年が変わってもこの作品は今まで通り、のんびりやっていこうかと。
後、明日はいよいよ艦これのアニメが始まりますね。これを機会に、提督が増えますように・・・。
第二章プロローグ
☆★★☆
広島県、呉市。
大日本帝国海軍第二海軍区鎮守府である呉鎮守府が置かれているこの都市は、同時に日本随一の工業拠点でもある。出雲安来で生産される鋼はとても質が良く、それらを用いた特殊鋼材の研究も行われており、海軍の新兵器や新型艦艇の多くがここで造られていた。その呉にある海軍造船工廠において今、一隻の戦艦の解体工事が行われていた。
建造から既に40年近く経つ旧式艦であったそれは、既に退役することが決まっていたが、日米開戦に伴う戦力確保のために近代化改修が施され、最前線へと送られた。
そして、日本の。否、世界の運命を変えた坊の岬沖海戦と、その後に起きた深海棲艦の呉攻撃―呉事変において致命的な損傷を受けてしまい、修復困難と言うことでこれまでドックをずっと占拠してきたのだ。
その後は護衛艦建造の資材確保のために解体作業に着手され、先日ようやく終わったのである。
「しかしこいつ、本当に頑張ったんだな・・・・・・」
一人の若い工兵が作業の手を止めて、取り外された主砲塔をしみじみと見上げている。
艦載されていた35.6サンチ砲はあちらこちらに傷やへこみ、錆が目立つようになっており、その一つ一つが歴戦を物語っていた。彼の聞いた話では、一時期は魚雷発射管が搭載されていたと言う噂もあったらしい。だが、深海棲艦の出現以降に入隊した彼からしてみれば、眉唾物であった。
「ちょっと、さっさと終わらせましょうよ! 早くしないと、また班長にどやされますよ!」
「悪い悪い、今行くわ!」
同僚の女性工兵に言われ、彼は作業に戻るべく足下に置いていたハンマーを手に取った、その時だった。
『皆さん・・・・・・ありがとうございました。――――は、大丈夫です・・・・・・』
どこからともなく風に乗って、少女の声が彼の耳に入る。
「ん・・・・・・? おい、今何か言ったか?」
「いいえ、何にも。気のせいじゃ無いですか?」
「・・・・・・そうか・・・・・? 確かに聞こえた筈なんだがなぁ・・・・・・」
同僚の彼女がしゃべったのかと思い、彼は問うが女性工兵は否定する。それを聞いた工兵は、首をかしげながらも持ち場へと戻っていった。
――――――
『
「うぃーっく・・・・・・。風が良い気持ちだねぇ~」
今、客船の甲板で徳利を片手に潮風に当たっているこの女も、酒飲みと言う意味でこの言葉が当てはまるだろう。
朱色の袴と、白色の上着。首に提げられた橙色の勾玉と、これだけ見れば神職、あるいは巫女の様にも見える。だが、彼女の髪がそう思わせることを周囲に躊躇わせていた。
腰まで届くすみれ色の髪は癖が付いているのか、外側にはねており、顔つきこそ日系ではあるものの、おおよそ東洋人離れした風貌に仕上げている。そもそも、宗教家の類いはよっぽどやさぐれない限り昼間から、それも人目の付くところで酒を呷ったりしない。
「しかしまあ、まさかアタシが懲罰転属とはねぇ・・・・・・。色々やってきたけど、遂にここに極まれり、か・・・・・・。それにしても不味いなぁ・・・・・・。憲兵隊の連中、もうちょい良い奴を都合してくれても良いってのに・・・・・・」
そう言って、手に持った徳利に口を付け、中に入った酒を呑む女。愚痴は言いながらも、酒は酒と割り切ってはいるようである。
――――――
西日によって、大海原が茜色に染め上げられる夕方頃。南方へと向かう船の甲板に妙齢の女性が一人、立っていた。
一本のお下げにまとめられた胡粉色の髪の毛は、腰に届くほど長く、それが夕日の光を浴びて美しく輝いている。加えてやや伏せ気味の両目と、全体的に穏やかな顔つきは、まるで天女の様な慈悲深さが感じられた。
これだけでも彼女は浮き世離れしているが、それを更に顕著にさせているのはその服装だ。
上に着ているのは白雲の刺繍があしらわれた、紺と白のベストだが、それはまるで寸法を間違えているのではないかと、見る者に錯覚させるくらいに小さく、スカートも申し訳程度に下履きが隠れるくらいの長さしか無い。一応、両の脚は長脚絆とブーツで隠れてはいるが、それが帰って扇情的な見た目にしてしまっていた。
「例の、東郷提督が預かっている拠点ですか・・・・・・」
そう言って彼女は、手に持っていた書類に目をやり、自らに与えられた指令を改めて確認する。そしてそれから目を離すと、水平線の彼方へと姿を消した故郷の方をぼんやりと眺めた。
「ここなら私も・・・・・・活躍できるのかしら。輸送艦としてでは無く、正規空母として・・・・・・」
この二人の艦娘の着任。そして、新たな艦娘の『誕生』によって徹心の、パラオ艦隊の命運が大きく変わることは、この時はまだ誰も知らなかった。後に当事者となる彼女達でさえ。