・・。それと、指揮してくれる以上、私は頼りにさせてもらうわ」
「ああ、よろしく頼む」
これでひとまず、戦力の確保はできた。後は、するべき事をするだけだ・・・・・・。
☆★★☆
徹心が五十鈴と話している丁度その頃。哨戒任務を交代した後、仮設司令部で待機していた響を訪ねるものがいた。
年かさは響とほぼ同じ。お揃いのセーラー服を着た紺色の髪の少女を、彼女はよく知っていた。
「・・・・・・無事だったんだね、姉さん」
「当然よ! 一人前のれでぃーだもの、戦闘もこなせないとやっていけないわよ!」
いかにも子供っぽい威張り方で、胸を張る駆逐艦娘。彼女の名は暁。特Ⅲ型駆逐艦、暁型の一番艦であり、響にとってはかつて存在した第六駆逐隊の仲間だった少女だ。
「それにしても、よく生きていたね。かなりの数の残骸も浮いていたから、てっきり沈んだと思っていたよ」
「縁起でも無いことを言わないでよ!! この前の戦闘も昼間だったし、探照灯も使わなかったから大丈夫なんだから!!」
「その油断が命取りになるというのに」
「むぅ~。ああ言えばこう言うんだから・・・・・・!」
口でああして物静かに言っているが、その内心では喜びに踊っていた。彼女自身は表情が豊かな方とは言い難い。むしろポーカーフェイスと呼ばれる部類に入るだろうが、それでも身内が生きていたことは素直に嬉しかったのだ。
「そう言えば、初霜の姉妹艦もここにいるらしいね」
「
「あ~か~つ~き~!!」
「はにゃぁっ!?」
その喜びもつかの間に、いきなり桃色の髪をお下げにした駆逐艦娘、子日に抱きつかれる暁。背丈こそ子日の方が若干高いが、根が無邪気な性格のためなのか、見た目以上に幼く、響の目に映っていた。
「すりすり~」
「ちょっと子日、くすぐったいって!」
「さて。そろそろ離れて貰っても良いかな? 姉さんもいやがっているし」
「ん~?」
「響だよ。今抱きつかれている暁姉さんの妹」
「暁の? 初めまして、子日だよー!」
「おろ、暁の知り合いかい?」
「触れ合いも良いですが、ほどほどにしてくださいよ」
自身の身分を名乗り、何とか暁から退いて貰った響。するとさらに二人の駆逐艦娘。今度は、銀色の髪をおかっぱに切りそろえた艦娘と、同じ髪型の黒髪の艦娘から話しかけられた。
二人とも、お揃いの白いセーラー服に黄色いスカーフと、灰色のスカートを身に付けていることから、同型艦であることがうかがえる。
「君は?」
「陽炎型、谷風さんだよ!」
「浜風です。よろしく」
「こんなところで旧十七駆逐隊の面々に会えるとはね、光栄だよ」
「こちらこそ、『不死鳥』の名は聞き及んでいます」
「そんな大層なものじゃ無いさ。たまたま何度か死に損ねただけだよ」
「それでも、凄いって! アタシにゃぁ、あんな無茶は出来ないよ!」
「・・・・・・そのたびに肝を冷やすこちらの身にもなってください、まったく・・・・・・」
最前線に身を置いているとは言え、駆逐艦娘の多くは精神年齢がやや幼い者も多く、顔合わせの挨拶はいつの間にか他愛の無いおしゃべりへと発展していく。
最初の内は戦果自慢もやっていたのだが、段々昨日の夕食のおかずや間宮茶房のオススメ菓子などの話題となっていた。
「みんな、集まってくれ! 作戦会議を行う!!」
話が盛り上がってきたところで、彼の方も話が終わったのか、徹心が集まるように呼びかけてきた。それを聞いた響は、彼女らと共に話しもそこそこに彼の元へと歩いて行行く。
彼は麾下の艦娘らが集まった所を見て、口火を切った。
「集まったな。ではこれより、『だんじり作戦』。暗号名、『だ号作戦』の概要について説明する」